キノの旅(✕フーと散歩) -the Wonderful Days- 作:水霧
バタバタと倒れた。七発の銃声とともに。
「……」
黒い衣服を纏った男はあっけからんとしている。
「なるほど」
キノは納得するように頷いた。
「キノ、今まで以上に早かったよ! 最高記録じゃないかな!」
「ずいぶん嬉しそうだね、エルメス」
「あ、ありがとうございます……」
黒い衣服を纏った男はおそるおそる礼を告げた。
「彼らが必死なのが分かりました。銃声がしても、こうして微動だにしないのですから」
キノが振り返ると、地べたに座って一心に祈っている人たちがたくさんいた。年齢や男女も様々で、中には子供までいた。
男もそちらを眺め、微笑んでいた。
「旅人さんはとてもお強い方なのですね。神様もびっくりするほどです」
「そういうことも分かるんですか?」
「言ったでしょう? あらゆる所に神様はいらっしゃるのです。こうしている間にも、様々な場所から私たちを見ておられるのですよ。……さて、ご遺体を弔うとしましょう」
「え?」
男は部下と思われる数人の若人たちを呼び集め、元人間を運んでいった。現場は水で洗い流したり、ブラシでこすり落としたりして、跡形も無く処理していく。
手際よくこなしていくので、キノは思わず尋ねた。
「こういうことはよくあることなのですか?」
「いえ。そんなにありませんね」
「その割には、テキパキとやっているように見えます」
「我々は遺体を取り扱う専門家です。神様の元へ送り届けるために、悪人と言えども綺麗にさせていただいています」
「へー。あのおっちゃんたちでも天国に行けるんだねえ」
エルメスが辛辣に言い放つ。
「欲しがる気持ちが強すぎるのは、それだけ信じていることだと思うのです」
「? どういうことです?」
「例えば、旅人さんが誰か想い人ができたとしましょう。その人を好むようになったのは、人柄や成り立ちが自分の理想に近いと信じているからでしょう? だから人は価値観の不一致や性格のズレで苦悩する。自分の理想より外れてほしくないために縛り付けるのです」
「つまり、あの方々は欲しかった物が売れる物だと信じた、つまり神様を信じていたことに変わりない、ということですか?」
「その通り。旅人さんは実に聡明な方です。どのような形でも“信じる者は救われる”、です」
キノは手元のパースエイダーを見た。長い間使い古されたであろうリヴォルバータイプのパースエイダー。
きゅっと握りしめて、所定の位置に戻した。
「ところでキノ」
「……なんだい?」
「キノは一体誰を信じて撃ったの? 自分? そのパースエイダー? それとも……」
「……」
ちらりとエルメスに見やると、くすりと微笑んだ。