問題児が召喚されたようですよ?   作:神ジーク

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九話です。頑張ります。


第九話 地雷は回避されたそうですよ?

「帰りなさい!ツェルプストーの者に用はないわ!」

 

開口一番、ルイズは目を吊り上げて、怒鳴った。

どうやら浅からぬ因縁があるらしい。

キュルケは素知らぬ顔で、

 

「あたしもあなたに用はないわよ。あるのはコ・ッ・チ❤」

 

言うと同時に十六夜にしなだれかかる。

キュルケの服装は薄いベビードールをつけているだけの格好で、確実に誘惑狙いだということは明白だった。

その体格と元来の性格が醸し出すキュルケの野性的で蠱惑的な色気は普通の男なら、言いなりになるか、理性を捨て襲い掛かってしまう事だろう。

だが、十六夜は普通の男とはあまりにもかけ離れた存在だった。

キュルケのむせ返るような色気にも一切の動揺を見せていない。

それどころか、冷静に状況を分析してどう自分が楽しむかを考えていた。

キュルケはそんな十六夜を見て、少し驚いた顔をし、さらに体を密着させる。

実はこの時点でルイズと十六夜の表情は真逆だった。

使い魔を他のメイジ、それもキュルケにとられかけていて、怒り心頭のルイズ。

対して十六夜はどう状況が転ぶか観戦している様子だった。

 

「とりあえず離れなさい!」

「いやよ。あたしはね、恋をしてしまったの。わかる?熱く燃え上がるような激しい恋よ。あなたにはわからないでしょうね」

 

キュルケが十六夜を流し目で見ながら言った。

そして、十六夜の顔に息がかかるような距離まで接近すると、

 

「あなたがギーシュを倒した時の姿・・・・・・。かっこよかったわ。まるで伝説のイーヴァルディの勇者みたいだったわ!あたしね、それを見て痺れたのよ。信じられる!痺れたのよ!情熱!あああ、情熱だわ!」

 

十六夜が色に染まる・・・・・・ことはなかった。

たじろぎすらしていない。

 

「ヤハハ、情熱。情熱ね。俺も感じるぜ」

「本当!?」

「ああ、嘘じゃねえ。どうにかしてもっと面白い状況を作ることを考えたら溢れて止まらないくらいだ。なあ、どう思う?」

 

十六夜はニヤッと口端を上げて問いかけた。

キュルケは戸惑った顔をして、

 

「それは今からのあたしとの時間が楽しみってこと?」

「そうとも言えるかもしれねえな。だが・・・・・・・・・」

 

十六夜はキュルケの後ろを見ながら言う。

 

「御チビ様が許してくれねえみてえだな」

 

ルイズの鳶色の瞳は烈火のごとく燃え盛る怒りに満ちていた。

ルイズは怒るとまず口より先に手が動き、さらに怒ると手より先に足が出るのだ

つまり、何が言いたいかというと、

今回の場合も例にもれなかったということだ。

ルイズはキュルケごと十六夜を蹴飛ばそうとした。

だが、すんでのところで十六夜がキュルケを抱き上げ、バックステップで避けきった。

ルイズは歯ぎしりしながら、怒りをさらに燃やし、十六夜に抱きかかえられているキュルケはいきなりの事態に呆然。

十六夜だけは平常運転で不敵な笑みを浮かべている。

この場をこれ以上ヒートアップさせるのも悪くないと考えている十六夜。

その一方で、早く終わらせて図書室に戻りたいという希望もあった。

だから、

 

「そういう訳だ。悪いが今度にしてくれ」

 

十六夜はキュルケを下してルイズの部屋の扉を閉めた。

 

 

 * * * * * *

 

 

「で、あいつとどんな因縁があるんだ?」

 

扉を閉めてすぐに十六夜は言った。

もちろん、無駄な癇癪で時間を無駄にしないためだ。

ルイズは思い出すのも嫌だというように顔をしかめて、

 

「まず、キュルケはトリステインの人間じゃないの」

「へえ、となるとゲルマニアか?気性や肌の色がそんな感じだったしな」

 

すでに十六夜はトリステイン魔法学校図書室の本という本を全て読み終え、記憶している。

地形や地理に関してもこの世界の住人より詳しい事だろう。

 

「そうよ。ゲルマニアの貴族。それだけでも許せないわ。わたしはゲルマニアが大嫌いなの」

「ゲルマニアの、それもツェルプストーの領地がヴァリエールの領地と国境越しに隣接しているからだろ」

「だから、戦争になるといつもいつも・・・・・・」

「ヴァリエール家とフォン・ツェルプストー家がいの一番に争ってきた。で、惚れっぽいフォン・ツェルプストー家はヴァリエール家の縁者の女を奪ってきた。そんなことが何代かあり、さらに自分の寮での部屋も隣同士。だから気に食わない。その気に食わない相手が俺を探してしょっちゅう自分の部屋に来る。だから、俺をここい連れて来た。こんなところか?」

 

ルイズは目を丸くする。

今、十六夜が述べたことは歴史書にも載っていないことなのだ。

いくら高名なトリステイン魔法学校図書室といえども記録してあるはずがなかった。

ましてや、平民が知るわけがない。

 

「な、何で、あんたがそのことを知ってるのよ?」

「この程度で驚かれちゃ困る。お前の話と図書室にあった地理書の情報から推理しただけだぜ」

 

簡単に言うが、普通それだけでわかるものではない。

一体、どんな頭の構造をしているのやら。

 

「嘘よ!それだけでわかるはずがないじゃない!」

 

やはり、ルイズも信じられなかった。

 

「ハハッ、俺は生粋の頭脳派だぜ、桃チビ」

 

ここに来てから全く変わらない不敵な笑み。

それを彩る十六夜の瞳は嘘をついているようには見えなかった。

ルイズはしばらく睨み続け、溜息をついて言った。

 

「・・・・・・まあ、いいわ。それなら話は早いし。・・・いい?キュルケに近づいちゃだめよ!」

「興味もねえ相手に近づくほど暇じゃないぜ。それより、明日虚無の曜日だったな。予定はあるか?例えば恋人とか」

「あ、あるわけないでしょ!そんなのいないわよ!」

「それならちょっと町まで付き合え。暇なんだろ?」

「誰に命令してるのよ!誰に!」

 

文句を言ったころには十六夜はいなかった。

かわりに窓が開いて、風が入り込んでいる。

そして、風に乗ってメモが一枚。

 

『明日、9時に後門に来い。 by.十六夜』

 




十六夜がルイズを町に連れていく理由とは?次回、やっと十話です。
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