道化師†無双   作:黒猫γ

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第七話です。

書くのに少し手間取りましたね。


第七話

拠点フェイズ

 

 

 

 

 

あの授業の翌日僕は休日にもかかわらず荀攸先生に呼び出されていた。象棋盤で起きた違和感については家に帰ってからも考えていたが、結局結論が出ることはなかった。荀攸先生からも説明はされたが、あくまで予想であってまだはっきりしたことはわからないらしい。

 

「表情をですか……?」

 

「やっぱり気づいていませんでしたか。私と対戦していた時、途中から盤面を見てませんでしたね。」

 

「そういわれるとそうだった気がします…。」

 

「先ほども言いましたが、朱治君は表情から無意識に相手の感情を読み取っていた、と私は仮定しました。勿論間違っているかもしれませんが、私はこれ以外に思いつきませんでした。」

 

「なるほど………。」

 

「ですが、変に考える必要はありませんよ。朱治君がしたことは確かに常人とは離れていますが、一般的に相手の表情から心理を予想することは読心術という形で既に存在しています。それは経験からくる勘であったりしますが、近いものではありますね。」

 

「つまり僕はその経験を補うことでこの才能と向き合って行かないといけないわけですか。」

 

「うーん、だからそんなに畏まるようなことでもないんだけど。いつもみたいに荀彧ちゃんと仲良くしながら少しずつ理解していけばいいだけですよ。」

 

「荀彧は関係ないですが、了解です。僕なりに頑張ってみようと思います!」

 

「やっと元気になったようね。ならさっそくだけど少し頼まれてくれないかな?」

 

「なんでしょうか?」

 

「ええ、実は……」

 

荀攸先生が言を言い終わる前に近くの扉がけり破られる。そこには怒髪天を超えるかの如く怒り狂った荀彧の姿があった。

 

「やっと見つけたわよ、このイカサマ発情猿!うちの文官たちから『荀攸様が朝から男を招待している』と聞いてその特徴を詳しく聞いたけど、やっぱりあんただったのね!これだから盛っている猿はダメなのよ!早く荀攸姉さまから離れなさい!」

 

「おはよう荀彧!朝から元気だな。それにしても少し言葉が不謹慎すぎないか?」

 

「あんた相手に不謹慎なんて言葉すらもったいないわよ!昨日の対戦もまだ納得できてないんだから、おとなしくこれから付き合いなさい!次こそ必ずメッタメタにしてやるんだから!」

 

「ちょっと待てよ、荀彧。荀攸先生からの頼みを聞くのが先だ。その後なら予定まで暇になるから対戦するのもやぶさかではないが。」

 

「ならちょうどいいわね。私が頼もうとしていたことも荀彧ちゃんの対戦相手だから。」

 

「そうなのですか?」

 

「荀彧ちゃんったら帰ってきてから朱治君の話しかしないんだもの。よっぽど悔しかったのか何度も何度も話していたわよ。男の子の話なんていつぶりになるのかな~。」

 

「ほう。」

 

「しかも熱弁している途中に無意識なのか朱治君のことをちゃんと名前で呼んでいたし、素直じゃないわよね~。」

 

「ほほう。」

 

「なんて話をしているのよ、姉さま!それにそこの猿!気持ち悪い顔でにやにやしているんじゃないわよ!そんなの言葉の綾に決まっているでしょ!」

 

「名前を覚えてないと何度も言っていたけど、なるほどね~。なんだかんだで荀彧も俺との会話を楽しんでいてくれたんだな~。これは少し心を開いてくれたと思うべきなのかな?」

 

「ほんとうに生意気ね。そのむかつく顔を泣き顔に変えてやるからおとなしく私に負けなさい!」

 

「ハハハ、昨日みたいに返り討ちだよ!」

 

そこからは荀攸がいたことすら忘れたように二人は象棋盤にのめり込むのだった。対戦している様子ははたから見ると楽しく遊んでいるようにしか見えず、後に荀攸伝手で広まった噂によって荀家当主は愛用の胃腸薬を使わなくてよくなったとか。

 

 

 

……

 

 

…………

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

「あーもう!なんで勝てないのよ!あんたみたいな欲望丸出しの変態猿に負けるなんてまるでわたしが猿以下みたいじゃない!ありえないわ!あんたまたイカサマをしてるんじゃないの!」

 

「また猿と言ったな!僕の名前は朱治だ!荀攸先生の話だとしっかり覚えていたはずだろ!それに荀彧は感情が表情に出やすいんだよ!僕より多くの戦略を知っていてもそれがバレバレなんだよ!」

 

「普通はそこまでわかるものじゃないのよ!私も物事の予想はたてられるし、それがほぼ正解だと確信できるものもあったりするわ。それでもあんたみたいに表情から完全に読み切るなんてできないから、勉強するのよ!相手の考えが完全に読み取れるとか交渉泣かせにもほどがあるでしょ!」

 

「しょうがないだろ!分かるもんは分かるんだよ!それにしても何刻やるつもりだよ!もう10戦10勝だし、いい加減飽きてきたよ!それにもう少しで予定の時間なんだよ!帰らせろよ!」

 

「いやよ!勝ち逃げは許さないわ!そうやって私に負けるのが怖いからって用事をでっちあげようだなんてそうはいかないわ!」

 

「嘘じゃねーよ!もとからあるってさっきも言っただろ!」

 

「男の言ったことなんて頭に残すわけないでしょ!」

 

「知るかよ!用事が終わった後ならもう少しだけ付き合ってやるからおとなしくしてろよ。」

 

「…………嘘じゃないでしょうね。」

 

「今嘘をついても後が面倒だろ。」

 

「わかったわよ。嘘をついたら覚悟しなさい!」

 

「本当に信用ないな。りょーかい。じゃあ、急ぐからまたな。」

 

「待ちなさい!」

 

「なんだよ!約束もしたし、用事もないだろ!僕は急いでいるの!」

 

「少し考えたけどあんた、そんなに急いで何しに行くわけ?まさかいかがわしいことじゃないでしょうね!?」

 

「そんなわけあるか!?父様と大道芸をやるんだよ。」

 

「大道芸?」

 

「これも何回か言って…………っと、男の言葉は覚えないんだっけ。僕の趣味だよ。定期的に街で見せているんだよ。」

 

「ふーん。」

 

「聞いておいてまったく興味がなさそうかよ。それはそれでむかつくな~。……そうだ!この際見てもらうか。」

 

「はーーーーーーーー!?なんで私があんたの用事に付き合わないといけないのよ!ちょ、ちょっと私に触るな!無理やり引っ張るなーーーー!」

 

 

 

 

ちなみに完全に空気になっていた荀攸は二人が部屋を出ていくのを温かい目で見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荀彧を連れて約束ギリギリでついた朱治は楽風に怒られるかと思っていたら、逆に笑われた。

 

「ハハハ、時間ギリギリについたと思ったら可愛い女の子をつれてくるとは、お前も男らしくなってきたな!」

 

「父上、からかわないでください!それにこいつは何回か話した荀彧ですよ。」

 

「ほう、あの荀家のご令嬢か。初めましてだな!」

 

「……どうも。」

 

「ハハハ、話にあった通り男嫌いに間違いはないみたいだな!言葉遣いなんかは気にしなくていいぞ!むしろ俺が敬語を使ったほうがいいかな?」

 

「…………ならそうさせてもらうわ。それと敬語とかいらないわ。変に畏まられてもお互い疲れるだけだもの。」

 

「そうか。ならそうさせてもらおう。それでどうして朱治と一緒に?」

 

「それは僕が一度僕たちの大道芸を見せたいと思ったからです。荀彧は何回言っても覚えてくれないので、少し見せつけてやりたいわけです。」

 

「無理矢理連れてきたくせに生意気なのよ!どうせちんけなことしかできないんでしょ!」

 

「それは見てからのお楽しみだ!僕は自分の芸に自信があるからね。必ず笑顔にできると確信しているよ!これもひとつ勝負かな?」

 

「ふんっ。見終わって盛大にダメ出ししてあげるから覚悟しなさい!」

 

「ハハハ、楽しそうだなふたりとも。そろそろ始めるから荀彧ちゃんは少しだけ離れて見てくれ!やるぞ、朱治!」

 

「はい、父上!」

 

 

 

 

 

そこからいつもの慣れた口上で始める朱治と楽風。ここ最近噂になっている大道芸人の登場に通りかかった人たちは足を止めて芸を見ていく。芸は一人で行うものもあれば二人で協力して行うものもあり、中には観客に参加してもらったりしながら場を盛り上げていく二人。荀彧も最初こそ馬鹿にしていたが、朱治の一つ目の芸の種が分からず、次々見せる朱治の芸の粗さがし夢中になっていた。笑顔こそしていなかったが、楽しんでいるのは見てわかる。朱治は芸をしながら時々荀彧の顔色を見ていたが、楽しんでいるものの笑顔ではない荀彧に力不足を感じていた。そのまま芸は進行していき、最後の演目にまでなった。

 

「さてお楽しみのところ申し訳ありませんが、最後の芸となります!これは私の息子朱治が初めて一人で作ったものであり、最後を飾るにふさわしい華やかなものです!」

 

「まだまだ若輩な身ではありますが、この芸には特別自信があります!最後までお楽しみください!」

 

最後の芸ということで観客も盛り上がる。荀彧もこれまでの芸で一つも種が分からないことに苛立ちつつ、少しの動きも見逃さないと朱治の動きに集中する。

朱治は舞を踊るかのように体を動かし始める。その動きはとてもなめらかであり、その表情からは色気がにじみ出ているようだった。そんな動きに見ほれていると朱治の手には突如赤い薔薇の花が現れた。観客が驚く中、朱治は手に持つ薔薇を観客に放り投げると手には薔薇の花が。それを再び放り投げると朱治の手にはまた新しい薔薇の花が!観客の手元に薔薇が降ってくる様はとても優美であり、とても幻想的に見えた。観客はいっせいに拍手に沸き、大喝采が場を支配した。結果大道芸は大成功をおさめたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハ、今回も大成功だったな!」

 

「ですね、父上!皆さん喜んでくれていたみたいで大満足です!」

 

「だな!じゃあ俺は帰るけど陽風はどうする?」

 

「先に帰っておいてもらえますか。これから荀彧と象棋盤の約束をしていまして…。それに感想を聞かないといけませんし。」

 

「そうか!なら気を付けて帰ってくるんだぞ!」

 

「はい、では!」

 

 

 

 

 

 

 

楽風と別れると朱治は小走りで荀彧のもとに駆け寄る。荀彧は芸が終わった後、苦虫を噛み締めたような顔でたたずんでいた。

 

「どうだったかな?楽しんでいたようだったけど。」

 

「…………全然面白くなかったわ。」

 

「分かりやすい嘘をつくなよ。これは僕じゃなくてもバレバレだぞ。」

 

「ほんとうにむかつく顔ね…!楽しかったわよ!悔しいけど種が欠片もわからなかったわ。これでいいわよね!」

 

「何を怒っているんだよ。勝負は荀彧の勝ちだろ?」

 

「は?」

 

「どうした?そんな素っ頓狂な顔して?楽しんでいてくれたのはうれしいけど、僕の芸で笑顔にすることはできなかっただろ?やりながら力不足を感じたよ。」

 

「……………………は?」

 

「本当にどうした?察しが悪いぞ。荀彧の勝ちだぞ。」

 

「ふざけるんじゃないわよーーーーーーーー!そんなの勝ちと言えるわけないでしょ!あんた本当に頭に綿でも詰まっているんじゃないの!」

 

「どんな悪口だよ!勝ちは勝ちだろうが。」

 

「明らかに譲ってもらったようなものじゃないの!そんな勝利求めてないわよ!」

 

「求めていようが求めてなかろうが勝ちに変わらないだろうが。ほら、象棋盤をやるんだろ。僕も早く帰りたいんだから行くぞ!」

 

「待ちなさい!話は終わってないわよ!」

 

 

 

 

 

そのあと口喧嘩をしながら荀家に向かう二人だったが、並んで歩く影は少し近づいているように見えた。

出会って4か月がたったある日の日常、 、 、 、

 

 

 

 

 

 

 

 




ある日の日常を書いてみました。


真名関係がとてもめんどくさいですね。人前で他人の真名を話すことは失礼に当たる、って設定があった気がするので交換し合った面々のみの場合だけ真名にしてたりするんですが…………。最近の作品だと真名呼びが普通だったりして、、、、これが一番苦労しますね。((+_+))


この設定ってもしかしてオリジナルになってしまうのか?
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