イッセーと黒猫の恋物語   作:kue

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最終猫

冥界に来てから数日が経ち、悪魔主催の大きなパーティーが開かれる当日になった。

恐らく、このことはカオス・ブリゲートの連中も何らかの方法で知っているはず。

あとは俺が知らない他の連中がここに来るんじゃなくて黒歌さえ来れば、

俺のやりたいことは実現可能になるんだが……もしも、

ヴァーリとかいう奴が来れば……おそらく、これが最初で最後のチャンスだ。

俺はパーティーが開催されている会場の近くで全身全霊の仙術を広げて、

会場に近づいてくる奴を感知していた。

もう既に俺が部長の卷族としてやらなければいけないことは済んだし、

部長からも許可を貰った。

……後はあいつが来てくれさえすれば。

でも既にパーティーが始まってから数時間が経っているのに、

全くと言っていいほど何も感じない。

……もしかしたら向こうも俺が来るってことを、

気付いて仙術で自分の気配を完全に消してるんじゃ。

『だったらセイグリッドギアを使った状態でやってみればいいんじゃないか?』

「ドライグ……協力してくれるのか」

『俺はお前が死ぬまで一緒にいる存在だ。お前が悩み、

苦しんでいるならば力を貸してやる。さっさと使って解決してみろ。相棒』

「……悪い。お前の力、借りるぜ」

『Boost!』

セイグリッドギアを発動し、魔力を倍にすると少しだけだが仙術で感知できる範囲が広がり、

さらにさっきよりもかなり細かく感知できるようになった。

……まだだ。まだこんな程度じゃ無理だ。

『Boost!』

さらに十秒が経ち、二度目の倍加が行われたがこれといって何も感じない。

三回、四回と時間が経つにつれて倍加が行われていくが全く感じず、

今の俺が倍加に耐えられる限界に来た時だった。

「っっ! いた!」

俺はすぐさま、気配を感じた場所に一目散に走り出した。

感じれたのは一瞬だけ……でも、それで十分なくらいにあいつを感じれた!

薄暗い森の中を走り続け、茂みの中を勢いよく抜けたとたん、

目の前に黒い着物を着た黒歌とダークカラーが強めの銀色の髪をしたヴァーリがいた。

黒歌は俺に見つからないと自信があったのか、俺の姿を見た途端に驚きを顔いっぱいに広げたけど、

ヴァーリに関しては我関せずといった様子で木の幹にもたれかかっていた。

「にゃ~。まさかヘナチョコ仙術にバレるなんて、

セイグリッドギアを使われたとしても恥ずかしいにゃ」

「…………なあ、黒歌。俺はまだお前のこと愛してる」

「……しつこいにゃ。私はあんたのことなんか愛してないにゃ。

ただ単にあんたは悪魔側の情報を何の苦労もなく仕入れることができる便利な道具にゃ」

……そう言うだろうと思ったさ。

俺は彼女の首のあたりを見てみると少しだけ、あるものが見えた。

それが見えた瞬間に今まで俺が考えていたことが正しいということが証明され、

どこか自信のようなものがわいてきた。

「お前が三種族の会談に乗り込んできたとき、俺はお前にスゲエ殺気を感じたんだ。

最初は錯乱してて頭がグチャグチャだったからお前が抱いているさっきの本当の意味を、

全く理解できずに俺に対する殺気だと思ってたんだ」

「そりゃ、そうにゃ。だって私はあの時、貴方を殺そうとしてたにゃ」

「でも、それは違ったんだ……やっぱりお前は俺が知ってる黒歌だった」

「何言ってるにゃ? ちょっとおかしなことになっちゃったのかにゃ?」

「おかしくなんかない……お前が殺気を抱いていたのは俺を殴っている自分に対して抱いていたんだ」

俺がそう言うと数秒間、間を開けた後に黒歌は腹を抱えて笑い始めた。

涙が出るくらいに笑っているあいつを見ても何も変わらないんだけど、

一瞬だけあいつの魔力がぐらついた。

仙術なんか使わなくても分かるくらいに。

「ハハハハハハ! そんなのありえないにゃ!」

目に涙を浮かべて叫びながら、手のひらに凝縮させた妖術のオーラの塊を俺に投げてくるが、

俺は地面に飛びこむ形でその場から飛び去って避けた。

さらに容赦なく俺に向かって塊が投げられてくる。

ここに来るまでに大量の溜めておいた魔力を籠手の先の方に凝縮し、

一気に放つと多くの妖術のオーラの塊を巻き込みながら大爆発を起こした。

「黒歌!」

俺は彼女の名前を叫びながら近づこうとするけど目の前から飛んでくる、

大量のオーラの塊を避けるのが精いっぱいで一向に彼女に近づけず、

それどころか遠ざかりつつあった。

くそ! こんなところで立ち止まってる場合じゃねえってのに!

もう目の前にあいつがいるってのに! また、

この前みたいに手が届かずに逃げられちまうのかよ!

そんなもん……そんなもん!

「許せるかぁぁぁぁぁぁ!」

大きく叫んだ瞬間、突然籠手にはめ込まれている宝玉が今までに見たことがない輝きを放ち、

こっちに向かってきてた攻撃を一瞬で全てかき消してしまった。

『さあ行け相棒!』

「あぁ行ってやる! バランスブレイク!」

『Welsh・Doragon・Balance・Blaker!』

そんな音声が宝玉から響いた瞬間、今まで溜めこまれていた莫大な量の魔力が俺の身体の中から、

宝玉を通して外に放出されたかと思うとその魔力が俺の全身を包み込み、

晴れると以前のような偶然発現できたものではない完璧な鎧を身に纏っていた。

「行くぞ……黒歌」

「っ!」

そう言いながらゆっくりと歩き出すとさっき以上の数の攻撃が連続で、

俺に向かって放たれてくるが鎧から発せられているオーラによって、

俺に直撃する前に全てかき消されていく。

この力で……この力で俺は取り戻すんだ!

「黒歌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「来るなぁぁぁぁぁぁぁ!」

彼女の手から妖術と仙術のオーラが混ざりあった物がとてつもない大きさで俺に向かって放たれ、

近くで見守っていたヴァーリも巻き込まれると察知したのか、急いでその場から飛び退いた。

だが、俺は目の前に迫ってくる巨大な塊に突っ込んでいく!

「おおおぉあぁぁぁぁぁぁ!」

『Explosion!』

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

籠手に全ての魔力を凝縮させると同時に爆発させると籠手が赤色の輝きを放ち始めた。

俺の最高の一撃を目の前に迫って来ていた塊に全力でぶつけると輝きが最高潮になり、

まるで霧が一瞬、晴れた時のように黒歌が放った一撃が消え去った。

それと同時に俺は鎧を解除し、そのまま黒歌に飛びつくように抱きしめた。

「黒歌……やっとこれた」

「……な、なに言ってるにゃ。は、離すにゃ!」

「絶対に離さねえ!」

俺は彼女が逃げないように今、持っている全ての力で彼女を抱きしめた。

「もう二度と離さねえ」

「離れないと……離れないと」

「俺……強くなるから。どんな奴が俺に襲いかかって来ても追い返せるくらいに強くなる。

そんでもってお前も護ってやる。だから……だからもう離れないでくれ」

最後はもう、大粒の涙を流しながら喋っていたからちゃんと彼女に伝わったのか、

分からないくらいにあやふやな言葉で彼女に話しかけた。

今、黒歌の首には俺があげたネックレスが見えている。

本当に俺のことを道具として扱っていたなら俺を殺しに来た段階で捨てているはずだし、

今この状況でもつけているなんてありえない。

「黒歌…………愛してる」

その言葉を言った瞬間、彼女からも抱きしめられた。

嗚咽を我慢しようとしても漏れだし、大粒の涙が俺の肩に零れ落ちているのが分かった。

力を緩めると涙にあふれている彼女の眼と重なり、思わず俺は顔を近づけると、

相手も同時に近づけてきて、そのまま綺麗に俺の唇と彼女のとが重なった。

やっと……やっと取り戻せたんだ。俺の大切な物を。

「出来ればその辺にして欲しいな」

すっかり忘れていたヴァーリの声が聞こえ、俺達は慌てて離れた。

「ヴァ、ヴァーリ……あんたは」

「お前の好きにすればいいさ。向こうに関しては放っておけばいいし、

組織から抜けて俺が引き抜いた連中とで世界の強者に会いに行くという手もある」

「い、良いのかよ」

「俺が組織に入った目的は強いものと戦えるかもしれないと思ったからだ。

事実、そう言う理由で誘われたしな……だが、どうやらそれは間違いだったみたいだ。

本当の強者と戦いたければ己の力で辿り着かなければならない……そう感じた。

カオス・ブリゲートを抜けるか否かについては向こうで決めればいい」

「……ヴァーリ。ありがとにゃ」

「礼を言われる筋合いはない」

黒歌が礼を言った直後、奴の真後ろに空間に横に亀裂が走り、

人二人が通れるほどのサイズにまで穴が開いた。

どうやらさっき奴が言っていたお仲間さんがヴァーリと黒歌を迎えに来たらしく、

裂けた空間の中に男性が一人いるのが見えた。

「じゃ……また今度」

「あぁ……また今度」

そう言い、俺は黒歌の手を離した。

彼女の手が離れても俺の心は以前のような変動を起こすどころか、

不思議なくらいに落ち付いていた。

黒歌は空間の裂け目に入った後、俺の方を向き、満面の笑みを向けると、

空間の裂け目の奥に入っていき、二人の姿が見えなくなったところで裂け目が完全に消滅し、

元通りに復元された。

「……終わったんだ……全部」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄様、早くしてください」

「わ、分かってる! お前こそちゃんと……できてるし!」

「私は兄様と違って前もって計画を立てていましたから」

「さ、流石はマイシスター!」

「あたりまえです」

全てのことにケリがついたあの日から時間も経ち、学校はすでに二学期を迎えていた。

以前までの重たい感じが嘘のようにからだから消え、それどころか今までにないくらいに、

清々しい毎日を送ることができているのも、あの時俺が彼女を取り戻せたから。

今日は久しぶりにあいつが部屋にやってくる。

「……少しトイレに行ってきます」

「おう!」

久しぶりに姉に会えるので相当緊張しているのかそう言って、白音が俺の自室から出ていき、

階段をドタドタと音を立てながら降りていった。

珍しいな、あいつが階段を降りる時に音を立てるなんて。

その時、俺の自室の窓がガラッと開いた音が聞こえた。

俺の家は夏休みに入った直後にすげえ変貌を遂げて高層マンションになっているのに、

良く窓から入ってこれるよ。

俺は今日もあいつに会えるのを嬉しく思いながら振り返ると

「にゃ~」

そこにはいつもの黒猫が鳴き声を上げて俺を見ていた。

これからも続いていくんだ……絶対に終わらない物語が…………兵藤一誠と……いや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――イッセーと黒猫の恋物語が




はい! ようやく終わりました!
長かった! まあ突拍子もなく終わりましたが綺麗に終われたと思います!
まあ、これからもどんどんやっていきますのでよろしくお願いします!
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