ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第二十五話

第七十四層でのボスソロ攻略から数週間後。

幼い少女と少年はアインクラッド第五十五層に来ていた。

 

「ん・・・」

 

「どうしたの?」

 

「・・・少し、慣れない」

 

周りからの視線を避けるようにフードを目深に被るユキは居心地悪そうにしていた。

 

「アスナが来てほしいって言うんだもん」

 

「・・・ユウキがいるなら、別に構わない」

 

そういう繋いでいた手に軽く力を込める。

人嫌いのユキがこんなところに来ているのはアスナによる呼び出しで、ユウキも一緒に来るからと渋々来ていた。

でなければすぐにでも逃げ去っている事だろう。

 

「ボクもあまり目立つの好きじゃないんだよ?異名も勝手に付いたんだから」

 

「ん・・・知ってる」

 

「無名なら堂々と歩けるんだけど・・・ボクとユキは・・・ね」

 

ユウキの《絶剣》もそうだが《孤高の剣士》というのはその強さが計り知れない。

ユキの持つ《秘天剣》が大きくそうさせてしまったがそれでもなお仮装空間での適応力は凄まじい。

ソロという危険性が高い所業を難無くこなしていたためにその異名が持つ意味は大きい。

 

「ユキ君、ユウキー!」

 

とぼとぼと歩いていると二人の名前を呼ぶ声がしていた。

その人物こそ二人を五十五層に呼んだ本人。

 

「アスナ!連れてきたよ」

 

「ありがとう!私じゃユキ君動いてくれないから」

 

「ん・・・」

 

「動かないんじゃなくて人に会いたくないだけだよ?ここなんて人多いから」

 

「ごめんね?それでも伝えないといけない事があるから・・・一度ギルドの内部で話そうっか」

 

アスナの所属するギルドは《血盟騎士団》という所でSAO最強ギルドと言われる場所だ。

内部は人も多いが個室自体は基本的に人が入るのは少ない。

二人はアスナに追従していくとギルド本部の中へと入っていく。

個室へと案内される途中ユキは一人のプレイヤーから妙な物を感じた。

 

「・・・?」

 

その視線はユウキに向けられていたがそれも一瞬だった。

 

「・・・情欲」

 

だがユキにとって一瞬で良かったのだろう。

人の視線、口調、声色、表情というパーツから情報を搾り取る事に関しては右に出るものはいない。

先程の視線がユウキをどう見ていたのかすぐに察すると繋いでいた手を強めた。

 

「んぅ?どうしたの?」

 

「ん・・・何も」

 

ただ甘えたくなったように演じるとユキは先程のプレイヤーを覚えた。

やせ細った長身だったが、体のパーツ全てを目で読み取ると興味が無くなったように意識を戻す。

 

 

 

 

 

個室へと入った三人は腰掛けるとアスナがその内容を告げた。

 

「・・・二人を呼び出した理由はね、ギルドに入ってほしいの」

 

「ギルドに?」

 

「そう・・・ソロプレイヤーのユウキとユキ君を引き込みたいっていうギルドは多いの。勿論私のギルドも勧誘したいのだけどね」

 

「ん・・・嫌」

 

「あはは・・・ユキが嫌ならボクも遠慮しようかな」

 

「だよね・・・団長もこれはついでだったから良いんだけど次が問題なの」

 

さっきの勧誘とは打って変わって、真剣な表情へと変わったアスナに二人は耳を傾けた。

 

「第七十五層のボス部屋が見つかってその偵察を行ったの。結果は全滅。どうやらボス部屋に入ると撤退が不可能ということが分かったわ」

 

「ん・・・七十五・・・」

 

ユキは開発時に覚えていた情報から七十五層のデータを探った。

結晶アイテム無効、フロア撤退不可能という二つのプログラムを入れていた為に記憶は残っていた。

 

「それでしばらくしたら七十五層のボス攻略をしたいから二人に参加してほしいの」

 

「ん・・・良い、けど」

 

「ボクも良いよ」

 

「ホント?ありがとう・・・。クォーターポイントだから出来るかぎり戦力は欲しいから助かるわ!」

 

「別に・・・どちらかというと、扉前で《隠蔽》してる二刀流のが」

 

「「・・・え?」」

 

ユキが指摘するとガチャリと扉が開いて《血盟騎士団》の正装に着替えているキリトが入ってきていた。

 

「悪い、声聞こえてたからさ・・・」

 

「それは良いけど・・・」

 

「・・・似合わない」

 

「うっさいな!俺だって着たくなかったよ!」

 

普段から黒色ばかり着ているからか紅白色の正装を着ているキリトに違和感しか感じていないようだった。

 

「なんでキリトが着てるの?」

 

「あぁ・・・その・・・色々とあったんだよ」

 

「ふーん・・・」

 

遠い目をしたキリトにユウキは聞くのを止める。

アスナも苦笑しながら雑談をしているとユキがいきなり武器を取り出していた。

 

「・・・ん」

 

ユキだけがその気配に気付いていた。

扉ですらなく、無機質な石壁を隔てたその気に。

 

「・・・ユウキ、アスナ。気をつけて、ね」

 

「へっ?」

 

「ユキ君?」

 

「・・・何か、いる。新参、かな。あのギルドは潰した(殺し消し去った)のに」

 

そういうユキは光を映さず、ただ石壁を冷たい目線で見ていた。

そんな初めて見る姿にユウキ以外は何も言えなかった。

 

「ユキ。気をつけるから・・・抑えて?」

 

「・・・そ」

 

ユウキが宥めるように言うといつものユキへと戻り、ユウキの膝の上に座った。

そのまま頭を預けると静かに目を閉じ寝てしまった。

 

「・・・なんだったんだ?」

 

「うーん・・・多分何か居たんだと思う。ユキの気配察知はスキル以上だから」

 

「ユキ君が敵じゃなくて良かったわ」

 

「そうだな・・・っともうこんな時間か」

 

時刻は昼間だったがキリトは何か用事があるようで少し足早にその場を去った。

アスナはそれを知っているようだったが。

 

「ボクもユキが寝ちゃったし一度帰ろうかな」

 

「そうだね。話しておきたいことも話せたから」

 

「それじゃアスナ、また何かあったらメッセージ奥ってよ」

 

「うん。ユウキも頑張ってね」

 

「っ・・・!アスナ!」

 

何を想像したのかユウキは顔を真っ赤にするとからかってきた親友にぎゃーぎゃー言っていたがすぐに家へと戻る。

 

「ふへー・・・」

 

ベッドにユキを寝かせるとユウキは寝間着へと着替えた。

ユキのウィンドウを操作すると寝間着へと着替えさせた。

本来ならば他人にさせる物ではないがユキは全面的にユウキに対しては色々と感情が振り切っているため気にしていない。

ユウキもそれを察してか、探りはせず必要なことだけを操作していた。

 

「ん・・・」

 

「ボクもお昼寝しようかな」

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

「えへへ、おやすみ」

 

ユキの額にキスをしたユウキは抱きしめるとそのままお昼のお日様の陽光で眠気に襲われ寝てしまった。

 

 

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