スタードライバー 煌めきのシキ   作:崇藤仁齋

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Mission06 歓迎パーティーナイト

「ああー、お集まりの諸君。今宵は我ら“ケイオス”に加わる新しい仲間の歓迎会によく集まってくれた」

 

 夜の“裸喰娘娘(らぐにゃんにゃん)”。

 そこに集った“ケイオス”隊員たち面々を乾杯前の挨拶をするのは白いスーツを身に纏ったアーネストだ。

 

「この集いは日頃の諸君等の慰労も兼ねている。大いに飲み、大いに食べ、大いに語らい、次の任務の活力にしてほしい。ちなみに今日の飲食代はありがたいことに本日の主役の一人でもある出資者様が全部持ってくれるとのことだ。俺のこの酒も店で一番イイモノで既にボトルでキープしてある」

 

 この発言に周りから艦長ずるいだの、職権乱用だ、などの声が挙がるがアーネストは気にした風もなく豪快に笑う。

 

「と言うわけだ。諸君、高い酒を飲む時は偉大な出資者様であらせられるシキを敬いながら飲むように」

「よ、若旦那! 御大尽!」

「俺、一生ついていきます!」

 

 そうして場も暖まった所でアーネストは手に持ったグラスを天へと掲げる。

 

「では、シキにフレイア、ハヤテの入隊を祝して――」

『カンパーイ!!』

 

 こうして歓迎会が始まった。

 

 

   *   *   *

 

 

 皆が思い思いに楽しい一時を過ごす中、年齢が近いからか自然と一つのテーブルにシキ、フレイア、ハヤテ、ミラージュ、マキナ、レイナが集まって皆料理に舌鼓を――。

 

「はむはむはむはむはむ」

「「「「「…………………………」」」」」

 

 皆料理に――。

 

「はむはむはむはむはむ」

「「「「「…………………………」」」」」

 

 舌鼓を――。

 

「はむはむはむはむはむ。むふー」

「「「「「…………………………」」」」」

 

 訂正。

 山と積まれたゼントラ盛りの料理を余さず幸せそうにお腹に納めていくシキだけが料理に舌鼓を打っていた。

 さして大きくない身体のどこにそれだけの量が入るのか、それ以前に質量保存の法則はどこいったレベルのデカルチャーな光景に皆が絶句するのも無理はなかった。

 

「な、なんか、むっちゃゴリゴリやね」

「あれ? 皆は食べないの? 美味しいよ」

「いや、なんつーか……」

「頂こうかとは思っていたのですが……」

「シキシキの食べっぷりにヤックデカルチャーというか」

「それでもクラゲの生は私がもらう。これだけは譲らない。それが私のジャスティス」

 

 シキの意外な一面に面食らった一同だったが、レイナを皮切りに気を改めて各々思い思いの料理に箸を延ばす。

 

「おっ、これ以外といけるな」

「あ、それ“裸喰娘娘(らぐにゃんにゃん)”名物、ウミグモの姿煮だね。見た目はアレだけどゲテモノは美味しいって定番だよね」

「やっぱりクラゲは生で丸呑みが一番……んふ」

 

 そうやってある程度食事が進んだところで、話題は数時間前に決まった次の任務に移る。

 

「そう言やぁ、次のワクチンライブ決まったんだってな」

「うん。惑星ランドールの自治政府からの要請でね。最近ヴァールの発生危険率が上がってきているみたいなの」

「そこが、僕やフレイア、ハヤテのデビューステージって訳だね」

「まぁシキシキは前にアル・シャハルで一緒に歌ったのがデビューって事になっているけどね」

 

 結局、あの時のシキの介入は“ケイオス”が以前からスカウトしていた新メンバーのサプライズお披露目ライブということになっていた。

 

「フレイアのデビューにあわせてシキもクローズアップされてる」

 

 そう言ってレイナは空中に“ワルキューレ”のニュースが記載されたスクリーンを展開する。

 

「どれどれ、《アル・シャハルのライブでヴェールを脱いだ新たな女神》に《女神は女神でもお金の神様。“ケイオス”出資者、“ワルキューレ”加入の闇に迫る》、《スクープ! 新たな女神は男!? “ワルキューレ”崩壊の序章か!?》って、おいおい。ほとんどスキャンダル記事じゃねぇか」

「あぁー、ほんまやねぇ」

「まぁ、公式サイトのシキシキのプロフィール本当のことしか書いていないしね」

「いえ、でもこれはいいのでしょうか? ここまで書き立てられると言うことは、その、ヴァール化以前にファンの方たちが暴動を起こしたりとかは……」

 

 恐る恐るとしたミラージュの発言にレイナは首を横に振る。

 

「うぅん、ファンの人たちは以外と冷静。むしろマスコミ大炎上」

「そうなんだよねぇ。批判的なマスコミに対してファンの人たちは擁護してくれたり結構好意的にシキシキを迎えてくれてる感じ。それに試しに発売してみたシキシキの数量限定写真集、在庫の一千万ダウンロードが発売5秒で売り切れちゃうんだもん。あ、これサンプルね」

「セクシーショット目白押し」

 

 そうして空中のスクリーンに表示されたのは朝の光が射し込むベッドでシーツにくるまりながら横になった姿勢で笑顔を魅せるシキの写真だったり、大きめのドレスシャツ一枚を纏っただけの御々脚が眩しい姿でベッドの縁に腰掛けながら湯気の立つマグカップを口元に運ぶ写真だったり、長髪に隠されていて定かではないがアングル的に真っ裸に見えるシキの振り返る後ろ姿の写真だった。

 

「うわー、うわー、うわー」

 

 そんなシキのあられもない姿にフレイアは手で顔を覆うが、指の隙間からしっかりと眼が覗いていた。ルンもルンルンである。

 

「しっかしまぁ、お前もよくこんなの撮ったよな」

「与えられた役割を演じるのは得意なんだ。でも改めて見てみるとやっぱり恥ずかしいね」

「とまぁ、そんなこんなでシキシキをバッシングするマスコミも今はゼロ」

「ちなみにさっきのは少し前の記事。今はこんなの」

「ええっと《ガールズユニットに美少年。“ワルキューレ”新たな分野を切り開く》に《ルックス、歌声、パフォーマンス、全てがパーフェクト! 最強新メンバーは男の子》、《“ケイオス”出資者、ツナシ家。華麗なる血統》ってこれ変わり身早すぎませんか」

「もう、手のひらグルングルンやね」

 

 まさにこれこそマスゴm――げふんげふん、マスコミクオリティであった。

 

 

   *   *   *

 

 

 テーブル席で少年少女たちが盛り上がる中、カウンターではアラドとカナメがバレッタクラゲのスルメを肴に一杯やっていた。

 端から見れば美男美女の逢瀬だが、話し

ている内容は少々きな臭かった。

 

「で、レディ・Mは何だって?」

「フレイアの能力が安定するのを待っている時間はないって」

「荒療治か。しかしハヤテの試験の時にはフォールド因子受容体(レセプター)は活性化したんだろう?」

「はい。けど、それからはフォールド波の出力もマチマチで実際の戦闘で有効かどうかは……」

「ぶっつけ本番で試すしかない、か。それはそうとシキについては何か言っていたか?」

「いいえ、特になにも。彼の好きにさせておくようにとだけ」

「出資者に忖度しているか、それとも……。いや、女傑とも言われるレディ・Mに限ってそれはないか。ともあれそういう判断なら今は俺たちも彼を見守るしかないな」

「ええ。そうですね」

 

 戦術音楽ユニットの必要性をヴァールシンドローム発症前から提唱し“ワルキューレ”を作り上げたレディ・M。

 正体不明の謎多き女性。未来を知っているかのような数々の行動に千里眼を持っているのではないかと噂される女傑。

 彼女はいったい何ティコールなんだ?

 

 

   *   *   *

 

 

「うぅぅ、お腹が、ゴリゴリィ……」

「まったく、シキに釣られて食い過ぎだっつうの。ほれ」

「あんがと……。おおー! あっぷじゅー!!」

「アップルジュースな」

 

 宴もたけなわ。

 お腹も膨れたことで夜風に当たろうとバルコニーに出た面々がアップルジュースの入ったグラスを傾ける中、シキは手を大きく広げながら海から吹く風を感じていた。

 

「まだまだ春の風が色濃い、いい風だ」

 

 そう呟いたシキは南風に髪を揺らされながら“木漏れ日のコンタクト”を歌い出した。

 

「あ、この歌」

「アル・シャハルでシキが歌ってた歌」

「何かいい感じだな」

「うん。この歌を聴くとルンがルンルンするんよ」

 

 満天の星空の元、優しく響くシキの歌に皆も体を揺らしながら聴きほれる。

 そんな時だ。

 風に運ばれて美雲の歌声が聞こえたのは。

 

「あれ? この声……っ、美雲さん!?」

「美雲も歌ってる」

「すごい。シキシキとクモクモのデュエットだ!」

 

 姿が見えず声もどこからか微かに聞こえる程度。

 しかし、美雲の歌う“木漏れ日のコンタクト”も春に芽吹く生命力の強さを確かに感じさせるモノだった。

 

「シキと美雲ってなんか似てる」

「レイレイも? 私もそれ思ってた。ミステリアスなクールビューティーなクモクモと清楚清純なお嬢様のようなシキシキ、一見同じには見えないんだけど歌う姿はスゴくそっくり。さて、二人がこの調子だともう一人のエースボーカルさんも負けてられないね。ね、フレフレ」

「い、生命を懸けてゴリがんばります!」

 

 姿勢を正しビシッと敬礼するフレイアの姿に暖かな笑い声が漏れる。

 こうして歓迎会の夜は更けていく。

 さあ、明日はお待ちかね。シキとフレイアを加えた新生“ワルキューレ”の初ライブだ。

 




 君の銀河はもう煌めいている。
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