すまない…本当にすまない。
駄ピンさん毎度の確認&編集に、銃頭さんには許可とあとがきを少し手伝ってもらったりまで…マジで迷惑かけまくりじゃねぇか自分(白目)
さて、(作者含む本人たち的に)涙を誘う別れを体験してきた主人公、
名を直井 漸という。-少女だったが、いまそんな彼女はどうしているのかというと学園に向かう道中であった。
……既に予定した時間を過ぎ去ったあとにもかかわらず。
何故、こんなことになったのか。
ちょうどそれを彼女も思い起こしていたのでそれに便乗させてもらおう。
-そう、それは予定通り近場の大型客車-俗にいうバスのようなもの-乗り場に着いたときのことだった……。
「-これが師匠のいってた大型客車の定期便ですね。車自体はいままで何度も見たことはありましたが、中に入ったことはないんですよね……」
そんなおのぼりさん全開の発言をしているのは他でもない漸である。
彼女は今まで道場とそこから徒歩で行ける近隣の町しかいったことがないため、公共機関の類いを使うことがなかった。
発言の通り大型客車に乗るのは初めてだったりする。
そんなこともあり、少しだけ楽しみでもあったのだが-
さて、いまの時刻は早朝の朝日が顔を出して少しした頃。
この時間帯、どの公共機関でも春夏秋冬ほぼ確実に起きるはた迷惑な風物詩があるのをご存じだろうか。
おそらくある一定の年齢層より上でかつある島国の出身なら一度は経験したことがある。
そして、誰もが出会したら辟易するであろう朝夕のイベント。
そう、
『通勤氾濫』-いわゆる通勤ラッシュ―……である。
「ほらもっと詰めて!そこ空いてる!」
「ヤベ、押され過ぎて吐きそう。」
「ちょっと!誰かお尻触ったでしょ!」
「年寄りを労らんかいこの若僧どもぉ!」
喧々囂々、阿鼻叫喚な光景が漸の目の前に広がる。
しかもお国柄ほとんどの者が帯刀しているため、いつ一触即発な状況になってもおかしくなさそうな状況である。
-一応乗車になる際はバスの上か下に作られている荷物置き場に刀も一緒に置くことが義務付けられているが。まぁ、気休め程度だろう。
そんな有様を見て、さっきまでのうきうき気分が一気に急降下。
顔をひきつらせ、今からこの中に自分も入ることを考えて顔が真っ青になっている。
しかしその場で立ち往生はできない。
何故なら彼女の後ろには既に行列が出来てるからだ。
このままでは迷惑がかかる。
即決即行動が肝心なこの場面で彼女は-
「-あ、どうぞお先に。直のことはお気になさらず。」
後ろの人に順番を譲り、そのバスを見送ることに徹したのだった。
人混みになれない田舎娘には少々刺激が強かったらしい。
で、である。
次の大型客車は当分先、そこで彼女は考えてしまった。
-これはもはや、歩いていった方が早いのではいか?-
無論、そんなことあるわけない。
彼女だって、本心で思っているわけではないだろう……たぶん、メイビー。
しかし、「またこの待ち時間で人が増え、挙げ句次の大型客車もぎゅうぎゅう詰めだったらどうする?
乗るの?すし詰め状態で目的地まで行くの?というか行けるの?逝くの?」
という、対人恐怖症でも発症したような自問自答を繰り返した挙げ句。
「うん、きっと徒歩でも問題ないな!『官東』までならちょうどいい鍛練になりますからね!」
現実逃避と脳筋理論が合わさり最強に見える(違)
少なくとも漸にはそう思えたようだった-。
なお、この時間につくよう調整していたのは他でもない、師の成正であり、その心得は「すこしでも人に慣れさせねぇとなぁ」という面白半分の親心から。
更にいうと、丁度次の便から
まぁ、そんな救済措置はまだしも通勤ラッシュという存在事態あまり詳しくない彼女には、成正の気遣いなど半分も理解できなかった。
更に道にも詳しくないものだから迷子になって『東学園』にはたどり着けませんでしたとさ。
~Fin
◆
うん、すまない。それだとタイムパラドクスが起きてしまうから、ただの冗談なんだ。
本当にすまない。
しっかり迷子になりはしたものの、それこそ道行く人に訊ねればいいだけだからね。
人っこ一人通らないわけでもなしに、その考えに至った彼女は早速近くに人影がないか辺りを見渡した。
すると-
「犯人に告ぐ!今すぐ人質を解放し投降しなさい!もうすぐ応援も到着するからな!」
「うるせぇ!さっさとこっちの要求を聞きやがれ!人質がどうなってもいいのか!?」
「助けて貴方ぁ!!」
「っく。卑怯な!人質などとらず正々堂々とかかってこい!」
……先ほどとは様相の異なった修羅場が展開していた。
というか、今回のやつの方が正当な意味に近いだろう。
十名ほどの素顔を覆面で隠した、帯刀している男衆。
そのうちの一人に取り押さえられている武装解除された身なりのいい女性と、その対岸で身を案じている台頭している夫と思わしき人物。
そして、その両者を隔絶するように配置されている『御用引き』が一人。
よくドキュメンタリー番組などで取り上げられる、凄惨な事件現場(生)がそこにはあった。
どう見ても『御用引き』側の旗色が悪い。頭数的にも状況的にも。
それがわかっているからか、それとも人質がいるからか強引な手段をとれずに硬直した状態になっていた。
これには漸も苦笑い、する間もなくその場から姿を消す。
逃げたのではない、
狙いはいま人質をとっている覆面の男。
漸は心のなかで師匠成正の教え復唱しながら目標へと駆ける。
-『この流派はな、元は戦で大将首を挙げるために俺のひいひいじいさんが編み出した戦術を元にしてるんだよ。』
『戦場で、ただ必死に大将首だけを夢見て、決して『
『歩方や対一戦術なんかは俺があとから編み出したものなんだよ。どうだ、凄いだろ!』
『んん!それはそれとして。おまえさんが世間に出れば、いろんな戦いかたをするやつと出会うだろう。』
『早いやつ、図体のでかいやつ、若しくは頭数揃えて総出でかかるやつもいる。特に最後は摺り足でチマチマやってたら日がくれちまう。』
『というわけで、だ、お前さんにはこれから『走法』を教えてやろう。なぁにちょいと足腰の力が必要だが、要は慣れよ。』-
「『刀を『霞構え』に持ち替え、出る足と同じ肩を前に出す。そして、足でしっかり地面をつかみ、姿勢を低く保ちながら倒れるようにー』」
走る。初速は遅く、しかし倒れこむような姿勢のお陰で勢いがまし、だんだんと早くなっていく。
『業術』と呼ばれる妙技の中に『縮地』と呼ばれるわざがある。
間合いを一瞬で詰めるいわゆる瞬間移動に近い移動術である。
その『縮地』に最高速はもちろん初速も及ばない彼女の走法だが、一点だけ特筆すべきものがある。
それは-
方向転換が『縮地』よりも自在であるということ。
「ふぎゃぁ!?」
「おい、後ろからなにか来てるぞ!侍か!?」
最初の接敵をすれ違い様に斬り伏せ、始めに人質を解放すると、速度を下げることもなく次の賊へと向かっていく。
異変に気がついた彼らは、突如割って入った乱入者に一瞬だけ慌て、すぐに迎撃の構えをとった。
四方八方から彼女を斬り伏せんと襲い掛かった。
迫りくる敵を遮蔽物と捉え、素早い動きで射線上に敵の仲間が来るように移動しつつ、すれ違い様に斬り伏せすぐにまた次の
ときに真横へスライドするように、ときにジグザグと曲がりくねりながら、ときに逆方向へ唐突に方向転換するなどして、賊を切り捨て進んでいく。
やがて、最後の一人を見事切り伏せ一言。
「『武術の基本は足と腰。大地を制する者は勝敗を決する』。師匠、直は無事やり遂げました。」
そうつぶやいて、自らを教え導いた師匠に静かに感謝の念をささげた。
そして、遅れて応援にやって来た『東奉行』衆のもと全ての賊が拿捕され、人質も目立った怪我なはなく家族との再会を果たした。
こうして、ひとつの強盗事件は未遂に終わったのである。
……で、である。
事件の早期解決はまぁいい。誇るべきことだ。
だがしかし、彼女の目的は『官東』へと至ることなのだ。
それはできるだけ早い方がいい、しかしこんな大々的に事件を解決してしまったら待ち受けるのは-
◆
「で、嬢ちゃん。そんな大荷物もって、しかも刀を十本以上ぶら下げて、何してたんだい?」
「そ、それは、直の師匠から、『官東』にある『東学園』に向かうようにと言われたからで……」
「ほーん?でもここより前に大型客車の停留所があったはずだが?」
「そ、その、大型客車の中がパンパンで入れそうになかったので、歩きで行こうと……」
「へぇー、こっから『官東』の『東学園』まで、歩きで?」
「は、はい、直は足腰には自信がありますから……」
「そう言う問題じゃない気がすんだがなぁ」
そう、事情聴取である。
近くの奉行署内にて彼女は管轄の同心から事情聴取を受けていた。
いきなり現場に乱入してきて賊を次々となぎ倒していく侍娘が怪しくないわけがない。
まぁ、怪しいは怪しいが、潔白であるのは自明の理である。
その事情聴取事態、すぐにかたがついた。
「いやすまねぇな、長い時間拘束しちまって。感謝はしてるし白だってのもわかっちゃいるんだが、これも仕事の一つなんだわ」
そういって申し訳なさそうに頭を下げようとする同心に、漸は慌てて止めにはいる。
謝意を表されることに関して単に胆が小さいからだ。
それを謙虚と受け取ったのか、その姿になにかを思い出したのか同心は唐突に口を開いた。
「そういや去年の今頃も同じようなことがあったなぁ」
「同じようなこととは?」
「お前さんみたいに現場に現れては賊どもを叩き潰してく輩がいたんだよ。ただそいつの場合俺たちが介入する前に終わらせて姿を消すから、正体がわからずじまいでなぁ」
「あ、もしかして直が呼び止められたのも其が原因でしょうか?」
「それもあるし、『廃剣』の可能性も考慮して、だな。ま、両方とも宛が外れたが。」
そういってタバコをふかす同心。
漸は去年自分と同じことをしたとされる剣士に思い馳せた。
きっと高潔で、人徳のある立派な人物なのだろう。そんな人にいつか手合わせを願いたいとも。
そんな彼女たちの邂逅は、また別のお話。
なお、
どこから嗅ぎ付けたのか、現場近くに訪れていた記者により顔と戦闘風景を激写されてしまい、
翌日の新聞記事にあることないことかかれた上で一面を飾ってしまったのは(当人以外には)どうでもいい余談である。
因みに
「で、お前さんこれからどうする?」
「少し遅くなりましたが、このまま『官東』目指そうかと野宿にはなれてますし。」
「慣れる慣れないの問題じゃねぇだろ、そこは。……仕方ねぇ近くまでパトカーで送ってってやるよ」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
と、こうして目的地までの足を確保することに成功した漸であった。
翌日の記事
「『お手柄!侍少女(少年?)強盗事件を解決!』
某日某所にて、犯行グループ10名による強盗事件が起きた。
当初、妻一人夫一人そして御両引き一名という少数の中善戦をしていたが、数の暴力に圧され一人人質に取られてしまう。
このままなすすべなく、犯行グループに泣き寝入りするか、もしくは応援が来るまで時間を稼ぐかの瀬戸際に一筋の希望が現れた。
そう、彼(彼女?)は流星の如く姿を現し、気づかれないうちに人質を取っている覆面の男を斬り伏せると瞬く間に他の犯行グループも制圧。
まさかの乱入者に事件は早期解決と相成ったわけである。
その彼女(彼?)は奉行所に任意同行をかけられ、その後何があったのか警邏用の車で、同心と一緒に署内を発つ姿を見られたという。
一体中で何を話していたのかはわからないが、一部では「去年の山賊狩りの当事者では」「いやきっと当事者の弟子か弟妹だろう」という噂がまことしやかにささやかれている。
何はともあれ、倭国の平和を守った美少年(少女?)剣士に我々記者一同は心からの称賛とこれからの健勝を祈らせてもらうところで今回は示させていただこうと思う。」
当事者(勘違)より
「あ、ねぇあれって今朝の瓦版に載ってた子じゃない?」
「あ、ホントだ!わぁ。あんな細腕で10人もの賊を斬り伏せたなんて信じられない~。去年の山賊狩もあのこなんでしょ?」
漸「……あの、直は去年のことに覚えはないのですが(小声&涙目)」
一方、官東某所にて。その去年の当事者はというと
轟「賊狩り...一体何ノア・ゾロなんだ?」
如何やら本人は自分が噂になっていることは終ぞ知ることはなさそうである。
なお、この噂話は信憑性が伴わなかったため、しばらくしないうちに彼女の情報と共に忘れ去られたという。