ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

4 / 37
第四話

家に帰った俺はとりあえずどうするのか頭の中で整理した。

まず俺はただの子供。

実験施設で実験体として捕らえられた事があるというだけだ。

だが、手がある。

実験施設の事はかなりの国家機密で、俺とその強襲部隊と政府しかしらない。

違法実験・・・それも、国家に対する何かだと考えれば妥当だ。

人体を改造する実験で兵器や殺人ウィルスなど挙げていけばキリはないが国家としては公に出来ない物だった。

そん時の関わりを使えば、出来なくはない。

それに無駄に実験施設では弄られてた分、知識はある。

行動を移すべく教えてもらっていた電話の番号を非通知で入れた。

 

『菊岡です』

 

「・・・菊岡さん、ですか」

 

『君は・・・優紀君だったかな?』

 

「はい。少し聞いてほしい話があるんですが」

 

『・・・分かった。今からいう所に来てもらって良いかい?』

 

「分かりました。俺は顔を隠してるので子供で搾れば見つかると思います」

 

俺はそれで電話を切ると姉さん達を心配させないように書き置きを残して家を出た。

場所はバスで行った、遠いし。

そうして指定された場所・・・というかお店に着いたけど・・・。

 

「・・・場違い感」

 

子供の俺には場違い感しかないけど仕方ない。

高級スイーツ店に入って件の人を探す。

すると、無駄に目立つ様に俺を呼ぶ人がいた。

 

「優紀君ー!こっちこっちー!」

 

スーツ姿の眼鏡をかけた男が俺を呼ぶ。

それが視線を集めてやがて俺へと向けられた。

 

「・・・嫌な、視線」

 

その視線は見定めるような感じで、粘っこい。

俺が嫌うもので見られていて気持ち悪くて吐き気がする。

少し早走りで呼んだ男の反対側に座る。

 

「やあ、久しぶりだね」

 

「・・・そうですね」

 

「今日は何かあるのかい?」

 

「・・・国として考えて下さいね」

 

国、つまりは個人的な理由ではなく大事だと分かってもらう言い方。

それに菊岡さんは真剣に聞いてくれる。

 

「AIDS・・・聞いたことありますよね」

 

「・・・ああ。治せない病気だね」

 

「治療薬があるとしたら、どうしますか」

 

「・・・多くの人を救える。かなり価値があって世界的にも有用だと思うよ」

 

「・・・薬物の研究施設を貸してほしいです。代金は・・・俺の知識にある『AIDS特効薬』」

 

国として俺が受けていた事を聞き出そうと、俺に事情聴取を行った。

だけど俺は一切の黙秘をして、知識は何も出さなかった。

実験施設は書類など残ってしまうデータは全て廃棄しており、それらは全て俺の頭へと収まっている。

国はそれが欲しいが聞き出せないので保留している。

 

「・・・分かった。君の知識は大いに役立てる。不治の病だったAIDSを治せるのは素晴らしい」

 

間違えられがちだがAIDSは症状でHIVはウィルス。

AIDSの治療法はHIVを死滅させれば消える。

HIVは免疫細胞の司令塔であるヘルパーT細胞に取り付いてその能力を無くす事に特化している。

免疫細胞は命令が無ければ一切動けないので、このヘルパーT細胞が機能しなくなれば必然的に免疫は完全に無くなる。

 

 

菊岡さんに用意してもらった研究施設はそこそこの大きさで研究員は俺だけ。

というのも菊岡さんは知っているが俺は人が好きじゃない。

見知らぬ大人など要れようものなら俺が暴れ散らすと知っているのだ。

事情聴取の時に実際暴れてたし。

 

「・・・よし、やろう」

 

家族には書き置きだけして何も言っていない。

俺から言おうと思ったけど、両親に繋がるとは思えないし、姉さんや夜々に言えば帰ってこいと言われるから。

 

「久しぶりに、独り・・・か」

 

寝泊まりも研究施設でする。

食事は国家権力で菊岡さんが何とかしてくれると言ってくれたけど、元々俺はそこまで食べない少食なので普通の注文にするつもり。

 

 

 

 

 

数週間して慣れたその研究施設で俺は忙しなく動く。

本来は数十人でやるこれを俺は一人でやる。

動きやすいし、会話がない分言わなくて良い。

 

 

 

 

 

数ヶ月。

人体には超危険な毒物ではあるけどHIVを死滅できる薬品が出来た。

これでは服用すれば普通に毒で死ぬので次は毒がない物を作る。

 

 

 

 

 

また数ヶ月。

一年ほど経った。

誕生日を祝う人などいないから忘れていた。

動物実験は成功して、今度は人で出来るか試行錯誤。

 

 

 

 

 

5ヶ月後。

ここまで2年と5ヶ月ぐらいか。

何回も確認して、漸く危険がない錠剤が出来た。

粉末だと飲みづらいけど錠剤なら飲みやすい。

また、子供でも効用は出る様にした。

そのために作ったから。

 

 

 

 

 

俺は菊岡さんを呼んで、日本の薬学会にそれを提出してもらった。

それは認可されて名前が表されるはずだけど、俺は名前を出してほしくなかったので偽名でやってもらった。

特許とかは国の力で色々としてもらって俺が所持して生産は機械生産出来るように紙束を菊岡さんに押し付けた。

被験者があればすぐに生産を始めれるらしい。

やはり効果が認められても人々からすれば安全性が保証できないとダメらしい。

 

「・・・横浜のある病院に、HIVにかかってる女の子がいる。その女の子に頼んで」

 

「・・・知り合いなのかい?」

 

菊岡さんの問いに俺は頷いた。

すぐに菊岡さんは動いて手続きを色々してくれた。

俺も出来るけどさせてくれないだけ。

 

「・・・ご家族、主治医、そして本人からも確認が取れた。被験者になっても良いと」

 

「ん・・・なら、被験者データだけを出してその子に関わる他のものは一切公開しないで。個人情報とかも」

 

「・・・難しいね。情報が無ければ怪しまれる」

 

「データだけ。普通はそんな他の情報はいらないでしょ」

 

「・・・だが」

 

「出したら国潰す」

 

「分かった、全力でなんとかしよう」

 

普通に俺は裏側からこの日本を潰せる。

実験施設の事を公にすれば少なくとも国民による反乱が起きるだろう。

そうなれば国は成り立たないから全力で止めようと菊岡さんは冷や汗を流しながら動きに行った。

 

「・・・木綿季、俺作ったよ」

 

頭に出てくるのはお日様のような暖かい匂いがする紫紺の女の子。

今は・・・中学生なのかな。

 

「はは・・・待たせすぎて、忘れられてるか」

 

待ってると言われても2年半ほどだ。

それに小学生同士の約束なんて覚えていないだろうし。

でもやりたいと思ったこの研究だから良い。

 

「・・・もう、ここも用はない・・・か」

 

俺は2年半も付き合ってくれた研究施設から去るとあの家に戻る。

結構遠かったけどお金はあったのでそれで帰った。

さすがに新幹線レベルだったのはきつかったけど。

そうして数日かけて俺は家に帰った。

 

だけど、家は凄く静かで人の気がしない。

まるで空き家のように。

 

「・・・静か」

 

持っている家の鍵を使って開けた。

玄関はすっからかんで靴一つもない。

その時点で分かった。

 

「・・・そっか。捨てられたか」

 

捨てられることに何も思わない。

元々実験で弄られた子供を引き取ろうと思ったあの家族がおかしい。

父親は嫌そうに俺を見ていたし。

母親は凄く優しくて本心によるものだと分かってたから。

姉さんも夜々も最初は俺の扱いに困ってたけど徐々に話すようになった。

 

「・・・捨てられた・・・かぁ・・・」

 

俺はこれほどまで弱くなってたのか。

人が恋しいと思うほどに。

だけどもういいやと思った。

どうせ人は信用ならないと再認識出来たから。

どうせあの二人もその場で俺にかけた言葉だったのだろうし。

そう思うと記憶に残った今まで記憶が全て色褪せる。

温かかった記憶が全て冷たく凍っていく。

もう意味が無くなるように。

 

「・・・そっか」

 

つまらない人生だとは思っていた。

生まれたときから俺は独りだったし、慣れている。

なら、もうこんな温かい物はいらない。

その時にこの家に一人の男がやってきた。

見た目は白衣で研究者っぽい服装で。

 

「・・・何のよう」

 

「君を街で見たとき何かが違うと思ってね」

 

俺は街に行ってなどいない。

この男は嘘をついた、分かりやすい嘘を。

 

「・・・そう。それで」

 

「私の夢を手伝ってくれないか。君の事は知っている。そのうえで協力してほしい」

 

「・・・何を手伝えば」

 

あっさりと協力してくれることが意外だったのか、少し驚いている。

べつに協力したところで俺は独り身だ。

 

「ここで話すことは難しい。本社で話そうか」

 

外に歩こうとしたとき足を止めて俺を真剣な目で見つめていた。

小学生の子供に。

 

「そういえば忘れていた。私は茅場晶彦という」

 

「ん・・・そう」

 

「名を教えてくれても良いのではないか?」

 

「別に教えたところで必要ないと思う」

 

「私が気になるのだよ。君の今の名を教えてくれ」

 

「・・・家族はいない。だから名前だけ。優紀だ」

 

「ふむ・・・優紀君か。よろしく」

 

この男の夢は夢見た風景をただ作ること。

鋼鉄の城を作り上げることだった。

普通の人ならば馬鹿馬鹿しいと思えるだろう。

だが俺はそんな夢を持つ男に尊敬を持った。

夢も目標も持たない俺にとって凄いと思えた。

 

「・・・茅場、プログラムはどうするんだ」

 

「プロに任せているが・・・完全自律型自己学習プログラム。これが必要だ」

 

「そうか・・・半年だ。半年待ってろ」

 

俺の無駄な能力が人に役立てるのならと。

プログラムの担当をした。

俺が作り上げたのは、メインとサブの二つの巨大プログラムがお互いにエラーを修正し学習する物を。

あらゆる情報を取得できるようインターネットにも繋げ、そこからクエストを生成できる様に。

 

「・・・凄まじいな」

 

「普通、時間がかかるだけ」

 

「優紀君。もうすぐ出来上がるこの作品をプレイしてくれないか」

 

「・・・良いよ」

 

「・・・ありがとう」

 

俺の仕事は終えて茅場に頼んで部屋を貰った。

あの家に戻る必要を感じれなかった。

物盗りが入っても良いぐらいすっからかんだから必要ない。

俺が関わったゲームに少しでも近くに入れる方がいい。

 

「もうすぐ・・・か」

 

数日後に公開されるゲームに俺は少し楽しみだと思いながらその日までのんびりすることにした。

 

 




次回からSAO突入。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。