「それで?姫殿下様は御チビ様に何を頼みに来たんだ?」
アンリエッタが目覚めるなり、十六夜はそう言った。
それはアンリエッタの核心に迫る質問であり、いきなり言われると思っていなかったのか彼女はその美しい顔を驚愕に染めていた。
唯一、この場で何も知らないルイズだけがぎゃあぎゃあとアンリエッタに対する十六夜の無礼を訴え続けている。
「このバカ使い魔!言葉遣いに気をつけなさいって言ってるでしょ!」
しかし、それについて意識を向けている者はいない。
聞き飽きている十六夜だけでなくアンリエッタでさえも。
彼女の意識は完全に十六夜の言葉に向いているのだ。
「ど、どうしてそれを?」
「どうして?ちょっとした推理に過ぎねえよ。だがそんなことはどうでもいい。話せよ。わざわざ夜中に忍んでくるんだ。暇じゃねえんだろ」
「確かにそうなのですが・・・・・・」
アンリエッタは少しの間押し黙り、やがて意を決したように顔を上げた。
「はい。お話します」
* * * * * *
「・・・・・・・・・で、手紙をその皇太子様から返してもらって来てほしいと?」
「・・・・・・はい」
沈んだ表情で頷くアンリエッタ。
彼女が話した内容はただの貴族の子女に話すには過ぎたものだった。
もうすぐアルビオン王国の貴族達によって王室が倒され、次はトリステインに攻めてくる可能性が高い。
だからその前にゲルマニアの皇帝とアンリエッタが結婚し同盟を結んで攻めづらくする。
しかし以前個人的に懇意にしていたアルビオンのウェールズ皇太子の元にある手紙がその障害になりうるため、回収する必要がある。
だからといって国を動かせばアルビオンの貴族やゲルマニアに気づかれる。
そういった事情があって幼いころからの親友であるルイズにお鉢が回ってきたのであった。
「アルビオンは内乱中だ。どれくらい危険かは考えずともわかるよな?」
「・・・・・・・・・」
見方を変えれば、自分の尻拭いを友情に付け込んで他人にやらせるということにもなる。
危険云々ではなく十六夜はそこが気に食わなかった。
「それに御チビ様はこの学院では落ちこぼれらしい」
「落ちこぼれで悪かったわね」
「悪くはないぜ。それはそれで上に上がる楽しみがある。・・・・・・それでだ、優秀な軍人なら兎も角そんな御チビ様が戦争のど真ん中に放り込まれて―――ただで済むと思うか?」
口にはいつもの軽薄な笑みがあったが十六夜の目は真剣そのもので、口調にも刺すような冷たさがあった。
「良くて大怪我、最悪即死。まあ、少なくとも五体満足で帰ってくることはないだろうな」
十六夜は義母の金糸雀との旅で一度だけ戦場に連れて行ってもらったことがある。
見ただけとはいえ、その凄惨さを知っているからこその言葉の重みだった。
アンリエッタはその重みでさらに沈んだ顔をしている。
同時に、自分の浅はかな考えで親友を殺そうとしていたことに気づいて何も言えなくなっていた。
空気が重みを増し辺りが静まり返る。
いつも騒がしいルイズでさえも声を出すことをためらっていた。
そのまま数分が経ち、このままではいけないと直感したルイズが声を上げた。
「で、でも戦場まで行くわけじゃないんだから、大丈夫よ」
「ふとしたことで戦火に包まれる。内乱中の国ってのはそういう場所だぜ」
前線から遠く離れた村にいきなり精鋭部隊が現れたってのはよくあることだ。
何が起こるかわからない混沌の渦。
それが戦争と言っても過言ではないのだ。
再び場は沈黙に支配される。
が、次にそれを打ち破ったのはその空気を作った十六夜自身だった。
「・・・・・・だが、自分で書いた恋文で祖国を亡ぼしたくないのも当然だ」
恋や愛で亡んだ国の実例はいくつかあるが、アンリエッタがトリステインをそうした例の一つにしたくないのも十六夜には十分理解できていた。
だからなのか、十六夜はアンリエッタにとって救いのような一言を口にした。
「だから俺が行ってやる。御チビ様じゃあ危険だろうが、俺ならなんのことはないしな」
はっと顔を上げるアンリエッタだがその瞬間一つの疑問がわいた。
「で、ですが、貴方には何の関係もないじゃありませんか」
「へえ、あんたは何の関係もない一般人に国家機密をバラしたわけか」
十六夜の口調はいつものような飄々としたものに戻っていた。
そのことに気づきルイズは心中で安堵する。
「貴方はルイズの恋人ではないのですか?」
頬を真っ赤に染めてそう言うアンリエッタにルイズは同じく頬を、というか顔を真っ赤する。
「ヤハハ、実は今夜もベッドでギッコンバッタンと――――」
「しないわよ!」
「す、するのですかルイズ?」
「しません!姫様まで何を!」
「ギッコンバッタンします」
「しないって言ってるでしょこの変態!!」
ルイズがバシンという快音を立てて十六夜の頭を叩いた。
そして、アンリエッタに向き直り、
「こいつはただの使い魔です!恋人なんて冗談じゃないわ!」
「使い魔?」
アンリエッタがきょとんとした顔をするのも無理もないだろう。
人間の使い魔など聞いたことがないのだから。
「人にしか見えませんが・・・・・・。随分と博識のようでしたし・・・・・・」
「一応人間だぜ?分類学上は」
ちなみに人間は素手でクレーターを作ったり、何十メートルもジャンプしたりしない。
「そうよね。はあ、ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね」
「好きでこいつを使い魔にしたわけじゃありません」
ルイズは憮然とした。
それをいうなら十六夜も好きでルイズの使い魔になったわけではない。
好きでハルケギニアに来たのは間違いないが。
「で、どうするんだ姫殿下?諦めるのか、俺に任せるのか、危険を承知でルイズに任せるのか」
「貴方は無事に帰ってこられるのですか?」
「当然。誰に言ってやがる」
アンリエッタは確認をとるようにルイズを仰ぎ見る。
それにルイズは確信を持って頷いた。
「そいつは無礼で乱暴ですけど、トライアングルである土くれのフーケをものともせずに圧倒しました」
「でも、逃げられたのでしょう?」
「た、確かにそうですけど、圧倒していたのは事実です!」
アンリエッタはルイズの曇り一つない目を見てしばらく考え込む素振りを見せる。
そして、
「わかりました。貴方に任せます。いいえ、違いますね。―――どうかよろしくお願いします!」
頭を下げた。
何のゲームをやってたかというと、基本的に狩りゲーです。ソルサクとか、モンハンとか、ゴッドイーターとか。
あれですね。操作が混同してわけわからなくなりました。
おかげでキリンに負けました。