剣客御剣録 外伝 直刃譚   作:砂糖露草

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筆が乗った末にこんなものかいてしまったでござる。

情熱の赴くままにかいたんで少々見苦しいかもしれませんが、それでもよかったら是非読んでください。

あと、駄ピンさんの本編「剣客御剣録」のキャラクターに関してはまだ募集中みたいなので興味があればそちらも奮ってご参加を。
フレーズと説明文でピンと来た方、キャラクターを作ったけど陽の目を見ずにお蔵入りになってしまったかたなど是非是非



こんな感じで読書参加型の小説、流行れ(願望)


前章
出立前日


 ここに、二人の武者が相対す。

 一人は、壮年で頭を刈り上げた男、初老に入った皺の浅い肌が凄みを出している。

 対するは、濡れ烏と称してもいいほどの黒髪を後頭部の下の方で結えた一人の少女。

 その体の起伏の乏しさと勝ち気にも見える大きな瞳は好青年にも見えなくはないが、れっきとした少女である。

 

 キッチリとした礼を互いに交わし、脇に収められた木刀を同時に正眼に構える。

 

 開始を告げる言葉なく、ただ互いに一歩ずつ前へと進む。

 すり足でゆっくりと進んでいく様は、もし観客がいればきっとその緩慢さに不平の声をあげていただろう。

 それぐらい、見て退屈な一場面だ。

 だが一角の武人なら、此のゆっくりとした動きの中にいくつもの攻防が入り混じっていることに気付くことだろう。

 彼ら、否。壮年の男は少女の動きを予測して、わざとわかりやすく迎撃の意志を気当たりで飛ばし少女の動きを抑制していたのだ。

 

 しかし少女も負けじと出来得る一手を模索し試しながらじりじりと自分の間合いまで距離を詰めていく。

 その様はさながら陣取り合戦、もしくは詰将棋に酷似していた。

 

 そして、ついに少女の刃が男に届くまでの距離まで達した。

 刹那少女の剣が横薙ぎに振られる、男の胴体を切り伏せんとする鋭い一撃だった。

 しかしそれは難なく防がれた。刀でうまくいなされ体勢を崩すための一手となり、少女を襲う。

 男女の力の差だけではない、巧妙な捌きによる流れの改変。

 相手の特徴を闘いの中でよく知り、かつ一部の極めた武人にこそ許される妙技の一つ。

 それをこの男性は力量の差こそあれど、まるで子供に見せつけるようにこなして見せた。

 

 そのままでは綺麗に地べたへ崩れ落ちるだろう、だが、少女はそれを良しとしない。

 無様でも滑稽でも、彼女は大地を踏みしめ前へ進もうとする。たとえどんなに体勢を崩されようともだ。

 そして、立ちふさがるモノはすべて叩き斬る。

 それが彼女の戦であり、人間骨子でもあった。

 

 今回も同じだ。

 崩されても絶対に転ばないよう大きく踏み出し、その足を軸と見立て体を回して重心を整え-振り向きざまに鋭い一閃。

 その刃は-

 

 

「また負けて…しまいました…」

 

 床に頭と膝を投げ出し、少なくとも女子、いや人が人前でしちゃいけない無様をさらす女子(おなご)の姿がそこにはあった。

 彼女の名は『直井(なおい)(ぜん)

 腰まで伸ばした濡れ烏色の髪を後頭部の下の方で一纏めに結えた、先程まで道場の中で鎬を削っていた女侍である。

 結果は、先程の彼女の言とその無様な姿から容易に想像できるだろう。

 

「俺に勝とうなんざ20年はやい…カッカッカ!」

 

 そう高笑いを挙げるのは先程彼女と相対してい壮年、どちらかと言えば初老に限りなく近い男性。

 名を『直井成正』

 この道場の持ち主であり、そして『一刀』流『摩穿』派初代師範でもあった。

 そして、少女『直井 漸』は此処の道場の一番弟子なのである…多少込み入った事情があって()()()では違ったとしても、師と弟子がそうだと思っているのだから、それでいいのである。

 

閑話休題

 

「てか、漸よォ…負けるのは別にいいとして、その散り様は流石にねぇんじゃねぇの?」

 

 体と恥とその他諸々をかなぐり捨て投げ出した体勢で突っ伏す弟子、それを見た師である成正は深々と溜息をもらす。

 

 あの攻防から立て直し激しい打ち合いをしていたためか、道着ははだけあられもない姿を現している。

 …まぁそもそもポーズが滑稽なのと起伏の乏しい身体では色気もへったくれもありはしない。

 

 さっさと立ち上がれと顎で促す師匠にそれにこたえようとする弟子。

 ふんぬぬぬぬ、とかぐぎぎぎぎとか乙女から出てはいけない言葉が出ている気がするが気にしては負けだ。

 

 それからしばらく経たぬうちに、少女は動かなくなる。

 

「師匠、(すぐ)は先程の稽古で精根尽き果てたみたいです。立てません」

 

 大真面目で凛とした声で言い放つ少女、顔もどこか凛々しいのだが、だが姿勢が(ry

 

 この体たらくに成正はまた深々とため息をつく。

 師としては全力を出してくれるのは嬉しい限りだが、そんな無様は見せてほしくないので心境複雑であった。

 

 そんな彼は頭をかきながら、漸にゆっくり近づき手を貸して楽な体勢に助け起こすと、

 

「立てるようになったら居間にきな、昼めしがてら大事な話があるからよ」

 

 とだけ言い残し、さきに道場を後にするのだった。

 

「話…いったいなんのことだろう?」

 

 

 

 さて、場面は切り替わって件の居間へと視点を移す。

 そこには先に道場から抜けた成正の姿があり、その前には成正が直々に作った料理の数々が並んでいた。

 そう、男の手料理である。だというのに色鮮やかで栄養への気配りも申し分ない出来であった。

 

「失礼します、……お待たせしてすいません師匠」

 

 遅れてきた漸が静かに襖を開け、ふと耳についた昼餉のかほりに前におかれた膳に視線を移した。

 そして、申し訳なさそうに目を伏せる。

 

「師匠、やはり飯仕度は(すぐ)に任せていた」

「駄目だ」

「何故!?」

 

 飯仕度を師匠にやってもらっている心苦しさに、何度目かの提案をにべもなく断られる弟子。

 その師成正は、厳かな雰囲気をかもしだし、弟子の提案など寄せ付ける気など更々ないようだ。

 

「あそこは俺の戦場だ、お前だろうと勝手はさせん」

「ですが、師に世話される身にもなってください!」

「じゃぁひとつ聴こう。漸よ、おめぇさん今何を作れる?」

 

 師の問いかけに、漸は一度考えに更ける。

 そして、自信をもって意気揚々と答えた。

 

「雀の丸焼きと山菜のおひたしです!」

「てめぇ料理なめとんのかぁ!」

「な、でしたらカエルとネズミの取り方もわかります!」

「サバイバルと一緒にすんじゃねぇよ!せめて包丁使う料理くらい言え剣士なら!」

 

 ぜぇ、ぜえと息を荒らげる成正。

 このやり取りでわかるように、漸は料理の腕もからっきしであった。

 剣士なのに包丁を使えば指を切ってしまうくらいに、料理と言われてゲテモノに行き着いてしまうくらいに。

 彼は心のなかで自分の弟子に厨房を任せてはならないと改めて心のなかに誓ったという。

 

 とはいえ、このままでは本題に入れない。そう思った成正はまず息を整えゆっくりと腰を下ろした。

 

「まぁいい、座れ。せっかく作った飯がさめちまう」

「は、はい。では」

 

「「いただきます」」

 

 食物への感謝を捧げ二人同時に箸に手をつけた。

 かたやごく当たり前のように咀嚼して、もう一方は目を輝かせながらもがっつかない程度に箸をひるげに伸ばす。

 

 後者が弟子である漸なのだが、料理はできないなりにも食という文化を楽しむことはできていた。

 

そんな折である。

 

「ときに漸。料理もそうだが、おまえ剣以外にやってることはあるのか?」

 

 そんな師からの問いかけが投げられた。

 漸は不思議に思いながらも当然のように答える。

 

「いえ、なにも。この身は未熟なればこそ、一振りの刃になるよう精進している最中ですから。」

 

 その顔はやや誇らしげで楽しげであった。対する成正の苦い顔と対になるように。

 

「あー、そりゃぁ確かに殊勝なことだけどよぉ?お前さんは人間なんだ、ダチと剣以外で遊んだり競ったりするだろうよ」

「」

「おい、何で黙る。」

 

 今度は弟子が苦い顔をする番だった、苦い通り越して青くなり冷や汗がだらだら垂れ流していたりもする。 

 

「え、ええと。何でもありませんよ?ええ、直は人気者ですから友達だって百人いますし」

「なら、その友達の名前言ってみろや、俺は優しいからなその四分の一でいいぞ?」

 

 優しいと言うが、それでもまだ鬼畜である。

 少なくとも一クラスの過半数以上が友達であるといっているようなものだからだ。

 ……え?普通じゃないのかって?HAHAHAそんな馬鹿な。

 とまぁ、そんなボッチ思想はさておき。

 これには困窮するかと思われた漸だが、ことのほかその口から悠長な言葉が流れ出てきた。

 

「それでは、『祐吾』『弥太郎』『晋介』『安平』-」

 

 これにはさしもの成正も仰天する。

 なにせ師匠としての視点から見ても、確かに人気はあるが普段から時間があれば素振りか刀の手入れしかやらない娘子だったからだ。

 だというのにさらさらと人の名前を読み上げていくではないか、少なくとも覚える程度には人づきあいをしているということ

 最愛の弟子の成長は、成正にすればくるものがあった。

 いつの間にか親離れしていく、子離れできない親の心情もあったのかもしれない。

 おもわず目からほろりと-

 

「『弾正』『紫』-」

「いや待て、おい、おいッ」

 

 

 -涙が引っ込んだ

 詠唱が中断された漸は面白いほどにきょどっている。

 

「な、なんでしょうか」

「さっきの奴お前が拾ってきた刀につけた名じゃねぇか!?いやよく考えりゃ徹頭徹尾聞き覚えあんぞ主に銘としてな!?」

 

 成正の鋭い指摘、きゅうしょにあたった!

 漸は明らかに堪えている。先程から流れる冷や汗が今では滝のようだ!

 対する漸は起死回生を試みて、例え話を始める

 

「その…『刀はともだち』といいますし…」

「刀はサッカーボールじゃねぇし、その友達をバンバン折ってるのはどこのどいつだよ」

 

 しかしそこで成正のカウンターが綺麗に決まった!

 

 -そう、彼女は道端に落ちている廃刀を拾ったり、買い手のつかない刀を二束三文で手に入れてくることがよくあった。もはや趣味というか日課に近いものだ。

 しかもその一つ一つに固有の名前を付けるほどに大切に手入れをしていたのだ。まるでボッチのイマジナリーフレンドのように、イマジナリーフレンドのように(大切なことなので二回言いました。)!

 しかも必要とあらばボッキリ折ることも厭わない!それが友達のやる事かよォ!

 

 漸選手!これはもう(二重の)意味で立てない!

 弟子一号()のめのまえがまっくらになった。

 

 

 

「そういや、漸。お前今いくつになった?」

 

 そんな今までの惨劇が何事もなかったように成正は問いかけた。

 その問いに若干ふてくされながらも、彼女は素直に答える。

 

「歳のことでしたら、直はいま15ですが」

 

 成正は「そうか来年から16か…」と確かめるように相槌を打つと、しばし考えに耽った。

 

 そして、空気が一転して張りつめたものへと昇華する。

 

「漸、お前にはこれから暇を出す」

「それは…『破門』、ということですか…?」

 

 さきほどのおふざけとは比べ物にならないほどの冷たい汗が、漸の背中を伝っていく。

 

 彼女はお世辞にも才能があるほうとは言えない。齢15を過ぎた乙女がまともに包丁を握れないのも、今の今まで無銘の刀たちしかまともな友達がいなかったのも、その才能の不足を補うために犠牲にしたようなものだった。

 

 だがしかし、そのことに未練はない。だからこそ道半ばでの『破門(ざせつ)』ほど恐ろしいものは無いのだ。

 それが敬愛する師からの最後通告だとしたらなおさらである。

 

 それでも彼女は凛とした姿勢を崩さない、そんなことは師に限って絶対にないと信じて/まるでいつかは来るものだと思っていたかのように。

 

 対する成正はゆっくりと近づき漸の目の前まで来て、頭を軽く小突いた。

 

「そこは普通『免許皆伝』だろうが、安心しろ今のお前じゃどっちも程遠い代物だ。」

 

 

 そう言って笑いかける師を見て漸の緊張がゆっくりと弛緩していく。思ったよりも重い話じゃなかったと安堵の息も漏らした。

 

 話がそれてしまったので彼は一旦区切り、小さく咳をする。

 そして話題を切り出すように口を開いた

 

「『東学園』は流石に知ってるよな?」

「ええ、それなりには。東と西に分かれて『学生剣士最強』を競い合っている剣術学校ですよね。ですが未熟者の直にはそれこそ無縁だと思いますが…」

「お前、そこに通え」

「は?」

「推薦枠が一つ余ってるらしくてな、無理やり勝ち取ってやった。だから行ってこい」

 

 横暴である。

 何がって見た目に合って粗暴な師が無理やり勝ち取ってきたというのだから、一体何をしたのか想像に難く無いし、その決定に自分があらがえないことを彼女は知っているからだ。

 

 だが、彼女は行きたくなかった。

 その肩はこれからの不安と寂しさに震え、顔はずっと下を向いたまま。

 自分には不釣り合いだ、敬愛する師匠の顔に泥を塗るような無様をさらすのでないか。そしてそこには自分を守ってくれる人が誰もいないという事実に。

 

 そんな弟子に成正は優しく、しかし強かに説き始める。すべては大事な一番弟子のために

 

「いいか、漸。お前はこの5年で確かに強くなった。見違えるほどにな。だがこのままじゃ殻は破れんだろう」

「つまり、そこに通えば強くなれる、と」

「さぁな、ただここにこもってちゃぁ、一生そのままだ。それに-」

「それに-?」

「きっとそこに通えばいろんなものが見える、見えちまう。今まで見落としてきたもの、見てないふりをしてわざと取りこぼしたもの。だが、それらはきっとお前のためになるモノだ。それを手に入れろ。三年間の最重要課題だ。」

「それが、なんなのかは直には教えてもらえないんですよね」

「それも含めてだからな、ま、なんだ。思いっきり無様に負けても気にすんな。俺がその様見ても大爆笑するだけだ」

「酷いですね」

「カッカッカ。お前の師匠はそういう男よ」 

 

 そう言って今度は優しく頭をたたく。

 子供をあやすように。

 

 やがて

 

「わかりました。『一刀』流『摩穿』派一番弟子、直井 漸。行ってまいります。」

 

 そう、決意を現した。その瞳に怯えはあっても迷いは、もうない。

 

 

 

「旅支度は大丈夫だな?」

 

 次の日の早朝まだ日が昇り切ってない頃に、漸は慣れ親しんだ故郷を旅立つことにした。

 支度をしていたらいつの間に夜になっていたことと、今から向かえばちょうどいいころ合いに目的地に着くからだ。

 着替えや寝具、そして剣士に欠かせない刀()()

 

 

 

「そうだな…そんな多くても全部ボンクラじゃなぁ…。あとで漸のためにイイのを見繕って送ってやろうか?」

 

 漸の腰に数本、そして背負い鞄に十数本刺さっている無銘たちを見た成正の正直な所感だった。

 それに対して彼女はふるふると首を横に振る。

 

「いや、然しなぁ。お前さんの『人生』を使うたびに替えてまた新しい無銘刀を探すのもほねだろう?探しゃぁ「いいんですよ」」

 

 今度は成正の言葉ににかぶせるようにして、話を止める。

 そして漸はおもむろに腰にさしてある刀たちをポンと叩きこう語った。

 

「この刀たちにも情が移ってしまいましたし」

 

それに、と彼女は続ける。

 

「もしお師匠様の刀を折ってしまったら、それこそ直は立ち直れなくなります。」

 

 悲しそうな、何かを隠しているような面持で。

 何かを言ってやるべきだというのは、成正にもわかっていたのに言葉が出ない。

 言おうとしている言葉がどこかずれていて、でも何がずれているのか分からない。答えられない。

 

 だから口から出たのは外れてはいない、されど正解からほど遠いもの。

 

「-そうかい。ま、欲しくなったら文でも電話でもしてくれや。漸にピッタリの奴を選んでやるさ。いや、一から作らせるのもいいな。」

「ふふ、その時はよろしくお願いしますね。」

 

 今はこれでいい。

 少なくとも一時とはいえ別れに辛気臭い話は不要。

 笑って送り出してやることこそが一番の手向けだ。

 

 

「それでは、行ってまいります」

「おうよ、身体には気を付けてな。拾い食いすんじゃねぇぞ」

「師匠こそ、お酒は控えてくださいね」

 

 互いを気遣う会話を最後に、彼女は歩き出した。

 背が見えなくなるまで見送っている師から離れて

 

 

 小さな鳥はいま巣立つ

 




「あ、そうだ漸」
「なんでしょうか師匠」
「自己紹介のときに趣味で剣の話するの禁止な」
「そんな五無体な!?直から剣を取ったらなにも残りませんよ!?」
「るせぇ。それが最初の課題だ。」
「そんなぁ……」



-当日-
「それでは、前の子から自己紹介をお願いします」
「(直から剣を取ったら何が残る……、剣以外で言えばやはり甘菓子か、なら)「直井さん?」は、はい!」
「直は、直井漸ともうします。以後お見知りおきを」
「……趣味とか、ないんですか?」
「趣味は甘……(いや、甘いものが好きだなんていったら、嘗められてしまうんじゃないか?だとしたら)「どうかしたの?」は、はい!趣味は辛味処、以上です!」
「辛いものが好きなんですね。それじゃぁ次の子」
「あ、いえそこまでは……(小声)」

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