ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第十四話

アインクラッド第七十四層の迷宮区。

ボク達SAOプレイヤーはそこまで攻略を進めた。

最も攻略組というよりは六十層辺りまで殆どソロ攻略をした《孤高の剣士》がいたからなのだけれど。

その人が迷宮区のボス部屋以外の罠や宝箱を解除、回収していてマッピングデータもアルゴさん経由で公開されている。

 

それにアルゴさん経由でもう一つボク宛に匿名希望で片手剣が贈られた。

当時は武器の力不足感があってちょうど良かったけれど、後々考えていけば少し気にもなった。

プレイヤーメイドの武器ではあるのだけど製作者が不明でアルゴさんも分からないと言っていた。

そして今ボクは贔屓にしている個人経営のプレイヤー鍛冶屋に向かっているところ。

そこに着くとドアを開けて中に入る。

カランコロンと鈴が鳴って奥から女の子のプレイヤーがやってくる。

 

「ようこそ!リズベット武具店へ!」

 

「あ、リズ?やっほー」

 

ピンク色の髪で身長は幼いボクよりも高い。

聞いたところ高校生ぐらいなんだとか。

その人物が攻略組の殆どの武具に関係している鍛冶プレイヤー《リズベット》。

マスタースミスで彼女が打った武具はどれも高い分一級品ばかり。

だからこそボクはこの贈られた武器の製作者の手掛かりを知りたい。

 

「どうしたのよ?あんた少し前に研磨したでしょ?」

 

「リズに見てもらいたい武器があるんだ。贈られた武器なんだけどね・・・」

 

ボクはそういって贈られた武器をリズに渡す。

武器名は『夜月の剣』で製作者不明。

性能は七十四層の今でもかなり使える。

 

「うわっ、何よこの武器」

 

「何か分かったの?」

 

「この武器・・・少なくとも製作日が数ヶ月前じゃない。最近送られてきたの?」

 

「うーん、確か3ヶ月前だったかな・・・?」

 

「それなら最低でも五十層辺りの素材でこれを造った訳でしょ?当時はマスタースミスなんて誰一人居なかったからこれ程の武器なんてフロアボスのLABぐらいじゃないと・・・」

 

「んー・・・誰が造ったんだろう?」

 

「・・・とりあえず《鑑定》スキルで分かった事を言うわよ。製作者は・・・なんて読むのよ、これ」

 

そういって鑑定結果の画面をボクに見えるように可視化してくれた。

そこに表示されていたのは今や消息が不明になっている《孤高の剣士》のアバター名。

 

「・・・ユキ」

 

「知ってるの?このプレイヤー」

 

「うん。知ってるどころかSAO内じゃある意味知らない人はいないよ」

 

「・・・誰よ?」

 

「アインクラッドの半分以上の迷宮区を単独で攻略したプレイヤーは知ってる?」

 

「確か・・・《孤高の剣士》とかいう大層な異名のプレイヤーでしょ?」

 

「プレイヤー名は《Yuu_ki》。ボク達攻略組が本格的活動をする前はこの人がソロでやってたんだ」

 

「・・・それ、嘘じゃないわよね?」

 

「嘘じゃない。ボクがアスナが見たんだ。第五十一層の攻略参加者に聞けば分かるよ」

 

第五十一層はユキの正体が一部にのみばれた場所であり、一番ユキと長くいれた期間に近かった。

 

「そっか・・・ユキが造った武器なんだ・・・」

 

「そのユキって奴好きなの?ユウキは」

 

「ふぇっ!?そ、そんなこと・・・・・・ある・・・かも」

 

「ふーん?あんたを惚れさせる程ってどんな奴なのか気になるわね。呼べる?ここに」

 

リズの問いにボクは首を横に振る。

何故ならフレンドにはなっていなくて、唯一のアルゴさんも追跡機能は切られている。

それに六十五層辺りで攻略止まってから消息不明だし。

 

 

でもそれは急に覆されたりする。

お店のドアが開いて鈴の音が鳴る。

それは来店の合図でお客さんの意味合いだ。

 

「っと、ようこそ!リズベット武具店へ!」

 

入ってきたのはローブを着た小学高学年ぐらいの子。

それはユキと同じに見えて記憶が少し蘇った。

 

「ん・・・」

 

見た目では幼過ぎてリズも対応に困っていた。

ボクもさすがにどうすれば良いのかなと思ってた。

 

「店主さん・・・どっち?」

 

それは多分ボクとリズの事だろう。

見た目で分かると思ったけど間にはカウンターがあってこの子では身長的に見えないのかな。

でも凄く既視感があった。

ここまでユキの姿に重なるのかと。

 

「ねぇ」

 

「ん・・・」

 

「・・・ボクのこと・・・分かる?」

 

「・・・分かると思うけど。有名だから」

 

「えっと・・・そういうことじゃなくてね」

 

有名なのは否定しない。

それほどまでに皆に認められた実力者でもあるから誇りにも思える。

だけどボクが聞きたいのはそういう方ではなかった。

 

「そ・・・なら、久しぶりって言えば良い?」

 

「っ・・・」

 

「ユウキ、まさかこの子が・・・そうなの?」

 

リズが聞いてきたので頷くと久方振りにボクの左手にボクよりも一回り小さな手が重なった。

 

「は、はぁ・・・それで何のようなのよ?」

 

「ん・・・鍛冶施設借りたい」

 

「・・・もう一度良い?」

 

「このお店にある固定式鍛練炉が借りたい」

 

「どうしてよ?《鍛冶》スキルあるの?」

 

「・・・あるけど。現に俺が打った片手剣ある」

 

この子が指差すのは『夜月の剣』。

造られた時期を考えても《鍛冶》スキルが完全習得出来ていないとは思うのだけどなぁ・・・。

 

「あんたのスキルがどれだけか分からないけど、炉までは貸せないわ。だけど代わりにあたしが打つ。それでどう?」

 

「・・・完全習得してる?」

 

「あんたねぇ・・・さすがに鍛冶専門プレイヤーに喧嘩売ってるでしょ。完全習得してるに決まってるじゃない」

 

「そ・・・なら、片手剣同士を縫合してほしい」

 

「縫合・・・?」

 

聞いたことがない単語にボクは聞き返した。

何でも、同じ武器種同士を重ねて追加素材を入れて叩くと強化出来るらしい。

親武器が下で強化に使う武器が真ん中、追加素材は一番上で叩くと確率で成功するみたい。

この子がストレージから出してきたのは見たことがない錆びた剣に黒塗りの片手剣に蒼色の鉱石。

 

「この、錆びた剣を親で後全部素材。失敗しても大丈夫」

 

「・・・分かったわ。お代は・・・そうね、あんたのこと聞かせなさい」

 

「ん・・・ユウキ次第」

 

「ふーん?ユウキも案外隅に置けないわね?」

 

「ちょ、リズ!?」

 

何かを確信したような表情でボクをからかったリズは渡された素材を持って奥の作業場に行った。

するとこの店にいるのはぱっと見でボクとユキだけ。

 

「ねぇ、ユキ」

 

「・・・気づいてたんだ。いつから?」

 

「勘・・・かな?」

 

「・・・そっか」

 

ボクが休憩に椅子に座るとユキもボクの膝の上に乗っかってきた。

そしてボクの両手を自分のお腹に回すようにユキが動かした。

 

「・・・ねぇ、ユウキ」

 

力が抜けたようにボクにもたれてきたユキが出したのは疲れきったような声。

あの時のような小さく細い声じゃなく、心の底から疲れた声。

 

「・・・疲れたよ」

 

「動いて・・・疲れちゃったの?」

 

「・・・わかんない。なんか、もう何もやりたくない」

 

これが・・・本音なのかな。

ユキがこの小さな身体に背負ったその重みはボクなら耐えられない。

 

「本当なら・・・もう関わっちゃ駄目って決めたのにね」

 

「関わっちゃ・・・?」

 

「・・・もうやだよ・・・嫌・・・」

 

泣いているような声がし始めたユキの頭を撫でて、優しくボクは抱きしめた。

握られていた手からユキの震えが感じれた。

触れているところ以外は冷えていて、死人のよう。

ユキがこれほどまでに追い詰められていたのにボクは何で気づいてあげれなかったのだろう。

どうして姿をくらましたとき探してあげなかったんだろう。

そう考えればどんどん駄目な思考が出てきちゃう。

 

「ごめんね・・・ユキ。ごめんよ・・・」

 

「ううん・・・ユウキが悪いんじゃない・・・俺が・・・駄目だから・・・」

 

 

「・・・少し・・・寝ても・・・良いかな?」

 

「眠たい?」

 

「・・・うん・・・ユウキは、暖かいから」

 

そういってユキはそのまま動かなくなってしばらくすると整った寝息が聞こえて来る。

ボクの胸に耳を当てて寝ているからボクの激しいほどに動く心臓の音も聞こえていそう。

ナーヴギアで心臓の音も再現してるらしいから・・・やっぱり聞こえてるんだろうなあ。

 

「終わったわよー・・・って」

 

「あはは・・・」

 

「やっぱり好きなのね、その子の事」

 

「・・・うん。こんなに小さな身体でも誰よりも強くて、そんな姿にコロッと・・・ね」

 

「ユウキらしいわね。縫合の結果どうしようかしら」

 

「んー・・・ボクが預かろうか?起きたら渡すよ」

 

「そうね、お願いするわ。お代はまたそのうち二人で来て聞かせて頂戴な」

 

「・・・まさか、リズさっきの」

 

「聞いてないわよ。まぁそれでもそんなに引っ付いてれば関係も察するわよ」

 

「まだ付き合ってないよ?」

 

「・・・その時は言いなさい。祝ってあげるわ」

 

「ありがとう、リズ」

 

リズからユキの品物を受け取るとそのままお店を後にした。

ユキがローブを着ているからこのまま主街区に行っても子守りだと思われて問題は起きない。

アスナ達には落ち着いてから教えたのが良いかな?

 

「ん・・・む・・・」

 

ボクに抱き着いて寝てるからか、安心したような声が少し漏れてる。

背中を優しく叩いてあげると服を掴む手が少し強くなって頭を押し付けるように擦り付ける。

主街区に入ると転移門に近い宿屋で一人部屋を取るとベッドに座ってユキとそのまま横になる。

するとボクも疲れてたのか、ユキと一緒だからか瞼が重くなってきていたのでそのまま目を閉じて寝た。

暖かい感覚があって、いつもよりぐっすり寝れたような感じもした。

 

 

 

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