キャルト・ア・ジュエ   作:黄金馬鹿

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さぁ皆もギフテッドを習得する条件を予想してみよう!!


第二十歩

「つまり、この子はカスミさんの妹さんで厄介なギフテッドがあるからそこら辺気にしないであろう私達の所に預けられたと」

「簡潔に言えばそう言う事」

「超展開過ぎて笑える」

「否定できない」

 

 フィルの真顔の言葉に真顔で首を縦に振るレオン。

 フィルが使い物にならなくなってから僅か数十分の間に起きた出来事によって一人の少女のこれからの身の振る舞いが大体決まってしまったのだ。これを笑わなくて何を笑えと言うのか。額に手を当てて溜め息を吐くフィル。そしてその正面でタダでさえ小さな体を縮こめているルーシー。

 自分がここに暮らすという決定に対して溜め息を吐かれたら多少なりとも不安になったりするだろう。だからルーシーは申し訳なさそうに縮こまっているのだが、フィルがそれを視界に納めてから自分の態度が彼女の心を痛めたと分かりすぐに手を振ってごめんと言ってもルーシーは態度を変えない。

 一応、この中では最年長なのだしレオンの好意だけでここで暮らせている居候のような物なのだからここで自分が困ったような態度をするのは適切でも無ければやっていい事ではないと思い大丈夫だから、とルーシーになるべく優しい声色で語る。

 

「まぁ、私がとやかく言う問題でもないし。それに、ハウスキーパーやってくれるなら願ったり叶ったりだし?」

 

 語尾を疑問の形にしてレオンに聞いてみればレオンも頷いた。

 別に彼女を強制的にダンジョンへ連れていくつもりは毛頭無い。現状、キャルトのお陰で強化されたレオンとカスミを倒したという事実が自信と変わったフィルなら恐らく十五層位までなら何とか突破できるだろうとは思っているから。

 だからこそ、フィルにとってはこれ以上後衛が増えたとしても増えなかったとしてもどっちでもいいのだ。どうせレオンが有能過ぎて後衛の仕事全部やってくれるから。

 そう思えばルーシーがここでハウスキーパーをやり、家事全般をやってくれるのならかなりありがたい事だった。

 

「うん。でも僕としては後衛が増えてほしかったんだよね」

「そうなの?」

「やっぱ数で押されると援護しきれない時とか出てくると思うから」

 

 レオンが魔法使いよりも後衛として優れている点は、詠唱という時間を丸ごと削除し相手の気を逸らす。もしくは攻撃を弾く事が出来る点。

 しかし、欠点として一撃一撃が軽く、そして六発の魔弾を撃てばリロードという時間が必要になる。その弾数制限と威力を補うためのカードスキャンの時間を稼いでくれる後衛がレオンは欲しいとは思っていた。それに、何かあればレオンもツーペアを使って前へ行く事があるかもしれない。その時にもう一人後衛がいれば安定するのだ。

 

「後衛……ですか?」

「うん、そうだけど」

「……ならちょっと出来るかも」

 

 え? とレオンは間抜けな声を漏らした。

 だってさっき戦う事は無理だって言ってたじゃないかと。

 

「いえ、あの……姉さんみたいに前で剣を振らなきゃいけないのかなって思って……」

「タレントも無いのにそんな事頼めないよ。フィルは別だけど」

「悪かったね脳筋で」

「脳筋じゃなくてゴリぐはぁ!!?」

「殴るぞオイ」

「もう殴ってるから」

 

 この有翼メスゴリラめ……と鼻血を垂れ流しながらレオンは内心でフィルを罵倒する。

 ルーシーが急いで治療しようとしてくるがレオンはそれを手で制して適当に鼻に詰め物をしつつルーシーを落ち着かせる。もうフィルにぶん殴られるのも慣れた物だ。

 しかし、とレオンは考える。どうして彼女は前へ行く事しか考えなかったのかと。

 そう考えてすぐに頭の中をあの頭がパーな顔面ミイラ女が過った。恐らくあのミイラのせいで戦う事は即ち前で剣を振るう事。自分はそれを望まれているのだと。そう勝手に解釈してしまったのだろう。レオンもレオンで仲間になってほしいとは言ったが具体的に何をしてほしいかとかは何も言っていなかったので仕方ないと言えば仕方ないのだが。

 レオンは後衛やってくれと頼んだ。しかしルーシーは前衛やってくれと言われていると思った。そうしたちょっとしたすれ違いだったという事。

 

「ちなみにルーシーは後衛で何が出来るの?」

「えっと……ちょっと待ってください」

 

 頼られているからか。それともレオンにはもう懐いているからか。先ほどよりもちょっと声が大きくなったルーシーが自分の荷物が入った箱を漁る。フィルがチラッと中身を見たが大体が服で後は数冊の本が入っているだけだった。

 あれで私物全部というのなら少し寂しい。日用品も入っているのだろうけども流石に持っている物が少なすぎる。

 しかし部屋の隅でキノコと藻を生やしていたのならここまで私物が寂しいのも何となく理解できる。キノコと藻が生えるのは訳が分からないが。

 

「あった。これを使えます」

 

 そう言って取り出したのは、クロスボウ。ボウガンと呼ばれる物だった。

 クロスボウは本来弓のタレント持ちの中でも一部の人間が使う物だ。タレントがあると自分で矢を番えて引っ張った方が火力が出るという謎のインフレが起こっているから。それ故に、クロスボウはタレント持ちが照準の訓練や絶対に外せない、威力が要らない狙撃をする時に使う物。

 なのだが、それにしては少し小さいし形が変だった。まるで籠手にクロスボウのパーツを付けた様な。

 そう思ってようやく分かった。

 

「あ、それを腕に着けて?」

「はい。弾は現地調達です。一時はこれで自衛してました」

 

 何から自衛していたのかは聞きたくないが、確かに彼女とクロスボウは相性がいいだろう。

 ギフテッドによって弾をその場で作り出し番えて発射。これはレオンにとってもありがたい。弾切れを気にしないクロスボウ持ちが居るのならリロードの間や前へ突撃した後の事を任せやすい。

 

「これで爆弾を撃つんですよ」

「うん、爆弾……爆弾?」

「はい。こう、適当な石を小さな爆弾にして」

 

 とか思っていたら予想以上に彼女の戦い方は殺意が高かった。

 レオンは爆弾のような複雑な物は作れないのだと思っていたが、どうやら彼女は爆弾程度の簡易的な物はギフテッドで作れてしまうらしい。しかも、衝撃を受けると爆発するなんていう器用な物を。

 どういう内部構造をしているのかを把握して、それがどんな物で出来ているのかを把握し、かつそれが生物じゃなければ爆弾だろうが何だろうが作れてしまうらしい。機械は無理だが簡単な物は作れる。やはり魔法では出来ない事を出来てしまう分、ギフテッドはかなり戦術の幅を広めてくれる。

 

「ギフテッドかぁ……いいなぁ。やっぱり一個くらいそういう才能があった方が色々と楽だろうなぁ」

 

 フィルが呟いた。

 文字通り何の才能もないフィルだからこそ、ルーシーのギフテッドは羨ましかった。人とは違った物がある。それだけでも羨ましい。

 しかし、ルーシーはそれを聞いても顔を伏せるだけだった。

 フィルの言葉に付き合うでも、謙遜するでもなく。それを見てフィルが少し無遠慮な事を言ってしまったかもしれないと思い口を閉じる。が、それを見てルーシーが次に口にした言葉はやはり付き合うでも、謙遜でも無かった。

 

「……ギフテッドなんて、身に付ける機会が無い方がいいんだよ」

「え?」

 

 ギフテッドを、身に付ける?

 その言葉の意味が分からなかった。ギフテッドは、何かしらの要因で目覚める先天的な才能と一般的には言われている。それ故に目覚める人間は数少なく、一生の内に十人も見られれば運がいいとすら言える位、希少なのだ。

 だから、身に付けるではなく目覚めるというのが普通なのに。

 暗い表情をしてそうルーシーにもう少しだけ話を詳しく聞いてみたいと思ったが、恐らくこれ以上彼女に問い詰めても話してくれないだろう。そんな気配がする。

 

「……え、えっと」

 

 空気が死んだ。

 レオンとフィルは顔を合わせてどうするかと相談するが、暫く時間が経ってもルーシーは黙り込んだまま。

 この空気が死んだ状態で一体どうしたら。そう考えている内に時間が経過し更に空気が死んでいくのでレオンは取り敢えずこの状況を切り崩すために立ち上がった。

 

「じゃ、じゃあルーシーの部屋を決めようか! 取り敢えずこの家を案内するから!」

 

 レオンが立ち会がり、ルーシーの手を引っ張って荷物を片手に居間を出ていった。そして置いていかれるフィル。

 しかし、少しだけフィルは気になった事があった。

 

「……なんだか、トラウマを掘り出した感じだった」

 

 もしかして、ギフテッドは自分達の持っている常識とは違った何かなのだろうか。根拠のない推理を軽くしてからフィルは立ち上がった。

 ちゃんとルーシーの部屋を把握しておかないと、何かしらの用事でルーシーの部屋を訪れる時に大変だ。




まぁそんな訳で新たなる後衛参入。実はクロスボウはそこそこ使える錬金兎。多分爆弾魔になる。

ちなみにルーシーの身長は132cmと設定してます。クッソちっちゃい
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