道化師†無双   作:黒猫γ

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続けて投稿です。

一日でお気に入りが増えたことに驚きました。
ありがとうございます(^^)/。

できる限り盛り上げていきますのでよろしくお願いします!
それと誤字脱字等の報告、感想待ってます!




第二話

 

 

 

 

 

この世界には「字名」「真名」というものがある。

字名は一般的には子が成人する際につけられる名前であり、これを持つことは大人の仲間入りをするという意味合いがあったとされる。この意味合いから成人になる前に字名を持つ人もおり、あくまで普通は、程度の認識だったとされる。

次に真名についてだが、真名は自らの子につける唯一無二の名であり、とても神聖なものであるとされる。親しき仲でも真名を許されていない場合、むやみにこの名を名を語ることは厳禁であり、首を切られても仕方がないとまで言われている。

 

さてここまで名前について話してきたが、理由としては朱治もこの度字名と真名を両親からもらうことになったのである。

その日は朱治の8歳の誕生日の日であり、母も休暇を取って前日に帰ってきていた。

 

「おはようございます、母上!」

 

「おはよう朱治、朝ごはんで作っているから座って待ってね。」

 

「はい、母上!」

 

母は忙しく帰ってくることが少ないものの朱治の誕生日の日には決まって休暇を取り、帰ってきたときは朝ごはんを作るのが当たり前になっていた。朱治もなかなか会えない母ではあったが、その何気ない日常が好きだった。朱治と母が朝ごはんを食べ終わったあたりで朱治より早く起きてどこかに出ていたのか父が帰ってきた。

 

「おう、朱治。起きてたか。」

 

「はい!今日も元気です。」

 

「ははは、それはなによりだ!それと朱治、誕生日おめでとう!」

 

「あら、先に言っちゃうのね。一緒に言おうと思っていたのに。」

 

「ははは、悪い悪い!」

 

「もう…、朱治お誕生日おめでとう。」

 

「はい!ありがとうございます、父上母上!」

 

両親はそのあとお互いに小言の言い合いをしていたりしたのだが、はたから見てもそれを楽しんでいる用なので、離れていても夫婦中は円満らしい。

 

「さて朱治には誕生日祝いにある物をやろうと思っている。」

 

「ある物ですか?」

 

「そうだ、それは字名と()()だ。」

 

「本当ですか!?」

 

朱治は突然のことに当然驚いた。初めて街に行ったときしかり日常でも父の急な行動に驚かされている朱治だが、今回はそれよりも嬉しさが上回っていた。真名をもらうことも大きな意味を持つが、字名をもらうということは朱治は一人の大人として両親に認められたということである。聡明な朱治はこのことがとても嬉しかった。

 

「それでどのような名前なのですか!?」

 

「ははは、そう急かすな!名前は逃げていかんぞ。」

 

「二人でちゃんと考えたものなのよ。字名は君理(くんり)、真名は陽風(ヤンフー)よ。」

 

「ああ、先に言ったな!」

 

「ふふん、さっきのお返しよね。」

 

「くぅ、最初の一言は俺が言いたかった…。」

 

二人はまた小言を言い合っていたが、朱治は自分の字名と真名を頭の中で反芻していた。頭の中で何度も言葉をかみしめ、両親に向き直った。

 

「素晴らしい名をありがとうございます!改めまして姓は朱、名は治、字名は君理、真名を陽風。この名に恥じぬ生き方を目指します!」

 

「見事な宣誓だ、陽風!この時よりお前も大人の仲間入りだ。ここに印として俺の真名楽風(ルーフー)を託す。励めよ、陽風!」

 

「では私からも華照(カショウ)の名を託します。呼び方なんかは今まで通りでもいいからね?」

 

「はい、父上母上!」

 

ここにのちの風来坊朱治が真に生まれた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからまる一年大きなことが起こるわけではなかったが、朱治はその偉才を徐々に開花させていった。母の持ってくる写本はすべて読み解き、独自の解釈を入れて竹簡にまとめた。また武の才では目だったことがないと思われていたが、この一年で急激に力をつけ、ついには母でもかなわないほどにまで急成長を遂げることになる。これには両親も驚き、子の才を埋もれさせたくないと行動を始める。そして朱治が9歳になるころ父と母はある決断をする。

 

「私塾ですか?」

 

「そうだ。最近のお前はもう一人の民として生活させるには惜しい才を持っていることが素人目でもわかる。そこでその才を伸ばせるように私塾に通ってもらいたい。」

 

「場所は豫洲潁川郡、かの有名な荀攸が教えているところです。」

 

「荀攸様ですか!?」

 

この家族の会話では驚きが絶えることはない。だが今回の驚きはともすれば真名をもらった際に匹敵するものかもしれない。荀攸とは名門荀家の若き天才であり、その名はこの小さな村に住む朱治でも知るほどであり、噂では品行方正であり、見た目も絶世の美女であるとされている。そんな自分とは比べ物にならない有名人の名前に朱治は委縮してしまう。

 

「母上、失礼ですがお金はいかほどかかるものなのですか?荀攸様ほどのお方からのご指導などいくらかかるのか心配でなりません…。」

 

「当然話はそこにいきつきます。ですが心配はいりませんよ。これは私の仕事との兼ね合いで決まった部分もあるんです。」

 

「母上の仕事ですか?確か最近千人隊長に上がられたと言っておられましたが、それと何か関係があるのですか?」

 

「さすが、陽風は鋭いね。この話の前に今の情勢の話をしなければならないわけですが、陽風にはわかりますか?」

 

「世が乱れてきているということですね。」

 

「そう。地方の領主ですら汚職にまみれ、飢饉に災害は当たり前のように起きる。こんな世の中ですが、うちの領主様は聡明な方でね。じきに起きる騒動に対して他の領主と連携をとって事に当たろうと考えたわけです。その先駆けとして私の部隊と豫洲の部隊とで交換となったわけ。」

 

「なるほど。ですがそれと私塾の話とでつながりが見えないのですが…。」

 

「実はこれは時期がうまく重なった、といった方が正解なんだよ。」

 

「父上、どういうことですか?」

 

「ふふふ、驚け!なんと部隊の交換を行っている時期と荀攸様が無料で塾を開く時期が重なっているんだ!」

 

「えっ、無料ですか!?まったく聞いてないんですけど!?」

 

「だろうな、言ってないから!」

 

「父上…。」

 

「ははは、まったく陽風はよく驚いてくれるから飽きないな!」

 

「僕でからかうのもほどほどにしてください!それと説明!」

 

「おっと、そうだった。実はな、今回の塾は荀攸様の従妹に当たる子の授業ということで開かれるそうだ。それこそ本来であれば個人で授業を行えばいいところを学ぶ意思がある者にも学を、ということらしい。さすが名門荀家だな!」

 

「実際どんな思惑があるのかわからないけど、この機会はそれを差し引いてもまたとないものだと私は考えているの。そこで任務の任期の間家族で引っ越そうかな?という話なの。」

 

「なるほど…。」

 

「それでどうする?それこそ無理にやらせることでもないわけだけど、」

 

「いや、行きます。行かせてください!」

 

「ははは、即答だな!」

 

「なら決まりね。任期としては一年とちょっとって感じだからよろしくね。」

 

「はい!わかりました!」

 

 

 

これより朱治はさらなる飛躍の機会を得ることになる。またそこで初めて自分と同じ偉才をもつ者と巡り合うことになるのだがそれは少し先の話。

 

 

 

 




第二話でした。

いったいどこの猫耳なんだ…。




また次回で。

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