IS〈インフィニット・ストラトス〉 紫雷の獅子王 作:天狗鞍馬
「くぅ……ッ!」
試合開始から14分。セシリアは苦悶の声を漏らした。
(やり、辛い……!)
IS『ヴァジュラ』の売りは放電だ。それは対戦前に得た情報から長所短所も割り出せていた。長所は広範囲に及ぶ高威力の攻撃、短所は馬鹿でかいエネルギー消費である。要は長時間に及ぶ連発が不可能だ。だが、
(早すぎますわ……!)
そう。その欠点を補うほどに、早いのだ。
目標をロックし、放電して迎撃するまでの時間があまりにも短い。こちらが撃った瞬間に迎撃されていた。時折相殺用に放ったビームを貫通して襲い掛かってきた事から相当高威力な事が分かる。それによって既に1機のビットが迎撃されていた。
加えてありえない程の腕力―――当たれば即敗北が決定するだろう。
「寄って殴る。逃げても殴る。距離を詰めて一気に潰す……!」
「どこのピンクボールですの!?」
全力を尽くしているのに、嵐のような攻撃は止まらない。
状況は変わらず劣性のままだった。
~♢~
(意中の殿方が強いというのは、惚れた身としては嬉しいものですが……)
心の中でつぶやいた。
声には出さないものの、悔しさは積っていく。
(本気を、出しましょうか)
彼を、支えられるようになるために。
もし、自分が彼の隣に立てないとしても―――。あんな思いを、二度としないために。
(行きますわよ、『ブルー・ティアーズ』)
ふぅ、と大きく息を吐き、一息に照準を合わせて、
「BANG!」
放った。
彼女がもつ『必殺』を。
~♢~
(ん?)
ビットから放たれたビームを見て、蒼也は違和感を感じた。
軌道予測では、放たれたビーム弾は蒼也の右隣を当たるか当たらないかのギリギリの所を飛んで行くことになる。
(……セシリアが、無駄弾を撃った?)
蒼也はその事に違和感を覚えながらも、ビームの軌道から離れて、
「後方――――注意ですわ!」
――――緊急警告、背後よりレーザーが接近中!
「―――――ッ!?」
無機質な警告にとっさに反応して体全体を動かす。すんでのところで直撃を躱すのに成功したが、それでもシールドエネルギーが微量ながら削られた。
「今のは……まさか
「正解ですわ!」
ブルーティアーズ―――略称BT兵器の高稼働時に可能とされているのが、今セシリアが行った
名前の通りBT兵器から射出されるビームを偏光、つまりは曲がるビームを発生させる。
(……あれ?これ結構まずい?)
主に、エネルギー的問題で。それを抜いても完全にイレギュラーなこの弾はとてもまずい。躱せる弾が躱しづらくなった以上、回避能力の低い蒼也には迎撃するしか手が無い。つまり考えなしに放電し続けたツケがここでやってくるわけで―――
――――警告、予想駆動時間が残り10分をきりました。
(ですよね!)
セシリアに与えたダメージは開幕の投石と、相殺した際の流れ弾が数発。
経験から、あと一撃を入れる事ができれば、エネルギーを0にできるはず。残ったエネルギーで電撃を叩き込めれば確実だ。
ならやることは、
(突撃して、殴る)
そうと決まればと、弾丸除けに電撃を全身に纏わせて
だが機体の性能差が出たのか、追いつくことに成功した。
(獲った!)
苦し紛れか、セシリアは盾代わりにビットを二人の間に割り込ませた。だが、
「――――押し通る!」
ビットの援護射撃は間に合わない。もう一切の邪魔は無い。
右腕を思いきり振るい、
『ガキン』と、硬い何かに当たって弾かれた。
「……な、」
ビームビットと自分の間に割り込んできた青い物体を見て蒼也は驚愕する。
それは、青く発光するエネルギーを盾のように纏う防御専用ビット。その名は――――
(シールドビット……!?開発中って話はどこ行った!?)
今までのビットと違い外装が雑な所を見ると、あれが完成品と言う訳ではないだろう。
そして殴ったというよりも弾かれた感覚がする。つまり、
(俺の攻撃を弾き返し易い場所を狙って割り込ませたのか!?なんて集中力―――!)
そして、
シールドビットに気を取られた蒼也を、セシリアが見逃すわけがなかった。
「これで、
『ズガン、ズガン、ズガン』と。
ビットからの左右2門、正面のライフル1門、合計3門の砲口から容赦なく蒼い弾雨が降り注ぎ、
『試合終了。勝者――――セシリア・オルコット』
勝敗は、決した。