ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第二十三話

軽く《料理》スキルで作ったサンドイッチをストレージから取り出すとユウキに渡す。

 

「ん・・・はい」

 

「わっ・・・ありがと」

 

今日作ったのはミックスサンド。

味覚システムを全て網羅しているから自由に作れる。

今回は味付けでユウキが好きそうな味も入れてみた。

 

「はむ・・・んぐ・・・」

 

「・・・美味しい?」

 

「うん!すごく美味しい!」

 

「・・・よかった」

 

キリトもどうやら一緒のようで、アスナからサンドイッチをもらっていた。

 

「ユキ君ってスキルどれだけ取ってるの・・・?」

 

「ん・・・」

 

ここSAO内では他者のスキル模索はマナー違反。

アスナが聞きたいのは分かるが、教えれない。

まぁユウキは結婚してるから分かっちゃうけれど。

 

「・・・誰か、来る」

 

《自動索敵》に引っ掛かったのは5~6人ほどのプレイヤー。

その方向に目を向けると赤いバンダナを付けた男性が先頭に見える。

 

「あれは・・・クラインじゃないか?」

 

「・・・知り合い?」

 

「あー・・・腐れ縁だな。良い奴だよ」

 

「ん・・・ならいい」

 

危険が無いなら興味はない。

サンドイッチを手にユウキと食べるのを続ける。

 

「ありがとね、ユキ」

 

「・・・?」

 

「その・・・美味しかった、よ」

 

「・・・うん」

 

ユウキにと作ったサンドイッチは全て完食されており、入れていたケースは綺麗になっていた。

それを仕舞うと同時にまた《自動索敵》に何かが反応した。

先の少数プレイヤーではなく、大人数のプレイヤー集団。

 

「・・・誰か、来た」

 

「えっ?」

 

クライン達だけではない事に驚きながらもさらにやってくるプレイヤーを警戒した。

聞こえて来るのは足並みが揃えられている足音に、金属同士が擦れ合う音。

そんなものこのSAOでは一つのギルドしかない。

 

「・・・軍」

 

別名、アインクラッド解放軍。

その名の通りアインクラッドから人々を解放すべく立ち上がったギルド。

何度か軍とは戦闘問題になり、階層攻略を潰した覚えがある。

完封してしばらくは調子に乗らないとは思っていたが、余りにも早い。

誰かが手引きして支援しているのだろうが、SAOの軍は評価がよろしくない。

第一層で安全にしているプレイヤー等から税と言い放ってコルを徴収したり、装備品などを奪取しているためだ。

 

「ふむ・・・よし、一度休憩!」

 

上官の立場であろうプレイヤーが部下を休憩させると俺達の所に来る。

 

「私は《アインクラッド解放軍》所属、コーバッツ中佐だ」

 

「・・・《血盟騎士団》副団長のアスナです」

 

「・・・キリト、ソロだ」

 

「同じくソロのユウキだよ」

 

「・・・」

 

ユウキ達は各々の名前を言うと、俺だけ話さなかった事を怪訝に思ったのかコーバッツが目線を送る。

 

「・・・何」

 

少し嫌そうな声で言い放つとすぐに目を逸らす。

殺気までは出していないが、元々声色に出やすいらしい。

 

「君らはこの先のマップを進んでいるのか?」

 

「まだ進んでいないが・・・」

 

「ふむ・・・それならここまでのマップデータを提供してもらいたい」

 

「なっ・・・!?」

 

キリトやアスナ達が絶句するのは当然。

マップデータというのは基本的に自身で踏破しなければならず、善意による公開以外では入手できない。

コーバッツはそれを分かっていながらマップデータを寄越せと言っている。

 

「ふざけてんのか!?」

 

「何を言う!?我々は人々を解放すべく動いている!そのため我々に協力するのは当然の義務である!」

 

「あ、あなたねぇ!?」

 

こういった人間は自分の行いが正しいと肯定して動いている。

俺らが否定しようと変わらない考えで、相手が面倒。

 

「・・・どうするの?」

 

「ん・・・」

 

恐らく最終的には俺に判断が行くだろう。

俺が渡さなければ確実に因縁を付けられる。

軍とのいざこざは今に始まった事ではないが、正直言えば面倒だ。

そのせいでユウキとの時間が減るのなら尚更。

 

「・・・はぁ」

 

トレードで第七十四層の()()()を渡した。

この先は一本道で、分かれ道などは無い。

それは確実に覚えているので渡してしまっても痛手ではない。

 

「・・・協力感謝する」

 

「・・・早く、どっか行って」

 

「ふん・・・休憩は終わり!さあ、立て!」

 

号令で一気に立ち上がるが、その足取りは覚束ない。

休憩もあまり無く進んで来たのだろう。

 

「おいおい・・・ユキ。あまりにもお人よしじゃないか?」

 

「ん・・・PK出来てたらしてた」

 

これは本心だ。

ユウキ達と一緒にご飯を食べていたのにその時間を減らされたのだ。

さっさと去ってくれれば良いので渡した。

その後にボスへと突入して犠牲者を出そうが俺の知る所ではない。

 

「でも・・・この先は、ボス部屋。突入してたら、まずいかも」

 

「なら様子見だけでもしておこう。ボスの情報は欲しい」

 

「そうだね。ユウキとユキ君もそれで良いかな?」

 

「ユキが行くならボクも行くよ」

 

「・・・別に」

 

「俺らも行くからな!」

 

クラインが率いる《風林火山》は人数は少なめだが、その統率力と慎重度が高い。

それゆえに精鋭であり、腕も確かだろう。

 

「・・・ユウキ。少し無茶する、かも」

 

「駄目って言っても聞かないのを知ってるんだよ?だから死なないで」

 

「ん・・・当然」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休憩も終わってボス部屋の様子見をしに行くと、モンスターの出現率が上がりはじめた。

上層の迷宮区はこれがあるために、道中でも経験値は美味しく稼げる。

《夢幻剣》による自動攻撃で出現した瞬間切り捨てられているため、戦闘は少ない。

 

「なあ、ユキよ」

 

「ん・・・?」

 

「さっきから何で切ってるんだ?キリトでもねえしよ、さっきから不思議なんだ」

 

「・・・秘密。どうせそのうちばれる」

 

「クライン、模索は駄目だからな。ユウキなら分かるだろうけれど・・・教えてくれないから」

 

「当たり前だよ?ユキが良いって言えば教えれるけどね」

 

こういいながらも全員、俺の事を模索はしない。

深々まで知っているのはユウキただ一人で、それ以外は教える気が無い。

人を信じる気が無いだけだが、それでも見極めぐらいは出来る。

 

 

 

「・・・・・・・・・うわぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ・・・・・・!!」

 

 

 

遠くから聞こえたのはプレイヤーの叫び声。

恐らくこの先のボス部屋に突入したのだろう。

 

「い、いまの」

 

「・・・助けるの」

 

「私はそうしないと駄目だから・・・嫌なら良いんだよ」

 

「・・・ユウキ、早く、ね」

 

《秘天剣》スキルを発動させていく。

全てのパッシブスキルを発動させ、武器も装備も完全戦闘状態に変える。

 

「助けは、しない」

 

人を、知らぬ他人を助けたいとは考えることすら気味が悪い。

だが誰かが助けようとしてそれを妨害する者がいるなら、俺はそれと戦う。

優しいユウキ達はそうするだろうから。

 

 

ボス部屋に一瞬で入ると何か身体に纏わり付くような感覚を受ける。

それはどこかの階層でトラップとして使われることもあった《結晶アイテム無効化》の感覚。

つまりは転移結晶という緊急離脱方法は封じられる。

 

「Graaa!!」

 

雄叫びをあげ、巨大な剣を振り回すは巨人とも言える牡牛。

青い身体に、全てを燃やそうとせん瞳が俺を捕らえる。

 

「・・・飛電、一閃」

 

霊想刀を一気に抜刀すると振り下ろされていた剣を弾き返した。

その間に左手で片手剣を引き抜く。

リズの手により完全な姿を取り戻したそれは、霊想刀にも劣らない性能を持つ。

左手に片手剣、右手には刀を持つそれは端から見えれば異質でふざけているようにも見えるだろう。

だが、それが《秘天剣》スキルの醍醐味になる二刀流。

どんな武器であろうと片手で振り回せるそれは、両手斧や両手剣ですら片手で軽々と扱える。

 

「あはは・・・5分間だ。それまで持ってよね」

 

自身の強化スキル《霊剣》を使うと、一時的にだがステータスが一気に上がる。

効果時間は5分で、切れると一気に脱力のノックバックがやってくる。

 

「さあ、狂え。もっと・・・もっと、狂っちゃえ」

 

いつになく楽しいと思いながら、俺は牡牛へと立ち向かった。

ユウキ達が戦闘に参加する前に終わらせるために。

 

 

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