ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第三十四話

木綿季が現実世界へ帰還して一ヶ月ほど。

全国の病院から未帰還のSAOサバイバーが続々と帰還していっており、未だ目を覚まさない人も遅れてだが目を覚ましていった

優紀によって暴かれていったレクト社の裏は警察により完全に抹消された。

その報奨金として優紀の通帳に0が十数桁行くほどには。

 

「ん・・・」

 

また優紀による協力の条件によって優紀本人と友人や家族にはマスコミや警察関係者が来ることはなかった。

それは優紀の過去に大きく触れかねない事もあるために国家側も手を回していたからだろう。

 

「うんしょ・・・うんしょ・・・」

 

「・・・頑張れ、木綿季」

 

いま優紀はリハビリ室にいる。

それは木綿季のリハビリのお手伝いと同時に歩行能力が推定基準を超えているかの試験的な意味もあった。

 

「よい、っしょ・・・!」

 

誰の手も借りずに補助棒無しで決められた距離を一人で歩けることができれば木綿季はリハビリが終わる。

その最後のリハビリとも言える距離を歩き終えるとその時間を看護師が計測していた。

 

「うん、木綿季ちゃんの歩行能力は充分回復したと思うわ。だけれど検査の結果がまだ出ていないのがあるからそれ次第で退院をしても良いでしょう」

 

「本当!?やったー!」

 

幼いときに難病とされたAIDSを患ったからか、リハビリの熱心さが尋常ではなかった。

優紀に匹敵するほど早く、看護師や専門医が驚くほどに。

 

「優紀、もうすぐ退院出来るって!」

 

「ん・・・だね」

 

「それでね、その・・・ボクの事なんだけど・・・」

 

「・・・?」

 

「保護者、なんだけどね。ボク達は子供だから。一人暮らし出来ないんだ・・・」

 

「・・・あの人に頼む」

 

優紀は携帯を取り出して電話をかけた。

数回ほどコールが鳴って電話に出た。

 

『はい』

 

「・・・久しぶり。姉さん」

 

『っ・・・』

 

電話をかけた相手は優紀の義理の姉だった絢音。

まさかかかってくるとは思っていなかったのか、躊躇いが電話越しでも感じ取れた。

 

「・・・話したいこと、ある」

 

『・・・分かったわ。あの子も?』

 

「・・・好きにすれば」

 

『・・・そうするわ』

 

ぶちっと切られると優紀は少しため息をついた。

縁を向こうから一方的切っているため絢音からすれば気まずいのだろう。

それをずっと声色で分かっていた優紀はどことなく嫌な感じがした。

 

「優紀・・・今のお姉さん?」

 

「ん・・・元、ね」

 

「その人になってもらうの・・・?」

 

「そうするしかない。姉さんなら他よりまし」

 

「・・・そっか」

 

「・・・会って来る、ね」

 

「うん。気をつけてね?」

 

 

 

木綿季と別れると、かつての家に帰った。

お腹が途中で空いたので買い食いなどをしつつも手早く帰ると車が止められていた。

鍵はかかっていなかったので、玄関の扉を開けるとリビングで絢音が座って待っていた。

 

「久しぶりね、優紀」

 

「ん・・・」

 

「それで話は何?」

 

「・・・保護者になってほしい」

 

「そんなことだろうと思ったわ」

 

「それと・・・」

 

木綿季とその姉もと言おうとして喉が詰まった。

優紀と絢音は関わりが義理でもあったからこそ。

木綿季とその姉は優紀を介する事になり、直接的関わっていない。

保護者というのは面倒な物であり、保護する人物が多いほど責任も増える。

 

「・・・言いなさい」

 

「・・・でも」

 

「あなたの事になるなら苦じゃないわ。本意じゃないとはいえ見捨てたのよ?」

 

「・・・もう二人ほど、保護者になってほしい・・・」

 

「・・・誰?」

 

「恋人、と恋人のお姉さん・・・」

 

「どうして?親は居ないの?」

 

「っ・・・」

 

「そんなことが言えないのなら無理よ。どこの馬の骨か分からない子供の保護者になるのは易いことじゃない。それぐらい分かっているでしょう?」

 

「・・・」

 

世界ではAIDSによる特効薬が配られている。

日本でも同じだが、その偏見が無くなるとは限らず、未だ偏見を持つものもいる。

絢音相手にそれを言っていいのかと考えていた。

 

「訳あり、なんて貴方に比べたら可愛い物よ?容易い事じゃないのだけれどお母さんは断固として曲げようとしなかったもの」

 

「・・・AIDS」

 

「AIDS・・・?」

 

「元AIDSの患者、だから。偏見されると、思った」

 

「・・・確かにね。だけど治る病気になったのよ?気にしないわ」

 

「・・・本当?」

 

「ええ。だけど・・・戸籍とか色々あるからすぐは無理ね・・・」

 

「・・・任せて」

 

優紀は携帯で電話をかける。

相手は腹黒の役人眼鏡と表示されている。

 

『菊岡です』

 

「ん、どうも」

 

『おや、優紀くんじゃないか。何かあったかい?』

 

「報酬の件。変更」

 

『内容は?』

 

「身元引受人が出来た。その人が保護者になるよう、俺と紺野家をやって」

 

『・・・内容は対して変わらないね。分かった、報酬の増減を感じさせないものだからやっておこう』

 

「ん、それじゃ」

 

ぶつっと切れると優紀は絢音に向かい合う。

 

「裏で多分、終わる。やらないと、だめなのは印と自筆記入だけ」

 

「・・・誰にかけていたのか聞かないわ。でも気をつけなさい?」

 

「ん・・・分かってる」

 

絢音は優しく優紀の頭を撫で上げると立ち上がってぎゅっと抱きしめた。

 

「ぁ・・・」

 

「・・・ごめんなさい。一人にしてしまって」

 

「ん・・・」

 

優紀が捨てられて以降の抱擁は久々だった。

義理でも、絢音という姉は誰にも変えれない。

 

「木綿季さん、だったわね。いい子を見つけたね」

 

「う・・・」

 

「SAOで会ったとき、貴方を絶対離さない、誰にも渡さないっていう強い意思を感じたわ。それほどまで想われるというのはね、難しいことなの」

 

「ん、そう、だね」

 

「もうすぐ、退院するのかしら?あの子は」

 

「うん」

 

「なら、電話を寄越しなさい。迎えに行ってあげる。夜々は・・・しばらく無理ね。癇癪起こして手を付けれないわ」

 

「・・・そっか」

 

「いつか会うことになるのよ?優紀が嫌なら考えるけれど」

 

「ん・・・別に」

 

「そう・・・」

 

数分ほど優紀を抱きしめると、すっきりとした表情で絢音は玄関へ向かった。

 

「この家は優紀の物になっているわ。玄関の鍵は貴方と私しかないから、合い鍵は作っておきなさいね」

 

「・・・うん」

 

「それじゃ、またね」

 

「うん、また」

 

絢音が家を出ると優紀はリビングのソファーで寝転んだ。

昔はこのソファーで寝てしまうことがあったのを思い出していっていた。

それでも断片的で、全てを覚えているわけではない。

だけどキーとなる何かがあればそれを思い出せそうな、そんな気がした。

 

 

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