二人仲良く歩いていると、ユキが途中で足を止める。
急に止まった事にユウキは不思議がった。
「どうしたの?」
「ん・・・買いたいのあるから。後お願いしていい・・・?」
「んー・・・良いよ」
「ありがと・・・終わったら呼ぶから、来てね」
そういうとユキは先に転移門へと向かった。
その間にユウキはフレンドからある人物にメッセージを送る。
「場所は・・・どこが良いかな」
どこに呼ぼうか、考えているユウキは気づけなかった。
転移門へと向かって行ったユキを追うようにローブのプレイヤーが付けていた事に。
ユキが向かったのは緑が生い茂る綺麗な所だった。
そのうち、そこそこ大きめの空き家の前に立つとそれを購入すべく手続きを済ます。
手続きといっても、コルを支払うだけだが金額が金額なために確認回数が3回もあったが。
それを終えるといきなり霊想刀を抜き払ってぶらんとした。
「・・・誰」
ユキはユウキを別れる前に自分をつけているプレイヤーに気づいていた。
システム的な察知ではなく、現実世界でも有効なそれはSAOでも活躍していた。
「・・・隠れてるの、分かってる」
隠れている事がばれていると分かったからか、木の影からは一人のプレイヤーが現れる。
そして被っていたフードを取り払うとそれはユキを動揺させた。
「な・・・」
「久しぶりね?優紀」
ユキのリアルネームで呼ぶその人物はかつての優紀の身内。
「・・・今更何のよう」
「・・・今更・・・か」
求めていた反応をされず、そのプレイヤーは落胆を見せた。
それに反してユキは強い警戒心と嫌悪すら抱く。
それほどまでの反応をさせた人物は優紀の義理の姉である《絢音》だった。
「・・・あの時は置いていってごめんなさい」
「・・・そう」
「置いて行きたくなかったけれどお父さんが無理矢理・・・」
「もういい」
「・・・お父さんはお母さんと離婚して、今はお母さんと夜々と私の三人暮らしになったわ。だから・・・その、戻ってきて欲しいの」
絢音としては優紀を見捨てはしなかった。
その場の状況が状況なだけに出来ず仕方なくというもので。
だがそれを証明出来る物ではなく優紀は強い人間不信を持っており、義理の姉妹にも両親にも同じだった。
それどころか今の優紀には自身を支えて必要としてくれる少女がいる。
「・・・嫌」
「・・・そっか」
優紀は明確な拒絶をすると落胆する絢音の姿があった。
今までならば気にしたのだろうが、優紀は変わった。
それは大きく変えて大切な存在を見つけるに至るまで変わったのだ。
「・・・ねえ優紀」
「・・・なに」
「また、来てもいいかしら」
「・・・止めて」
これ以上話せばズルズルと同じ結果だろうと思い、ユキはその場を去った。
後でまた戻るつもりだったが、ユウキ達と会わせたくないのが本心だったのだ。
「・・・ごめんなさい」
もう二度とあの頃の日常を取り戻せないと理解した絢音はただひたすらに優紀に謝ることしか考えられなかった。
ユウキが呼ぼうとした人物は五十層のとある商人プレイヤー店にいるらしく、ユウキは転移門で五十層の主街区へと向かった。
SAOの全百層のうち、ハーフポイントとなる五十層には様々な個人経営の店が多く立ち並ぶ。
その中の店のうち、ひっそりとした商人店へと入った。
「らっしゃい」
「やっほー、エギルさん」
「ユウキじゃないか。今日はどうしたんだ?」
「アスナとキリトとの待ち合わせでね。二人は居る?」
「あぁ、二階の物置部屋に居るだろうよ」
ユウキが入ったのは日焼けしたガタイの良い男性プレイヤーの店。
その名は《エギル》といい、下層・中層プレイヤーの支援者でありながら商人としての売買に加え、優秀な《両手斧》プレイヤーでもある。
二人の所在を教えてもらったユウキは礼を言うと二階の物置に行った。
ノックして入ると会おうとしていた二人を見つける。
「来たよ、キリト、アスナ」
「ユウキ!?今まで何してたの!?」
「あ、あはは・・・色々あってさ」
「心配したんだからね!?」
ほぼ毎日のように二人はメッセージでやり取りをしていたため、急に音沙汰が無くなった事にアスナは心配をしていた。
しかしまた急にユウキからメッセージが来たからこうしてギルドをすっぽかして来ている。
「ごめんよ、絶対にやり遂げないと駄目なことがあったんだ」
「もう・・・」
「えへへ。それで二人は今日暇かな?」
「暇も何も・・・今日は私の家でキリト君とご飯食べる予定だったの」
「・・・へぇ?」
「ゆ、ユウキ?ど、どうしたんだ」
「・・・別に?」
ユウキの謎の威圧にキリトが冷や汗を掻くもユウキは二人を呼んだ理由を説明した。
「二人とも、ユキって分かる?」
「ええ、ユキ君でしょ?」
「俺も分かる。色々と世話になったからな」
「ユキがね・・・」
ユウキがいざ説明しようとするとメッセージ音がユウキに聞こえた。
それを確認するとユキからのもので、準備が出来たとのことだった。
「準備出来たみたいだから、説明するより見る方が早いかな?」
「どういうことだ?」
「とりあえず着いて来てくれると嬉しいかな」
それ以上は何も言わず、ユウキは二人を連れていった。
ユキが指定したのは二十二層でSAO内では一切のモンスターが出現しないことで有名でもあった。
「なあユウキ。二十二層にきてまで何をするんだ?」
「まぁまぁ、とりあえず来てよ。説明はそのあとちゃんとするから」
「それは良いんだけど・・・こんなところあったのね」
二十二層はその特徴故にあまり踏破もされない。
ユウキはユキからマッピングデータを貰っており、指定場所も分かっている。
「着いたよ」
ユウキが言うと三人の目の前にはそこそこ大きめの家が建っていた。
中からはローブを取り払ってユウキに結んでもらったリボンを身につけているユキが縁側で寛いでいる。
「ユキー!連れて来たよー」
「ん・・・お疲れ」
「ユキ・・・君?」
「ん・・・キリトも、アスナもお久しぶり?」
キリトとアスナは行方不明から探すことも出来なかったユキの姿を見て驚いていた。
「ユキ・・・お前」
「ん・・・」
「この家・・・ユキ君の?」
「ん、そう。ユウキもね」
「ユウキも・・・?」
「二人なら大丈夫かな。ボクとユキで結婚したんだ」
ユウキがそう言うと自身の左手の薬指を二人に見せた。
「アスナは知ってるよ?連絡はただ単にユキが落ち着ける時間を作って上げるために一緒に居たから出来なかったんだ」
「・・・なあ、アスナ」
「き、キリト君?」
「ユキが今じゃ攻略組でもかなりの重要人物になっているんだ。俺だって情報屋を使って探したからな。心配はしてたんだ、せめて教えては欲しかったよ」
「ごめんなさい・・・」
「ん・・・」
ユウキが教えたのはアスナだけであり、キリトには教えていなかった。
無論心配していたことを知っていたため、教えなかった事をユウキは少し悔やんだ。
「全く・・・それで何のために呼んだんだ?」
「ん・・・レア食材あるから、皆でって」
「・・・アスナ、ちょうど良いんじゃないか」
「そうね。ユキ君、ユウキ。実はねキリト君がある食材取ってきてね。それを今日私が調理しようと思ってたのだけど・・・」
「ユキ、折り入って頼みがある」
「ん・・・なに?」
「S級食材を扱ってくれないか」
ユキはその意味を理解すべくキリトに聞いた。
なんでもキリトがたまたま遭遇した『ラグー・ラビット』を討伐し、その肉を手に入れたらしい。
『ラグー・ラビットの肉』というのはSAO内でS級という最高級食材の一つで、それを扱えるプレイヤーも少なかった。
「S級なら・・・扱えるけど」
「・・・ねぇユキ。なんでボクを見てるの?」
「・・・沢山食べる人居るから。メニューはこっちで決める」
「・・・なるほど、言いたいことは察した。アスナもそれでいいか?」
「ええ。ユウキはあまり迷惑かけすぎないようにね?」
「アスナも!?ちょっとユキ、どういうことなのさー!」
意味深な事を言われたユウキはそれを理解できず、発端のユキを問い質そうとした。
当然ユキは黙秘して、最終的にはユキが無視し始めてユウキが謝り倒すという不思議な光景があった。
だがユウキはその時に気づいた。
いつもよりもユキが暗く不安げな表情を出していたことに。