早坂美鈴とその兄貴   作:UP

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ゲーセンで知り合った仲は大事にするといい

「今こっち狙ってる!今のうちに撃て美玲!」

「うりゃー!グレネードだっ!」

 

ショッピングを済ませた俺たちは、ゲームセンターに入り様々なゲームに手を出して回っていた。

 

今は銃型のコントローラーを使って画面を撃つシューティングゲームを協力プレイで遊んでいる。

 

このゲームは一人でやったことがあるが、やっぱり相棒が人間だと非常に楽だ。2PがCPUだと全然攻撃してくれないんだよな。

 

「ゲージ赤くなった!このままいける!」

「とどめっ… やったー!」

 

トリガーにかけた指を痙攣のごとく曲げ続け、俺たちはようやくラスボスの倒れる姿を見ることができた。

 

「あー疲れたっ!」

「ほぼ1時間か。結構長くやってたな」

 

このゲームは残機が無くなるとゲームオーバーになり、時間切れまでに100円を入れれば復活できる。クリアするまでに死ねば死ぬほどお金も制限時間も無くなってしまう。

 

二人とも不慣れなせいかクリアまでに1000円以上使ってしまった。いつもは一つのゲームにここまで金をかけることはしないのだが、俺も美玲も気にする暇もないくらい熱中してしまった。

 

「兄貴死にすぎだろ! 両替しに行っちゃった時はヤバかったんだからな!」

「お前のほうがいっぱい死んでんだろ。狙いにくいから眼帯外せって」

「絶対イヤだ!」

 

1時間かけてクリアしたゲーム中の出来事について互いに突っ込みながら次の遊び場を探す。

 

「だって…あ」

 

ふと美玲が立ち止まる。その先にはクレーンゲームの筐体が並んでいた。

 

「あれは!」

「あ、おいっ」

 

美玲が小走りに筐体に向かったため、その後を付いていく。

 

「なんだこれ!すごいっ!」

 

美玲の視線の先はガラス窓の中のぬいぐるみ、その中の一体に伸びていた。

 

「でかいデビキャだなおい」

 

素直に感想を言う。デビキャとは美玲のイチ推しブランド「Girls&Monsters」のマスコットキャラクターだ。美玲はこのグッズを収集しており、日々新商品が出ているかチェックしている。

 

この筐体の中にあるデビキャのぬいぐるみは美玲が持っているどのデビキャグッズよりも大きかった。こんなもの美玲の好奇心を揺さぶらないわけがないだろう。気が付けば美玲はもうコインを入れてクレーンを操作していた。

 

「いけいけそのまま…あーだめだっ!」

 

何度か試すもデビキャはアームに捕まらず、少しだけ位置がずれるにとどまる。というかこんなサイズのぬいぐるみがアームで持ち上げられるのか?

 

「うー、もっかい!」

 

どうしてもこれを手にしたい美玲は抵抗なくお金を投入する。しかし何度やれどデビキャはアームから滑り落ちるだけだ。

 

「美玲、一回やらせて」

「え? ま、まさか兄貴もこれ欲しいのか!? 駄目だぞやらないぞ!」

 

餌を奪われまいとするかのように睨みつけられた。猫かお前は。

 

「いらないから。取ったらちゃんとやるって」

「そ、そうか? そうならそうとちゃんと言えよなっ!」

 

自分の非に素直になれない妹。もう慣れました。

 

コインを入れてボタンでアームを横に動かす。筐体の横に周り、位置を確認しながら伸ばした手で縦に動かすボタンを押し、デビキャの真上に置いた。降りたアームはデビキャの太い頭から少しずれ、首部分を挟んだ

 

お?これは?

 

クレーンが吊り上り、アームはデビキャをがっちり挟み、なんとその巨体が宙に浮いたのだ。

 

「うわ!いけ!そのままいけ!」

 

美玲が興奮に任せて檄を飛ばす。俺もこの瞬間は緊張した。落ちないでくれっ!

 

だがデビキャが出口の穴筒の真上に差し掛かろうとした瞬間、無常にもアームは手を離してしまい、筒の真横に落ちてしまった。

 

「あー、なんだよもう!」

 

その気持ちはよく分かる。もう少しで取れそうな宝物にギリギリ手が届かないものほど悔しいものはない。

 

「次!次はいける!」

「取れよ!絶対取らないとひっかくからな!」

 

美玲が帽子の爪に手を入れてこちらに向けている。かわいいけど脅しにかかると逆効果だぞ。

 

デビキャは落ちた時に逆さまに向いてしまい、もう首を掴むことは敵わない。はたしていけるのか…

 

100円を取り出し、投入口に入れる。さて狙いをつけてボタンを押そうとしたのだが…

 

「ちょいと失礼」

 

え?

 

気が付くとボタンの前は誰かに取られていた。小柄な三つ編みおさげの女の子だった。

 

まさかネコババされたか!?

 

「ちょ…」

「静かにっ、大丈夫、ちゃんと渡すから」

 

女の子に制され、その様子を見ていること余儀なくされた。なんなんだこの子は?

 

その子は筐体の横に周り、しばらく見た後ボタンを押し、デビキャの真上にクレーンを置いた。

 

なんとアームは先程首を掴んだ時よりもがっしりと胴体を安定して掴み、デビキャは穴筒に落ちていった。すげえ…

 

「はいっこれ」

 

女の子がデビキャを取り出し、俺に手渡してくる

 

「ごめんね?勝手にやっちゃって」

「いや、取ってくれてありがとう」

「よかった。なんかすっごい必死だったからいてもたってもいられなくなっちゃったんだよね」

 

にひひと笑う女の子。あ、かわいい。

 

「あたしの友達もこれすっごい好きなんだよね」

「へえー、おい、これ…」

 

デビキャを美玲に見せようと声をかけたが、美玲の姿がない。あいつどこに行ったんだ?

 

おさげの女の子が筐体の後ろに向かって歩く。あ、でかい爪見つけた

 

「ねー美玲ちゃん?」

 

女の子についていくと筐体の後ろに隠れていた美玲を見つけた。

 

ん?美玲の知り合いなのか?

 

「さ、紗南…」

「やっほ」

「なんでここに…」

「愚問だねぇ。ゲーセンとかモロにあたしのテリトリーだよ。それに美玲ちゃんの恰好すっごい目立つからすぐ分かっちゃった」

 

美玲の友達だったのか。そりゃ赤の他人のゲームをネコババしたりはしないか。

 

「おい、何やってんだ。この子にこれ取ってもらったぞ」

「あ、うん…」

「お礼は?」

「……ありがとう紗南」

「どーいたしましてっ」

 

こいつは友達に礼を言う時もこんなんなのか。まったく素直じゃないな。

 

「友達に会ったのになんで隠れてんだよ」

「…ぬいぐるみ取るのに夢中になってるとかカッコ悪いだろっ」

 

呆れた。そんなことで隠れようとするとは相変わらず繊細な奴だ。

 

「それにしても美玲ちゃんもスミにおけないねえ。彼氏さんいたなんて初めて知ったよ」

「かっ!?」

 

いやいや

 

「しかも身長差カップルとは、なかなか萌え要素突いてるね!」

「彼氏じゃなーいっ!ウチの兄貴だっ!!」

「あ、そうなの?」

「あ、どうも、美玲の兄です」

 

へぇー、とこちらを観察する紗南。ちょっと恥ずかしい。

 

「なるほど、ちょっと美玲ちゃんに似てるかも。高校生ですか?どこの学校?」

「あ、俺中学生です。美玲とは双子の兄妹で」

「へぇ!?」

 

驚く紗南

 

「え!?てことは14歳!?」

「はい」

「てことはあたしと同い年!? でっか! なのに妹ちっさ!」

「ちっさって言うな!紗南とはあんまり違わないだろー!」

 

まあよく言われる。本当に双子かとは。

 

 

 

 

 

「あたし三好紗南っていいまーす。美玲ちゃんと同じ事務所のアイドルやってるよ! 知名度はまだまだだけどねっ」

 

美玲と同じアイドルだったのか。美玲みたいに個性的な人ばかりかと思っていたがこんな普通の女の子もいるんだな。

 

「美玲の兄の早坂美貴です。美玲がお世話になってます」

「あ、歳同じなんだし、タメ口でいいよ!美貴くんって呼ばせてもらうし、あたしも紗南って呼んでね」

 

すげえなんだこのコミュ力。アイドルってやっぱ自分に自信持ってんだな。

 

「いいの?」

「全然!美玲ちゃんのお兄ちゃんならなおさらだよ!」

「分かった。じゃあ…よろしく紗南」

「うん、よろしくっ!あ、Line交換しよっか!」

 

アイドルと知り合えるとは、これは自慢できるな。あ、しゃべっちゃ駄目なやつか。

 

俺と紗南が連絡先を交換しあっていると、美玲にげしっと足を軽く蹴られた

 

「なんだよ」

「あんまデレデレすんな!ウチの友達だぞ!」

「言いがかりだろ。デレデレなんかしてない」

「今の美玲ちゃんがモロに嫉妬したギャルゲの妹みたいでマジ萌え」

「嫉妬なんかしてない!ギャルゲとかそんなのウチが兄貴にこ…」

 

言いよどむ美玲。急にどうした。

 

「こう…攻略されるとか…ないし…」

「ほぉ…これは…?」

 

美玲の様子を見た紗南がなにかを察する。

 

「ね、あたし今来たんだけどさ!よかったら3人で遊ばない?」

「いいな。美玲もいいだろ? それ取ってもらったんだし」

 

美玲の腕に抱かれているデビキャを指す。美玲はこれで断るような子ではない。

 

「うー、分かったよ。次あっち行くぞ!」

「よっしゃー!負けないよっ!」

「おい待てって!」

 

 

 

「なんだよこの譜面!? ってなんでお前叩けてんだよ!」

「これくらいできなきゃ音ゲーの楽しさは分からないよ!」

「紗南の手きもちわるいな!」

「言うな!音ゲーマーにそれは言っちゃダメだよ美玲ちゃん!」

 

 

「これやろこれ! あたしと美玲ちゃん対美貴くんで2対1ね!」

「えっ、なんで?」

「ほぉ、でかい図体してか弱い女の子二人相手に怖気づいた?」

「安い挑発だな…だが乗ってやる」

「紗南これどうやるんだ?」

「これはここを押すとね……」

 

 

「そこ!今のタイミングでスペシャル!」

「え!? どうやって!?」

「ああもうほら!レバーこっちにこうしてA!」

「あ、ああこうか…」

「紗南近いぞ!兄貴も鼻の下伸ばすな!」

「んー?」

「ニヤニヤすんな紗南ー!」

 

 

「美貴くんもっと寄って!ていうか真ん中入って!」

「お、おう……」

「あっ!バカ兄貴!紗南に近寄りすぎだ!」

「紗南のほうから寄ってきてるんだって…ひっぱんなひっぱんな!」

「おー美玲ちゃん大胆だねー。そのまま兄妹でチュープリ撮っちゃう?」

「「撮らないっ!!」」

 

 

俺、美玲、紗南の三人はテンションに任せて遊び通した。というか紗南のテンションに俺達兄妹も引っ張られる感じだった。

 

財布の軍資金が無くなる頃にはすっかり満足してゲームセンターの外に出ていた。

 

「あー楽しかった! こんなに遊んだのなんて久しぶりだよ!」

「ほとんど紗南の独壇場だったんだが…」

「紗南は事務所でも暇さえあればゲームしてるからな」

 

ゲームの実力もさることながら、ハイテンションになった時の紗南の距離の近さに少しどきどきした。

 

「男の子とこんなに遊んだのも初めて!美貴くんが良い人でよかったよ!」

 

そんな笑顔で面と言われると…少し照れる。

 

「あ、そういえば美玲ちゃんに双子の兄妹がいるってなんで教えてくれなかったの?」

「べ、別にいいだろ言わなくても…」

「ひょっとしてアレ? かっこいいお兄ちゃんに女の子の知り合いができて取られたくないーっていう」

「ギャルゲと一緒にすんな!ウチはそんなブラコンじゃないからなっ!!」

「あはははっ、今日はありがとね美玲ちゃん、美貴くん。また一緒に遊ぼっ」

「うん、楽しかった。またな」

「暇な日はLineしてねー。じゃーばいばい!」

 

向こうへ走っていく紗南。あれだけ遊び続けたというのに衰えを知らないあの元気さ。あんなタイプの女子俺のクラスにもいないぞ

 

ふと服を後ろに引っ張られる感覚。振り向くとデビキャを抱えてシャツを引っ張りながら睨む美玲が。

 

「……なんだよ」

「……次遊ぶときはウチも一緒だからな」

「うん、そのつもりだけど」

「間違っても紗南と二人きりなんてダメだからなっ!」

 

プイッっとそっぽを向く美玲。なんだ? 友達を兄に取られるとでも考えているのか? そんな色男じゃないぞ俺は

 

妹の心情など知る由もなく、美玲の背を見ながら帰路についた。




14歳組ってどの子もキャラが濃くて魅力的ですよね。
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