IS〈インフィニット・ストラトス〉 紫雷の獅子王 作:天狗鞍馬
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「…………」
眠い。
半端なく眠い。
俺――水無月蒼也はベットの中で睡魔と格闘を繰り広げて――負けることにした。
しかし、目覚まし時計が発するアラームがうるさく、二度寝はできそうになかった。今日は日曜日だというのにやかましく鳴り響く目覚まし時計を布団の中からぶっ叩く。さて二度寝を、と思ったのだが、いまだにアラームは止まっていなかった。先程よりは静かになったがまだ『ピッ、ピッ』と音を出している。
(……あれ、俺アラームなんかかけてたっけ?)
さすがにおかしく思い、目覚まし時計を確認して――目を疑った。
「は?」
――――――思えばもっと前に気付くべきだったのだろう。
今日は日曜日=休日だ。そんな日にわざわざ朝早くにアラームをセットする人間はそうそういない。そして俺の使っている目覚まし時計はボタンを押してもアラームの音は変わらないタイプの物だと言う事。結果、俺は物凄い失敗をした。
多分どこかの主人公見たく「不幸だ―――!」と叫んでも仕方ないだろう
何故か?
手に取ったのが目覚まし時計じゃなくって―――――――――映画やドラマなんかに出てきそうな爆弾だから。
付け足すと、タイマーが『ピッ、ピッ』と音が鳴らしていて、ランプ点滅を繰り返している。どうやらさっきぶっ叩いたのはタイマーの作動スイッチだったらしい。起爆じゃなくて良かった。その隣には色とりどりのケーブルが繋がれていて、タイマーには、
『00:00:03:47』
と表示されている。
「……なんでさ」
うん、なんとなくだが犯人の予想はついた。狂った服装をした大天災なウサギさんだ。(もし違ったとしてもあの人にはアイアンクローを喰らわせるが)近くに来ているだろうから、O☆HA☆NA☆SIは後でするとしてまずは、
「んーと、確かこうだったな」
―――――爆弾解体をすることにした。
確か一番初めはセンサー類を無効にするんだったはず。衝撃はさっき思いきり与えてしまったが、爆発しなかったところを見ると衝撃センサーは無いらしい。とりあえずセンサーに通じているケーブルをまとめてパチン、と切った。
続けて次々と無効化して行き、二分ぐらい経過してようやく最終段階に入る。
最終段階――――つまりは、『爆弾の最終完全無力化段階』。
簡単に言うと映画でよくある『赤か青か』っていうアレ。
現在解体している爆弾も最後は赤と青の二本のケーブルとなり、爆発してもいいのであればどっちを切っても解体完了。ただし、間違えたら死ぬけどなっ☆と言う状況。最も、仕掛け人が仕掛け人なので、グロテスクな事は起こらないはずである。
……………………………………………………………………………………………………多分。
(んー……よし)
俺が選んだのは赤。パチン、と音を立てて赤いケーブルが切れた。
『パンパカパー―――――――ン!!大・成・功~!!』
ふざけてるファンファレーと共に紙吹雪が辺りを舞った……正直言おう、うぜぇ!
「ん、合格だな」
「……いくら知り合いだからと言って、人の家に不法侵入しないでくださいよ」
振り返ると、ドアに寄りかかって腕を組んでいる女性がいた。何時の間に入ってきたのか分からないが、多分、爆弾解体を始めたあたりからだろう。
「不法ではない。ご両親から許可は得ている」
「手回し良いなぁ……」
「社会に出たら嫌でも身につくさ」
「それでも起きてる時に来てほしかったんですが……まあ、いいや。とりあえず、二年半ぶりでしょうか?お久しぶりです、千冬さん」
「ああ、久しぶり」
朗らかな笑みで挨拶を返した侵入者は俺の幼馴染で同門の織斑一夏の姉である、織斑千冬さんだった。美人でスタイルも良いのだが狼を思わせる鋭い吊り目のせいで『キレイ』よりも『カッコいい』という感想が先に来る。俺的にだが。しかし頭を下げて挨拶したら何故か頭を撫でられた……げせぬ。
「それで?これは千冬さんが用意したんですか?」
いまだに変なファンファレーが鳴り続けている爆弾モドキを指さしながら言う。
「お前の力を試す事になってな……で、何処から聞きつけたのか知らんがアイツがやって来て内容が改変された」
「あー、やっぱりそうか。ちなみに初めは何をする予定だったんですか?」
多分マラソンとかの耐久系だろうか?何にしてもさほど問題は、
「私の全力の一撃を躱す事だ」
――――心の底から改変されてて助かったと思う。全力の一撃って何?死ぬだろ絶対。
「やっほー!久しぶり、そー君!」
ああ、やっと出てきたか。
天井から穴を開けて現れたのは篠ノ之束さん――俺のもう一人の幼馴染、篠ノ之箒の姉で千冬さんの親友。自称一日を三十五時間生きる女。飛行可能なパワードスーツ、『インフィニット・ストラトス』―通称ISの生みの親でもある。女性にしか使えないという特性があるため、男である俺には使えない。……本来ならば、の話だが。
「お久しぶりです、束さん」
「いやー、そー君は相変わらずダメダメだね!そんなところが良いんだけどね!そんなわけでそー君、私とめくるめく快楽の世界、ぶへっ」
出会って早々で悪いがアイアンクローをかまさせていただいた。
「それで?お二人は何しに来たんですか?たちの悪いいたずらしかけた人にはO☆HA☆NA☆SIするので爆弾の件は流しますが……」
千冬さん仕込みのアイアンクローを頭をつぶす気でかましながらにっこりと笑顔で告げてやる。だんだん力を込めていくのも忘れない。
「み、みぎゃ―――!?つぶれる!束さんの頭がつぶれるよ!?」
「そうでしょうね、つぶす気でやってますから」
「ち、ちーちゃーん!!ヘルプ、ヘルプなんだよ!!」
「……蒼也、一旦離せ。話が進まん」
……仕方が無い。何時までもグダグダしているわけにもいかないので一旦束さんを離す。すると何事も無かったかのように千冬さんにダイブした。
……畜生、頭潰す気でやったのにピンピンしてやがる。
「ありがとちーちゃ、ぶふっ」
「いちいち抱き着こうとするな、やかましい」
「つぶれる、束さんの頭がつぶれるよちーちゃん!?」
「安心しろ、頭はそう簡単にはつぶれん。と言うわけでもっと逝くぞ」
「ひぎゃあああああああああああああああああああああああああ!?!?!?」
「……それで?お二人とも本当に何しにきたんですか?」
「簡単に言うと勧誘だな」
話が進まないので、束さんを無視しながら話すことにした。束さんが痛みに耐えながら文句を言ってきたが、ついでそれも無視して話を進める。
「……千冬さん、IS関連から手を引いたのでは?」
「いや違うよ。ちなみにご両親にはもう許可を得ているよー」
アイアンクローから抜け出した束さんが代わりに答えた。千冬さんは若干物足りなそうな顔をしているが真実らしく、うなずいて肯定した。
「……根回ししてるんだったら断れないじゃないですか」
断ったら最後、アメリカにいるはずの父さんがいきなり現れて『この軟弱もの!』といってドロップキックを食らわされるだろう。母さんは精神的に攻めるもの用意しているだろう。ドSだし。
「では、端的に言おう。蒼也」
「はい」
「お前、IS学園に入学しろ」
「嫌で(ヒュッ)――了解しました」
うん、鼻先ギリギリでIS用のブレード振るわれたら、否定が肯定になってもおかしくないよね。そのまま首を刎ねるルートに来てたらなおさらだよね。
「あと、お前には必要ないだろうが、一応これを渡しておこう」
渡されたのはズンッと音が鳴りそうなぐらいの厚みがある参考書。電話帳と見違える分厚さだった。……うわぁ、一ページ一ページに超びっしり書き込まれて、そのうえ凄いペラペラって……これは無いだろう。内容覚えてるからぶっちゃけいらないけど。
(……どうでもいいか)
そう、どうでもいい事だ。よくよく思い返してみれば、6年前から決まっていた事なんだから―――。