スタードライバーは本編終了後から数十年。オリ主はツナシ家、シンドウ家、四方の巫女の家系全ての血とシルシを受け継いでおり、エントロピープル=プロトカルチャーという設定です。マクロス時空の年代とスタドラの年代では物語内の経過年数が一致しませんが、そこは大目に見てください。個人的にはスタドラ本編の時間軸を1980年くらいに起こった事にすれば丁度いいかなと思ったりしてます。
以上の内容と主人公最強、男の娘の成分も含みますので苦手な方はご注意ください。
「春の風だ。今年も来た」
着物袴に編み上げブーツという大正女学生の装いの少年は南風に銀の長髪をなびかせながら己が立つビルの屋上から眼下に広がる戦場を見た。
そう戦場だ。
今、この惑星アル・シャハルの都市部はヴァールシンドロームを発症したゼントラーディ軍人たちの暴走により戦火に見舞われている。
轟く銃声、巻き上がる爆煙、悲鳴と怒号――。
この世の地獄の顕現とも言える光景に、しかし敢然と立ち向かう者たちがいた。
ヴァールシンドロームに唯一対抗できる音楽戦術ユニット“ワルキューレ”とその守護者たるΔ小隊が歌でVF-31ジークフリードで暴走したゼントラーディたちを鎮めていく。
「解き放たれた銀河に歌声響かせる星の歌い手――」
その中の一人、果敢にも砲火の中ヴァール化したゼントラーディの機体に取り付き歌を直接届ける女性――“ワルキューレ”のエースボーカル、美雲・ギンヌメールをそう評した少年は、はぁと息を漏らした。
「僕の代から数代の内とは聞いていたけど、よりにもよって僕の代かぁ……。いや、わかってるよ、
そうと決まれば少年のやることは決まっている。
空を裂いて新たな敵も降り立ち、“ワルキューレ”たちも敵や危険に臆することなく“いけないボーダーライン”を歌い始めた。
「さあ、アゲていこうか! 歌は青春!
少年はビルの屋上から空に身を踊らせた。
* * *
『くたばれ“ワルキューレ”!』
アンノウンの機体から殺意の叫びと共にミサイルが放たれる。
他のメンバーが仲間同士でカバーに入ったり自力で脱する中、美雲もマルチドローンプレートを動かし防壁を張ろうとするが――。
「っ!? こんな時に!」
砲火の中いくどもヴァール化したゼントラーディに接触するために無理をさせたせいか、ここに来て何機かのマルチドローンプレートの動きが鈍い。これではとてもではないが間に合わない。
「美雲っ!」
「クモクモッ!」
「美雲!!」
その様子にチームメンバーのカナメ・バッカニア、マキナ・中島、レイナ・プラウラーは歌うことも忘れ悲鳴を上げる。
間髪を入れず――着弾。爆音!
「あ、ああ……っ!?」
「そんな……ウソだろ」
瓦礫の陰でミサイルをやりすごしたフレイア・ヴィオンとハヤテ・インメルマンは簡単に一つの命が――フレイアにとっては憧れの相手の命が――潰えたことに言葉を亡くす。
空のアンノウンと交戦していたΔ小隊の面々も悲痛な面もちで美雲が立っていた場所へと目をやるが――。
「えっ?」
「何だ、あれは……」
「巨大な……手?」
次第に煙がはれていく中、うっすらと煙の中に大きな手のようなモノが見える。
しかしそれも次の瞬間には蜃気楼のように揺らめいて消えると、その奥から胸元の
「美雲!」
「クモクモ!」
「美雲さん!」
皆が美雲の無事に安堵する中、当の美雲は不思議な力で自分を助けた少年を見やる。
美しい少年だ。凛としていてそれでも笑えば人懐っこそうな顔はそれこそ少女と見紛う程の美貌、スラリと引き締まりながらも華奢な身体つき、背中に流す銀髪は夜空に流れる天の川、両の眼窩にはまる瞳は輝く星々を抱く銀河のごとき
その様に美雲は不意に脳裏に浮かんだ言葉を口にした。
「銀河……美少年」
その少年とは初対面のはずなのにどこか懐かしささえ覚える美雲。
今まで会ってきた人たちとは違う、どこか自分に近しいという感覚。親愛とも友愛とも恋愛とも似て非なる――強いて言うなら共感だろうか――感情が美雲の心を暖かく満たす。歌を歌うこと以外でこのような思いを抱いたのは記憶にある数年の中では初めてのことだった。
自身の心からわき上がる感情を若干持て余す美雲であったが、ここが戦場であることを思い出し再度歌を届けようとお腹に力を入れた時だ。
「――――」
自分を助けた少年が聞いたことのない歌を歌いだした。
それは新たな生命の芽吹きを謳う春の歌。かつての地球、プロトカルチャーの遺産が眠るとある島で
曲名“木漏れ日のコンタクト”。
“ワルキューレ”のメンバーに劣らぬ少年の美声が戦場に響き渡る。
「強力な生体フォールド波反応!? それに私たちのフォールド
「すごい」
「胸にズキュンとクる」
「これは、星……。キラキラ……っ、綺羅星!」
“ワルキューレ”の面々とフレイアが少年の歌に聞きほれる中、美雲も自分が歌うのも忘れて少年の歌に魅了されていた。
「――――っ」
そんな美雲に少年は歌うことを止めずに彼女に向けて目配せした。
貴女は歌わないのかと。
「(っ! おもしろいじゃない! いいわ、聞かせてあげる。女神の歌を!)」
そして美雲も“いけないボーダーライン”を止まっていたパートから歌い出す。
他の“ワルキューレ”のメンバーも美雲の歌に自分たちのやるべきことを思い出し、美雲の歌に自分たちの歌を重ねる。
違う旋律、違う調子なのに二つの歌は不協和音を奏でずむしろ互いを高めあっていく。
「すごいよ、もう……虹と星のキラキラで来ちゃいそう……。ルンルン……ルンルン、ルンピカァァァアア! 歌は元気! よぉぉぉおし、ウィンダミア魂見せちゃるかんねぇ!」
それに触発されたフレイアも歌詞を知っている“いけないボーダーライン”を歌い、戦場の中へと駆け出していくのであった。
君の銀河はもう煌めいている。