ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第二十八話

第一層の地下迷宮は軍によって管理されているも、攻略はままならないものだった。

そのため攻略に見合うほどの報酬を得ることは出来ず、赤字を出す結果となっていた。

軍とて弱いわけではなく、中層では上位に入る程ではあった。

つまるどころ地下迷宮は上層、それも手慣れのプレイヤーでなければ攻略は難しいだろうと考えられていた。

 

「・・・弱い」

 

「あはは・・・ユキがいるとこんなに楽なんだもんねー」

 

ユキの《秘天剣》スキルの『自動索敵』によってモンスターの場所を特定すると『夢幻剣』による自動迎撃で処理していく。

強いて言うならばユキの頭を常に使うために頭痛と疲労があるもユウキがいるからか、そこまで気にはしていなかった。

 

「キリトさん、アスナさん。このお二人は・・・」

 

「あぁ、俺達の親友でもあるし、攻略組でも最上位に位置するプレイヤー・・・かな」

 

「紫髪の女の子が《絶剣》ユウキ。ローブを着てアバターを隠しているのが《孤高の剣士》ユキ。二人だけ揃っていても迷宮を攻略し得るんです」

 

「そんな人物が・・・有り難い限りです」

 

「・・・まあ俺達は子守だけどな」

 

キリトとアスナに課せられたのはついて来ると言って聞かなかった《ユイ》と呼ばれる黒髪の女の子と、二人の前で敵を消し飛ばしていく親友が連れてきた《ルル》という女の子。

事前にキリト達にはルルのことを伝えてあり、ユイと動揺の存在ということを伝えてあった。

 

「・・・?」

 

「どうかしたの?」

 

「索敵の反応が無くなった。もしかしたら、格上いがいる」

 

ユキのレベルはアインクラッドでも一番高く、《索敵》スキルも引っ掛からない相手がいないほどに高い。

そのユキの《索敵》が効かないというのはつまり、自分達が攻略している階層の遥か上、ということでもあった。

 

「・・・ユウキ。もしなんかあったら、キリト達と居て」

 

「・・・なんで、そんなこと言うの」

 

「俺でも、引っ掛からないのはつまり格上。ユウキじゃ、足手まとい」

 

今までの経験からユキは判断する。

元々ソロで縦横無尽に動き回るのが本領のユキの戦闘スタイルはパーティーとなると制限がかかってしまう。

ユウキと一緒にいても何も言わなかったのは、その実力に見合う所でもあったから。

 

「・・・分かった」

 

「ごめん、ユウキ」

 

「ううん。ボクが弱いのが駄目なんだよ。仕方ないって諦める」

 

一緒に戦えないことを寂しく思うも、今はユキと一緒にいれることを心底嬉しく思えるのは惚れてしまったからこその弱みなのだろうかとユウキは思った。

 

「・・・一本道。奥、明るい」

 

「ホントだ、あそこなのかな?」

 

「シンカー!」

 

その時、奥に見えたプレイヤーを見つけたユリエールが走り出す。

 

「ユリエールさん、駄目だ!止まってくれ!」

 

だがキリトの制止を聞かず走り出したユリエールは気付かなかった。

一瞬にして目の前に現れた黒い外套のモンスターに。

 

「っ・・・!」

 

それにいち早く気付いたのはユキだった。

頭の中でこの場に最適な戦闘法を模索する。

戦闘技術及び、それによる勝利への道筋を。

 

「はっあぁぁぁ!」

 

武器を一瞬で抜剣したユキは片手剣を逆手に持ち、霊想刀でその一撃を受け流す。

 

「・・・行って」

 

いつまで持つか分からない。

受け流しただけなのにユキのHPが一割削れていた。

 

「行って!」

 

「っ・・・は、はい!」

 

ユリエールが奥のエリアへと入るとユウキ達も警戒しながら入った。

分かっていたのだろう、自分達では相手に出来ないと。

キリトの《二刀流》でも分が悪いほどに。

 

「・・・あは」

 

だがユキはこの場を楽しめた。

死ぬつもりは到底なかったものの、一つ間違えれば自分は消し飛ばされる。

 

「ふふ、にゃはは」

 

《霊剣》によりユキのステータス上昇が行われる。

制限時間は5分。

それが過ぎてしまえば、ユキの負けが確定する。

 

 

黒い外套のそれはまさしく死神。

その手に持つ鎌もとても巨大であり。

到底倒すには不可能にしか思えない。

大きく振り下ろす鎌をユキは霊想刀で受け流し。

逆手に持った片手剣で一気になぎはらう。

この戦闘スタイルが元々のユキが現実世界でも使っていた。

 

「鏡花」

 

スキルアシストではなく、現実世界の技術を模写した。

元よりこの技は相手の攻撃を反射して攻撃するカウンター技。

しかし、それは現実世界だからこそ。

この仮想世界で行おうと考えるならば。

その処理速度を遥かに上回る事が必要となった。

鎌の一撃をあっさりと死神へ跳ね返すと、それだけで死神は消え散る。

そして代わりにユキに大きなバグにも等しいノックバックが襲い掛かる。

 

「あ・・・ぐ・・・」

 

凄まじい程の頭痛に、大きな疲労。

そして感覚が遠のいていく。

視覚が、聴覚が、嗅覚が。

どんどんと。

 

「ユキ・・・?ユキ!?」

 

安全を確認したユウキが泣きそうになりながらユキの元に走っていく。

今まで見たことにない苦しみ方だったからだろう。

 

「や・・・やぁ・・・」

 

初めてではないものでもユキは手足を暴れ散らす。

癇癪を起こした子供のように。

 

「やだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

一際大きな声をあげると。

糸が切れたようにユキの動きがプツッと止まった。

 

「ユキ・・・?ユキ、ねぇ!ユキってばぁ!」

 

いくらユウキが呼び掛けようとも。

 

「やだよ・・・!ボクを、もう独りにしないでよ・・・!」

 

泣きじゃくるユウキに応えてくれる幼い少年は反応を返さなかった。

 

「・・・ユウキ。ここは俺がやる。ユキが何のために連れて来たのか、察した」

 

「ひっぐ・・・」

 

「だから・・・戻っておいて欲しい。ユキにこれ以上何かあれば、ユウキに何かあれば。俺達は自分を許せない」

 

「・・・う、ん」

 

ユキを優しく包むように抱き上げるとユウキはふらふらとなりながら来た道を帰っていく。

その姿をキリト達はただ静かに見守ることしか出来なかった。

 

「ねえキリト君」

 

「・・・なんだ」

 

「ユキ君がなんでルルちゃんも連れて来てたのか分かったの?」

 

「・・・ああ。おそらくこの場所は緊急的な時にGMがログインするための場所だろう。ユキは無意味なことをやるような子じゃないからな。ルルを連れて来ていたのはつまるところ」

 

「・・・あの黒盤が何かある・・・ってこと」

 

「・・・さすが、パパが信じている人です。そこまで考えを至らせるとは思いませんでした」

 

あどけなさの残る声はまさしくキリトとアスナが連れて来ていたユイの声。

そしてその隣にはルルが立っていた。

 

「キリトさん。あなたの考え通りこの黒盤はGMが緊急ログインを行う際に使うコンソールです。あの死神のようなモンスターも本来80層から設置されている物で、ここを守護するために置かれていました」

 

「ユイ・・・ちゃん」

 

「私とルルは本来このSAOには現れてはならないのです。しかし、懐かしいような物を感じました。私達を創った人に」

 

「・・・それがユキ、ってことなのか」

 

「はい。私達の創造者でもあるユキはここへ連れていけばどうにかできると思っていたのです。その結果私は記憶を取り戻し、正常な状態へと戻りました」

 

ルルは静かにコンソールを触り、キーボードを打ち込んでいく。

それを見守ると、プログラム群が書き換えられて行くのがキリトの目では分かった。

 

「私達を異物と判断、削除しようとしました。お父さんはそれが嫌だったです。だからここに連れて来た」

 

「GM権限を一部持っている私達と完全な権限を持つパパはコンソールの操作が可能です。それを使い、私達をSAOのカーディナルから切り離そうとしたのでしょう。先程ルルが行ってしまいましたが」

 

「ユイ、ルル。君達は思考がある・・・プログラムと言うことか」

 

「はい。創造理念、プログラムの構成、存在の理、その全てをパパが創ったのです」

 

「・・・そういう、ことか」

 

キリトはほうやく合点がいった。

何故あそこまで強く、知識もあったのか。

元々製作者側なのだ。

それならば全てではないが、SAOのことを知っていて当然、と思った。

 

「・・・二人は、消されたりしないのか」

 

「先程ルルの手により私達のデータ全てがパパのナーヴギアへ移動されました。不要なデータは切り離しましたがこうして存在を維持出来ていることからカーディナルには消されない、消せないようになっているはずです」

 

「そう、か」

 

成すべき事を終えたキリト達は、一度戻ることにした。

意識を失ったユキと、その恋人のユウキが気になっていたのはアスナも同様で。

パパとお父さんと慕う二人も早くその姿を見たいのだろうと。

 

 

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