ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第十一話

俺が攻略をしなかったのはただアルゴ達に言われたから。

言われて止めただけで別に攻略自体をやるなとは言われていない。

五十層がきつかったのはクォーターポイントと呼ばれる階層だったから。

五十一層のボスはさすがに弱いだろうと思い俺は五十一層迷宮区を駆け抜けている。

 

「せぇぇぇやぁぁぁ!」

 

邪魔をするモンスターは斬って刺して倒す。

ただそれだけをしてこの世界を進んだ。

死なないために強くなってソロを続けた。

自分が狂えば狂うほどに俺の剣戟は早く、より強く。

単調だろうが倒せれば良い。

モンスターなんて0と1だけのデータで作られたものなのだから。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

俺が五十一層のフロアボスの扉前に辿り着くと大人数が立ちはだかるようにプレイヤーが立っていた。

攻略組として動いているプレイヤーで、中にはキリトやアスナやユウキなど異名を持つ実力者もいた。

 

「・・・止めるか」

 

「ああ。死ぬつもりの奴を見捨てるなんて出来ない」

 

「・・・死ぬつもりはないけど」

 

俺が先に進もうとすると皆が扉に行かせないように妨害をする。

それが俺にはうざったく見えた。

 

「・・・どいて」

 

「嫌だよ。ここは通さない」

 

「ボクも絶対に通さない」

 

「・・・そうか・・・ならば」

 

 

「ついでだ。ここで消えろ、《笑う棺桶》」

 

俺が後ろを振り向いて飛んできた投げナイフを全て切り落とすと超強力な麻痺毒ナイフを投げて一部のプレイヤーが当たって物影から倒れて出てくる。

それらは全てSAO内で名が出ているレッドギルド《笑う棺桶》。

《隠蔽》で隠れていたみたいだが俺の《索敵》とレベル差で全て看破済み。

 

「Oh・・・ばれてたとはなぁ」

 

「・・・何のよう」

 

キリト達攻略組はいきなりの登場でかなり動揺しているけれど俺は自然体で話す。

こういうのはあまり悟られないようにした方が良いし、結局逃がすつもりもない。

 

「なに、謎だらけのローブ様の正体を暴きたいだけだ」

 

「・・・死にたいならそうすればいい」

 

過信はしない。

己の力を過信してミスなど二流以下だ。

相手が格下であろうと俺は全力で剣を向ける。

SAOでもそれは変わらず、邪魔をするのなら切り捨てるのみ。

 

「・・・Shck、撤退するぞ」

 

倒れて動けなくなったプレイヤーを放置して逃げれる物は撤退をして逃げていく。

俺が投げたナイフには高レベルの麻痺毒が塗られておりアイテムの使用不可状態となっている。

最高レベルともなれば右手も頭も動かせない凶悪仕様だが使うほどでもない。

 

「・・・で、攻略組はどうするの」

 

「っ・・・先に監獄へ送ります」

 

アスナが指揮で扉の妨害が無くなると俺は回復結晶を2つ取り出していつでも使えるようにしてから大扉を開けた。

 

「ユキ!」

 

「ん・・・」

 

「死なないで、帰ってきてよ」

 

「・・・」

 

俺はユウキの返答に何も言わず、第五十一層ボスをソロ攻略すべく愛剣を引き払って駆け出した。

それは大扉が閉じると同時で、キリト達がこっちに向かって走り出していたが間に合わない。

 

「・・・生きてたら・・・いや、もういいか」

 

「GKAAAAAA!!」

 

第五十一層《ワイバーンタイラント》。

飛行型モンスターで、飛ぶ手段が無いSAOではかなり時間もかかる。

だがそれがどうした。

飛ぶ手段なんて無くても周りには壁や柱がある。

壁走りをして壁を蹴れば少しの間だけだが空にいれる。

ソードスキルを空中で使えば、さらに推進力も得れるのだから。

 

「さて」

 

霊想刀を左手、右手と持ち替えて目が合うと一気に駆け出した。

空を自由に飛び回るワイバーンを狙うは翼。

翼膜が無くなれば飛べなくなるからそれを狙って下に引きずり落とす。

壁を走って蹴って《片手剣》スキル『ヴォーパル・ストライク』を発動させて、一気に突き進む。

空中ソードスキルは動きがほぼ固定される空中でスキルの立ち上げが難しいだけで出来ないわけではない。

空中で立ち上げたスキルはワイバーンの翼に向かって進み、一気に加速した。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「GUGYAAAAAA!!」

 

飛ぶための翼がやられたことによる痛みなのかワイバーンは悲鳴をあげると高度が少し落ちる。

その時に口から見える炎がこの先の事が見える気がした。

 

「ん・・・」

 

片翼を失おうともまだ飛べるらしく、高度を少し落として口から高圧火炎ブレスを放って来る。

それを俺は武器を回転させ風の盾で一気にダメージを減らす。

《片手剣》スキルと《武器防御》スキルの同時習得でなければ出来ない芸当だが、全てのブレスにおいてダメージを大幅にカットできる《スピニング・シールド》はワイバーンの火炎ブレスを大幅にカットして守りきった。

 

「・・・なら、次はこっち」

 

一回目と同様に壁走りで高度を上げる。

ワイバーンも馬鹿じゃないようで今度はかなり距離をとられていた。

だが、まだ甘い。

対策なんて俺はいくつも考えた。

何十と束ねた紐をピックと繋げてそれを柱に刺すと壁を蹴って、そのまま空でブランコのように飛んだ。

一番遠く高い地点で手を離すとワイバーンの真上。

その場で《バーチカル・スクエア》を放ち一連撃だけでも当てれるように振るった。

 

「GUAAAAAA!!」

 

それが背中に一発、翼に一発当たったようで先程よりも強い悲鳴を上げた。

翼膜が傷つけられ飛ぶことが出来なくなったワイバーンは重力に従うように落下して地面に叩き付けられる。

 

「これで、終わりだぁぁぁぁぁ!!」

 

画面を操作、《クイックチェンジ》で予備武器を取り出すと二刀の構えを取る。

右手で《ヴォーパル・ストライク》を立ち上げると落ちていったワイバーンに向かって落ちながら放つ。

落下による威力が追加され、今までのよりも大きくダメージを与えれたそこに左手の呼び出した武器で《ホリゾンタル・スクエア》で頭、背中、左右の翼と切り付ける。

 

「ーーーーー!!」

 

HPが無くなったワイバーンはそれでも必死に攻撃を加えようとして、データの破片になる前に炎ブレスを零距離で俺に放った。

 

「わっ・・・!」

 

さすがに俺も反応出来ず、炎は俺に当たりワイバーンはポリゴン片となって消えた。

最後の攻撃は俺の愛用していたローブを消し炭にしていっただけだが、それでも死ぬ前に一矢報いろうとしたあのワイバーンは強かった。

 

「ぁ・・・ふ・・・」

 

リザルト画面が表示されると封鎖されていた大扉が解除され、プレイヤーの影が見えていた。

 

「・・・待ってた・・・のか」

 

そこには攻略組メンバーが立っており、フロアの中心で疲れて座り込む俺を見つめていた。

だが久々に動き回って予想以上に疲れていたのか俺は視界が暗くなりながら意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初は突然だった。

アスナと一緒に寛いでいるとキリトからメッセージが飛んで来ていて、それがアスナにも届いていた。

気になったので内容を覗いてみれば。

 

『ユキが第五十一層をソロ攻略しようとしている。すぐに来てほしい』

 

ユキとは第一層に会ったきりだ。

最初は無愛想で可愛いげが無いと思っていたけれど、話していけば段々分かった。

アスナも最初はボクと同じだったみたいだけど、話していけば子供らしいところもあるって言ってた。

だからこそボクはこの内容に驚きと困惑があった。

ユキの身長は幼いボクよりも小さい。

つまり、ボクよりも年下でソロをしている。

そんな強さが気にもなってユキという少年に惹かれる理由でもあった。

 

「アスナ、行こう!」

 

「うん!私攻略組の人に指示して来るね!」

 

ボクはキリトと同じソロ。

だからこそソロの危険性を分かっているし、ユキがどれだけ危ないことをしているかも分かっていた。

 

「・・・よし。転移、第五十一層!」

 

転移門で最前線の第五十一層の迷宮区に行くと先に来ていたキリトと合流した。

会話をするよりも早く先に中に入ってユキを止めないといけなかったからすぐに移動した。

幸いにもボクの敏捷による速さがキリトと殆ど同じぐらいで迷宮区の突破もちょうどよく行けた。

そうしてフロアボスの大扉に到着するとまだユキは来ていなかったようで、少し安心した。

 

「ねぇ、キリト。どうしてこうなったの?」

 

「ただの早とちりなら良いんだけどな・・・。少し前にユキと居たんだ。その時に別れ際でさ『消えるのなら独りで消えるよ。死ぬ時も』って言われて俺の中で嫌な予感がしたんだよ」

 

「もしかしたらこの行動は意味が無い・・・ってこと?」

 

「そうかもしれない。でも、誰もユキを見ていなかったら・・・誰にも知られずに死ぬんだ。それってすごく寂しいじゃないか」

 

「そう・・・だね」

 

キリトのように名があって異名がつけられているのなら何かしらあるのかもしれない。

ボクだって同じだ。

でもユキはどうなんだろう。

アルゴさんから聞いたけどフレンドはアルゴさん一人でギルドは無所属、パーティーも組まない。

ただ独りで攻略を続けて、死んだら静かに人々の記憶から消えていく。

それはとても悲しくて聞いているボクは凄く嫌だった。

ボクはユキみたいに戦えるように強くなった。

【絶剣】っていう異名が付くほどに。

でも実際はキリトより弱くて、ユキは決して追いつくことは出来ない。

強い人と戦うのがボクは好きで、何に対しても強くあるユキがボクにとって尊敬できて惹かれていった。

 

「ユウキー!キリト君ー!」

 

アスナが走ってきて後ろには攻略組の人達がやってきていた。

何もないように振る舞おうとするけれどボクの中ではユキという少年が大きくなっていた。

これがどんなものなのかも分かっていたし、それをユキに言うべきなのかも悩んでもいた。

でもボクはユキに対して友愛なのか親愛なのか分からなかった。

すると奥から一人のプレイヤーがこちらに向かって走ってきていた。

ボクよりも小さい身長でローブを着るユキはある意味目立ちやすい。

それでも目立たないのはなんでだろう。

 

「・・・止めるか」

 

「ああ。死ぬつもりの奴を見捨てるなんて出来ない」

 

「・・・死ぬつもりはないけど」

 

ユキがそういってもキリトのあの言葉を聞いてしまうとユキが死ににいくんじゃないかって思ってしまう。

誰だって死ぬところを見たくはないから。

 

「・・・どいて」

 

「嫌だよ。ここは通さない」

 

「ボクも絶対に通さない」

 

「・・・そうか・・・ならば」

 

 

「ついでだ。ここで消えろ、《笑う棺桶》」

 

だからこそユキという無謀なことをやろうとしていたプレイヤーにボク達は執着しすぎて周りの警戒を怠っていた。

ユキの後ろから飛んで来る投げナイフが全て切り落とされて、お返しとばかりに投げナイフを大量に投げていた。

 

「Oh・・・ばれてたとはなぁ」

 

「・・・何のよう」

 

ユキが言った《笑う棺桶》は情報屋でも話題になっているレッドギルドでSAOの快楽殺人者が集まる場所だと聞いた。

何故そんなギルドがこの場所に来ているのだろうと思っているとユキは分かっていたかのように自然に話す。

 

「なに、謎だらけのローブ様の正体を暴きたいだけだ」

 

「・・・死にたいならそうすればいい」

 

「・・・Shck、撤退するぞ」

 

「・・・で、攻略組はどうするの」

 

「っ・・・先に監獄へ送ります」

 

オレンジやレッドのプレイヤーは第一層の《黒鉄宮》という場所に送られる。

攻略組の指揮官のアスナが動いているとユキが動いて大扉を開く。

 

「ユキ!」

 

「ん・・・」

 

「死なないで、帰ってきてよ」

 

「・・・」

 

何も言わなかったユキが凄く悲しかった。

何か一言でも良いから言ってほしかった。

 

「ユキ、やだよ!行かないで!」

 

ボクの声はユキに届いていなくて、無慈悲に大扉は閉じられた。

この時にはっきりと分かった。

ボクはユキが好きなんだって。

 

「ユキぃ・・・」

 

ボクはただ、何も出来ずにユキが戻って来ることしか出来なかった。

それが悔しくて、追いつけるように強くなったのに。

これじゃ何も変わらないじゃないか。

第一層の時みたいにただ見ていることしか出来ない自分が嫌だったのに。

 

 

 

ただ待つことしか出来なかったボク達は突然として大扉が開いて中を見ようとした。

フロアボスの大扉はボスの討伐か、プレイヤーの全滅どちらかで開くから。

 

「中にいる。生きてる」

 

キリトが中の事を言うとボクは中に誰よりも入ってユキを探す。

するとフロアの中心で長い黒髪の女の子が倒れていた。

 

「・・・ユキ?」

 

ボクの後から入ってきたキリトやアスナもその女の子を見ると少し驚いていた。

ユキが入って、中には女の子が入っていたのだから。

 

「ん・・・ぁ・・・」

 

すると女の子が気がついて辺りを見渡した。

そして見つめられていると分かると女の子は画面を操作し始める。

 

「・・・ローブ、無くなった・・・か」

 

「ユキ・・・なの?」

 

「ん・・・」

 

聞いたらしっかりと頷かれてこの子がユキなんだと分かった。

でも男の子だと思っていたユキは女の子で少し変だと思った。

アルゴさんはユキ坊と言っていたけれど女の子ならちゃん付けにするはず。

なら・・・ユキは男の子だけど見た目は女の子っていうことなのかな。

 

「・・・なに」

 

あまり姿を見られるのが嫌みたいで舐め回すような視線を受けているからかユキは少し拒絶しているように感じれた。

 

「・・・い、いや・・・今までのイメージと違って」

 

「私も・・・」

 

「・・・そう。もう良い?」

 

やっぱり嫌みたいで姿を早く隠そうとしていたからボクのストレージから代わりのローブを取り出してユキに着せた。

 

「代わり・・・だけど、どうかな?」

 

「ん・・・大丈夫。ありがとう」

 

ユキが立ち上がると足がふらついていて凄く危なっかしく見えた。

その足取りで五十二層へと繋がる扉に向かっていた。

見ていて不安にもなったのでボクは一緒に着いていった。

 

「一緒に行こう?」

 

「・・・なんで?」

 

「見てて危なっかしいのと倒れて不安だから」

 

「・・・いらない」

 

「ボクがやりたいの。駄目?」

 

「・・・好きにすれば」

 

ユキはこうして話せばちゃんと分かる。

素直にならないだけでそれがわかれば会話は出来るのだから。

他の人はユキを理解しようとしてないから分からないだけなんだ。

 

「ぁ・・・」

 

階段を昇っているとユキの不安な足取りでこけそうになっていたのをボクが受け止めて持ち上げた。

それに身じろぎしていたけれどすぐに収まった。

 

「・・・何がしたいの」

 

「んー?ボクがやりたいからだよ?」

 

「・・・そう」

 

こうして持ち上げるとユキは凄く軽くて、ユキが使っていたローブじゃないからかちゃんとユキの顔も見える。

 

「ねー、ユキ。どこで休んでるの?」

 

「ん・・・何処でも」

 

「む、そんなんじゃ疲れ取れないよ?しっかり寝ないと」

 

「・・・別に何処でも良い」

 

「じゃあ・・・ボクと一緒に寝る?」

 

「・・・なんで」

 

「一緒の部屋なら寝たことも分かるでしょ?それにボクは基本的に宿屋だから宿代浮くし」

 

「・・・好きにしたら」

 

「うん。そうするよ。主街区の転移門開いたら宿屋行くけど・・・下りたくなったら言ってね」

 

「ん・・・」

 

やっぱりユキは素直にならないなぁ。

何かあったんだろうけどボクにそれを容易く聞くのは許されない。

無関心というか無関係を貫くけどユキは拒絶するころははっきりとしていたらしいし。

それにしてもユキって軽いなあ・・・何食べたらこんな軽くなるんだろ?

 

「ほら、主街区だよ。転移門の有効化しないと」

 

ここに来るまでユキは一切下りていない。

やっぱり素直じゃないだけでボクとのこういうやり取りは嫌じゃないんだ。

転移門に着くとすぐに有効化して近くの宿屋に入って一人部屋を取ると部屋に入る。

 

「ほら、着いたよ?」

 

「ん・・・」

 

「・・・どうかした?」

 

部屋に入るとユキの様子が落ち着きが無くなったようにソワソワとし始めた。

ほんのりと顔も赤くなっていて、どうしたんだろ?

 

「・・・胸、押し付けられたら・・・その・・・」

 

そういえばSAOってリアルの身体を再現しているから、そういうこともできるのかな?

・・・なんか駄目なことを考えてしまいそう。

 

「・・・ん・・・ふぁ・・・」

 

ボクが変な妄想に耽っているとユキから小さな欠伸が聞こえて目があまり開いていなかった。

 

「眠たい?」

 

「ん・・・」

 

「一緒に居てあげるから寝ていいよ。ボクが居てあげる」

 

こうして見ればユキが弟みたい。

すぐに寝ちゃってボクの服を掴んで離さない辺り寂しかったのかな?

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

「ふふ。おやすみ、ユキ。よく頑張ったね」

 

聞こえていないかもしれないけれどそれでも褒めてあげる。

ボクよりも幼いユキがSAOの半分近くをソロで攻略してる。

普通なら怖くて投げ出しても良いのにユキはそれをせずにただ一人で戦った。

そんなユキを褒めてあげたいし、頑張ったねと言ってあげた。

起きてるときは恥ずかしいけれどね。

 

「んー・・・ボクも寝ようかな・・・」

 

時刻を見れば夕方辺りで少し早いけれど寝ることにした。

ちょうど抱き心地が良い子がいるから優しく抱きしめてボクはそのまま眠った。

 

 

 

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