ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第三十三話

依頼を受け数週間。

カタカタと夜中に一人、パソコンが出す人工的な光でキーボードを叩き、目を凝らしていた。

 

「・・・これ、か」

 

優紀がずっと探していた情報。

何故SAOサバイバーが今もなお目を覚まさないのか。

SAOのプログラムを作っている優紀はその大部分をしっかり作ってあった。

ゲームクリアによる帰還のプロセスは、ゲームクリアによる仮想体から現実世界の体へと意識を戻す際にはナーヴギアによって止められた脊髄を戻す機能が必要となる。

だがSAOサバイバー全員にはその機能が正常に作動しているのにも関わらず帰還がされていない。

それを不思議と思った優紀は、一度ナーヴギアごと精査することにした。

精査するナーヴギアは木綿季のをさせてもらえることとなり、木綿季の家族にもその許諾を貰い解析をした。

その結果が優紀の目の前のパソコンに全て映し出されている。

 

「・・・第三、第四のプロセス・・・書き換え?」

 

SAOの大元となっているカーディナルシステムは優紀によって作り出されている。

そのプロセスやプログラム郡は全て記憶しており、茅場には一切触らせていないのだ。

なのにも関わらず一部プロセスが変わっているために帰還が出来てないことが分かった。

 

「・・・と、なると」

 

一つの可能性を考え、とある会社を検索する。

それはレクトと表示されたものだった。

現在SAOサバイバーのナーヴギアを引き受けているのはレクト社で、そこに何かあるのではと考えた。

表面上は普通のサイトではあるが、カチカチとマウスを動かすと裏のサイトへと繋がった。

 

「ん・・・」

 

強固なプロテクトが張られていたが優紀の前では無いも同然の防御なので、細工をしてばれないよう侵入する。

 

「・・・実験?」

 

実験と書かれたデータには、暗号文章で書かれていた。

それを一つ一つ解読をしていく。

 

「思考、感情、操作・・・自己の形成」

 

そのデータにはかなり最近のもので数時間前にも更新がされていた。

内容は残虐で、数百人の脳を解析し、その意識に刺激を与えることでどのような結果を得れるのかという実験結果だった。

 

「数、サバイバーと同じ・・・?という、ことは」

 

裏サイトのレクト社を一度、大解析した。

少し時間がかかっていたが、結果としても充分な物で。

帰還するSAOサバイバーをアーガス社に入る前にレクト社のサーバーに一部介入するように改造されていた。

 

「・・・なるほど、ね」

 

あまりにもお粗末で、粗雑だった。

これほどの実験を行うのなら強力なプロテクトに加え、データはすぐに処分すべきだった。

結果として逆探査による情報を全て引き出せるのだからお粗末といえるやり方だった。

 

「・・・こんなので、木綿季が」

 

くだらない、と思いながらも優紀は資料へとしていきながらパソコンと向かい合っていた。

 

 

 

 

 

クリアファイルの中の資料をしっかり確認し終えると、携帯で依頼人を呼び出す。

時間はいつの間にか朝方になっており、ちらほら仮想課の人員が出勤しに来ていた。

 

『や、やあ。おはよう』

 

「・・・どうも」

 

『どうしたんだい?こんな朝早く』

 

「警察の手配。一気に取り押さえれるぐらいで、レクト社に送って」

 

『・・・それは確証を得れた、ということかな』

 

「そう、言い逃れなんて、させない。既にデータも取って、記憶もした」

 

『・・・君だけは敵には回したくないな。国としても』

 

電話を切られると、優紀は使ったパソコンを落として総務省を出る。

さすがに子供の優紀が中にいる事を不思議に思ったり怪しんだりしていたが、すぐに立ち去ったので気にはされなかったようだった。

 

「ん・・・」

 

携帯を突如取り出し、以前記憶した電話番号をかけると数コールしてかかった。

 

『はい、桐ヶ谷です』

 

「・・・桐ヶ谷和人さんは、いますか」

 

『あ、は、はい。すぐに変わりますね』

 

電話に出たのは女性で少し幼さがある声だった。

年齢は中学生か高校入りたてだろうかと思いながら待っているとすぐに相手が変わる。

 

『変わりました、桐ヶ谷和人です』

 

「・・・」

 

『あの、もしもし』

 

「もうすぐ、帰還する。病院行ってると良い」

 

『どういう意味だ?』

 

「・・・じゃ」

 

ぶつっと電話を切ると今度は電話がかかってくる。

菊岡と表示されていたので準備が出来たのだろう。

 

「・・・はい」

 

『言われた通り準備は出来た。捕まえる人物は須郷伸之だね』

 

「ん、そいつの裏を探す。それに携わった人物も全員」

 

『出来なかったら?』

 

「・・・さあ」

 

『確たる証拠を残さない君にされてしまうと事を吐かせる人物も減るから確実に捕まえさせてもらうよ』

 

「情報、転送してある。気が向けば見たら良い。これで仕事は終わり。約束は遵守」

 

『飛躍しまくるね・・・分かった。協力感謝するよ』

 

それで電話が切られると、優紀はタクシーを捕まえて病院へと急ぐ。

 

「横浜総合病院まで」

 

運転手は聞き間違えかと思いながらも何も言わないからか、言われた通りの病院へ車を走らせた。

 

 

 

 

 

かなりの時間がかかったが、自分の住む街へ戻った優紀はすぐに病院内へ入る。

 

「あの」

 

「ああ、優紀くんか。いつもので良い?」

 

「はい」

 

「んーっと、はい。お見舞い行ってらっしゃい」

 

「ん・・・」

 

いつもの受付で優紀は5階へと上がると23号室へと向かう。

少し病院内が騒がしく感じるも、無視して中へと入った。

ベッドには寝たきりの木綿季がいた。

前に見たときと変わらずに。

 

「・・・まだ、かな」

 

報告をして、この場へ来る時間。

どれだけ早く中を制圧しているのかによるが、優紀の計算ではもうそろそろ終わっていてもおかしくはないと考えていた。

 

「・・・木綿季」

 

木綿季の手をぎゅっと優しく握ると疲れていたのか、優紀の視界がぼやけていく。

 

「ぁ・・・れ?」

 

総務省で、最低限の栄養を取りつつもデータの優先をしていた為に優紀に今1番足りないのは睡眠。

不眠不休で出来るほどまだ優紀の身体は出来ていないのだ。

常人離れした身体があっても、幼過ぎる。

 

「ぁ・・・ぅ・・・」

 

パサッと力尽きたように優紀は寝てしまった。

それでも手に握られた木綿季の手は離さないと言うように。

 

 

 

 

 

ひんやりとした風が優紀へと当たっていくと、目が覚めたのか優紀の瞼が開いていく。

 

「ん・・・ぅ・・・」

 

身体を起こすと何かが落ちていて、それを持ち上げると毛布だった。

寝てしまった優紀に誰かが毛布をかけていたのだ。

 

「今、は・・・」

 

「・・・ゅ、ぅ」

 

小さくか細い声で、掠れていたが優紀の耳には聞こえていた。

ゆう、と呼ぶ人は世界で一人しかおらず。

 

「ぁ・・・ぁ・・・!」

 

ベッドには横たわっていた人物はおらず。

優しい表情で風に吹かれながら優紀を見詰める少女がいた。

 

「・・・こ・・・ぇで、ぃや・・・」

 

頑張って声を出そうとしているが、身体機能が落ちているからか喋り方がたどたどしく、掠れていた。

 

「木綿季、木綿季!」

 

倒れない程度に優紀は飛び付くと小さく嗚咽を鳴らす。

ずっと、待ち続けていた愛しい少女が。

帰ってきてくれたことがどんなことよりも嬉しかったのだ。

 

「良かった・・・良かったぁ・・・」

 

帰ってきて来るだろうと高を括っても。

不安しかなかった。

失敗すれば、間違えれば。

二度と帰ってこなく、会えなくなるのかもしれない恐怖も確かにあったのだ。

 

「ょ、し・・・よ、し・・・」

 

SAOの時よりも細くなった腕でも、優紀をあやすときにしてくれたものは一緒で。

それがなにより安心できていた。

 

「ゅ、き」

 

木綿季がまたそう呼べば。

抱き着いて泣いていた少年から嗚咽は聞こえず。

小さく安心しきった表情でまた寝てしまった優紀を優しく抱きしめて少女もまた寝付いた。

 

「ぁ、り・・・が、とぅ」

 

いま木綿季が言える言葉。

それだけが優紀に言える一番の物だろう。

 

 

 

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