ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第十二話

夢を見た。

それはローブを着た小さな子供が巨大なモンスターに立ち向かう夢。

無謀にも見える戦いをただ何も出来ずに見ていることしか出来ない。

子供が持つのは右手にある武器だけ。

それは蒼い刀身で、反射する光が蒼く見える。

でもそれだけであり盾もなく、一本の刀があるだけ。

モンスターは子供を喰らおうとすると子供は刀を真っすぐ相手に向けて構えて、右足を前に左足を後ろに。

 

「・・・《秘剣・燕返し》」

 

その瞬間ボクは一本の刀から三つの斬撃が見えた。

それは不可能の動きで、常人では有り得ない動き。

だけどあの子供はそれを成し遂げた。

三つ放たれた斬撃にモンスターは成す術もなく当たって消えていった。

 

「・・・君は、何を見てきた」

 

いきなり言われた事にボクは何も分からなかった。

だけど悲しいような声色で寂しく感じれた。

 

「俺は人の醜さだけを見てきた。普通の子のようにはなれなかった」

 

その声は女の子のようの高くて、幼さが抜けていない声。

 

「君のように人の醜さ以外も見れたわけじゃない。良い人がいたわけでもなく、ただ人の醜悪な所を見てきた」

 

それはボクが知る声で、大好きなもの。

ローブを着ていて小さい身長はボクが目指す頂きにいるもので誰よりも強く、その歳には合わない思考の持ち主。

 

「故に俺は人が嫌いだ。人は己のためにしか動けず、利益がない行動に人は動けない」

 

 

「だが・・・君は違ったらしい」

 

 

「なんで君は俺のために動ける。人と関わりを持たないようにしている俺に」

 

その言葉はボクを試しているような感じ。

ここで間違えれば二度と彼と一緒にはいれなくなる、そんな感じがした。

 

「ここで言わなくとも良い。ここは夢の中、言わば君の夢に干渉しているだけだからな」

 

夢と言われてもそんな感じがしない、現実味を帯びた夢にボクは何も言えない。

だけどあの時感じた感情は間違いじゃない。

ボクが抱いた大切なものだから。

 

 

その時、ローブは消えて姿があらわになった。

それは腰にまで届き、吸い込まれるような黒色の長い髪の毛。

以前は前髪に隠されて見えなかったけれど、今ははっきりとボクを見つめる蒼い瞳。

男の子とは思えない美しい容貌と誰にも理解されず強くなり続けたその強さ。

それが《ユキ》という少年で、ボクが大好きな人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると夢の中のような景色じゃなく、寝る前の景色だった。

 

「ん・・・」

 

身じろぎしているのはユキで、ボクに抱き着きながら寝ていた。

それを見て少し嬉しいとも思えるし、今まで戦うところしか見なかったから新鮮でもあった。

 

「可愛いなあ・・・」

 

今のユキは顔も完全に隠れるローブじゃなくその辺で数コルで買える麻布のローブだ。

だからユキの寝顔もバッチリ見える。

 

「・・・突いても起きないかな?」

 

寝ている大好きな人を目の前にボクは少し悪戯心が生まれてしまった。

あまり触れることも無かったのと、SAOのアバターリアル再現度が高く、それは肌の柔らかさや肌色、背中の写真も取れば背中まで再現してくれる。

髪の毛も同じだけれどSAO内では髪の匂いまでは出来ない。

 

「・・・えい」

 

悪戯心に負けたボクはユキの頬を軽く突いた。

すると幼い子特有の柔らかさともちっとした感触でもう少し触ってみたかったけれど自重する。

あまり長く触ると異性同士だと《倫理コード》というハラスメント防止システムがあって触られた人はボタンを押せば触った人を問答無用で《黒鉄宮》行きとなる。

説明すればユキは許してくれるだろうが、基本的に人嫌いだから牢獄には行きたくない。

だけど寝ているユキからは凄く良い匂いがするのとさっきの肌の柔らかさから現実世界でもかなり気をつけているのかも。

 

「ん・・・ぁ・・・?」

 

ボクの悪戯からか、ユキから小さな声が出る。

まだ眠たそうにしてて目を擦ってるけど右手だけはボクに掴まってる。

 

「おはよ、ユキ」

 

「ん~。おふぁよ・・・」

 

「まだ眠たいの?」

 

「ん・・・」

 

「寝てても良いよ?」

 

「うん・・・」

 

今の時間は9時ぐらいで起きないとなんだけど今のユキはかなり疲れ切ってる。

そんな状態を放っておけないのと、こうしてユキを独占したいというのもある。

 

「ね・・・ユウキ」

 

「んー?どうしたの?」

 

「・・・ん、なんでもない。おやすみ」

 

「そっか。おやすみ」

 

そういってユキはボクに身体を預けるように静かに寝はじめた。

以前ならこんなこと出来なかったのに、今じゃ一緒にこうやって寝れる。

今思えば不思議だ。

ユキの人嫌いは警戒心と信用しないからこそ成り立っていた。

なのにボクに対しては一切の警戒をしない意思表示である無防備な睡眠を取っている。

果してどこまでがボクを信じているのか、それが分からなかった。

 

「もう10時・・・か。このまま置いていけないし・・・抱っこしていこうかな」

 

右手を振ってメニューを出すとメッセージが数件ほど来ていてアスナとアルゴさんからだった。

アスナは昨日の事だろうけれど、アルゴさんはなんでだろう?

気になったので開いてみた。

 

『ユキ坊はユーちゃんといるだろうから、一緒におれっちがいる三十五層の《風見鶏亭》に来てほしいんダ》

 

風見鶏亭はボクも知っている。

あそこでだされるデザート類が美味しくて尚且つ値段も安めだから通ったときはよく買って食べていた。

でも・・・なんでボクがユキといるのを知っているんだろ?

 

「・・・とりあえず、行ってみようかな」

 

アルゴさんから頼んで来るのは珍しいのでユキを抱っこして宿屋を出た。

ボクはSAO内では名の知れたプレイヤーだからユキを背負っていると少しざわついていた。

それと同時に転移門を占領している男の人もいる。

 

「どうしよう・・・」

 

このまま押し通っても良いがユキが起きてしまうかもしれない。

仕方ないけれど転移結晶で移動するしかないかな。

 

「転移、三十五層」

 

転移結晶を掲げて転移先を言うと結晶から溢れる光がボクとユキを包んで三十五層へと転移させる。

基本的に街名を言わなければ主街区固定だったりする。

デザート類を食べによく行っていたのもあり、慣れた動きで宿屋でもある風見鶏亭に入ると端っこにアルゴさんとツインテの女の子が一緒に座っていた。

 

「ン、来たみたいだナ」

 

「えっとこの方が?」

 

「初めましてかな。ボクはユウキ。《絶剣》って呼ばれてるね」

 

「あのユウキさんですか!?」

 

「う、うん」

 

「とりあえずここじゃ目立つから部屋に入るゾ。ユキ坊が起きちゃうからナ」

 

アルゴさんの計らいでそこそこ広めの部屋に入るとユキを下ろしてベッドに寝かせた。

 

「あ、私はシリカです!危ないところをアルゴさんに助けていただいて・・・」

 

「そうなんだ?危ないところってなんかあったの?」

 

「・・・私ビーストテイマーなんです。本当なら使い魔のピナもいるんですけど・・・」

 

「アルゴさんが呼んだ理由がこれだったり?」

 

「そうだゾ。おれっちもさすがに使い魔蘇生アイテムは聞いたこともないんダ」

 

「ん・・・」

 

シリカさんの事を聞いていると寝かせていたユキが起きてぼーっとボクを見てくる。

夢の中でははっきりと目が見えたけれどこっちじゃ前髪が長いから見えない。

 

「ビーストテイマー・・・?」

 

「は、はい」

 

「・・・《プネウマの花》が四十五層にある。持ってるけど・・・貴重すぎて自分の以外は少し・・・」

 

「・・・?ユキってビーストテイマーなの?」

 

『にゃ~』

 

ユキがビーストテイマーだと証明するものがローブから這い出てきた小さな猫。

完全に目が覚めていないからか、猫がユキの頬を舌で舐めててくすぐったそうにしてる。

 

「猫・・・?」

 

「ん・・・ミア。あげないよ」

 

「ユキ坊、眠いんじゃないのカ?寝てても良いんだゾ?」

 

「大丈夫・・・ユウキのおかげで寝れた」

 

「なら良いんだけどナ。それで《プネウマの花》なんてものがあるのカ?」

 

「ん、使い魔蘇生アイテム。四十五層の最東北端にある石段に《心》アイテムを持ったビーストテイマーが行くと花が咲いて入手できる」

 

「あ、あの・・・私、レベルが46です・・・」

 

ユキが言う階層は四十五。

SAOでは階層+10が安全確保が出来るとされていてシリカは少しレベルが足りない程度だった。

 

「ん・・・じゃあ、余り物でよければ押し付・・・あげる」

 

「ユキ、今押し付けるって」

 

「気のせい」

 

ユキがトレードを開くとほぼ全ての部位の装備品がずらりと並んでいてボクが見たことのないものばかりだった。

 

「レア度が16ですか!?こ、こんなの貰えません!」

 

「・・・俺ね、男で・・・防具が女性専用だから持ってても売るしかない」

 

「え、えっと・・・」

 

シリカさんはボクとアルゴさんにどうしたらいいかのような目線を送って来ていて、別に問題はないとは思った。

ユキがいうように男性アバターが女性専用防具を持っていても意味はなく装備が出来ない。

売る方法しかないのでストレージの圧迫にもなるし。

 

「じゃ、じゃあ頂きます・・・」

 

「それらで・・・15レベルぐらいは底上げできる。あとは道中モンスターを倒せばいい感じかな。ついでに花関連はやることあるし」

 

「やること・・・ですか?」

 

「ん・・・まぁ気にしなくて良い。勝手に俺がやる」

 

恐らくユキが懸念しているのは花なのかも。

アルゴさんが聞いたことがないのはまずSAO内にビーストテイマーが少なく、それでいて《心》アイテムを持った状態で四十五層の石段に行く条件が分からなかったからだろう。

何故ユキが知っているのか不思議だけれど、それだけ珍しいのなら狙う人もいる。

四十五層のモンスターは女の子泣かせばかりでボクも初見は泣きかけで倒してたなぁ。

 

「・・・ユウキ?どうかしたの?」

 

「へっ?ううん、なんでもないよ」

 

「ん・・・そう。今日はずっと寝る。おやすみ」

 

ユキが寝ようとするとボクの手を握りながら眠りについた辺り、信用されてるのかな?

凄く嬉しいしアルゴさんも意外そうに見てる。

 

「ユーちゃん。ユキ坊の事頼んだヨ?」

 

「えっ?ボクが?」

 

「ユキ坊がここまで安心してるのはユーちゃんが居るからだと思うヨ。理由は知らないけどナ」

 

「ユウキさん、その子って・・・」

 

「ん・・・?あ・・・えっとこの子はユキって言って攻略プレイヤーだよ」

 

『にゃ』

 

「・・・猫」

 

「おれっち、触りたくなるナ」

 

『にゃっ』

 

初めて見たけれどユキが飼い馴らした猫は凄く可愛くてボクの膝の上で丸まって寝てしまった。

話し合いもこれで終わることにして各自この宿屋就寝となった。

ボクもユキと一緒に寝ること前提になってたけれど猫はシリカさんの所で寝るみたい。

アルゴリズム?から離れた行動らしいけれどよく分からないな。

 

「ん・・・」

 

「ボクもぐーたらと寝ようかな」

 

あまりやらないけれどたまには寝てばかりの日も良いかもしれない。

ユキと一緒なら安心して寝れるし、抱きしめれるから。

 

「おやすみ、ユキ」

 

優しくユキを抱きしめてボクはアラームを設定するとお昼寝で一緒に寝ることにする。

今度は良い夢が見れるといいな。

 

 




この話で書き溜めが無くなったため、投稿が遅くなると思います。
出来るだけ早くしますがやる気次第なので悪しからず。
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