キャルト・ア・ジュエ   作:黄金馬鹿

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今回から新たな設定追加

何処にも投稿していない作品の設定流用してきたYO


第十八歩

「まぁ、預かってほしいというのは間違いですね。この子と組んでほしいというのが正しいです」

「はぁ……」

 

 アルフ同伴の元、話を進めたレオンはミイラ化しているせいで表情が読めないカスミと、カスミの隣に座ってガクブルと震えている兎獣人の少女と話していた。

 使い物にならなくなったフィルをアビーに任せてフィルの自室に放置しているため二体二の話になっているが、アルフはこれはあくまでもレオンとフィルの話なのでそこに居るだけの男と化し、レオンは預かってほしい、ではなく仲間として組んでほしいといきなり言われて困惑していた。

 兎獣人は体術特化の猫獣人、バランスが良く、そして鼻が利く犬獣人、魔法特化の鳥獣人と比べるとあまり戦闘に向いた種族ではない。兎獣人もタレントがある時があるが、大体タレントを持つのは全体の五割弱。しかし、兎獣人は第六感。そして感知能力が他の獣人と比べて長けており、素のジャンプ力も一番なため、タレント持ちは斥候となったり、タレントを持たない場合は後ろでレーダーとなっている時が多い。

 そんな兎獣人の少女と、組んでほしい。

 何故自分達の元に連れてくるのか、訳が分からなかった。

 

「……どうして、僕達なんですか」

 

 自分で組めばいいのに。自分の人脈を伝えばいいのに。探してきたらいいのに。

 そんな気持ちがあり、最終的に出てきた言葉はこの言葉だった。

 ミイラ化しているのに器用に茶を飲むカスミはその言葉を聞き、ようやくカップを置いた。

 

「そうですね……貴方達はこの子と同じだったからです」

「同じ……?」

「失礼な言葉にはなりますが。落ちこぼれという意味で、です」

 

 落ちこぼれ。

 種族としての出来損ないのフィルと、魔法使いの家系としての出来損ないのレオン。二人を言い表す言葉として落ちこぼれはピッタリだった。それは自覚しているので失礼だとは思わないが、それでもその言葉を聞いて疑問を持たざるを得なかった。

 兎獣人の落ちこぼれ。それを聞いてもパッと浮かんでこないのだ。

 鳥獣人の落ちこぼれなら何かしら魔法に関しての不自由があると分かる。魔法使いの家系の落ちこぼれと聞いても同様だ。しかし、兎獣人の特性は半分本能のような物なのだ。それが無くなるという可能性は。

 それを考えた所で一つ思い浮かんだ。

 

「……もしかして、ハーフなんですか?」

「はい。この子は兎獣人と人間のハーフです。そのせいで、兎獣人の中でも最重要とも言える第六感と感知能力が潰されている」

 

 第六感と感知能力が無い。それは確かに兎獣人として欠陥とも言える。

 そして、人間とのハーフという事は、恐らく彼女は兎獣人としての利点の部分が人間の部分で上書きされてしまったのだろう。それ故に、彼女は恐らく外見だけが兎獣人の少女として産まれてきてしまった。

 しかし、だ。そういう事例が今まで無かったという訳ではない。フィルのような遺伝子と種族の特性に対して真正面から喧嘩を売って産まれてきたわけではない。彼女のようなハーフの獣人だって生きるための術は戦う以外にも沢山ある。それなのに、戦いを本業とする自分達の元に連れてくるのは少し意味が分からなかった。

 

「……っていうか戦いに連れていきたいなら自分で連れていけば」

「そうともいきません。傭兵をやっていたせいで少々私は恨みを買いすぎてしまいました。この子と一緒にいれば恐らく私はこの子を巻き込んで……」

「ね、姉さん……わたし、それくらいなら気にしない……」

「それに、この子にも少々問題がありまして」

 

 無視かよ。二人は初めて兎獣人の少女が口を開いて意見したのにそれを華麗にスルーしたカスミに苦笑した。

 だが、少し気になる言葉を聞いた。

 

「問題はいいんですけど……今、姉さんって」

「はい。私はこの子とは姉妹です。腹違いですけどね」

 

 腹違いの姉妹、という言葉はレオン達の界隈ではあまり珍しい言葉ではない。名家や金持ちの当主となった男が妾を作り子供を作る。その結果腹違いの兄弟姉妹が出来るのはよくある話だ。

 ロハス家の当主である彼等の父は女選びに拘りでもあるのか妻以外の女は魔法使いの中でも選りすぐりの女としか関係を持ちたがらないようで彼等は腹違いの兄弟を一度しか見たことがない。その兄弟も魔法が使えなかったためレオンと仲良くしていたがもうここ数年間は会っていない。

 閑話休題。

 しかし、カスミがそう言った家の出とは思えない。そう言った家の出なら傭兵家業なんてやらないハズだ。

 とすると考えられるのは。

 

「浮気相手の子、とかですか?」

「はい。私の父が浮気をかましましてね。吊るして一晩放置したら子供まで作ったと自白したので私が迎えに行ったんですよ。つい五年ほど前に」

 

 なんというか、かなりアグレッシブな家庭のようだ。

 兎獣人の女は男受けがいいのか人間の男相手だとそこそこモテる。なので少女の母親はフラッと現れたカスミの父となんやかんやあって関係を持ち、そのまま出産してしまったのだろう。そして、彼女の父はそれを隠していた。

 なんというか、最低な話だ。吊るされて正解だ。

 だが、何故そこから迎えに行く話になったのか。それが疑問だったがそれはカスミが説明してくれた。

 

「この子の母は娼婦でして。その娼婦が父に惚れて関係を持ったんです。それから何度も関係を持った結果この子が産まれ、父は流石にヤバいと思ったのかその娼婦に金だけ渡してもう会わないようにしていたんです」

「最低を絵に描いたような男ですね」

「全くです。で、その娼婦に連絡を取ったら子供の事を放置しているらしくて。流石にこれはマズいとその娼婦から許可を貰って彼女を引き取るため迎えに行ったんです」

 

 もうレオンとフィルよりも遥かに家庭環境が終わっていた。レオンの場合は放置されていたがアルフという理解者が居てくれたしフィルも修行に行って師匠や同じ門下生と言った理解者がいた。

 しかし、この少女にはそれが無かった。娼婦の娘であり、更に放置され親の愛情を受けれずに生きてきた。

 その気持ちが分からないこともない。が、きっと自分達が分かっている気持よりも遥かに悲しく、辛く、寂しい人生を送ってきたのだろうという事だけは分かった。

 

「で、話を戻しますが……父は娼婦との子供なんて育てたくないと言った上に母も浮気相手の子なんて、とこの子に当たりそうだったのでぶん殴ってこの子を連れて家を出たはいいんですけど……」

「サラッとこの人めっちゃアグレッシブな事言ったぞオイ」

「出てから数年……あー、今から二年前ですね。少々この子を表に出したくない理由ができてしまいまして」

「表に出したくない理由……?」

 

 それは一体。とアルフが口にしようとしたとき、カスミが少女にアレを。と一言だけ言った。

 その言葉を聞いて震えあがった少女だったが、カスミが肩を叩いて大丈夫。と呟くと少女は暫く黙り込んでから頷き、そのまま目を閉じた。

 目を閉じ大体五秒ほどだろうか。いきなり少女の体の周りの空間が歪み、何処からか出てきた光が集まってくる。そしてその光が少女に纏わり付き、大体一秒ほどでそれが物体と変わった。

 その物体は、白衣。純白の白衣を彼女は目を閉じただけで纏った。

 レオンは何なのか分からなかった。しかし、アルフはそれだけで分かったようでそれの正体を口にした。

 

「……ギフテッド、か」

「ギフテッド……って確か、先天的な才能じゃ」

 

 ギフテッド。

 タレントのように機械の力を使い目覚めさせる後天的な才能ではなく、純粋な産まれた時から何かしらの条件を満たすことで使用可能となる、先天的な才能、レアスキル。

 その力は千差万別であり、自然発火(パイロキネシス)念力(サイコキネシス)透過能力(ステルス)等様々あるが、それらのギフテッドを使う人間には一様に特徴がある。

 ギフテッドの全力行使時、何かしらのアクセサリー、もしくは衣服を纏うのだ。それはグローブだったり仮面だったり帽子だったりと様々あるが、恐らくこの少女の場合は白衣。白衣を纏う事でギフテッドの全力行使を可能としているのだろう。でなければ彼女が白衣を何もない場所からあんな奇怪な事をして羽織れる訳がない。

 アルフですらギフテッドを使える人間は今までで片手の指で数える程度しか見たことがない。レオンに至ってはこれが初めてだ。それぐらいにはギフテッドというのはレアであり強力なのだ。

 

「はい。しかもその力も……まぁ簡単に言えばかなりヤバめでして」

「ヤバめ……?」

「この子曰くギフテッドの名前は『等価錬金(アルケミー)』。簡単に言ってしまえば対象Aを同質量の対象Bへと錬金できます。ノーコストで」

「…………つまり、だ。鉄を片手に同じ重さの金を作れるって事か?」

「やってもらいましたが出来ました。鉱山夫涙目ですよね」

「……なんていうギフテッドだ」

「一回に出来る質量の制限と無機物から無機物だけ。そして機械は無理という条件はありますがこの子のギフテッドは国を一つ動かす事だってできてしまう」

 

 簡単に言ってしまうカスミだが、その能力の強大さはとてもじゃないが言葉にはできないレベルだった。

 何故なら彼女が適当な石を金に変えて市場に流せばそれだけで金の価値が暴落したりする可能性がある。更にもしも彼女が錆びた剣を業物の剣に出来てしまう。いや、それ以上に岩を剣にでも出来てしまえばそれだけで国の兵隊へ武器を行き渡らせる事ができる。

 悪用されよう物ならもうとんでもない事になるだろう。それこそ国が傾くような事が簡単にできてしまう。

 それが、彼女のギフテッド。等価という言葉が付いているがために反則級にその有用性が増したギフテッド。今、アルフがこの子が居ればあの問題もこの問題も解決できてしまうと無意識に思ってしまうくらいには、彼女の能力は人の心に対して強すぎる。

 落ちこぼれでありながらそれに不釣り合いの才能を持つ少女。それがこの兎獣人の少女だった。

 

「ですから、私はこの子を貴方達に……私を倒した貴方達に預けたいのです。この子の安全のため……そして、この子のギフテッドの事を知りながらも、きっとこの子を一人の仲間として預かってくれる貴方達に」

 

 それは、最早推測と希望が織り交じった彼女の妄信とも言える根拠から出てくる願望だった。

 だがその言葉をレオンは否定できない。

 きっとフィルも、彼女にちょっとした頼みごとをしたとしても、それ以上の事を望まない。彼女のギフテッドを悪用しようだなんて今でも思ってすらいない。

 だが、これはレオンとフィル。そして彼女の問題だ。この三人の気持ちが無ければカスミの願望は達成されない。

 

「……僕は、いいと思ってます。ですけど、この子とフィルの気持ち次第です」

 

 そう告げたレオンだったが、カスミからの返答はかなり早めに帰ってきた。

 

「あぁ、この子の気持ちは無視してください。じゃないとこの子、一生部屋の隅でキノコ生やしているだけなので」

「いやキノコって……」

「一度生えました」

「うっそだろオイ」

『美味しかったです』

「お前ら二人して食ってんじゃねぇよ」

「あと姉さん。わたし、藻も生えたよ」

「掘り下げんなよ自慢すんなよ」

「あぁ、あれも美味しかったわね」

「藻を食うなよオイ」

「というか人体からキノコと藻が生えるってどういう事だ」

 

 それくらいに日陰者だったという事なのだろうか。頭が痛くなったロハス兄弟は同じ動作で目尻と眉間を抑える。このマイペース共と話していたら若干頭が痛くなってきた。

 折角シリアスなムードを保っていたのにキノコを生やしたという衝撃発言から空気が一気に緩くなってしまった。

 

「ですが、まぁ姉としてはこのままキノコと藻を生やす原木にはなってほしくないんです。それに、もうこの子と暮らしていた家、売り払いましたから」

「えっ。ちょっと姉さんそれ聞いてない」

 

 どうやら本当に聞いていないのか少女はかなり衝撃を受けた顔でカスミに言った。しかしカスミはそれを無視してレオンへと視線を合わせる。

 なんだか嫌な予感がする。

 

「さぁレオナルド・J・ロハス。引き受けないとこんな年若い少女がホームレス化しますよ。ちなみに、私はこれから別国へ逃げるのでこの子置いていきます」

「斬新な脅迫と人質ですね!?」

 

 確かにこの子がホームレス化するのはちょっと放っては置けない。放っては置けないが別国に行くんなら妹ぐらい連れて行けと。そう叫びたかったがその前に既にカスミは立って窓の前に立っていた。

 

「ちなみに、私の本名はティファニー・ラッセルです。この子の成長に関しては時々本名を使って手紙を出すのでその返信でお願いします。という事でアデュー」

「ちょまっ!!」

「姉さんちょっと待って!!」

 

 レオンと少女が二人で静止するがその前にカスミが窓をぶち割ってそのまま何処かへ走って飛んで消えて行ってしまった。なんというかマイペースもマイペース過ぎた人だった。

 アルフが力づくで止める間もなく窓を割って出て行ってしまったカスミ。そしてここを追い出されたらそのままホームレス化が確定してしまった少女。

 白衣を纏ったまま窓に手を伸ばして呆然とした彼女は暫くフリーズした後、かなり小さい声で呟いた。

 

「……あ、あの。窓。直しますね……」

「あ、うん……お願いできるかな」

 

 そして割られた窓は破片を手に乗せ、足りない分を適当な土で代用した彼女が窓ガラスを錬金する事でなんとか直った。

 しょうもないギフテッドの使い道である。




という訳で新キャラは新設定、ギフテッドを引っ提げてきたウサ耳少女。しかし彼女も兎獣人の中では落ちこぼれだしギフテッドがバレれば面倒な事にしかならないという厄ネタ満載の少女。手パン錬金は出来ません。しかも戦闘向きじゃありません。

え、こんな先天的才能あるんならこの作品コンセプトに真正面から喧嘩売ってるじゃんとか思うかもしれませんがこれ、目覚める条件がクッソ鬼畜に設定してるので得られる能力以上のデメリットがあります。

それではまた次回。
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