さてさて今回は第9話です。
悠吾君ははたしてスランプから抜け出せるのでしょうか。それともこのまま潰れまうのか…
それではどうぞ!
「これで終わりだ!《ナチュル・ガオドレイク》でダイレクトアタック!」
「ッ…ライフで受ける…」
悠吾
LP700→0
エリとのデュエルから数日経ったが、未だに悠吾は《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を召喚できずにいた。理由は分からないうえに授業でもデュエルの勝率はどんどん下がっていった。
カードゲームである以上運が絡むためずっと勝ち続けることは容易ではないが悠吾の場合は今回のデュエルのように一方的に負けることが多くなっていた。
「やった〜!!神代悠吾に余裕勝ちしたぜ!もしかしたら俺アカデミア最強?」
「アホ、あんなんだったら俺でも勝てたわ。全然シンクロもしないし防御だってお粗末すぎんだろ」
先程対戦した生徒とその友人であろう生徒の話し声が聞こえる。散々な言われようだ。普段なら聞き流しているが今は状況が状況だけに心に深く突き刺さる。
悠吾としてもあのような無様なデュエルなどしたくはなかった。しかしエリとの試合以来、《クリアウィング》だけではなく、デッキ全体がまるで今のまでとは違うデッキかと思うほど回らなくなっていた。具体的に言うと手札事故が極端に多くなっており、先程のデュエルのように手も足も出ないことが多かった。
「悠吾!デュエル終わったのか?」
ギリっと歯軋りをしたところで話しかけられる。竜二だ。どうやら彼も対戦相手とのデュエルを丁度終えたようだ。対戦していたと思われるフィールドを見ると快勝したようだ。
「あぁ…まあ見ての通りボロ負けだけどな…」
フッ…と自嘲気味に鼻で笑う。自分とは対照的に勝利している竜二になんて言っていいのか分からずこう返す他なかった。
「おぉ…そうか…」
また竜二も、そんな悠吾を見て言葉を濁す。最近、特にゴーストとのデュエル後悠吾の様子がおかしいことには気付いていたがなんと声をかけていいか分からなかった。というのも以前と人が変わってしまったかのように無気力になってしまったからだ。
今の彼に何を言っても無意味だろう。
「じゃあ俺教室戻るわ」
どうしたものかと考え込んでいると悠吾は足早に教室に戻ってしまった。その背中は酷く寂しそうだった。
その背中を見て歯痒く思いながら竜二はある決意をする。
「悠吾…」
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放課後になり、下校時刻となる。生徒たちは部活をしたり友人と遊んだりと思い思いの時間を過ごす。悠吾も帰り支度を済ませて席を立つ。
『今日はバイトないから帰って寝るか…』
いつもならDホイールでも転がして野良ライディングデュエルか、カードショップでスタンディングデュエルをしているところだが最近はめっきり辞めてしまった。
帰ろうとした悠吾だが後ろから呼び止められる。
「ユーゴ!ちょっとまて!」
振り向くと声の主は竜二だった。そういえば最近まともに話していない。今日も授業後に話した気がするが上の空で何を話したかよく覚えていない。
「どうした…?俺今から帰るんだけど」
「俺と勝負しろ!」
「は…?」
いきなりの申し出に思わず間抜けな声が出てしまう。少年漫画ではよくありがちな光景だがまさか自分が言われるとは思わなかった。
「最近デッキを新しくしたからな。アカデミアトップクラスのお前にどれだけつうじるか試してーんだ。」
確か竜二の使用していたデッキは【Xーセイバー】だ。こちらの世界に来てから日が浅いのですぐにデッキを変更したように思えたが竜二はこのデッキを長く使っていだはずだ。愛着のあるデッキを何故変えたのかはとても気になるところだ。
「まさかお前が【Xーセイバー】のデッキから乗り換えるとはね。」
「【Xーセイバー】は
「そうかよ。でも残念だけどその新デッキでの初デュエルは無理。」
「は!?なんでだよ?今日バイトなくて暇だろ!」
バイトが無いからと言って暇だと言われるのは心外だった。もしかしたらプライベートの用事があると思ってくれてもいいものだ。今回は家に帰って寝ようと思っていただけなので竜二の言う通り暇なのだが。
だから理由は他にある。
「お前も見たろ…授業のデュエル。あんなお粗末なデュエルしかできないんだよ俺は。デッキの試運転は他の人に頼んで。」
「いや!俺がお前とデュエルしたいんだ!」
「人の話を聞けよ…兎に角無理、帰る。」
竜二はこちらの都合を全く聞いてくれない。悠吾としてもできるなら協力してあげたいが今の自分が付き合っても迷惑をかけるだけだろう。そう思って回れ右をして帰ろうとした。
「逃げんのか?」
ガシッと悠吾の腕を掴む。引き止めるにはあまりにも稚拙な挑発だ。こんな見え見えの挑発にのるのは小学生ぐらいだろう。
「なんだってんだよ…」
理由は分からないがここまで竜二が食い下がるのは珍しい。掴まれた腕を振り解こうとするが竜二はその手を離さない。こうなったらテコでも動かないだろう。
「はぁ…分かったよ。ただし一戦だけだからな。」
「よっし!じゃあDホイール乗ってアカデミアの練習用サーキット集合な」
「はいはい…」
気は進まないが約束してしまった以上やるしかない。そう覚悟を決め約束の場所のサーキットに向かう。
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場所は変わりデュエルアカデミアのサーキット。テレビで見るような大会のようなサーキットとまではいかないがそれでも十分な広さだ。悠吾達以外にもこの場所にライディングデュエルをしにきた生徒がちらほら見受けられる。
「お、来たかユーゴ!」
重い足取りで竜二を探しているとDホイールのメンテナンスをしている竜二を見つける。
「サーキット使える時間限られてるからな。早くスタートしようぜ。」
そう言うとすぐさまスタートラインにDホイールにつける。どうやらグチグチとゴネている暇は与えてくれないらしい。
「わーったよ。じゃあカウント始めてくれ。」
悠吾もスタートラインにつく。思えばライディングデュエルはゴーストとの一件以来だ。体に緊張が走り、心拍数も上がる。
緊張で気づかなかったが周りには生徒が集まってきている。悠吾と竜二のデュエルを見に来たようだ
「ギャラリーも集まってきたな!じゃあカウント開始だ!」
3、2…
久しぶりの感覚に若干戸惑いながらもアクセルに力を入れる。深呼吸して呼吸を整え、前を見る。今はこの瞬間に集中しなければならない。
1
「「ライディングデュエル・アクセラレーション!!」」
悠吾LP4000
竜二LP4000
開始のブザー、そして2人の掛け声とともにライディングデュエルが始まる。勢いよくアクセルを踏み一気に加速する。久しぶりだったがスタートダッシュは上手くいった。
『よし!このまま第一コーナー先取だ!』
「させるかよ!」
だがそう簡単には行かせてくれず、竜二もアクセル全開で追随する。
両者一歩も譲らず第一コーナーにさしかかったが、その直前に悠吾と竜二のDホイールが接触しそうになる。
「…!やべ!」
一瞬悠吾の脳裏にゴースト戦での衝撃がフラッシュバックする。その一瞬にアクセルを緩めてしまう。
「そこだ!」
その隙を竜二は見逃さなかった。コースを目一杯使って悠吾を追い抜かし第一コーナーを先取する。一瞬の気の迷いで第一コーナーを譲ってしまったが引きずっている余裕はない。
「第一コーナーは俺がもらった!ドロー!」
竜二 SPC0→1
悠吾 SPC0→1
『竜二のやつ…デッキの枚数増やしたのか?』
体勢を立て直し竜二の出方を伺う。先程の話が本当なら彼のデッキは【Xーセイバー】とは別物ということだ。情報がないため、どのような出方をしてくるため全く予想が出来ない。
「俺は、《カードガンナー》を通常召喚!》
カードガンナー
ATK400
現れたのは目からライトを発するロボット。
「《カードガンナー》の効果発動!デッキの上からカードを3枚墓地に送る。」
デッキトップからカードが3枚墓地に送られる。墓地肥やしとして優秀な効果と言えるだろう。
「墓地に送ったカード1枚につき《カードガンナー》の攻撃力は500アップする。つまり《カードガンナー》の攻撃力は1900だ。」
カードガンナー
ATK400→1900
墓地にカードを送ると同時に攻撃力を1900までアップさせる。下級モンスターの中でも最高と言える攻撃力だ。
「カードを2枚伏せてターンエンドだ。エンドフェイズに《カードガンナー》の攻撃力は元に戻る。」
竜二
LP4000
モンスター
カードガンナー
ATK400
魔法・罠
伏せ2枚
「俺のターン!」
「スタンバイフェイズ、【針虫の巣窟】を発動!デッキからカードを5枚墓地に送る。」
更にデッキからカードを墓地に送る。1ターン目ですでに10枚近くのカードが墓地に送られている。
「随分カードを墓地に送るんだな。デッキ切れおこしちまうぜ。」
「んなヘマはしねーよ。おっ、いい落ちじゃねえか…墓地に送られた《エクリプスワイバーン》の効果発動!このカードが墓地に送られた時、デッキからレベル7以上の光、または闇属性のドラゴン族モンスター1体を除外する!俺は《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を除外!」
「《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》…!?っつーことはドラゴン族のデッキか?」
「どうだかな…デュエル進めりゃ分かるんじゃねえか?」
竜二 SPC1→2
悠吾 SPC1→2
『ドラゴン族デッキなら早いとこ手を打たないと高打点モンスターがポンポン出てくる。でもこの手札じゃ…』
今ドローしたカードを合わせてみても展開出来そうなモンスターはいない。かといって魔法カードで突破しようにも今はSPCが少なく使えるカードがない。
「どうした!?こんな時に考え事か?」
攻め方を決めあぐねていた悠吾を見かねて竜二がヤジを飛ばす。
「俺は《電々大公》を通常召喚!バトルフェイズ!《カードガンナー》を攻撃!」
SR電々大公
ATK1000
電々大公が手に持っているでんでん太鼓で《カードガンナー》をぶっ叩いて粉砕する。先制パンチは決まったがアドバンテージを稼いでいるのは竜二だ。このくらいのダメージは意に介さない。
「おっと!まあこれくらいはしょうがねぇか」
竜二
LP4000→3400
「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ。」
悠吾
LP4000
モンスター
SR電々大公
ATK1000
魔法・罠
伏せ 2枚
「どうした?随分控えめじゃねーか!でもこっちは遠慮しねーぞ!俺のターン!」
悠吾SPC2→3
竜二SPC2→3
「まずは《SPーエンジェル・バトン》を発動!カードを2枚ドローして手札から1枚墓地に送る。」
デッキが回らない悠吾に反して竜二は流れるように手札交換、墓地肥しをしていく。そしてドローしたカードと墓地に送ったカードを見てニヤリと笑う。
「おい、ユーゴ!まだ始まったばっかりだけどボヤボヤしてっとこのターンで終わっちまうぞ!」
「キーカードを引いたか…」
まだ3ターン目だが竜二の墓地にはカードが溜まっている。何か仕掛けてきても不思議ではない。
「あぁ、いくぞ!墓地の《エクリプス・ワイバーン》と《聖刻龍ートフェニドラゴン》を除外して《ダークフレア・ドラゴン》を特殊召喚!」
ダークフレア・ドラゴン
ATK2400
「《エクリプス・ワイバーン》が除外されたってことは…」
「そうさ!除外されてる《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を手札に加える。」
「《レダメ》といい、墓地肥やしとこの召喚条件…デッキは【カオスドラゴン】ってどこか…」
「正解…。だけど主役はまだ出番じゃねーぜ。俺は墓地の《アックス・ドラゴニュート》と《暗黒龍 コラプサーペント》を除外して《ライトパルサー・ドラゴン》を特殊召喚!」
ライトパルサー・ドラゴン
ATK2500
フィールドに白と黒のドラゴンが並び立つ。デッキ名の【カオスドラゴン】を象徴するドラゴンと言ってもいい。
「俺はまだ通常召喚をしてない!手札から《ギャラクシーサーペント》を通常召喚!」
ギャラクシーサーペント
ATK1000
「《ギャラクシーサーペント》はチューナーか…」
「その通り!俺はレベル6の《ライトパルサー・ドラゴン》にレベル2の《ギャラクシーサーペント》をチューニング!シンクロ召喚!レベル8《混沌魔竜カオス・ルーラー》!!」
混沌魔竜 カオス・ルーラー
ATK3000
ここに来て初のシンクロ召喚。その攻撃力は3000と大台にのっている。
「こいつが俺の新しいエースモンスターだ!特殊召喚時の効果発動。それにチェーンして墓地に送られた《ライトパルサー》の効果も発動!まず《ライトパルサー》の効果で墓地の闇属性ドラゴンを特殊召喚する!俺は《ダークストーム・ドラゴン》を特殊召喚!」
ダークストーム・ドラゴン
ATK2700
竜巻を纏った暴風竜と言うべきドラゴンが召喚される。おそらく墓地肥しの段階で墓地に送られていたのでだろう。
これで竜二のフィールドには上級ドラゴンが3体。だがまだ終わらない。
「続いて《カオス・ルーラー》の効果でデッキトップからカードを5枚墓地に送り、その中の闇か光属性のカードを手札に加える…けどそう何度もいい落ちとはいかねぇか。魔法と罠ばっかで加えるカードがない。」
先程とは打って変わって墓地に送られたカードは魔法や罠カードだけのようだ。運がないと言えばそうだが流れは竜二にある。その上まだ切り札を召喚していない。
「さァていよいよ主役の登場といきますかぁ!フィールドの《ダークフレア》を除外して《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》を特殊召喚!」
レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン
ATK2800
咆哮と共に現れたのは全身を鎧に包まれた黒いドラゴン。攻撃力もさることながらその真髄は効果にある。
「《レダメ》の効果で墓地から《ライトパルサー・ドラゴン》を特殊召喚!」
ライトパルサー・ドラゴン
ATK2500
墓地からドラゴン族モンスターを特殊召喚するという単純だが強力な効果。その緩い召喚条件とも相まってドラゴン族を多用するデッキには必要不可欠ともいえる。
「ドラゴンが4体…!」
攻撃力2500以上の上級ドラゴンが4体。いくらソリッドビジョンとは言え物凄い圧力を感じる。
『クソっ…この状況じゃあもう…』
「《カードガンナー》を破壊するためとはいえ《電々大公》を攻撃表示は迂闊だったな。バトルフェイズ!まずは《ライトパルサー》で《電々大公》を攻撃!」
「これを通すとヤバい! 罠発動!《ハーフ・アンブレイク》!このターン《電々大公》は戦闘で破壊されず受けるダメージも半分になる。」
「なるほどなぁ、防御手段を持ってたってことか。だが俺の攻撃に耐えられるかな!?一撃目!」
《ライトパルサー・ドラゴン》の口から光線が放たれ《電々大公》を直撃する。本来なら消しとんでしまうが、カードの効果で場に残る。
悠吾
LP4000→3250
「《ダークストーム・ドラゴン》で《電々大公》を攻撃!戦闘破壊はされないがダメージは受けてもらうぜ。」
悠吾
LP3250→2400
少しずつだが確実にライフが削られていく。だがまだ2体のドラゴンの攻撃が残っている。
「3撃目ぇ!《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン》で《電々大公》を攻撃!」
悠吾
LP2400→1500
赤黒いブレスで三度《電々大公》を焼き尽くす。その衝撃でハンドル切るのが遅れてしまいDホイールがクラッシュしかける。だがそれをなんとか立て直す。
「ラストォ!《カオスルーラー》で《電々大公》に攻撃!」
光と闇が合わさったブレスが炸裂。攻撃力3000というだけあって衝撃は今までで1番強かった。土煙がもうもうと立ち込める中なんとか体勢を立て直す。
悠吾
LP1500→500
「首の顔1枚だな。カードを1枚伏せてターンエンドだ。」
竜二
LP4000
モンスター
ライトパルサー・ドラゴン
ATK2500
ダークストーム・ドラゴン
ATK2700
レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン
ATK2800
混沌魔竜 カオスルーラー
ATK3000
魔法・罠
伏せ2枚
ライフとモンスターをかろうじて残したはいいものの状況はかなり悪い。ドローしようとデッキに手をかけるが手が震える。
「お、俺のターン…」
ゴーストとのデュエルやエリとのデュエルが頭の中にフラッシュバックする。不利な状況で自分にターンが回ってくるこの状況はあの時によく似ている。また醜態を晒してしまうのかという恐怖が心を蝕んでいく。
「何をビビってんだ?」
その考えを読んだかのように竜二が問いかける。
手が震えたのを見られたのか?いや、竜二は前を走っている。手元は見えないはずだ。
「なんだよ…急に何いってやがる」
「気付いてないと思ってんのか?」
その言葉に悠吾は目を見開く。竜二の纏う空気が今までと明らかに空気が変わった。
「ゴーストとのデュエル後…いや、1ヶ月前くらいから違和感は感じてたんだ。」
1ヶ月前といえば丁度悠吾がこの世界に来たくらいだ。違和感がないようになんとか隠していたつもりだったが気付かれていたようだ。しかしよく考えれば当然だ。姿が同じで、こちらの世界の記憶があるとはいえ、全く違う人物になったのだ。全く同じ人物のように振る舞えるわけではない。
「お前が何に悩んでるのか、話したくないなら無理には聞かねえよ。だけどなぁ…!!」
そう言うと前を走っていた竜二が勢いよくハンドルを切りぐるんとDホイールを反転させる。そしてそのまま後ろ向きで走っている。
「何を迷ってんだ!ユーゴォ!!」
静かな雰囲気から一転、声を荒げる竜二。ビシッと人差し指をこちらに向けその表情からは怒りの感情が伺える。
「え…?」
竜二の予想外な行動に間抜けなリアクションをとってしまった。
「俺がデュエルで諦めかける時、スランプになってた時、お前はいつも『デュエルを楽しむもんだ。その気持ち忘れなきゃ強くなる!』そう言ってくれた…お前の言葉に何度も俺は救われてんだ…そのお前がそんなツラしてんじゃねぇ!ぶっつぶれそうなシケたツラしてんじゃねえよ!!」
口調は悪いが、その言葉からは竜二の熱い気持ちが伝わってくる。そのまま言葉を続ける。
「負けるのが怖えなら、強くなりゃあいい。ゴーストが怖いならあいつらブチのめせるくらい強くなればいい!どんなに絶望的な状況でも最後までデュエルを楽しむことを忘れねぇ、俺の知ってる神代悠吾っていう男はそういう男だ!!」
ドクンっと心臓が脈打った。まるで自分の中にある何か熱いものが叩き起こされたかのような感覚だ。その瞬間、悠吾の意識が飛び、気がつくと何もない真っ白な空間にいた。どうやらここは悠吾の潜在意識のような場所のようだ。
しばらく周りを見渡していると次第に様々なシーンが映像化されて流れていく。
この2つの記憶が混ざり合って悠吾の周り中を駆け巡っていく。初めて遊戯王をプレイした時や、大会で優勝したとき、初めてDホイールでライディングデュエルをしたとき等様々であったが、共通していたのが共通したいたのがいつも『デュエルを心から楽しんでいること』だった。
ふと気づくと目の前に人が立っており、それは自分と同じ顔をした人物だった。直感で、
『その気持ちがあればお前は誰にも負けねえよ!』
そう言って彼はニカっと笑うと1枚のカードを差し出す。それは悠吾のエースモンスター、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》だった。
『ありがとな』
それに応えるように悠吾も返事をかえす。
その一言と共にカードを受け取るともう1人の悠吾は光の粒となって消えてしまう。だが彼が消滅したわけではなく、悠吾の中に流れ込んでくるのを感じた。今2人は完全に1つの存在になったと分かった。
意識が現実世界に引き戻される。Dホイールの上、猛スピードで流れる景色。そう、今は竜二とのライディングデュエルの途中だ。
あの真っ白い空間にそれなりに長い時間いたと思っていたが、現実世界では一瞬のことのようで、今は竜二に檄を飛ばされた直後だ。
「るっせーんだよ…んなこと言われなくても分かってるっつーの!!」
口では悪態をつきつつもその目にはもう以前のような迷いはなく、口元には笑みが溢れている。グッと一気にアクセルを踏み込み、後ろ向きで走っている竜二を追い抜く。
「あ!テメ…追い抜きやがった…!」
慌てて竜二も体勢を整えて、悠吾を追いかける。先程まで向かい風だった風も今は追い風として悠吾を援護してくれている。
「俺のターン、ドロー!!」
悠吾SPC3→4
竜二SPC3→4
勢いよくカードを引き、ドローしたカードを確認してそのまま発動させる。
「《SPークラッシュ&ドロー》を発動!SPCが4以上ある時、お互いに手札を全て捨て、捨てた分だけデッキからカードをドローする!」
オリジナルSP
SPークラッシュ&ドロー
SPCが4以上ある場合、お互いのプレイヤーは手札を全て捨てて捨てた分だけカードをドローする。
「ここで《クラッシュ&ドロー》か!いいカードを引きやがったな」
「俺は4枚捨てて4枚ドロー!」
ドローした4枚は今までが嘘のように噛み合う手札だ。頭の中でいくつもルートが浮かぶ。まるで世界が一変したかのようだ。
「さあ、反撃開始と行こうか!お楽しみはここからだ!!」
最後までお読みいただきありがとうございました。
さて、今回ほかなり悩みました…というのも竜二のデッキ変更や親友として竜二がユーゴにどんな声をかけのかというとこですね。
竜二のデッキに関しては登場開始から変更はしようかと思ってたので交換早すぎって思った方もいらっしゃると思います。ちなみに【Xーセイバー】はまた出てくる予定はあります。
竜二の檄についてですが実は結構気に入っています。ここでは少年ジャンプの掛け合いみたいなものをやってみたかったので…作者の願望丸出しですがご容赦いただければ思います。
さて、次回は遂にユーゴと竜二のデュエルがクライマックスです!調子を取り戻したと言ってもユーゴのライフはわずか500。逆転できるのでしょうか?乞うご期待!!
感想、いいね等お待しています。