S級食材やA級食材などはユキが調理することになり、ユウキ達3人はテーブルで待たせることになった。
これはユキが料理をしたいというのと、今までの迷惑をかけたという意味でもあったからだ。
本来の料理人のアスナは楽が出来て、ユウキから何があったのか事細かに聞こうとしていた。
「・・・何、作ろうかな」
そんな恋ばな雑談を繰り広げているテーブル席を余所にユキは何を作ろうか考えていた。
『ラグー・ラビットの肉』は《料理》スキルを完全習得していれば扱える食材で、それほどまでの熟練を要するだけにあって基本的になんでも美味しくできる。
「ラグーって煮込む・・・だからシチュー?」
ラグーはフランス語で煮込み料理なので、そこから連想をした。
他にも食材があるため、何を作ろうかを考えているだけでユキは楽しかったりしていた。
「んしょ・・・」
台所はユキの背では届かないため、踏み台を使っての調理。
時々気になったユウキ達がその姿を見て微笑ましそうに見ており、ユキは早く背が伸びないかと思っていたり。
「よしっ、一つ出来た」
ユキの手際はとても効率的であり、慣れた者でもそれは見るものがあるだろう。
《料理》を完全習得すると調理法が一つ増える。
それが《略式調理》と《複雑調理》で、初期から使えるのは《略式調理》だけ。
《複雑調理》は完全習得して解放されるが、それを知るものは少ない。
複雑といっても現実世界と同じ方法で作るだけなのだが、味の付き方が違う。
略式は時間がかからない代わりに味が雑になるといえば分かりやすいだろうか。
「ん・・・これで良いかな」
ユキが終えると具沢山のシチューが出来上がった。
主に時間がかかっていたのは味を漬け込む所で、それ以外はあまりかかっていなかったりする。
「よいしょ・・・」
出来上がったシチューの鍋ごとを持つとユウキ達のテーブルの真ん中に置く。
このあたりはSAOの筋力補正で持ち上げれるが、見た目的にユキの幼さからキリトとアスナが持って行くのを手伝おうとしていたり。
「それじゃ」
「いただきーす!」
「「いただきます」
「ん・・・いただきます」
アスナとキリトとユウキを合わせての食事会は何事もなく終わりを告げた。
S級食材を最大限に引き出したユキは同じ《料理》スキル完全習得済みのアスナよりも美味しく作れていた為にその理由などを聞き出されていた。
途中からユウキが助け舟を出したが、聞き出すことが出来ずにアスナは不満そうではあったが。
「ん・・・アスナ、キリト。またね」
「まったね~!」
「ああ、また」
「二人ともまたね~!」
アスナとキリトはさすがに寝泊まりは出来ないと頑なに断ったため、現状家にいるのはユキとユウキの二人だ。
「ん、ユウキ」
「ん~?」
二人の姿が見えなくなるまで見届けると、ユウキを呼んで腕に抱き着く。
「ん・・・」
「ふふ、どうしたの?」
「今日、義理の姉に会った」
「っ・・・そうなんだ」
「・・・うん」
どことなく暗い表情をしていたのを見ていたユウキはその原因が分かると、まずユキの頭を撫でた。
これをすると幾許かユキが安心したような感じになってくれるのだ。
「んにゅ」
「お姉さん・・・会ってどうだった?」
「・・・別に。昔と変わんない。ただ・・・」
「ただ?」
「・・・本当に
「そっか」
「うん・・・」
ユキの事を理解していない者ならば
だがユウキは違った。
ユキという少年を理解しようと今まで見ていた。
だからこそユキが言った言葉の意味をしっかりと理解していた。
「・・・ねぇ、ユキ」
「ん・・・?」
「その・・・言いたくなければ良いんだけどね。家族の事・・・教えてほしい」
「・・・家族って程じゃない。姉妹・・・姉さんはいつも言ってる言葉に理が無かった。空っぽで聞いていて虚しかった。妹はいつも心配してくれて、姉さんとは違ってた。いつも発作に気付くのは妹で姉さんは全然」
「発作って・・・その」
「・・・人が嫌いなんじゃない。怖いだけ。それが重篤化した発作だから」
「ボクは大丈夫なの?」
当然だと言うように頷いた。
優紀はただ、人の暖かみが欲しかっただけでそれ以外は何も求めようとはしなかった。
それに気付いたのはユキを引き取ろうと思い至った母親。
父親は猛反対だったが、折れて渋々受け入れただけ。
だが妹である夜々は寂しそうにしている優紀を何かと気にはかけていて、発作にしても1番に気付いていた。
「ユウキは・・・その、お、お姉ちゃんって感じで・・・お日様みたいに暖かいから」
「・・・そっかぁ・・・ね、ねぇユキ」
「ん・・・?」
「・・・お姉ちゃんって呼んでみて」
「・・・へ?」
ユウキの謎の言動を理解できずユキは素っ頓狂な声をあげる。
だがユウキ本人は真剣に言われるのを待っており、早く早くといった表情だった。
真っ正面から言うのはユキでも恥ずかしいのか、言い渋っていたが決心すると、それを声に出した。
「ゅ・・・ゆう・・・木綿季、お・・・お姉、ちゃん」
「はぅ・・・」
それを言い放ったユキはもじもじとしており、年頃の女の子には刺激があまりにも強かった。
ユウキには双子の姉がいるが妹や弟がいないため、そういうものに憧れてもいた。
それを自分よりも幼く、気心が知れている相手のユキに言わせた結果、ユウキの脳内の処理速度が間に合わず。
「ゆ、ユウキ・・・!?」
幸せそうな表情で倒れるのだった。
その後1分ほどで気がついたユウキは何かが乗っかっている重みを感じる。
「ん・・・ユウキ。起きた」
「あ、れ?ボク何してたんだっけ・・・」
「・・・禁句を言ったらぶっ倒れた。幸せそうに」
「・・・何聞いたんだろう」
あまりの至福さに記憶する前に気を失っていたようで、ユキに言わせた物の内容を覚えていないようだった。
思い出そうとするも、何故か分からずじまいだったので諦めることにした。
「~♪」
幸いにも二人は既にベッドに座っており、ユウキはその状態で倒れていたため体を地面に打ち付けるようなものではなかった。
最もSAO内ではそういった痛みは無いに等しいが。
「すりすりしないでよ・・・くすぐったい」
「~♪」
ユウキにしっかりと抱き着いて離れないようにしながらユキは顔を擦り付けていた。
口ではくすぐったいなどと言うユウキだったが、満更どころか甘えさせるようにユキを抱きしめる。
「はぁ~ぁ・・・幸せ・・・」
口から漏れた言葉は本心からのもので、嬉しそうな表情をしていた。