ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第六話

あれから2ヶ月ほど経ったSAO。

俺は迷宮区でレベル上げをしていた。

当然レベル差で俺が勝っているから経験値は少ないけど無いよりはマシだし、素材が集めれるから悪くは無い。

そうして迷宮区のマップ踏破率100%にするべく細かく埋めていたら当然見つけてしまった。

 

「・・・ボス部屋」

 

それと同時にマップ踏破率は100%になったので残るはフロアボスを倒すだけとなった。

好奇心から俺はボスの偵察をしようと中に入った。

中は大理石の柱のようなものが立っており、奥には二層へと繋がる扉があり、その道に立ちはだかるように巨大な影が立っていた。

 

第一層ボス《イルファング・ザ・コボルドロード》

 

その取り巻きが数体ポップして出てくる。

 

「・・・少しだけ・・・少しだけ」

 

取り巻きは鎧を装備しているが間を狙えば良い。

鎧と鎧の間・・・《鎧通し》と呼ばれる現実の技術で攻撃する。

ボスのHPは4本、β通りで行けば1本になって武器変更が入る。

 

「せやっ!」

 

取り巻きをさっさと倒してボス単体になる。

基本的にコボルド王は動きが鈍いから回避をしっかりすれば軽く回避できる。

攻撃した後の隙を狙うだけの作業。

そうして残りゲージ一本になると持っていた武器を投げ捨てて新しい武器を取り出す。

それは『野太刀』と呼ばれる刀カテゴリ武器。

βは曲刀カテゴリの『タルワール』だった。

 

「武器変更・・・それと」

 

それに追加で雑魚共が復活していた。

恐らくこの場合は無限ポップだろう。

 

「ちっ、分が悪いか」

 

ボス単体なら俺一人でも余裕で行ける。

だが取り巻きが邪魔だ、確実に死ぬ。

 

「・・・帰ろ」

 

今はこの情報が分かっただけ充分。

βから懇意にしてる情報屋に教えれば結構変わるな。

敏捷全開でボス部屋から撤退して迷宮区を走り回る。

迷宮マップは完全踏破済みだから帰り道も何のその。

そのまま走って迷宮区最寄りの街《トールバーナ》に行こうとした時にちらっと人影が見えた。

 

「・・・気になるな」

 

何となく気になったので行ってみれば、そのプレイヤーは戦う気力は無いのかHPが赤い状態で点滅しており、無気力だった。

近くにはモンスターもいるのを見て死ぬ気なのだろうと分かった。

人は嫌いだ、信用ならない。

でも死ぬところを見るのは別だ。

 

「ふっ・・・!」

 

俺は襲おうとしていたモンスターを斬って助けた。

気を失っているのか、反応がない。

このまま放っておけば死ぬだろうし・・・。

 

「・・・仕方ない・・・」

 

助けたついでに街の宿屋に連れていくか。

フードで顔を隠してる辺り女性プレイヤーか訳ありか・・・、多分前者かな。

俺より大きい辺り年上だけど筋力ステータスのおかげで難無く持ち上げる。

お姫様抱っこだけど背負えば不格好だし、仕方ない。

この人を抱っこした状態で街まで走った。

かなりモンスターがいたけど敏捷値が高いのを活かしてかなりの早さが出てるし追いつけない。

その早さで宿屋に入ってこの図をあまり見られないように手早くチェックインを済ませて個室に入る。

 

「・・・回復は・・・ポーション飲ませたら出来るかな」

 

減っているHPを回復させるために店売りポーションを飲ませる。

このあたりは寝ていても処理されるから便利。

それでHPが全快したのを確認するとベッドに寝かせる。

体つきとかその時に分かったけど女性だ。

男女比的にSAOでは女性はある意味狙われやすいからその対策だろうなあ。

 

「ん・・・う・・・」

 

そう考えていると唸り声が聞こえて寝かせていたプレイヤーが起き上がった。

ちなみに俺は画面を操作してアイテムの整理をしてる。

 

「・・・ここは」

 

「起きた。おはよう」

 

「っ・・・!」

 

ただそれだけで警戒されて腰元に手を伸ばす。

だけど何かが無いようだった。

 

「あ、あれ」

 

「・・・武器、無かった。壊れた・・・?」

 

俺が助けたとき武器が無かった。

武器は耐久値があって無くなれば《破損状態》になる。

破損状態になれば鍛冶屋などで直さない限り使えないのと、その状態でフィールドに放置されると自動的に完全破損して消える。

 

「・・・何の目的」

 

「目的・・・か」

 

 

「何の目的も無いよ。ただ見ちゃったから助けた」

 

「あのまま放置してくれれば良かった!なんで・・・苦しい時間を延ばしたのよ・・・」

 

多分この人はいつ死ぬか分からない恐怖が怖いんだろうな。

さすがに俺はそこまで関わる必要も無いけど・・・放っておけば死ににいくだろうし。

 

「・・・現実世界で、やり残したこと無いの」

 

「・・・それは」

 

「あるんだったら、帰れるように強くなれば」

 

「そうね・・・そうだったわ」

 

「ん・・・じゃ、俺は出るから。宿代は払ってある」

 

「ま、待って!」

 

その場から出ようとすると何故か引き止められた。

別にいる必要も無いし、そもそも警戒されると思うのだが。

 

「今は・・・夜よ?寝ないの?」

 

「・・・女性と寝て変な誤解されたくない。それに俺は寝なくても良い」

 

「あなた・・・私になにかした?」

 

「何も。ただ運ぶときに体つきで分かった」

 

「・・・そう。寝ない理由は?」

 

「寝なくても死なない」

 

「駄目よ、寝なさい」

 

なんでこの人はこう言えばああ言ってくるのだろうか・・・。

正直寝る気が無いから寝れないし・・・。

 

「普通に考えて怪しいと思わないの」

 

「それは・・・そうだけれど、そんな気無いのでしょ?なら良いじゃない」

 

「ぐ・・・ベッドは一つしかない」

 

「一緒に寝れば解決できるでしょ?変な気が無いってさっき言ったじゃない」

 

くそう、考えて言えば良かった。

ていうか寝なくても良いとか余計なこと言うんじゃなかった。

これ確実に寝ないと何か言われるしなあ・・・。

 

「・・・分かったよ、寝れば良いんだろ」

 

「ええ・・・ローブ装備した状態で寝るの?」

 

「そっちはフード被って寝てる」

 

俺がそういうと何か操作し始めて、フードを外した。

隠れて見えなかった姿はやはり女性で大体15歳ぐらい。

栗毛で長い髪は俺と同じ腰まで届いてて、一言で言えば綺麗だろう。

可愛いとかではなく、綺麗や美しい方のスタイル。

 

「ほら、これなら良いんじゃない?」

 

「はあ・・・」

 

ここまでされたら俺も外さないとまた何か言われるので仕方なく見た目装備の機能を切って通常装備だけの見た目にする。

するとローブは消えて長い黒髪がふわっと解放される。

栗毛の女性はなんか俺を凝視していて怖い。

 

「な、なにか」

 

「君って女の子・・・だよね?」

 

多分見た目が女の子にしか見えないからだろう。

女顔で長い髪だし、仕方ないけど。

 

「俺は男。見た目が女の子なだけ」

 

「・・・ほんと?」

 

「・・・ほんと」

 

「・・・男の子に言うのはあれかもだけど・・・すごく綺麗だよ」

 

女性が言ったそれは嘘偽りなくの言葉。

上辺だけの感想とかは分かるからこうして本心に言われたら恥ずかしい。

 

「あ、ありがとう」

 

「さて、もう遅いから寝よっか」

 

「・・・入らないと駄目?」

 

「駄目です」

 

わざわざスペース空けてまでする必要も無いだろうに・・・。

仕方ないので空いたスペースにベッドに入る。

女性とくっつかないように距離は空けつつ。

 

「・・・私ね、死ぬつもりだったんだ」

 

「ん・・・」

 

「いつ死ぬか分からなくて、HP0になったら死ぬって現実でも死ぬってなって怖くなった。今日だって怖くて怖くて、でもHPが無くなれば簡単に死んじゃうって分かって」

 

「・・・もういいよ。今生きてれば良いことある」

 

「・・・そっか、ありがとう。助けてくれて」

 

「別に、たまたま見えただけだから」

 

俺はそうぶらきっぼうに言うといきなり抱き着かれた。

女性の方が大きいから抱き包まれた感じになっている。

 

「なっ」

 

「小さいね・・・なのにあんなに強い」

 

俺は女性から離れるようにベッドから出た。

あれは俺にでもしてはいけない。

大切な人にするべき事だから。

 

「・・・ベッドは落ち着かない。椅子で寝る」

 

別にベッドでも寝れる。

ただあのまま寝れば抱き包まれた状態で起きることになっていらぬ誤解を生むかもしれないし、俺自身怖いから嫌。

 

「そっか・・・ごめんね」

 

「・・・早く寝れば」

 

「うん・・・おやすみなさい」

 

女性は俺の方に向かないよう壁側に向きながら寝てすぐに整った寝息が聞こえた辺り疲れていたのだろうなと分かる。

 

「・・・今日は寝るか・・・」

 

いつもは数十分寝れば良いけど今日は気が乗ったし、普通に寝ることにしよう。

気温設定が低いのか寒いしやっぱローブは着よう、暖かいし。

 

「・・・おやすみ」

 

もう寝てしまっているだろうけど、一応と思って言って寝た。

その日の睡眠はやけに落ち着いて寝れた気がした。

 

 

 


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