ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第二十七話

早朝に目が覚め、自身の隣を見る。

そこには長い紫紺色の髪の少女と、それよりも幼い黒髪の少女がいた。

 

「ん・・・」

 

MHCPがこのようにアバターを形取り、ゲーム内に干渉することは殆どない。

生みの親といっていいユキからすればその行動原理すら作っているのだから。

だがもし、MHCPに人間と同等の感情や思考を持てばどうなるか。

実質的な完全自立な思考回路で、全世界からすれば喉から手が出る程欲しいものだろう。

 

「はぁ・・・」

 

生み出してしまったユキにはその責任もあるが、それよりもこうやって二人して寝てしまっている光景を壊したいとは思えなかった。

 

「ん・・・ユウキ、ルル。朝、だよ」

 

「んぎゅ・・・」

 

「ふぁ・・・」

 

ユキに揺さぶられ起きるが、ルルはまだ寝ていたいのかすぐに体の力を抜かす。

 

「おはよ、ユウキ」

 

「んー・・・おはよ~」

 

「・・・ルル、朝」

 

「眠たい、です・・・」

 

頭がしっかりして来るとユウキは昨日までは居なかった幼い少女に少し驚く。

それでもユキが心を開いている様子から大丈夫そうではあったが。

 

「ユキ、その子は?」

 

「ん・・・ルル?」

 

「そういうことじゃないよ・・・」

 

「じゃあ、MHCP。恐らく、何かのバグによって、アインクラッドに出てきてる」

 

「バグ?」

 

「・・・多分」

 

また寝てしまったルルを優しく撫でているユキに少し嫉妬を覚えるが、それよりもこの少女の存在に考えていた。

頭の回転はユキ程ではないがそれでもその年齢からは考えれないほど早い。

 

「ねぇユキ。もしかしてこの子は本来ならSAOに出てきていないの?」

 

「ん、多分。ゲーム開始時に変わったかもしれないけど」

 

「なら・・・消されちゃう?」

 

「異常、異物として判断されて、データ削除。それが妥当」

 

「そっか・・・」

 

「方法あるけど、あるものないから出来ない」

 

「その方法っ・・・あれ?アスナからメールだ」

 

「ん・・・」

 

ユウキはその内容を見るとユキへそれを見せた。

 

「・・・MHCP-Yui、か」

 

「知ってるの?」

 

「ん・・・ルルと同じ」

 

「・・・行ってみる?」

 

「良い、けど」

 

すぐに用意を済ませるとユキはルルを起こさないように背負うと第一層に転移する。

ユキとしてはあまり来たくはない所だった。

 

「教会・・・らしいよ、場所」

 

「ん、そこ子供多い」

 

「そうなの?ボク達も子供だけどね」

 

雑談も交えながら二人は歩いていると遠くから揉め事のような声が聞こえていた。

それも教会へと繋がる道でユキも嫌そうな表情をしていた。

 

「・・・軍が、カツアゲしてる」

 

「・・・ほんと?」

 

「ん、一層は軍の徴税。面倒だけど」

 

ユキは一気に加速するとユウキも続いて加速した。

周りの光景がどんどん変わっていき、行き止まりになるとそこには甲冑を来たプレイヤーが数人で囲って子供プレイヤーを脅していた。

 

「・・・ホント、大人って腐ってる」

 

ユキの声がどうやら聞こえていたようで、軍は後ろを向くとユキに対して偉そうな顔を見せていた。

 

「まだガキが居たのか」

 

「口も悪い、躾てやんねぇとなぁ!?」

 

「・・・無明剣」

 

小さく呟くとそれだけで軍プレイヤーは一気に吹き飛ばされる。

ユキ自身の剣技はスキルではない為にそれを観測することすら至難だろう。

何が起こったのか分からない様子でユキに怯えていた。

 

「消えろ。目障り」

 

軽くユキが殺気を飛ばせば兎の如く逃げ出して行ったのを見て殺気を消すとユウキの元へと走る。

ぼふっとユウキが受け止めると二人で教会へと向かう。

 

「ん、来たよ」

 

「あ、あぁ。外ですごい物を感じたけどユキのか」

 

「ん、多分?」

 

「多分じゃないよ・・・ユキ早い・・・」

 

ステータスがユウキよりも高いために、加速率も違うからかユウキは少し息が上がっていた。

 

「あのキリトさん、アスナさん。お二人は・・・」

 

「二人は私とキリト君のフレンドで・・・SAOでは最強プレイヤーに数えれます」

 

「ん・・・」

 

「ボクは最強じゃないんだけどね・・・ユキはそうだけど」

 

「ユウキだってユキ君に追いつこうとしてるでしょ?それに隣で戦える時点で凄いんだから」

 

ユウキはあまり自覚していないが、ユキは元々ソロ専門で、その動きについていける者がユウキ以外いない。

速さだけですら不可能に近いのだから、合わせれるユウキはその一角に立っていると言ってもおかしくはなかった。

 

「むぅ・・・そ、それは別!それで今日はどうしたの?」

 

「それがだな・・・この人・・・ユリエールさんのギルドが一人第一層の地下迷宮に取り残されててな・・・」

 

「はい・・・シンカーが迷宮内部にいるのです。元々キバオウが一対一で話したいと言いはじめてこうなったのですが・・・地下迷宮が尋常ではないほどに厳しかったのです」

 

「なるほどね~・・・それで戦力としてでもボク達なんだ」

 

「そうなの・・・」

 

「んー・・・ユキが良いならボクはいいよ?」

 

「第一層、地下迷宮、か」

 

思考の海に入ったユキはその単語から情報を探す。

数分ではあるものの、一切の音を遮断していた。

無反応、無表情になったユキにユウキが心配そうにするものの、それも聞こえてはいなかった。

 

「・・・良い。行っても」

 

「へっ?」

 

「ちょうど良いから」

 

「う、うん」

 

「本当ですか!?有難うございます!」

 

「なら、すぐ行こうか。シンカーさんがいつまで安全とは限らないしな」

 

「ん・・・」

 

第一層地下迷宮に何があるのかユキにしか分からなかったが、ユウキには薄々それが分かっていた。

それを指摘はしないが少し嫌な予感だけはしていた。

 

 


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