イッセーと黒猫の恋物語   作:kue

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第三十三猫

目の前の転移用魔法陣から出てきたのはまぎれもなく俺の大好きな黒歌だった。

でもいつもと違うのは彼女が纏っているオーラでいつもは優しいオーラなのに、

今、目の前のオーラは刺々しく、いつでも殺すといったような感じだった。

「く、くろ」

彼女の名前を言おうとしたその瞬間、顎に猛烈な痛みを感じたかと思えば、

次は顎に痛みがそして連続で顔中に痛みを感じた。

一瞬、何をされたのかは理解できなかった……いや、理解したくなかった。

俺は黒歌に何発も殴られた。何も反抗もしないで。

「イ、イッセー!」

「邪魔はさせない」

後ろから部長の声が聞こえてきたけどその直後にヴァーリとかいう奴の魔力が、

一気に俺の背後で解放された。

でも、そんなことどうでもよかった。

「く、くろ……黒歌!」

「にゃん!」

彼女の名前を叫んだ途端、俺の腹部に彼女の足が突き刺さり、後ろに吹き飛びかけたが、

髪の毛を掴まれて前に引き戻されるとその勢いのまま顔を殴られ、

後頭部に踵落としを喰らって、地面にたたきつけられた。

なんで……なんで…………なんでなんだよ。

「黒……歌」

胸倉を掴まれ、その細い腕で持ち上げられた俺の視界に彼女の顔が映った。

「今までご苦労様にゃ。恋人ごっこは楽しかった? 私は最悪だったにゃ」

「嘘だ……嘘だ」

「嘘じゃないにゃん。その証拠に今、私は貴方を何の迷いもなくボコボコにしてるにゃ」

彼女のオーラを探ってみてもなんら戸惑いや迷いといったものが感じられず、

純粋な殺意だけが彼女の中にはあった。

俺は……俺は最初から騙されて。

「あんたも物好きにゃ。こんなテロリストを愛するなんて」

「じゃあ……じゃあ今までの笑顔とか何もかも全部芝居だったっていうのかよ!」

「さっきからそう言ってるにゃ!」

「げぁ!」

パッと胸倉を離されたかと思えば右腕に、

仙術のオーラと妖術のオーラの混ざりあった物が集まっており、

蜃気楼でも見ているかのように彼女の右腕がユラユラと揺れているのが見えた。

よく人間はでかい事故なんかに遭遇した時、全ての行動がスローモーションに見えるって言うのを、

聞いたことがあるけど今まさにそれを俺は経験していた。

彼女の拳がゆっくりと俺の腹部に向かっている。

その表情は笑顔でも、悲しそうな表情でもただ単に“無”だった。

「ごばぁ!」

二つのオーラが混ざりあった拳が俺の腹部に直撃し、形容しがたい激痛が全身を駆け巡り、

俺の全身にある魔力が一気に散らばり、目の前の景色が揺れて見え、さらに赤い血も見えた。

誰かの叫び声が俺の耳にゆっくりと入ってくるがその声が誰のものなのかは全く理解できなかった。

徐々に暗くなっていく視界の中でついこの間まで見ていた彼女の笑顔が一瞬、見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法使いとの戦闘を終わらせ、僕――――木場祐斗とゼノヴィアは全速力で、

部長達が集まっている場所へと向かっていた。

その理由はイッセー君の魔力が急に無くなったのと二つの強い魔力を感じていたから。

そしてようやく部長達が集まっている場所へとたどり着き、

そこで見たものは血だらけのイッセー君が地面に倒れ伏している状況だった。

そして彼の近くには堕天使側の人員のはずだったヴァーリと黒い浴衣姿の女性だった。

「ヴァーリ。いったいどういう意味だ」

「詳しい話は兵藤一誠に聞いた方が良いよ、アザゼル。

この問題は君なんかじゃ全く理解することのできないことだからね。

話しを聞いて君が介入するか否かはそちらの自由だ。黒歌」

「……にゃん」

ヴァーリが言った名前を聞いて僕は驚いた。

く、黒歌って言ったら冥界で指名手配されている主人殺しの悪魔じゃないか!

そんな人といったいどんな関係を持っていたんだ……イッセー君は。

ヴァーリと黒歌は展開した転移用魔法陣を使ってこの場から姿を消した。

そしてようやくギャスパー君のセイグリッドギアの効力が解けたのか、

会議が行われていた職員室の窓からチラホラと三種族の陣営の姿が見えた。

とりあえずこの三種族の会談は無事とは言い難いけどなんとか終了した……でも、

今度は僕たちに何かしらの重大な問題が降りかかってきたみたいだ。

そんなことを考えていると僕のすぐ近くをアーシアさんが通り過ぎ、

イッセー君の治療を始めた。

周囲を見渡して見ると三種族のトップたちが一か所に集まって何やら、

話しており、下っ端の人たちは事後処理に移っていた。

まあ、今まで時間が止まっていたからいったい、

何が起きたのかは理解できていない人たちが多いけど。

「木場君」

後ろから声をかけられ、振り返ってみるとサーゼクス様がいた。

「よく頑張ってくれた。感謝するよ」

「い、いえ……ところでイッセー君は」

「……今回のイッセー君のことについては不問にするつもりだ。

彼に起きた問題は君たちで解決してほしい……いや、君たちでないと解決できない。

色々と忙しいことにはなると思うけど妹とその卷属の皆を頼んだよ」

そう言い、サーゼクス様は去っていった。

僕たちでしか解決できない問題……か。

その後、三種族間で和平を結ぶことが正式に決まり、

大昔から続いていた三種族による戦争は終結した。

 




とりあえず毎日更新して宣言通りの今月中に終わらせるぜ。
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