遊戯王。日本では最も有名なカードゲームの1つでありそのカードプールの広さから構築の幅広さが特徴だ。同じテーマのデッキでもプレイヤーによってそのデッキ内容は大きく異なる。そしてここにもその魅力にとりつかれた青年が1人いた。
「うーん…これ入れてもありきたりで面白くないしなぁ。かといってこっち入れても噛み合わないし…」
見るからに頭を抱えて悩んでいるのは神代悠吾。どこにでもいるごくごく普通の大学生だ。そして彼を悩ませているのは今組んでいるデッキについてだった。安定性をとるか爆発力をとるか、使いたいカードを最大限活かすにはどうすればいいか。考えることが多くあるがそれがデッキ構築の楽しみともいえる。
「ちょっと行き詰まったし散歩がてら外の空気でも吸うかなー」
外に出てみるともう日が傾きかけていた。いくら休みとはいえ朝からぶっ通しでデッキ構築をしていたので軽く伸びをしただけで体がバキバキと大きな音をたてた。ひと仕事終えた心地よい疲労感と共に翌日には学校が控えているという憂鬱感もわいてきた。
『もう少しで完成しそうだし早速明日持っていってデュエルするか!あ、やべレポートすんの忘れてた…今日は徹夜だな…』
そんなことを考えながらブラブラと歩いているうちに横断歩道に差し掛かった。そして信号を確認しながら交差点を渡る。その時だった。隣からものすごい勢いで突進してくる鉄の塊が視界に入った。ートラックだー。そう思った瞬間には手遅れで気づけば体が宙に浮いていた。体が地面と接触した瞬間も不思議と痛みは全くなく、ただ意識だけが遠のいていくのを感じた。
『う、嘘だろ……こんな形で死ぬなんて…まだやりたいことだって山ほどあんのに…大学生活だって全然エンジョイしてないし親孝行だってしたいのに…』
薄れていく意識とは裏腹に頭は驚くほどクリアで多くの事を考えていた。これが走馬灯というものかと納得してしまうほどだった。段々止まっていく心臓の鼓動を感じながら彼はこう願っていた。
『あーあ。。もっと…デュエルしたかったなぁ……』
閉じていく視界のなかで彼が最後にみたのは血に染まった道路とあわてふためいている通行人だった。その光景を最後に彼の心臓は動きをとめた。それと同時に彼のコートの中にあるカードが光ったことには誰も気づかなかった。
そのカードは彼が最も信頼し、いつも持ち歩いているカード、『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』だった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。次回はデュエルがあると思うのでもし興味がある方は次回もみていただけると嬉しいです。