IS〈インフィニット・ストラトス〉 紫雷の獅子王   作:天狗鞍馬

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新生活と蒼穹との再会

 

三月下旬、IS学園の始業式が1週間後となった今日、俺はIS学園へと赴いていた。移動手段は日本政府が用意してくれたので、陽気に実家のある北海道から本州までの空の旅を楽しんだ。で、空港から車に乗り換えてから2時間後、特に問題もなくIS学園へとたどり着いた。

 

「確か、本校舎一階総合事務受付に行けばいいんだよな。……ああ、あっちか」

 

キャリーケースをゴロゴロと引きずりながら、上着から取り出した地図を頼りに学園内を歩いて行く。

それからすぐ、総合事務受付は見つかった。アリーナの後ろにあったので分かりづらかったがどうにか辿り着けた。政府から学園にちゃんとした連絡が行っていたようで、スムーズに手続きは進んで行った。

 

「……はい、それじゃあ手続きは以上で終わりです。IS学園にようこそ、水無月君」

 

「はい、短い間ですがよろしくお願いします」

 

そう言って一礼する。ちなみに現在の俺の立場は日本代表候補生だ。代表候補生と言うのは、国家代表のIS操縦士のこと。ついで俺は倉持技研という研究所のテストパイロットをやっている。そこで開発されたISを操縦して、データを取ってそれを研究所に渡す、と言うのが大体のテストパイロットの仕事が主。給料も結構出るし、飛行訓練とかが出来るので俺的には一石二鳥なのだ。

 

「あ、そうだ。俺以外にここに来ている新入生ってどの位いるんです?」

 

「二人よ。イギリスと日本の代表候補生でねー。イギリス代表の子は君が来る20分ぐらい前で、日本代表の子は結構朝早くに来ていたわ」

 

「そうでしたか。ありがとうございます」

 

気になっていたことを聞いてみると、今まで仕事が無くて暇だった反動から饒舌にしゃべってくれた。

その後、学園の尞へと移動する。一番奥の部屋が空いてるそうなので、俺の部屋はそこにしてもらった。

 

(しかしイギリス代表、ねえ)

 

もし俺の知っている彼女がそうだったなら逃げたい。地の果てとかじゃ簡単に追いかけてくるだろうから、銀河の果てあたりに全力で逃げ込んでしまいたい。……決して、悪い子ではないのだが。

 

彼女――セシリア・オルコットとの出会いはまさに衝撃的だった。二ヶ月程前に、政府関係者にプライベートな理由でイギリス女王陛下の所に連れて行かれた。なんでも、年下の日本人と話がしたかったらしい。そこに連れ添いでいたのがセシリアだった。

 

政治的な話やら日本での日常などの会話―――途中から御見合いで話している両親のような会話だった―――をして、そろそろ陛下が職務に戻る時間になった時―――――それは起こった。

 

その時まで沈黙を保っていたセシリアに抱き着かれた。んでもって狼狽している俺への第一声が、

 

「わたくしと結婚してください!」

 

だった。うん、今考えても訳が分からない。そしてその後約3時間にわたる、壮絶な鬼ごっこがあった事を忘れることはないだろう。

本人に自覚は無いだろうが、確実に目がイっていた。

 

結果として逃げ切れずに捕まり、ホテルに連行されそのまま一晩過ごすことになった。

……さすがに一線は越えていない。こちらから手を出すような事はしなかったし、セシリアも、手を出すようなことはしなかった。いや、尻すぼみしてしまったという方が正確かもしれない。

 

俺の体が見るに堪えないくらいボロボロだったからだ。

切り傷、火傷、弾痕、打撲、心臓のあたりに肉をえぐった様な跡が残ってたんだから、そりゃ普通はドン引きする。

俺の体は一人の男の妄念によってこうなり、その男はあった人間が10人中10人全員が「狂っている」答えるぐらいイカレテいたらしい。……「らしい」と言うのは、俺はそう思わないからだ。

人が言う彼の「妄念」は俺から見れば「信念」だった。

俺以外にもこんな体になった奴らがいた。

が、それを嘆く奴はいなかった。

痛みと引き換えに諦めたものをもう一度つかむ事が出来たのだから。実際の所、感謝していた。

何より彼は必至だった。救えない者を救おうとあがき続けた。そんな人間を責めれる奴は、少なくともあの中にはいなかった。

そしてその信念は世界に認められなかった。それだけの話である。

彼が目指していたものは『あるもの』を使っての死者蘇生だった。

 

それが俺の過去に一部。

 

話し終わってからしばらくの間、お互いに黙っていた。少ししてから、セシリアが口を開いた。内容は彼女の過去だった。

―――三年前、両親が事故で他界したこと。

―――莫大な遺産を守るために、必死にあらゆる勉強をしたこと。

―――その一環で受けたIS適正試験でA+を出し、第三世代型装備ブルー・ティアーズの第一次運用試験者に選抜されたこと。

それが彼女の過去の一部。

 

そして気づいた。「彼女は泣けたのだろうか?」と。亡くなった家族の為に涙することは許されたのか?誰かに弱音を吐きだすことはできたのだろうか?

気付けば、俺はセシリアを抱き寄せて泣いていいよと言っていた。セシリアはせき止めていたものを吐き出すように、凄い勢いで泣いた。俺はずっと、頭を撫でてあやし続けていた。

 

そのまま寝てしまったらしく目が覚めたら朝になっていた。その後、帰国するまで、セシリアと色々あって、―――――色々あった。

 

―――以上、回想終了。

 

(箒と一夏と鈴と蘭ちゃんにも言えることだけど、どーしてああなるのかねぇ……)

 

4人の幼馴染を思い出す。初めて会ったときは普通だったのだが、親密になってくるとセシリアのように、挨拶の次には「ヤラナイカ」と言ってくるようになっていた。蘭に至っては兄である五反田弾の貞操も一緒に狙っているらしく、一時期は二人で割と本気に国外逃亡を考えたほどである。

 

(……まあこの一週間は静かにすごs「ガシャン!」…………ガシャン?)

 

恐る恐る音が出た足元を見ると――――手錠で両足を止められていた。―――ッ!ヤバい、コレはっ……!!

 

「見つけましたわ……蒼也さん……♪」

 

「っ!!」

 

噂をすれば何とやら。このタイミングで最も会いたくない人物、セシリア・オルコットに遭遇してしまった。しかも足に手錠かけられたためほとんど身動きが取れない。

……あれ?もしかして俺、詰んだ?え?一話目にしてBADEND?何それ斬新。……でもないか?

 

「ようやく、ようやくお会いすることが出来ましたわ……」

 

「いや、会ってから約2ヶ月しか経ってないんだけど?」

 

「わたくしからすれば、年単位ですわ」

 

うっとりしているような声を出しながらセシリアは俺に抱きついて来た。女子特有の甘い匂いと、色々とやわらかい体を押し付けられて、落ち着かなくなる。

俺だって健全な15歳男子であるわけで、こんな事を美少女にされたら意識しない訳がない。心臓が痛いくらいに動機し、頭がくらくらして酔っているみたいだ。

 

「蒼也さん……」

 

セシリアがゆっくりと顔を近づけてくる。顔を背けようとするが、両手で頬を押さえられているので逃げることができなかった。

 

「―――――――っ」

 

目が合う。白人特有の透き通った青い瞳がこちらを見ていた。引き込まれてしまいそうなぐらい魅力的で綺麗な少女から目が離せなくなる。

 

互いの顔が近づくのを止めれない。そこからはスローモーションで時が進み始めた。

 

あと5センチ――――――――――――――。

互いの唇を近づける

あと4センチ――――――――――――――。

「――――、――――――」セシリアが何かを呟く

あと3センチ――――――――――――――。

セシリアが目を閉じる

あと2センチ――――――――――――――。

俺も、何かに中てられたように目を閉じる

あと1センチ――――――――――――――。

そして距離が0に―――――――――――――――――――

 

スパァンスパァンッ!!

――――――――――――――――――――――ならなかった。

頭に、半端じゃない衝撃が走った。……叩き方―――威力といい、速度といい、角度といい――が身に沁みついてしまったせいか、誰が叩いたのかすぐ分かってしまった事が悲しかった。

 

「いったぁ―――――――!?」

 

「何をしとるか、馬鹿者ども」

 

「ち、千冬さん!?」

 

「織斑先生だ、馬鹿者」

 

ポコン、とその手に持った出席簿で軽く頭をはたかれる。すぐ傍に、黒のスーツにタイトスカートを着て出席簿を持った千冬さんがいた。前に会いに来たときは何をしているのか教えてくれなかったが、ここで教師やっていたのか。

 

「求愛行為をするな、とは言わんが……場所ぐらいわきまえろ」

 

「分かりましたわ(チッ)」

 

しぶしぶながらも俺の足から手錠を外すセシリア。……舌打ち隠せてないぞ。

 

と、千冬さんの笑顔に、血管マークが追加された。それと同時に周りの温度が10度ぐらい下がる。

二人がオーラみたいのを纏いはじめ、目からビームみたいのが出てバチバチいわせている。……何処のケンカ番長?

何これ、止めなきゃだめなの?もはや戦闘に入りそうなこの二人を止めろと?かたや代表候補生、かたや世界最強の人物を?

 

(……いや、無理無理無理無理無理)

 

『無茶』とか『無謀』とかを通り越して『無駄』である。絶対話通じないよ、あれ。

 

……俺がとるべき選択肢は

1、説得

2、逃亡

3、ボコられる

の3つ。1は絶対無理。3など論外だ。ならば、どれを取るかは決定する。

 

――当然2、『三十六計逃げるが如かず』……ッ!!

そろーり、と寮に向かって足を向けたところで、

 

ガシィ、と猫のように首根っこを捕まれた。ば、ばれていたのか!?

 

「「どこに行こうとしている(ますの)?」」

 

ずりずりと引きずられ、寮長室に連れて行かれ――――二人のO☆HA☆NA☆SIによって、俺の意識は闇に沈んで行った。

……あんたら、ホントは仲良いだろう。

 

 

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