早坂美鈴とその兄貴   作:UP

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行きつけの店の長はだいたい良い人

「起きろ兄貴ー!」

「ぐっ!?」

 

心地よい夢見の世界から腹の重みと共に突然現実に引き戻された。目を開けると美玲が自分の上に乗っている。

 

「んだよいきなり…」

「いつまで寝てる気だ兄貴! 今日出かけるって約束してただろ!」

 

今日は日曜日。学校は休みで美玲も仕事が無いオフの日だったため、二人でどこかに遊びに行こうかとは言ったが…

 

「まだ8時…早くないか」

「何言ってるんだ!もたもたしてたら時間なんてあっという間に無くなっちゃうんだぞ!」

 

どうやらもうこれ以上寝ることは敵わないようだ。

 

 

「分かったよ。とりあえずどけ」

「わっ」

 

ひとまず上体を起こし、自分に跨っている美玲の腋に手を差し込み持ち上げる

 

「……」

 

ん? おとなしくなったな。

 

美玲の体重は39kg。身長は147cmと自分よりも一回り小柄で軽い。こうしていると同い年のはずなのに歳の差がある妹にも思えてしまう。

 

「は、早く下ろせよ…」

 

恥ずかしいみたいだったので言われた通り自分の上から横にずらして下ろした。

 

「急いで準備しろよな!」

 

そそくさと部屋から出ていく美玲。さっさと俺も目を覚ますか。

 

 

 

 

「おおっ! これいいな!」

「マジか? 血ィ付いてんぞこれ」

「それがいいんだろ! センスが分からない兄貴だな!」

 

二人は美玲のお気に入りのファッションショップで衣服を物色していた。

 

男女が共に服を選んでいる。それだけを聞くとデートのようなイメージをするかもしれないが、これをデートと呼ぶには違和感を覚える店に二人はいた。

 

この店はパンク系のビジュアルを専門とした店であり、陳列された衣服は真っ赤、どピンク、動物毛皮からギラギラのスカジャン等々、「派手」という体面をこれでもかというほど押し出した商品ばかりだった。

 

他にアクセサリーやメイク道具、楽器の機器も置いてあるのだが、それらももれなくそっち路線のバンドが愛用してそうなものが勢ぞろいだ。

 

「お目が高いわね美玲ちゃん。アタシもこれは美玲ちゃんに似合いそうって思ってたのよ」

 

こちらに話しかけてくる店長。話し方は女言葉だが、男である。

 

黄緑に染めたモヒカンに革つなぎ着たヒゲのオネエとか相変わらずキャラが濃すぎる人だ。こんな人だがとても良い人で、常連の美玲も信用している。

 

「店長さんウチこれ気に入った! 買うぞ!」

「まいどあり。サービスで1割まけてあげるわ」

「えっ! いいの!?」

「美玲ちゃんはいつもいろいろ買ってくれるからね。これからも贔屓にしてよね?」

「やったー! さんきゅー店長!」

 

美玲は店長にお金を渡し、値札を切ってもらうと服を持って意気揚々と試着室に向かった。買った服をそのまま着て遊びにいくのはよくある事だった。

 

「すみません、ありがとうございます」

 

俺は店長にまけてもらったことに対しお礼を言う

 

「いいのよ。それより美貴ちゃんも、せっかく来たんだからオシャレしていかない?」

 

実はこの店には美玲の付き合いで何度も来ており、美貴も店長とは顔なじみのほぼ常連となっていた。

 

「いえ、遠慮しときます」

「つれないわねぇ。せっかく美玲ちゃんに似てかわいい顔してるんだから色々遊べそうなのにぃ」

 

この年齢でかわいいと言われて嬉しい男子はいませんよ。ちょ、店長顔近くない?

 

「ほんと、もったいないわぁ…」

 

顔を撫でないでください。え、ほんと冗談じゃないんだけど。ヤバい、このおっさん、ヤバい。

 

助けて美玲…っ

 

「なにしてるんだーっ」

 

美玲が美貴に抱き着き、店長から美貴を引きはがす。

 

た、助かった…

 

「兄貴を怖がらせるのはいくら店長さんでも許さないからなっ!」

 

がるるると動物のように威嚇する。俺を抱きしめて守ろうとする美玲は、まるで小型犬のようだった。

 

「あらあらごめんなさいね。怖がらせるつもりは無かったのよ」

 

美玲と俺に頭を下げる店長。本当に食べられるかと思ったわ。

 

「うふふ、それにしても美玲ちゃんは本当にお兄ちゃんのことが好きなのねぇ」

「え? ……あっ!」

 

俺に抱き着いていることに気が付いた美玲は慌てて離れる。

 

「こ、これは兄貴を助けるためにやったんだからな! そういうのじゃないからな!」

 

顔を赤くして弁解する美玲。そういうのってなんだ?

 

「分かってるわよ。それよりも美玲ちゃん、それすごく似合ってるわよ」

「お、本当だ。結構いい感じだな」

「え、そう?」

 

買う前の単体で見ればグロいまでに派手だった服は、美玲が着てきた帽子やネックレス、チョーカーなどの組み合わせで自然なコーディネートに仕上がっていた。我が妹ながらこの辺のセンスは流石だと思う。

 

「とっても可愛いわよ美玲ちゃん。ねえ美貴ちゃん?」

「はい、可愛いだけじゃなくて、かっこよくもなってますね」

「あら、分かってるじゃない。あとはこれにほら、あんな感じのスカートとか合いそうじゃない?」

「いや、個人的には今のスカートのままでベルト周りにシルバーを…」

 

美玲の姿について店長と意見を交わしていると、美玲が俯いてもじもじとしはじめた。あ、これ恥ずかしくなって我慢できなくなってきてるな。

 

「も、もういいだろ!お金もったいないからこれ以上買えないし! 時間無くなるから行くぞ!」

「あ、待てって! 店長また来ます!」

「はーい行ってらっしゃい。またのご来店お待ちしてまーす」

 

足早と歩いていく美玲を追いかけて、店をあとにした。




身長147cmと小柄な美玲に対して美貴は170cm越えと大きく体格差があり、14歳男子にしては成長が早いタイプ。
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