ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第十三話

 

 

「う~ん・・・」

 

安らいでいるような声に殆ど寝ていた俺は目を覚ました。

すっかり暗くなっていて、ベッドにはアルゴやユウキに見知らぬ女の子が寝ていた。

 

「・・・あの子は確か・・・竜姫だっけ」

 

中層プレイヤーで人気を博している女性プレイヤーがいるのは知っていて、ビーストテイマーの話もうっすら起きたときに聞いていた。

《フェザーリドラ》という蒼い小さなドラゴンを手懐けた事で有名でもあったし。

ミアがあの女の子の所で寝ているし、そのまま起こさないで出たのが良いか。

 

「ストレージ・・・空けなくて良いか」

 

女性専用防具なんて俺からすれば宝の持ち腐れになるからこの子にあげれてちょうど良かった。

ストレージを結構喰っていて邪魔だったし。

 

「ん・・・どうしよう」

 

いままでならこのまま放って外に出ても良かったけれど、それをすればユウキに泣かれるか怒られる。

 

「・・・メッセージ残せば良いか」

 

少し外に出る旨をメッセージでユウキに送ると部屋を出てフィールドへと出る。

夜の戦闘はモンスターのアルゴリズム強化、ステータス強化等がある分、倒したときの報酬も美味しくなる。

俺のLvは108ほどでここの階層は確か三十五層のはず。

Lv差があると入手経験値量もばらつきがあるからここいらでレベル上げはやらない。

だけどスキル熟練度は違って、使用してヒットすれば上がっていくからひたすら倒すしかない。

それはLv関係ないからどこでも出来るし。

 

「ん・・・」

 

いつの間にか解放されていたユニークスキル。

製作者側だから分かるけれど、俺のは必ず決まっていた。

《秘天剣》スキルが俺のID自体に関連付けられたユニークスキル。

これだけ俺が最初から作っているから茅場も中身を知らない秘匿スキル。

装備メニューで左手に『エリュシオン』を装備する。

五十一層ボスのLABで黒紫の片手剣。

霊想刀よりは性能が劣るけれど元々あれはデバッグ用装備だから仕方ない。

 

「・・・よし」

 

フィールドを駆け出すとモンスターの標的を俺に向ける。

ひたすら走ってターゲットを俺に向けて後ろを向けば様々なモンスターが合わせて20体。

普通ならこの状況は逃げ出すだろうが俺は違う。

霊想刀とエリュシオンを同時に持つとその場で一気に回転する。

《秘天剣》スキルは特徴としてスキル発動時のエフェクト系を一切表示しない。

モーションカットが出来る霊想刀があれば、普通の攻撃がスキル攻撃同然にもなる。

 

「せぇぇやぁ!」

 

一気に回り、風の暴力が俺を中心にして先ほどのモンスターが一気に消し飛ばされた。

《秘天剣》スキル『竜巻旋風』。

今思えばこのスキル名は無いなと思いながら、発動を終えた。

《秘天剣》は二刀流装備だから慣れるまで難しいけれどその分、ダメージ量は効率よく与えれるようになる。

 

「・・・はぁ」

 

このユニークスキル自体にパッシブスキルで《武器防御》や《弾き防御》などの補正がかかって、ステータスに自身のLv依存で倍率がかかるようになってる。

これだけでLvでいえば180ぐらいの火力は出せているけど、慣れてないから思う存分に振るいはしない。

 

「ん・・・何か引っ掛かった?」

 

《索敵》スキルによってマップに一つだけ表示されて、気になったので行ってみる。

プレイヤーならそのまま見なかったことにするけれど・・・。

 

「・・・え」

 

その場所まで行ってみるとプレイヤーではあった。

無視しようと思っていたけれど、それは出来ない。

よく見たこと、それも数十分前にメッセージを送ったユウキなら余計に。

 

「あっ、ユキー!」

 

俺を見つけて舞い上がっていたのか、警戒を忘れていたのか。

モンスターは無防備なユウキの背中を狙って攻撃しようと突進していた。

 

「ふっ・・・!」

 

すぐさまユウキの元にいくと、両手の武器を十字のように持ち替えた。

 

「・・・全く」

 

ユウキの後ろにいるモンスターに向かって《秘天剣》スキル『メテオアウト』を放つ。

いきなり爆発しだしてモンスターは破片になって消えた。

 

「ゆ、ユキ?」

 

「・・・メッセージ残したのに」

 

「心配だもん・・・」

 

「ん・・・じゃ戻ろ」

 

このまま戻れば両手の武器所持になにか言われるので、左手装備を外しておく。

ユウキはさっきのに気になっていたけれど黙秘。

教えれば知っているユウキにまで被害が行くし。

 

「・・・ユウキ」

 

「んー?」

 

「眠気はある?」

 

「全然?沢山寝たからね!」

 

「・・・じゃ、迷宮区行こうか」

 

「へ?」

 

「・・・嫌なら宿屋にいていい」

 

迷宮攻略なんて一人でしていたからあまり誘うこともなかったけれど、ユウキなら問題ないかな。

ユウキにパーティー申請を送ると即効で承諾されてユウキと俺のパーティーが出来上がった。

 

「ユキとパーティー組むの久しぶりだなあ・・・」

 

「・・・一層以来だし」

 

「なんでソロやってるの?」

 

「・・・人が嫌いなだけ。パーティーやれば関わらないと駄目だから」

 

「ボクはいいの?」

 

なんでユウキは大丈夫だと思ったんだろう。

俺とユウキじゃ技量の差が明白で確実にユウキが足手まといになる。

それでも何故か問題ないと思えてしまう。

 

「・・・行くよ」

 

答えるのが少し恥ずかしかった俺は何も言わずにユウキの手を握って転移結晶を使う。

 

「転移、五十二層」

 

こうしてユウキとのやり取りも嫌では無くなっていたからなのか、一緒にいれば安心できる。

だけど手を握ると胸の鼓動が早くなるような妙な感覚を覚えながらも転移の光にそのまま呑まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウキを連れて五十二層迷宮区に着くとすぐにボス部屋まで辿り着く。

いつもならばトラップ系の宝箱などを漁っているけどここは最前線でユウキのLvを考えればトラップモンスターは危険がある。

ボス程度なら一人ぐらいなら抱えてても大丈夫だし。

 

「ユキって凄いね・・・」

 

「ん・・・」

 

「ボクよりも強くてさ・・・何も出来なかったもん」

 

ここに来るまでのモンスターは全て俺が倒してしまったから、あまり考えていなかったな。

この次はボスだけどユウキになら背中を任せても良い。

それだけの実力はあるし、信じてはいるから。

 

「じゃあ・・・ボス戦・・・ねっ」

 

「へ?」

 

《秘天剣》スキルを見られた以上、出し惜しみはしない。

使わずしてユウキを死なせたくないから。

大扉に触れて先に中に入るとユウキも慌てて中に入る。

ど真ん中で待っているのは巨大な躯のシルエット。

 

「・・・《グラインド・アースラ》」

 

Lv55巨人系のボスモンスターのこいつは確か移動速度と攻撃速度が凄く遅い。

その代わりに一発火力が桁違いに高くしてあって、防御主体は危なかったはず。

 

「ユウキ、防御は駄目。回避だけで避けて」

 

「うん、分かった!」

 

「弱点は・・・頭と胸。俺が隙を作るからダメージは任せるよ」

 

こいつが持つ武器は両手斧で破壊可能だが幾らでもどこからか取り出して来るので意味が無い。

俺が武器を両手に持つと一気に常時スキルが発動する。

《秘天剣》の補助スキルに入るステータス補助。

一気に駆け出すと巨人もすぐさま動いた。

こいつは厳密に言えばソロでも必勝法がある。

ひたすらに攻撃を避けて足を切るとこけるので、起き上がるまでの時間に弱点を狙えば時間はかかるけど倒せる。

今回は俺が時間を作ってユウキにダメージディーラーがやる。

ユウキの火力ではこかすほどまでに至れないのと耐久値がある。

俺なら耐久無限だからこそ幾らでも戦闘は継続できるし、危険性がない。

 

「ふっ・・・!」

 

開幕俺は《秘天剣》の上位スキルを使う。

『鏡花の閃』は連続使用スキルで、当てればどんどん火力が上がる。

隙が極端に少ないかわりに初撃は低いけど、途中から倍率補正は狂いはじめる。

 

 

一撃、『鏡花一閃』を発動して巨人の振り上げて俺に向かって振り下ろす斧を弾き返す。

 

二撃、『鏡花二閃』で右足を切ってこかす。

すぐにこけた巨人に向かってユウキもスキルを発動した。

 

三撃、『鏡花三閃』は足から近い胸に当てた。

四本あるHPゲージは三本になり、巨人が悲鳴をあげる。

 

四撃、『鏡花四閃』が左足を切り付けた。

立ち上がろうとした巨人はまたしてもこけて隙を見せる。

 

俺はここで止めた。

ユウキの火力がどれだけかある程度分かったのと、次の奥義スキルで終わらせれると勘が言っていた。

 

「ユウキ、一緒にやろっか」

 

「うん!」

 

ユウキが立ち上げたのは《片手剣》『ホリゾンタル・スクエア』。

そして俺が使うのは、現実世界でも俺が放った剣。

 

「・・・秘剣」

 

「たぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ユウキの四連撃が放たれようとした瞬間、俺の霊想刀とエリュシオンが平行に巨人に向ける。

 

「燕返し!」

 

ソードスキルであろうと、刹那の瞬きで不可視の斬撃が一呼吸で放たれる。

右手に持った霊想刀が上から切り下げて続けて下から右上に切り付け、同じく下から左斜めに切り上げた。

エリュシオンもそれを対になる六方向からの同時に放たれた六連撃は本来の燕返しを凌駕した。

 

 

三本のHPゲージは一気に消え去り、無くなって巨人は光り輝いた。

 

 

五十二層ボス《グラインド・アースラ》は二人の剣士によって討伐され、リザルト画面が表示された。

 

「終わった・・・ね」

 

「ん・・・」

 

「・・・ユキは・・・凄いなあ・・・」

 

「別に・・・」

 

リザルト画面には俺がLABを取っており、『紫霊水晶』が入手できた。

カテゴリは鉱石系で武具鍛造アイテムだろう。

《鍛冶》スキルはあるしこの機会に打って見ようかな。

 

「・・・五十三層の開通したら一度戻る」

 

「それは良いけど・・・なにかあるの?」

 

「ん・・・少し」

 

「ボクも行っていい?」

 

「・・・良いよ」

 

殆ど俺がやってしまっているのでユウキは疲れていないのでそのまま五十三層の主街区を目指す。

ユウキに抱っこされそうになったけど疲れてないし、恥ずかしいから断った。

・・・どうせ寝るとき抱き枕にされるし。

 

 

そうしてすぐに主街区に着いて転移門を開通すると一度三十五層の《風見鶏亭》に戻るとアルゴと女の子が起きていた。

ていうかさすがに起きてる時間だからそうだけど。

 

「・・・ユキ坊。言いたいことはあるカ?」

 

ユウキと部屋に戻るとアルゴが俺を正座させて何故か説教を喰らった。

そういえばメッセージってユウキにしか送ってなくてその本人が来てるから・・・二人知らないのか。

 

「ん、寝れなかったから迷宮行ってた」

 

「・・・ユーちゃんとカ?」

 

「・・・そうだけど」

 

「はぁ・・・ユキ坊もユーちゃんの事考えてあげなヨ。心配どころか泣き出すゾ」

 

「ん・・・分かった」

 

何故かユウキの泣き顔を想像すると勝てない気がするのでお断りしたい案件。

時間帯を見ると14時で本来の時間を大幅に過ぎていた。

 

「・・・行くよ四十五層」

 

「えっ、ユキそのまま行くの?」

 

「・・・そうだけど?」

 

《心》アイテムが三日ほどで《形見》に変わるのだから早めに取りに行ったのが良いと思って行こうとしたのだけど。

なんでアルゴは溜め息ついてて、ユウキは膨れっ面なの。

 

「・・・先行ってる」

 

居心地が悪くなったので早く先に行くことにする。

四十五層は女性泣かしのモンスターが多いけど強くは無いので大丈夫だろうし、のんびり出来る。

ミアのお散歩もかねてだからちょうど良いかな。

 

 

 

少しすればユウキ達も転移してきた。

アルゴが忘れてたように女の子の紹介をしてて、本人も慌ててたけど大事なんじゃないかな。

 

「わぁぁぁ・・・!凄いですね・・・!」

 

「ん・・・ここ、有名なデートスポットだからカップル多い」

 

「カップル・・・」

 

「・・・ユーちゃんは大変だナ」

 

少し見渡せば仲の良いカップルが見える。

花畑である程花の良い匂いもするしデート場所としては良いところなのだろうなあ。

俺はそういう相手がいないけどね。

 

「ミア、見える?」

 

『にゃ』

 

「落ちるなよー」

 

『にゃーん』

 

何となくだけどミアのアルゴリズムは普通じゃない。

本来ならペットとテイマーの距離は数メートルが良いとこで俺のように階層を跨げはしない。

だけど感情論を持ち込むと有り得るのだろうな。

 

「ユウキさーん!アルゴさーん!助けてくださーい!」

 

先に行かせたユウキ達の方から助けを呼ぶ声がするけど絶対目を向けない。

そのためにユウキとアルゴを連れていってるし、俺はミアの相手に忙しい。

 

「・・・ミアー」

 

『にゃっ』

 

「・・・ふへへ」

 

前方の声を無視するように俺はミアを撫で回す。

柔らかい毛が気持ち良くて変な声を出してるけど誰も聞いてないし良いや。

 

 

そんなこんなで《プネウマの花》が手に入る石段に着くとシリカが花を入手した。

そしてそれと同時に俺の《索敵》に9人のプレイヤーが反応した。

俺が足を止めるとユウキ達も止めて不思議そうに俺を見てくる。

 

「どうしたんですか?」

 

「ん・・・」

 

何となくそんな予感はしてた。

《プネウマの花》を狙うプレイヤーはいるし、レッドプレイヤーですら居るのだから。

一つの木にピックを投げるとそれを弾くように武器が振られた。

 

「Oh・・・えげつねえなぁ・・・」

 

「・・・何のよう」

 

「分かるだろう?」

 

「・・・そ」

 

流暢な喋り方でどことなく人を引き込むようなそれは俺が聞き覚えのあるもの。

レッドギルド《笑う棺桶》のギルドマスター《PoH》。

素っ気ない返しをすると霊想刀を引き抜いて一瞬でPoHに向かって振り下ろす。

そしてそれをPoHが使う『友切り包丁』という武器で防ごうとする。

 

 

俺の剣は我流でいろんな人物の剣を真似た。

燕返しもそうだし、武術もそうだ。

だが俺が編み上げた剣術は刀が主でそれは鞘と刀を使う。

 

「・・・なら、ここで死ね」

 

人を殺す暗殺剣を極めた俺は人を殺すことに何も抱かない。

罪悪感も殺したという感触もない。

幼い頃に実験されていたからだろう、殺さなければ自分が殺されるという思考もありはした。

 

「あー・・・そうか、死んだか・・・」

 

PoHの包丁を鞘で弾き返すと刀を十字に動かして切り飛ばした。

純粋な剣だけでここまで出来るのだからスキルなどは不要。

木の影で隠れているもう二人にも麻痺ナイフを当てるとすぐに消し飛ばした。

 

「・・・ゆ、ユキ・・・さん・・・」

 

振り向けばシリカは信じられないものを見た表情で俺を見つめる。

だがそれは至って普通の事だ。

人殺しを平然と行ったのに、表情を何一つ変えず見てくるのだから。

回廊結晶を取り出すと他の木に隠れているオレンジを見つけて麻痺状態にしてから回廊結晶で繋げてある牢獄へ放り投げた。

 

「・・・それじゃ」

 

潮時だろうと思い、俺は転移結晶で転移する。

それを見たユウキが急いで走って来るけど間に合わない。

俺は独りが楽だから、ユウキを巻き込むわけにもいかない。

 

「転移、五十三層」

 

つい数刻前に開通した階層を呟くと俺はみんなを残して転移の光と共にその場から消えた。

主街区に転移されるとすぐにフィールドに出て、迷宮区近くに座る。

野宿はよくしていたし、ソロのために他のスキルもある程度習得した。

 

「・・・打ったらもう終わり」

 

『紫霊水晶』を取り出して携帯鍛冶道具を出すと《鍛冶》スキルで打つ。

唯一俺を前から見てくれて、理解者になろうとしてくれた彼女。

それが心地好くて、今までの自分が無くなりそうにもなってた。

だからこれを打ったらそれもおしまい。

これ以上ユウキは巻き込めないから。

 

 

数百も気がつけば打っていて、それは虹色に輝いて水晶は形を変えた。

それは紫黒の片手剣で名前は『夜月の剣』。

それを何十の仲介屋で俺だとばれないようにしてユウキへと渡るようにした。

包装もユウキでなければ開けれなくしてあるし、大丈夫かな。

 

『にゃー』

 

「なー、ミア」

 

『にゃ~?』

 

「・・・なんでもない。攻略するか」

 

 

 

物凄い速度で攻略を進めていくプレイヤー。

ソロプレイヤーのその人物は攻略組どころかSAO内では知らぬものはいなかった。

しかし誰もが名を知らず、その姿も見たことがない。

それを知るのは第五十一層ボスの攻略組参加者だけなのだから。

故にそのプレイヤーにはある異名が名付けられた。

《孤高の剣士》と。

 

 

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