し、白音ちゃん!?
なんで戻ってきてるんだよ!さっき逃げたんじゃなかったのか!?
「もう止めてください!私ならどうなってもいいですから!
イッセーさんだけは見逃してください!」
白音ちゃんは泣きながら女に懇願していた。
「……いいわよ。こっちはあんたさえ殺せればそれで良いんだし」
「その前にイッセーさんの傷を治させてくれませんか?」
「…好きにすれば?」
白音ちゃんは女が俺から離れるのを確認すると走って俺に近づいてきて
無残な俺の右腕を仙術で自己回復力を高め始めてくれた。
「な、なんで戻ってきたの?」
「……家族を置いて逃げたくありません」
っ!…俺はまた白音ちゃんを悲しませてしまったんだ。
家族が消える悲しみは二度と味わいたくない。
それなのに俺は白音ちゃんに。
「…ごめん……ごめんな、白音ちゃん」
俺は泣きながら白音ちゃんに謝った。
「構いません。お兄様が生きていてくれれば…姉様もきっと」
白音ちゃんはそう呟きながら俺の傷に仙術を当ててくれる。
……でも、白音ちゃんはこの後どうなるんだよ。
俺の傷を仙術で治癒するって言ってもそんなゲームの世界みたいに
回復するわけじゃない。ただ単に俺の自己回復力を上げてくれるだけだ。
完全には治らないだろう。
そんなことはどうだっていい。
この女は…白音ちゃんを殺す気だ。
「はい、お終い。もう良いでしょ」
女は鬱陶しそうに言いながら俺たちに近づいてくる。
「はい……もう十分です」
「し、白音ちゃん…」
「あ、言っとくけどそこの人間も殺すから」
「っ!話が違います!私さえ殺せばそれで!」
「それはそれ。これはこれ、その人間は私に
その汚い手で汚した。だから殺す」
こ、こいつ!クズにも程があるだろ!
「ま、どうせ両方死ぬんだし。あの世で仲良くしていなさいよ!」
そのまま女は剣を白音ちゃんに振り下ろした。
ふざけんなふざけんな!立てよ!立って護れよ!
動いてくれよ俺の体!
俺は護らなきゃいけないんだ!黒歌も!白音ちゃんも!
2人とも大事な……大事な………大事な俺の家族なんだ!
その時、俺の腕が突然、赤色に輝きだし女を吹き飛ばした。
「きゃぁぁ!」
「な、なんだこれ」
徐々に赤色の輝きは消えていき、完全に輝きが消えた頃には
俺の左腕には、真っ赤な色をして手の甲辺りに宝玉みたいな
綺麗な色をした石がはめ込まれた籠手が装着されていた。
『おいガキ、名前は』
俺の頭の中に声が響いてくる。
一誠…兵藤一誠だ。
『そうか……力を貸してやる、目の前の奴をぶっ飛ばせ』
誰か分からねえけど力をくれるならなんだっていい!
『Boost!』
俺の腕に赤色の籠手が装着されBoostという音声が聞こえてくると
俺の体の奥底から凄い力が溢れ出してきた。
「お、お前神器(セイグリッドギア)持ちだったのか!」
「黒歌も!白音も!俺が護る!」
「殺す!神器(セイグリッドギア)持ちだろうが私を汚した貴様は殺す!」
さっきまで速過ぎて見えなかった剣が今では遅く見えて仕方がなかった。
「遅い!」
バキィィィン!
俺が籠手で剣を殴ると剣は木端微塵に吹き飛んで武器の使命を果たせなくなった。
「そ、そんなバカな…に、人間風情に私が」
悪魔の女は人間の俺に武器を壊されたことがショックだったのか
数歩、後ずさった。
『Boost!』
籠手からそんな音声が聞こえると、さらに俺の体の奥底から力があふれ出てくる。
…いける!
「お前は」
「ひっ!」
「逃げるな!」
女は翼を生やして逃げようとするが俺はその翼を掴んで無理やり
俺の方に引っ張って引き寄せた。
「俺がぶっ飛ばす!」
バコオォォォォォン!
女の顔面を赤色の籠手で殴りつけると女は地面を何回かバウンドして林の中に埋まった。
「これが…人間の……底……力…だ」
そのまま俺は意識を失った。
意識を失う前に一瞬だけ黒い着物が見えた気がした。
『さて、俺を目覚めさせたんだ。少し話をしようじゃないか』
「うおぉ!な、何だお前!」
突然、声が聞こえたかと思うと俺の目の前に真っ赤な鱗の巨大なドラゴンがいた。
『お前を今まで見てきたが99%煩悩で埋め尽くされている変態だな』
うっせえ!おっぱいを侮辱するって言うのか!?
おっぱいは夢がいっぱい詰まってるんだ!
『……よく聞け』
今の間隔は何なんだよ!
『だがそれは勘違いだったみたいだな。まさか、
一人の女を一途にも想う純情な奴だとは思わなかった』
お、俺が一途!?
『ああ、一途だ。見てるこっちが恥ずかしくなるくらいにな』
おいおい!ちょっと待て!
その言いぐさじゃ俺に…その…す、好きな奴がいるみたいじゃないか!
『なんだ?まだ気づいてないのか?鈍感な奴だ。
ま、それも面白い…相棒、俺の名はドライグ』
お、俺は兵藤一誠だ!
『力が必要になれば俺を呼べ』
そう言い残してドライグは目の前から消えて暗闇の中に溶け込んでいった。
「……ん?」
えっと……ここ俺の部屋だよな?
…うん、俺の部屋だ。俺のベッドだし俺の机もある。
そんな事を思っていると俺の隣からめちゃくちゃ良い匂いがしてきた。
……ベッドにこんないい匂いがする抱き枕なんか置いてあったっけ?
なんというか…落ち着くにおい?ほら、母さんに抱きしめられたら
小さい子は落ち着くじゃん?そんな匂い。
……ま、まさか!
俺はオカンに抱きしめられてるのかと
思い慌てて首を横に向けるとそこには
「にゃん♪起きたかにゃん」
うん、猫耳、尻尾をつけた黒歌がいた……く、黒歌!?
「く、黒歌!?いつ来た、っ!」
俺は慌てて起き上がると腕に針で刺しているようなチクチクとした痛みが走った。
「まだ腕は動かさない方がいいにゃん。結構深かったから」
黒歌は俺の腕の包帯を変え始めた。
……何日振りだろうか。こいつを見るのは。
「なあ、黒歌。今までどこに行ってたんだ?」
「……猫は気が向くままに行くにゃん」
「黒歌」
俺は黒歌の手を握って彼女を見つめた。
「教えてくれ。この前会った悪魔がお前が主を
殺したって言ってたんだ。…一体何が起こってるんだ」
俺がそう問いかけても黒歌は顔を俯かせて何も言おうとしない。
黒歌……お前を知りたいと思うのはいけないのか?
お前の力になりたいっていうこの感情は……ダメなのか?
「イッセー……貴方にだけ真実を伝えるにゃん」
黒歌は悲しそうな目をしながら俺に今起きていることを話してくれた。
こんばんわ、感想くださいね~