ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第七話

目を覚ませば宿屋のベッドだった。

あの時私は無抵抗でやられるはずだった。

 

「ん・・・」

 

小さい声が聞こえて探すと椅子で寝ているローブを被った小さい子供。

この子が死のうとしていた私を助けてくれた。

男の子らしくない容姿に声変わりしていないのか女の子寄りの高い声。

 

「んぁ・・・?」

 

見続けられた視線で起きちゃったのか、目を擦りながら周りを見渡しはじめた。

 

「おはよう」

 

「ん・・・おふぁよ・・・」

 

あれだけ強くてもやっぱり子供なのか、呂律が回っていなくて少しだけクスッと笑った。

 

「んー・・・」

 

今思えば私はこの子の名前を知らない。

私も教えていなかったからなんだろうけど、どうしよう・・・。

 

「くぁ・・・ふぁふ・・・」

 

小さな欠伸をすると椅子から立ち上がって体を伸ばしはじめた。

その動きが子供らしいなと思いながら見ていると。

 

「・・・おはよう。よく寝れた?」

 

「ええ、昨日はありがとう」

 

「たまたま見つけただけ。今日はどうするの?」

 

「えっと・・・」

 

昨日死ぬはずだった私は今日何をするか決めていなかった。

武器も無いから戦うことも出来ないし・・・。

 

「ん・・・繋ぎ武器で良ければ、これあげる」

 

そういってストレージから出して見せてくれたのは細剣。

私が使っていたのもレイピアの細剣でこの子が見せてくれたのも同じタイプのもの。

 

「えっと・・・良いの?」

 

「片手剣メインだから持ってても使わない」

 

そういわれてしまえばあれなので、私はその剣を有り難く受け取る。

ふと思ったけど私って年下の子に助けてもらって宿屋に運んでもらった挙句、武器も貰ってるのよね・・・。

 

「今日は・・・この街で第一層攻略会議があるから、俺はこれで」

 

「私も行くわ」

 

子供にされっぱなしでは年上の面子がないのと、このままでは何も始まらないので私はその攻略会議に出ることにした。

 

「ん・・・それは良いけど、場所は離れてたのが良い。いちゃもんつけられたら嫌だし」

 

「構わないわ」

 

「む・・・それは良いけど、パーティーの戦闘とか分かるの?」

 

「・・・」

 

あの日からずっと一人で戦っていた私は当然パーティーの戦い方を知らない。

それが分かったのかこの子は小さく溜め息をつかれてしまった。

 

「とりあえず行く途中に教える。フードちゃんと着なよ」

 

「あ、あの」

 

「ん・・・なに?」

 

「名前教えてもらってないのだけれど」

 

「・・・ユーキ。好きなように呼んでいい」

 

「私はアスナよ。ユキ君って呼んでいい?」

 

「良いけど」

 

漸く分かったこの子の名前はユーキ。

言いやすい名前でユキって呼ぶことにして、私はフードを装備すると宿屋を出た。

 

 

攻略会議があるのはここ《トールバーナ》の広場らしいから、始まるまでに色々と教えてもらった。

パーティーの戦闘は《スイッチ》という入れ替え戦闘が基本で、一人が戦闘、もう一人は回復などをするみたい。

この方法は咄嗟に対応が出来ないモンスター全般に有効でボスでも必要になるみたい。

 

「思ったんだけど・・・ユキ君ってβテスターなの?」

 

「ま、一応は。でもSAOではβテスターはよく思われてない」

 

「どうして?」

 

「βテストの経験を活かせるテスターは正式リリースが初めてのビギナーより優位だから。最もそれは序盤だけだけど」

 

なるほどと思った。

なんでこんなに知っているのかと言えばβテスターなら知っているからだった。

そんなことに思い耽っているとユキ君が広場の中心を指差した。

そこには青い髪が特徴的な片手剣プレイヤーが立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい!少し遅れたけど攻略会議を始めたいと思う!俺の名前は《ディアベル》!職業は気分的にナイトやってます!」

 

アスナに説明をし終えて広場の中心で声をあげているプレイヤーを見た。

野次も飛んでいたがそれらは好意的で、攻略会議の緊張を簡単に解した。

 

「今回の会議が第一層のボス攻略で有意義なものになればと思う!それじゃ、まずベータと正式の違いがあったので聞いてほしい!これはとあるβプレイヤーによる情報だが、ボスのHPが残り一本になると武器を持ち替えて刀カテゴリの野太刀になるとの事だ!また、取り巻き達も無限リポップになる!」

 

その情報に一部のプレイヤーは表情を変えた。

恐らくβの時よりも難易度が上がっているからだろうな。

 

「よウ、久しぶりだナ」

 

「そーだな。アルゴ」

 

アスナはきづいていなかったのかいきなり現れたフードを被って姿を隠すプレイヤーに驚いていた。

このプレイヤーはβの時も名を残した情報屋、通称《鼠》のアルゴ。

ちなみに第一層ボスの情報は俺からアルゴへと伝わっているが、それを知るのは本人だけだ。

 

「ユキ君、この人って・・・」

 

「ン?ユキ坊も隅に置けないナ、おれっちはアルゴ。情報屋ダ」

 

「アルゴは情報屋として信じれるよ。てか俺が流したし」

 

「ユキ坊、幾らなんでもボス偵察に一人は無謀だゾ。おねーさん聞いたときは冷や汗を流したんだからナ」

 

「えっ、ユキ君なの?さっきのβプレイヤーって」

 

さすがにここまで言われてしまえばどうしようもない。

俺は肯定と捉えれる頷きをするとアルゴは溜め息をついて、アスナも小さい溜め息をついた。

その時に広場から大声が聞こえた。

 

「ちょおと待ってんなぁ!」

 

その声の主はツンツン頭のプレイヤー。

そのプレイヤーは見たことがある。

 

「どうしたのかな?意見ならともかく、とりあえず名前を言ってもらえないかな?」

 

「ワイはキバオウっちゅうもんや。ワイが言いたいのはただ一つ!こん中におるんやろ!元ベータ上がりっちゅうことを利用して美味しい蜜を吸おうとしとるセコい奴が!」

 

「な、なによあの人」

 

「・・・キバオウが言いたいのは、βテスターによって犠牲になったビギナーの罪滅ぼしとして謝罪とかをしろってこと。要はβテスターに対する因縁」

 

俺はあういう人が嫌いだし、聞くのも好きではない。

何故協力的に動こうとしている雰囲気でぶち壊そうとしているのかが分からない。

 

「・・・良いか」

 

手を挙げたのは日焼けした肌のプレイヤー。

身長は180いくんじゃないかと言うぐらい大きくて俺からすれば巨人にしか見えない。

 

「な、なんや」

 

その姿に気圧されたのかキバオウもうろたえていると、ある一冊の本を取り出した。

あれはアルゴが作ったガイドブックだ。

 

「これがなんだか分かるか?」

 

「知っとるわ。道具屋で無料配布されてるガイドブックやろ」

 

「これを作っているのは元βテスターだ。俺達は情報がある。その上でどうするのかを会議するのだと俺は思っていたんだがな」

 

それで解決するかと思えばキバオウは指を指した。

俺に向かって。

 

「事実あのローブ装備してるプレイヤーは真っ先に広場から出て行ったやろ!」

 

ちっ、見られてたのか。

まぁ隠蔽やらかけてたから探しても見つからないし、そういう発想になるか。

 

「路地裏に行ってたけど」

 

「おらんかったやろ!探しても見つからんかったわ!」

 

「《隠蔽》スキル使ってたから」

 

SAOでは《隠蔽》スキルはあまり好まれない。

PKプレイヤーの基本スキルにもなっているからか、疚しい事を考えているものなどが取るため良くは思われていない。

 

「それこそ怪しいやろうが!わざわざ《隠蔽》使ってまで何してたんや!」

 

「宿屋に泊まれる金がなかった。でも寝たかったからだけど」

 

普通に嘘っぱちだ。

金は腐るほど持っていたけど寝たかったのは事実。

こういうときは嘘と真実を織り交ぜて言えば大体相手は分からないし。

 

「それに、俺がβテスターという確証も無いけど。初心者でもすぐに街を出た人だっている」

 

その言葉が決め手になったのか、キバオウはようやく黙って座った。

ここまでしつこいと口より手が出そうになるから止めてほしい。

 

「・・・はぁ」

 

「ごめんね、何も言えなくて」

 

「おれっちもダ、情報屋としての立場が無けれバ・・・」

 

「・・・なんで二人が謝るの?悪いのは俺で、そういう行動を取ったからそう捉えられただけだから」

 

この話を続けたくなかったので、すぐに切り上げると場が静かになったのを見てディアベルはまた声を出した。

 

「よし、じゃあ次はパーティーを組もう!」

 

「パーティー・・・かぁ」

 

「何かあるの?」

 

「いや・・・パーティーは好きじゃないから」

 

「そ、そのー」

 

その時に、黒づくめの男性プレイヤー達から声がかかった。

その後ろには紫紺の少女と赤い髪でバンダナをしている男性。

 

「ん・・・」

 

「メンバーが足りないんだ。良かったら入ってもらえないかな・・・?」

 

人数としてはまだ足りないだろうけどアルゴを除けば俺含め5人か。

だけど偶数のがやりやすいだろうし・・・。

 

「・・・俺も?」

 

「出来れば」

 

だけど俺はパーティーは好きじゃない。

そもそも人が好きじゃないのにわざわざ関わるのも馬鹿らしいし。

 

「ユキ坊、ここは入っとくんだナ」

 

「・・・分かったよ」

 

パーティー申請を受けると視界の左上にパーティーメンバーが表示される。

《Yuu_ki》《Kirito》《Yuuki》《Klain》《Asuna》と表示される。

 

「えっと・・・なんて呼べば良いんだ?」

 

「ユーキ。好きに呼べば良い」

 

「なんかユウキと似てるな」

 

「ホントだね・・・」

 

これだけ人が多くなると俺の人嫌いが色々と起こりそうなので一旦その場から動こうとした。

 

「どこに行くの?」

 

「・・・宿屋。お風呂付きあるから」

 

女性方のためにお風呂を付け足すと二人ほど目を輝かせた。

知らなかったのか、結構良い場所なんだが。

 

「先行ってる。それじゃ」

 

俺はその場から逃げるように走って宿屋へと向かった。

人嫌いにもほどがあるなと思いつつ、第一層では一番良い宿屋へと入ってすぐに部屋に入る。

 

「ん・・・」

 

窓を開けた所から夕刻の風が入ってきて心地好いものだった。

 

「ん・・・ふぁふ・・・」

 

そんな風に吹かれていたからか、段々と眠くなってベッドで寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナ達は時間帯的にもそろそろ宿屋に戻ることにして、先に向かって行ったユキが入った宿屋でチェックインを済ませた。

パーティーメンバーなのでユキの部屋が分かった全員は気になり部屋を覗く。

すると寝息を立てて眠りにつくローブ姿のプレイヤーがいた。

 

「・・・寝ていてもローブは外さないんだな」

 

「私見たわよ?綺麗だったわね」

 

「なあ、アスナさんよ。このちびっ子とはどういう関係なんだ?」

 

「そうね・・・命の恩人かしら」

 

「恩人?」

 

「ええ・・・さて、お風呂入るわね。ユキ君が取ったこの部屋2人用だから使わせてもらいましょ」

 

ユキが取った部屋は2人用の部屋でベッドが2つあった。

お風呂は一つしかないものの、そこそこ広い。

 

「・・・クライン、俺達は別部屋を使おう」

 

「ん、どうしてだ?」

 

「朝起きてあらぬ誤解を受けたいのなら寝れば良い」

 

「二人部屋取るか」

 

キリトとクラインは男で残りは女性のためあらぬ誤解を防ごうとするキリトにクラインは賛同し、改めて部屋を移した。

ユキは男なのだが、アスナやユウキは何故か気にしていなかった。

 

「ん・・・」

 

そんなことで夜に目が覚めたユキは時間を確かめているとガララっと扉が開く音がした。

その場所はお風呂場の部屋なのを知っていたユキはあえて見ないようにして窓に立って風を受けていた。

 

「ユキ君?」

 

「・・・見てないから着てないなら着て」

 

アスナとユウキは一緒に入っており、一緒に出てきたため言えば素っ裸。

それに気がつく二人は急いで服を着ていた。

 

「み、見た?」

 

「ん・・・見てない」

 

「えっと・・・ユキだよね。なんで言いきれるの?」

 

「お風呂場の場所知ってるから扉の音の位置で察した。男女にしても見るつもり無いし」

 

「そ、そうなんだ」

 

「・・・二人とも服着た?お風呂入りたい」

 

「うん、着たわよ」

 

「ボクももう着たから大丈夫だよ」

 

二人から言われたのでユキは振り返ってお風呂場へと向かった。

しっかりとその辺は弁えている辺り素晴らしいのだろうが子供らしくない振る舞いで二人は少し難しく思った。

 

「ん・・・よいしょ」

 

一括装備取り外しを使って装備を脱ぐとお風呂に入る。

見た目だけであれば女の子だが、しっかりと男だと分かるものがあるのに、間違えられてしまうユキはガクッとしながら体を洗った。

現実世界とは違い、髪の毛に対するケアが必要ないのですぐに済ませたユキは体を拭いて軽く髪の毛を拭った。

 

「はふ・・・」

 

長い黒髪をタオルで括って纏めあげると服とローブだけ着て洗面所を出た。

 

「ん、上がった」

 

「・・・ユキ君ローブ脱がないの?」

 

「姿見られるの嫌」

 

「ここには私とユウキしかいないのに」

 

「・・・嫌」

 

「アスナから聞いたけど髪長いんでしょ?」

 

「む・・・」

 

なんでこう、気になりたがるのか・・・。

アスナは一度見てる分普通はおかしいと思うだろうに。

 

「お願い!少しだけで良いから!」

 

「・・・やっ」

 

「あうー・・・」

 

ユウキのお願いを両断して俺はベッドに寝転んだ。

『身隠しのローブ』は個別設定で完全に顔を隠せる機能があるからローブの中を覗いても真っ黒。

その代わり耐久値はお察しだけど。

 

「・・・おやすみ」

 

二人はまだ起きている気がしたので先に俺は寝ることにした。

明日はボス攻略で早いだろうから。

 

 

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