ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第二話

小さな明かりが俺の近くで点いていた。

姉さんか妹が点けてくれたのだろうなと思いつつ時間を見た。

 

「ぁ・・・7時・・・」

 

「もう作ったわよ」

 

その声は台所から聞こえており、大人びた声を持つ彼女は俺の義理の姉である『絢音』。

そしてその両手には完成された料理があった。

 

「・・・ごめんなさい」

 

「構わないわよ。どちらかと言えば年上の私が作らないと駄目なんだから」

 

「・・・毎日、作るはずだったから」

 

「疲れて寝たんでしょう?そんな状態で台所に立たせれないわよ。それにたまには私の料理練習もさせなさいよ」

 

「ぅ・・・はい」

 

本当にこの姉には敵わない。

ああいってるけど内心、心配してくれての事。

姉さんが帰るの遅いとき俺が作るようになってからずっとだったし。

それを・・・よく思ってないのも分かってる。

だけど俺が作らないと、姉さんの帰宅時間が分からない以上ご飯の時間も遅れてしまう。

 

「わかればよろしい。それじゃ・・・夜々呼んで来てくれる?優紀に懐いてるもの」

 

「ん・・・」

 

夜々というのは義理の妹。

絢音姉さんと夜々血が繋がっている姉妹で、簡単に言えば俺だけ血が繋がらない。

それを姉さんに言ったら頬を叩かれた。

夜々も泣き出してて。

凄く怒ってて、でも俺にはよく分からなかった。

 

「夜々ー・・・?」

 

「ん、どしたのー?」

 

「姉さんが、ご飯・・・だって」

 

「お姉ちゃんが作ったの?珍しいね」

 

「・・・俺が、寝てたから・・・」

 

申し訳なさそうに俺はいうと夜々はニコニコしながら座っていた椅子から下りると俺の頭を撫でて来る。

正直な話夜々にすら俺は身長を抜かれている。

気にしはしないが、それが逆に庇護欲?を掻き立てられるとかどうとか・・・。

 

「お兄ちゃんさ、寝てないでしょ?」

 

「・・・」

 

夜々にそれを指摘された瞬間、俺は何も言えなかった。

確かに俺は寝てない。

いや・・・寝れないの間違い。

いつも通り寝ようと思えば寝れるがそれは数十分。

先のお昼寝ぐらいでしか1時間以上寝る事はない。

何故それが夜々が知っているのか不思議だけど・・・。

 

「お兄ちゃん結構朝強いなーとは思ってたけど道理で早いわけだ。寝てないもん」

 

「・・・ごめん」

 

「・・・まだ怖い?」

 

夜々の問い。

あの場所にいた頃の事だろう。

凄く頼りになる兄貴分の人はいた。

でもそんな人で構成されているわけでもなく、中には冷徹で非道な奴もいた。

当時の俺は何を思っていたのだろうか。

思い出そうとすればその時、犠牲になった子供達の声が聞こえそうで凄く怖くなる。

気付けば自分の手が震えており、抑えようとしても止まることを知らないのか止まらなかった。

 

「・・・お兄ちゃん」

 

「ぁ・・・ぁ・・・」

 

「大丈夫、私が居るよ」

 

そういうと俺の両手を掴んで優しく包んでくれた。

優しく、自分はここにいるよと言うように。

 

「二人ともー、遅いぞー・・・って・・・何してんの」

 

「あっ、お姉ちゃん」

 

ただ呼びに行くだけにしては時間がかかったことを怪訝に思った姉さんが様子を見に来た。

今の俺の表情は見えないだろうけれど夜々の雰囲気的なので分かったのだろうね。

 

「・・・発作?」

 

「・・・うん」

 

「全く・・・」

 

仕方ないといった感じで姉さんは俺の後ろに立つとそこから抱きしめた。

すると夜々も同じく前から抱きしめて来る。

 

「また無理をしてる。あまり我が儘を言わないとは思ってたけど・・・正直異常だよ」

 

「・・・ぅ」

 

「さっきは・・・夜々が抑えてくれたから良かった・・・。でもあなたは自分を抑えすぎよ。もっと我が儘になって・・・もっと・・・私達に甘えてよ・・・」

 

そう言う姉さんの声は段々と悲痛な物となった。

ずっと昔から両親にも言われていたことがあった。

我が儘でいい、甘えん坊でも良いと。

でも・・・俺には理解が出来なかった。

 

 

 

我が儘って?

 

甘えるって?

 

どうすれば良いのか分からなかった。

 

だって、生まれたときからそんなこと一度もしたことなかった俺には方法すら分からないから。

 

 

 

でもその場で良いから何か考えないと。

姉さんと夜々が納得する物で、我が儘とかじゃない普通の返し。

 

「・・・頑張る」

 

今の俺にはこれが限界。

我が儘なんてどうすれば良いのか分からない。

甘えるってどういうことをすれば良いのかも。

だから頑張るという目に見えない感じで済ませた。

 

「・・・二人とも、ご飯冷めるよ?」

 

「・・・ええ」

 

「・・・うん」

 

この時の返事がどうして寂しそうで哀しい表情を浮かべたのかも俺には分からない。

 

どうしてそこまで血の繋がらない俺に情を抱けるのだろうとすら。

 

「・・・はぁ」

 

答えがでない俺はひたすら悩みつづけるも分からなかった。

とりあえず・・・保留して二人に心配かけないように考えて行動する事にした。

 

 

 


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