問題児が召喚されたようですよ?   作:神ジーク

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黒ウサギ登場アンケート実施中です。


第十六話 ようやく一段落付いたようですよ?

「こんなのどうやって使うのよ!」

 

苛立ち紛れにルイズが叫んだ。

こんな時でも、愛らしい声は健在だが、そこには隠しようのない焦りが見て取れる。

魔法を使う要領で力を込めるが、うんともすんとも言わない。

沈黙を貫くのみである。

彼女の使い魔が言ったように引き金を引くのは簡単であるが、なぜかそれだけではダメなような気がしたのだ。

完全無欠に直感である。

しかし、間違ってはいない。

 

「ダーリンが言った通り、その引き金っていうのを引いてみたら?」

「それだけじゃいけない気がするのよ!」

 

傍から見れば意固地になっているだけだ。

実際、そう見たキュルケは溜息をつきながら、言う。

 

「じゃあ、どうするのよ?」

「・・・・・・近づいて引き金を引いてみる」

「それでどうなるのよ?」

「わからないわよ!でも、何もしないよりはいいじゃない!」

 

意地とプライドを込めた叫びだった。

この状況で貴族でありメイジである自分が何もしないのは許されない。

それだけが、ルイズの中にあった。

キュルケは一瞬怯んだような様子を見せるが、落ち着いてタバサに尋ねる。

 

「ねえ、タバサ。あなたに何か案はある?」

 

しかし、タバサは首を横に振った。

タバサやキュルケの魔法があのゴーレムに効かなかったのは、先刻見た通りであり、ルイズの魔法は命中率と発動率が壊滅的過ぎるためだ。

キュルケは意を決して頷いた。

 

「わかったわよ。タバサ、シルフィードをゴーレムに近づかせることはできる?」

「可能」

「ルイズ、ちゃんと当てなさいよ?できるわよね?」

「貴族の誇りにかけて命中させて見せるわ」

 

ルイズが十六夜の指示通りの構えをとり、引き金に指を寄せる。

 

「準備は?」

 

タバサの短い問いかけに二人は頷いた。

そして、主の意を受けたシルフィードがゴーレムに向かって加速した。

ゴーレムの腕が届くか否かのところまでたどり着く。

ルイズは引き金を引きながら願う。

 

(当たりなさい!)

 

それは願いというより命令だったが、『破壊の杖』からシュポッという音と共にロケット状の物が空に白い線を描きながらゴーレムに飛んでいく。

はたして、ロケット状の物はゴーレムに紙一重で当たらず、背後に流れて行く。

三人の顔に明らかな悔恨が浮かぶが、次の瞬間、それは驚愕で塗りつぶされた。

 

「まだ、諦めるには早いぜ!御チビ様!」

 

向かう先に十六夜が佇んでいたからだ。

彼はロケット弾を掴んで、そのままゴーレムにブン投げた。

第三宇宙速度で飛来する弾丸は見事命中し、衝撃で火薬が爆発し、ゴーレムを吹き飛ばす。

爆風が収まると、そこには岩石片と低空に漂うシルフィード、十六夜たちしかいなかった。

唖然としていたルイズだが、我に返って降下したシルフィードから降りると、十六夜に詰め寄った。

 

「何してたのよ!ていくか、最初からあんたがやりなさいよ!」

「そういう文句はこれを見てからにしてもらおうか、御チビ様?」

「いったい、何を・・・・・・って誰よその人?」

 

ルイズの視線の先にいたのはフードを目深にかぶった女性だった。

木のつるで縛られているため、身動きが取れないらしい。

 

「さあさあ、どうぞご覧あれ。土くれのフーケにございますってな」

 

十六夜がふざけた調子で言いながら、女性の————フーケのフードをはぎ取った。

十六夜とフーケを除く三人の目が呆気にとられたように見開かれた。

 

「「ミス・ロングビル!」」

 

現れたのはルイズたちをここまで送ってきた学院長の秘書————ミス・ロングビルだった。

 

「どういうこと!?彼女が『破壊の杖』を盗み出したっていうの!?」

「その通りだ、御チビ様。辺り一帯を走り回ったが、他に人間はいなかった。それに、こいつが犯人なら辻褄もあうしな」

「本当なんですか!?ミス・ロングビル!」

 

ロングビルは小さく舌打ちし、十六夜を恨めし気に睨みつけるが、応じる様子が皆無なのを見て、開き直ったように口を開いた。

 

「そうよ。わたしが土くれのフーケ」

 

三人の失望を隠せない顔を無視し、フーケは十六夜に問いかける。

 

「わたしが雇ったあの男はどうしたの?」

 

十六夜が若干興味深そうな顔をした。

 

「あの黒装束ならどっかに消えたぜ。ていうか、あいつ雇われだったんだな」

「・・・・・・・・・逃げたのね、あの男。一応、報酬に見合う仕事はしてくれたけど、情けない」

 

フーケは愚痴を垂れてるが、十六夜は取り合わない。

ルイズを見て、

 

「で、どうする?御チビ様」

「どうもこうもないわよ。学院に引き渡せばいいじゃない」

 

キュルケもタバサも頷いている。

 

「だ、そうだ。ムショ暮らし、達者でな」

 

始終フーケはたっぷり悔恨を込めた目をしていたが、道中何事もなく、呆気なく引き渡された。

以上が今回の騒動の顛末であった。

 

 

 * * * * * *

 

 

走る。

駆ける。

跳ぶ。

目にも留まらぬ全速で逃げる。

 

動く。

進む。

嗤う。

目にも映らぬ動きで追う。

 

逃げるは黒装束の男。

追うは同じく黒い人型の影。

 

それがなんなのかはわからない。

ただ、確実に距離を縮めている。

 

隠された男の顔に焦りが浮かぶ。

その色が濃くなるほどに影の嗤いは強くなる。

 

やがて、男は手が届く距離まで接近された。

男の全ての抵抗を跳ね除け、影は男を飲み込んだ。

 




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