ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第三十五話

絢音との話から数日。

優紀はいつも通り病院に行こうとするが、その前に絢音に電話をかける。

 

「ん、姉さん」

 

『優紀?どうしたの?』

 

「今日、迎え来れる?」

 

『今日は・・・予定も仕事もないわ。今からなら・・・』

 

「病院。横浜の総合病院に来てて」

 

『横浜総合病院ね・・・分かったわ。先に木綿季ちゃんに説明しておきなさいね』

 

「ん・・・」

 

ぶつっと切られると優紀はすぐに支度して家を出る。

優紀の所有物となっている家はかつての家族と過ごした思い出が少なからずあるからか、優紀の手により綺麗さっぱりと掃除されていた。

 

「・・・行ってきます」

 

今日の日は強かったのか、優紀はフードを被って長袖の恰好をしていた。

長い黒髪は慣れているからか、フードの中に綺麗に入るよう纏められていたが。

 

「・・・は、ふ」

 

季節は秋ほどで、肌寒い感じ。

日差しが強くなくとも長袖を着るには充分なほどではあった。

 

「・・・早く、会いたい、な」

 

昔の自分では考えれなかっただろう幸せを。

人に頼る、人に甘えるというのは単純に恥ずかしい気持ちがあるも優紀を真っ向から愛してくれた少女らば叶えれる。

 

「・・・ん、えへへ」

 

フードで表情こそ見えにくいが、普段無表情の優紀は珍しくだらしなく木綿季の事を考えていると幸せに満ちていた。

 

 

 

 

 

普段と変わらない足の早さで病院へと着くと、停車場には絢音の車と思えるものが停まっていた。

 

「・・・遅い」

 

「・・・ごめんなさい」

 

「全く、十分ほど待ってしまったのよ。これならああたを迎えに行けば良かったわ」

 

「・・・うん」

 

「まあ、来たことだし木綿季ちゃんを連れてきなさい。待ってるんでしょう?」

 

「姉さんは、来ないの?」

 

「・・・来てほしいなら、着いていくわ」

 

「・・・お願い」

 

義理の姉である絢音と木綿季達は長い付き合いになるはずだと優紀は思った。

それならば今からでも仲良くしてほしいというのが優紀の考える理想。

 

「あら、優紀くん。あの子のお迎え・・・かな?」

 

「ん、はい」

 

「手続きはもう終わっているから大丈夫よ。しっかり連れて帰ってあげてね」

 

「ありがとう、ございます」

 

いつも通り入るためのカードを受け取ると病院の5階へ上がる。

23号室が木綿季の病室。

3回ノックすると中から元気の良い返事が聞こえた。

 

「はーい!」

 

「ん、木綿季」

 

「あっ、ゆうー!」

 

優紀の姿を確認すると同時に木綿季が飛び付く。

毎日のようにお見舞いで来ているがそれでも木綿季にとっては常に居たいのが本音。

面会時間を過ぎると優紀は帰ってしまうため一緒にいれる時間は少なかった。

 

「よし、よし」

 

「にへへ、ゆう~」

 

「甘えん坊の恋人同士だと甘々ね」

 

「ぁ・・・」

 

「あっ・・・ご、ごめんなさい」

 

「構わないわ」

 

少し呆れた様子ではあるが、優紀が幸せそうにしているからか余り咎めなかったが。

 

「一応自己紹介はしておくわね。私は村雨絢音。村雨家の長女で、優紀の義理の姉よ」

 

「紺野木綿季です・・・!」

 

「・・・SAOの時とは大違いね貴女」

 

「あはは・・・」

 

「木綿季、今からお姉さん呼べる?」

 

「ちょっと待ってね。電話かけないと・・・」

 

木綿季が引き出しから自分の携帯を取り出すと自身の姉に電話をかけた。

すぐに繋がったようで、ちょっと話をするとすぐに終えた。

 

「今家にいるみたい。とは言っても・・・あの家は親戚に権利があるから・・・」

 

「ん・・・家、一緒住む?」

 

「へっ?」

 

「・・・優紀、もう少しかみ砕いて話しなさい。それでは木綿季ちゃんが理解しきれないでしょ?」

 

「ん・・・」

 

「木綿季ちゃん。よく聞いてちょうだいね。今優紀が暮らす家なのだけれど、その所有権は優紀が持っているの。部屋も余ってるから木綿季ちゃん達が住むにはちょうど良いでしょう?」

 

「え、えと。良いんですか?」

 

「既に優紀が色々と手を回したおかげで、木綿季ちゃんとそのお姉さんの保護者は私になっているの。親戚の方にお世話になるなら強制はしないけれどね」

 

「ゆ、ゆうは・・・良いの?」

 

「ん・・・構わない。嫌なら言って」

 

木綿季は少し考えるも、すぐに決めて一緒に住むと言った。

木綿季曰く姉も着いてくると言うと言っているのでメールでその旨と住所を送っていた。

 

「さて、木綿季ちゃん。まずは着替えましょうか」

 

「は、はい」

 

「ん・・・出てる、ね」

 

木綿季の裸は見たことがあるとはいえ、躊躇なく何度も見るものではないと優紀は病室を出ていく。

 

「あ、あの絢音さん」

 

「ん、なにかしら?」

 

「ボクの服・・・家にあるんです」

 

「大丈夫よ。優紀が見繕ったものがあるから好きに着なさい」

 

「は、はい」

 

SAOの時に優紀と一緒に寝ているために、その体型を全て把握されており、2年後の体型も演算し推測されるもので様々な服を買っていた。

 

「ふぅん、あの子も良いセンスあるわね」

 

「そ、そうですか・・・?」

 

木綿季が選んで着たのは暖かい服装でありながら、動きやすいものを。

活発なのはSAOの時に知っているためにリアルでも同じだろうと動きやすい服装も買っていたのだ。

 

「うん、良いわね。充分可愛いわ」

 

「ありがとうございます・・・」

 

「ほら、行くわよ。新しい貴女の家へ」

 

絢音が木綿季の荷物を持つと、病室を出ていく。

看護師が木綿季の事を見つけると退院を祝っていたり、優紀との関係を温かい目で見守っているものなど様々。

 

「木綿季」

 

「うん?」

 

「似合ってる。可愛い、よ?」

 

「・・・えへへ」

 

優紀が少し照れつつも褒めてくれた事に木綿季は嬉しがりながら優紀の手を握る。

木綿季のが歳は上でお姉さんなのだ。

しっかり者として、彼女として優紀をしっかり守ってあげたいと同時に甘やかしたいという気持ちもあった。

 

「イチャイチャしないの。家についたらたくさん出来るんだから」

 

「あ・・・ごめんなさい」

 

「ん、手握ってる、だけ」

 

「木綿季ちゃんの事しっかりしなさいよ?私は出張業だから長く帰れない日もあるのだから」

 

「ん、分かってる」

 

荷物を車にしまって、中へ入ると優紀の隣に木綿季が座る。

車の中は程よい温度で優紀は木綿季の膝にこてんと頭を預けると目を閉じた。

 

「ゆう・・・?」

 

「寝かせてあげなさい?木綿季ちゃんなら分かるだろうけれどね」

 

「・・・そう、ですね」

 

「あと敬語はなくても良いわ。呼び方も好きにしなさい。保護者とはいえ義理の姉のような感じになるのだから」

 

「・・・はい、あ・・・う、うん」

 

「それじゃ車出すわよ。着いたら起こすから寝てても良いからね」

 

少し冷たいように話す絢音の言葉には優しさと心配が混じっているのが木綿季には分かった。

優紀の事を案じると同時に恋人でもある木綿季も心配しているのだ。

 

「ふぁ・・・」

 

膝の上で寝てしまった優紀を起こさないようにしつつ、木綿季も暖かい気持ちでうとうとと眠りについた。

 

「・・・さて、行きますか」

 

車のエンジンをかけると温度をちょうど良いぐらいにして自分達の家になる我が家へと車を走らせて行った。

 

 

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