ソードアート・オンライン ~幼い心は強く~   作:紅風車

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第八話

攻略会議を行った翌日、俺らは迷宮区の中へと入った。

最初は雑魚狩りは各自でする予定だったが、ディアベルに言われて俺がやることになってた。

 

「ユキー、大丈夫ー?」

 

「ん・・・大丈夫」

 

「危なっかしいなあ・・・」

 

「かといって私たちが前に出れば邪魔になるものね・・・」

 

危なっかしいと言われる動きはしてないはずだがなあ・・・。

ここいらに出てくる雑魚は主に狼モンスターで俺の中でやり方があるから危なくはない。

《ウェアウルフ》は最初必ず突進をするからそれを避けて弱点のお腹を切れば良いだけなのだから。

そんな感じで俺はパーティーのみんなよりも先に進んで襲って来るモンスターを切り払っているとフロアボスの大きな扉があるところまで着いた。

 

「ん・・・着いたか」

 

「みんな!ここからはボス戦になる!もう一度改めて用意は良いか確認するんだ!」

 

休憩も意味するそれは皆一度座り込んで準備をしだす。

俺はやることがないから壁にもたれ掛かってると、パーティーメンバーのユウキがやってきた。

 

「・・・なに」

 

「ユキってボス偵察・・・したんだよね?」

 

「なんで知ってる」

 

「えっと・・・アルゴさんから・・・」

 

アルゴの情報販売は多彩で、モンスターの情報からギルド、果てまではプレイヤー個人の情報や自分の情報まで金さえ払えば売ると言われている。

一応聞いたけどアルゴの情報は売ってもらえなかったし、女性ということしか分からない。

恐らくアルゴは心配だからパーティーメンバーには教えてるんだろうな、キリトやクラインにも伝わってる。

 

「はぁ・・・まぁ、そうだけど」

 

「・・・強いんだね」

 

「皮肉かなにか?」

 

別に俺を嘲笑うなら嘲笑えば良い。

だがそれを理由にして他人に迷惑はかけたくない。

ユウキの言葉は遠回しに俺に何か言いたいと分かるけどあえて気づかない振りをする。

 

「ち、ちがう。でも・・・」

 

「・・・ならほっとけ」

 

「・・・ごめん」

 

我ながらひどい言い方だな。

だけどここで好意的な事を言えば余計関わられるだろうし、それが嫌だからこうしたのだけど。

 

「よし、それじゃボス戦を始めたいと思う!準備は良いか!」

 

ディアベルの声に大きな声があがった。

あそこまでとは中々だな・・・。

 

「俺達のこの攻略が第一層のみんなの希望となる!そのためにも、勝とうぜ!」

 

ここまで士気をあげれるディアベルのリーダー力は凄まじい。

俺はそもそも人が嫌いだからあれだが、あんな感じに纏めあげる統率力はそうそういない。

 

「行くぞ!」

 

ディアベルが大扉を押して開けると一気に突入を始めた。

各自決められた役割を果たすべく動いて、俺らのパーティーも動く。

自分達のパーティーが担当するのはボスの取り巻き処理。

ボスのHPゲージが残り1本を切る前に終れば加勢する感じだ。

 

「わわ、鎧着てる!?」

 

あ、やべ、《鎧通し》の事教えてない。

コボルド王の取り巻きは鎧を装備しているから基本的に攻撃しても全然ダメージを与えれない。

だが鎧と鎧の間は普通に生身なのでそこを狙って攻撃すれは大ダメージを与えれる。

 

「鎧と鎧の間狙え!」

 

俺はパーティー全員に伝わるように言う。

あまり声をあげるのは好きじゃないけどこの場では他の隊の声で掻き消されるよりはマシだ。

 

「わ、わかった!」

 

俺とキリトは単独で処理をしていき、アスナとユウキは《スイッチ》で安全に確実に倒して行った。

そして処理が終わるのと同時に叫び声が聞こえた。

 

「BURAAAAAAA!!」

 

本隊の削りが早かったのかボスのHPは1本を切っていた。

ボスは持っていた武器を投げ捨てるとあの時のように野太刀を取り出した。

 

「俺が出る!」

 

その時本隊から突出したように一人のプレイヤーが駆け出た。

それは今回の攻略リーダーであるディアベル。

恐らくボスの止めで手に入るLABを狙っているのだろうな。

そんなディアベルを狙い付けたボスは武器を低姿勢で構えはじめた。

 

「ユウキ!任せた!」

 

「えっ!?」

 

あの構えは対象者を打ち上げて叩き落とす現状では即死技の《刀》スキルだ。

恐らくディアベルも分かっているが走り出した以上止まって戻れないからだろうか。

 

「ふっ!」

 

こんな時に現実世界の技術が役に立つとは思わなかった。

武術を極めれば内部に打撃を与えたり、一瞬の間に移動を成し遂げる技がある。

俺はそれを無意識に使って、一瞬にしてディアベルの前に現れた。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ソードスキルを止めるにはどうすれば良いか?

簡単だ、ソードスキルを当てれば良い。

あの《刀》スキルは最初の打ち上げさえ止めてしまえば一気に崩れる。

その刹那の一瞬を狙うしかない。

《片手剣》スキル『ソニックリープ』を発動させてコボルド王の打ち上げを止めた。

 

「・・・逃げるなら、逃げて」

 

「っ・・・すまない!」

 

だが止めれた事が出来ても連続は武器の耐久値が持たない。

コボルド王が怯んだ間と俺のソードスキルの硬直が終わったのは同時。

 

「・・・終わったな」

 

今の状況は絶望的だ。

俺よりもコボルド王のが先に俺を切り裂くだろう。

だが、後悔はない。

人を救えただけでも、意味はあったのだから。

目を閉じて、もうすぐやってくる死を受け入れようとした。

 

「間に合えぇぇぇ!!」

 

だがその声でそんな考えは消えた。

目を開ければ、俺を助けようと黒ずくめのプレイヤーのキリトが俺に向かって突進していた。

 

「・・・まだ死ぬなってか」

 

俺は今一度手に力を入れて強く武器を持った。

立ち上げるのは《片手剣》スキル。

このまま突進スキルで逃げるかキリトと共に応戦するか。

 

「決まってるよな」

 

その瞬間、キリトの『レイジスパイク』がコボルド王の攻撃をせき止めた。

その隙を逃さないように俺は・・・画面を一瞬で操作して《片手剣》スキルの追加機能である《クイックチェンジ》で予備武器の『アニールブレード』を取り出し、右手に持った『レイジスパイク』を立ち上げた。

それは真っすぐコボルド王の左肩へと突っ込んで軽く刺さっただけで、右手の『アニールブレード』は耐久値が無くなり破片へと変わった。

 

 

普通ならばかなり絶望的だ。

スキル発動による硬直が課されており、メイン武器は消え散っている。

だが、俺はまだ諦めない。

硬直が課されるまでの時間はコンマ数秒。

その間に違うスキルを構えれば良い。

 

「た、あぁぁぁぁぁ!!」

 

取り出していた左手にある『アニールブレード』で違うスキルを構える。

《片手剣》スキル『バーチカル・アーク』を発動。

それは左肩から斜めに右側に唐竹割りの要領で切り、ある一点から上に向かって切り上げた。

その二連撃でコボルド王は一気にのけ反った。

だが僅か、本当に僅かに残ったHPがまだ死んでいない証だった。

さすがにこれ以上は動けない。

だから俺は後を任せた。

止めをさせなくても良い、倒せれば良いのだから。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

後ろから聞こえて来るその声は真っすぐ突進を行って、コボルド王に深々と突き刺さった。

僅かに残ったHPは無くなり、コボルド王はポリゴン片へと変化して。

 

 

《Congratulation!!》

 

 

とフロア中心に表示されたそれが討伐成功を示した。

 

「お、終わったのか?」

 

「ああ、勝ったんだ。俺達は勝ったんだ!」

 

ディアベルのその声で、参加したプレイヤーが漸く、2ヶ月もかかった第一層攻略の瞬間を噛み締めた。

その声は大きく、嬉しさと喜びが混ざり合う。

 

「・・・終わった」

 

「ああ。ユキのおかげだ」

 

「そか・・・なら良かった」

 

「キリト君ー!ユキ君ー!」

 

「おーい!キリトー、ちびっ子ー!」

 

終わったことが分かるとアスナやクラインがやってきた。

だが、一人のプレイヤーの大声で止まった。

 

「なんでや!」

 

「めんどくさい・・・」

 

素直な感想が出てしまったが、その声は昨日も聞いた片手剣のプレイヤー、キバオウ。

何故、今の雰囲気をぶち壊すようなことばかりするのだろうか。

 

「キバオウさん?どうしたんだ?」

 

「どうしたもこうしたもない!あんたらボスの使うスキル知ってたんやろ!それをディアベルはんに教えておけばさっきみたいに危ない目には合わんかったやろ!」

 

「あれは俺の独断専行だ。悪いのは俺で彼らは助けてくれたんだ、責める必要は無いだろう?」

 

「なら、さっきのはどう説明するんや!あのローブ付けてる奴は見たこともない早さで移動しよったんやぞ!」

 

なんだ、それか。

中国武術の極みなのだから知らないだろうけど。

仕方ないし、目の前で見せれば良いか。

 

「ユキ?」

 

「ふっ!」

 

俺は一呼吸して、キバオウの目の前に現れた。

それにキバオウは驚きはするが怯みはしない。

 

「・・・中国武術の極み、《瞬動術》。現実世界の技だが」

 

「な、なら」

 

「キバオウさん、もういいんだ。俺はこうして生きている。LABを取ろうとした罰だよ」

 

すると後ろから抑えるような声が聞こえた。

場所的にはさっき俺がいた場所・・・キリト?

 

「くく・・・」

 

「何がおかしいんや!」

 

「いやなに・・・聞いてたら可笑しくてね」

 

 

「ボスの使うスキル?そんなもの知ってたさ。そのローブが知ってたのは俺が教えたから。βテストの時に散々《刀》スキルを使う奴と戦ったからな!」

 

「な、なんやそれ」

 

「他にも色々と知ってるぜ?《鼠》よりもな!」

 

「そ、そんなんチートや!チーターやろ!」

 

「ベータでチーターだから・・・ビーターだ!」

 

「ビーター・・・良い名だな。そうだ俺は《ビーター》だ!これからは元βテスター如きとは一緒にしないでもらえるか!」

 

キリトはLABで入手できたのだろう防具を装備して第二層へと上がっていった。

俺には分かる、キリトの言ったことはβテスターとビギナーの亀裂を防ぐためのものだ。

聞いていれば空っぽの言葉で、悲しさも感じた。

なら俺も続こう、彼のようにはなれなくとも。

 

「・・・それじゃ、ばいばい」

 

アスナ達にそう小さく呟くと俺は走って第二層へと上がる。

パーティーは・・・入っていてももう意味が無いだろう。

パーティーから脱退すると、俺はまた独りになった。

 

「・・・馬鹿らし」

 

やっぱり人は関わっても楽しくない。

キリトのように自分から必要悪に動かないといけなくなる人々は見ていて吐き気がする。

 

「フレンドは・・・アルゴだけか」

 

フレンド機能による追跡をも切って俺は第二層の攻略を始めた。

今まで隠していたβの装備も全力で使ってでも。

 

 

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