スタードライバー 煌めきのシキ   作:崇藤仁齋

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Mission07 衝撃デビューステージ

「フレイア。あなたはなぜ歌を歌うの」

 

 美雲がそう問うたのは惑星ランドールでのワクチンライブ開始直前のことだった。

 

「はいっ!? え、どんなって……」

 

 初めてのステージへの緊張感もあるだろうフレイヤは美雲の問いの答えに窮する。

 そんな彼女の様子に美雲は問いの先をシキへと変えた。

 

「銀河美少年さん、貴方はどう?」

「青春するため――青春を謳歌するために僕は歌います」

「貴方らしい答えね」

 

 シキの答えに美雲は満足げに微笑みながら改めてフレイアへと向き直る。

 

「フレイア、答えを口にできなくても歌は素直よ。歌には貴方の心が――思いが宿る。だから今日、歌で私を満足させなさい。できなければ貴女は“ワルキューレ”にいらないわ」

「っ!? ……はい!」

「話はもういいかしら? そろそろ時間よ」

 

 そうやりとりしている内に本番の時間が来たようだ。

 カナメの問いに皆準備万端と頷く。

 

「じゃあ行くわよ!」

 

 カナメのかけ声と共に皆が右手で“ワルキューレ”のサインを作り、つき合わせる。

 そして紡がれる“ワルキューレ”舞台開演の誓い。

 

「銀河のために!」

 

 マキナの――。

 

「誰かのために!」

 

 レイナの――。

 

「今、私たち!」

 

 フレイアの――。

 

「瞬間、完全燃焼!」

 

 美雲の――。

 

「命懸けで楽しんじゃえ!」

 

 カナメの言葉が繋がり――。

 

「さあ、アゲていこうか!!」

 

 そしてシキが最後を締める。

 

「「「「「「GO! “ワルキューレ”!!」」」」」」

 

 さあ、鐘を鳴らせ! 幕を上げよ! 絢爛にして豪華な女神(ワルキューレ)たちの舞台の幕開けだ。

 

「歌は、愛!」

「歌は、希望!」

「歌は、生命!」

「歌は、神秘!」

「歌は、青春!」

「歌は、元気っ!」

 

 レイナの黄緑、マキナのピンク、カナメの黄、美雲の紫、シキの青、フレイアの赤――それぞれのイメージカラーのスモークを引きながら六機のVF-31ジークフリードが空を舞う。

 Δ小隊のVF-31ジークフリードと共に降下してきたシャトルからファンの待つステージ上へアイドル衣装を纏い降り立った彼女たちは、自分たちを迎えてくれた大歓声に一礼すると“ワルキューレ”サインを高らかに掲げた。

 

「聴かせてあげる女神の歌を!」

「「「「「超時空ヴィーナス、“ワルキューレ”!!」」」」」

「わ、わわわ、“ワルキューレ”!」

 

 若干一名遅れたようだが、そこはご愛敬。

 彼女たちの名乗りに会場のファンたちのボルテージも天井知らずだ。

 そうして始まったワクチンライブだが、まずは新メンバーのお披露目から。

 

「改めまして新メンバーを紹介します!」

「颯爽登場! 綺羅星煌めく美少年。ツナシ・シキ、花の十五歳! さあ、共に青春を謳歌しようか!」

「あ、わ、う、ウィンダミアから来ました! 林檎大好き。フレイア・ヴィオン、十四歳! よ、よろしくおにぇがいしみゃすっ!!」

 

 シキが華麗に決める中、盛大に噛むフレイア。

 しかしながら、そんな彼女の初々しさが逆に受けているようで掴みはバッチリだ。

 シキは語るまでもない。おまけのウィンク一つで老若男女問わずファンの(銀河)を煌めかせていた。

 

「まずはこの曲! “不確定性☆COSMIC MOVEMENT”!!」

 

 曲名のコールを終えた美雲はマイクが声を拾わないように手で蓋をすると笑顔のままフレイヤに告げた。

 

「ダメならクビよ」

「……ぅうっ」

 

 容赦のない美雲の宣告にフレイアがたじろぐ中、イントロと共に衣装が袖無しブレザーへと変わる。

 そして会場に響きわたる“ワルキューレ”の歌。

 ホログラムによる演出も兼ねるマルチドローンプレート、シグナスが“ワルキューレ”の発する生体フォールド波を増幅していく。

 Δ小隊のVF-31ジークフリードもスモークを引きながらのアクロバット飛行で“ワルキューレ”のライブを盛り立てる。そんな中――。

 

「よぉぉおしっ!」

「な!? ハヤテ!」

 

 ハヤテのVF-31ジークフリードが予定にないパフォーマンスを見せる。

 ミラージュが後を追うがハヤテの自由奔放な機動になかなか機体の動作を合わせられない。

 

「っ! この機体は、シキ!?」

 

 そこに割り込んだのはシキが遠隔で操作するVF-31ジークフリードだ。

 歌って踊りながらも、ここはまかせろと眼で語る彼にミラージュはこの場をシキの機体に譲る。

 そして始まるハヤテとシキ、二機のVF-31ジークフリードによるインメルマン・ダンスのコンビネーション。

 

「おいおい、VFも踊ってやがるぞ!」

「すごい! こんなライブ今まで見たことない!」

 

 “ワルキューレ”とVF-31ジークフリードのパフォーマンスに観客たちも大賑わいだ。

 しかし――。

 

『アイテールよりΔ1へ。アンノウン出現、大気圏に突入してきます!』

「ヤツらか!」

 

 戦いの足音も近づいてきていた。

 

 

   *   *   *

 

 

「きゃあ!」

 

 挨拶と言わんばかりに敵が放った無人機による強力な電子ジャミングによりシグナスが機能不全に陥る。これでは生体フォールド波を増幅することができず、ピンポイントバリアでの防御もままならない。

 

「こっちの事は研究済みか」

「っ! ミサイル!」

 

 その隙を縫って放たれた多数のミサイルが“ワルキューレ”へと迫る。

 だが、今の“ワルキューレ”にはΔ小隊とは別に専属の守護者がいる。

 

「させない!」

 

 専用の対ECCM装備を施されたシキのVF-31ジークフリードが彼女たちを守るように立ちはだかるとミサイルへ向け射撃武装を一斉射。しかも一射一射が無駄のない完璧な――爆風で他のミサイルを誘爆させることも計算した――攻撃で、一機で“ワルキューレ”を守って見せたのだ。

 

「ブリュンヒルデからΔ1へ! “ワルキューレ”の護衛には僕がつきます。Δ小隊の皆さんはアンノウンへの対処を!」

『ありがたい! 聞いたなお前たち。“ワルキューレ”にはブリュンヒルデがついている。各機散開してアンノウンを蹴散らすぞ!』

 

 そうしてΔ小隊がアンノウンとの交戦に入ろうとしたところで新統合軍からの援軍も到着した。

 後は数の有利で相手を押し込めるだけと思った矢先――。

 

「えっ?」

「なに……?」

「っ!?」

「これは……っ、歌!」

 

 最初に異変を感じたのは美雲、フレイア、ハヤテにシキの四人。

 風に乗って聞こえて来たのは少年の歌声。

 その歌に導かれるように新統合軍のVF-171は友軍であるはずのΔ小隊に攻撃を仕掛けてきた。

 

「なっ!? 新統合軍が攻撃!?」

「マジかよ!?」

「まさか、ヤツらヴァールに? Δ3、確認を!」

「ウーラサー! ……こいつは、やっぱりそうです! 皆ヴァールになってます!」

「でもヴァールが編隊を組んで攻撃してくるなんてあり得ない!」

 

 しかし目の前の事実としてヴァール化した新統合軍の兵士たちは組織だって行動している。それに前方にはアンノウン。眼下には“ワルキューレ”のライブに集まった市民たち。迷っている時間はなかった。

 

「……已むを得んか。攻撃開始! 市民と“ワルキューレ”を守るぞ!」

 

 そして始まる乱戦。

 

「Δ4、後ろだ(チェック6)!」

「っ! 助かりましたΔ2」

「撃つのを躊躇うから敵に後ろを取られる! 言ったはずだ。新統合軍兵士も覚悟はできているはずだと!」

「くっ」

 

 問われる覚悟。

 

「お前もいたか、死神」

「こいつは、アル・シャハルにいた」

 

 再びまみえる強敵。

 

「メッサーと同等の技量にあの動き。やはり……!」

 

 確信へと変わる疑惑。

 

「くっ、数が多い。捌ききれない……っ!」

 

 数多の思いが交差する戦場で、シキもVF-31ジークフリードを操り“ワルキューレ”の皆を守るが新統合軍が敵についたことによる数の不利はいかんともしがたく一発のミサイルを撃ち漏らしてしまった。

 

「しまった! 皆、逃げて!」

 

 シキの警告に“ワルキューレ”の面々はガスジェットクラスターを起動して緊急回避。直撃は免れるも美雲とフレイアが分断されてしまう。

 

「ゴリゴリィィィィ! うぉ、わっととと」

 

 フレイアはどうにか着地するも、そこはヴァール化した新統合軍のVF-171の目の前だった。

 

「っ!?」

 

 シキのVF-31ジークフリードは自身やカナメたちを守るのに精一杯でフレイアの元に駆けつけることができない。

 絶体絶命。銃口がフレイアへと向く中――。

 

『うぉぉぉぉぉぉおおお!!』

 

 危機一髪。ハヤテのVF-31ジークフリードが間に合った。

 

『無事か、フレイア!?』

「ハヤテ!」

『なめるなぁぁぁああ! ぐっ!』

 

 しかし、まだ人を撃つ事に躊躇いがあるハヤテは相手に押し負けてしまう。何とか相手の射撃を両腕のピンポイントバリアで守るが、それももう限界だ。

 片腕のピンポイントバリアが破られ小破するも相手も弾を撃ち尽くしたようで再装填に入った。

 その隙をハヤテはつく。

 

『守ることが俺の仕事だぁぁぁああ!』

 

 そうして今度こそ相手を押さえ込む事に成功するも、あくまで押さえ込んだだけ。

 未だヴァール化が解けていない相手はハヤテをふりほどこうと暴れるが、そこに先の攻撃ではぐれた美雲が“僕らの戦場”を歌いながら現れた。

 シグナスもシキのVF-31ジークフリードもないなか果敢にハヤテの押さえているVF-171へ取り付くと外部からキャノピーを開き直接相手に歌を届ける。

 

「っ! お、俺はいったい?」

 

 美雲の放つ生体フォールド波が新統合軍兵士を正気に戻す。

 その美雲の歌に、自分を守るために懸命に戦ってくれたハヤテに、フレイアの(ルン)が熱くなる。

 フレイアは(ルン)が感じるままに美雲の歌に自分の歌を重ねる。

 

「フレイア。フォールド因子受容体(レセプター)活性化(アクティブ)。出力……最大値突破! 未体験領域へ!!」

「あの二人、増幅装置(シグナス)なしで!」

「互いの歌で刺激し合っている!」

「僕も行きます! 皆さんも一緒に!」

 

 二人の歌の力にレイナ、マキナ、カナメが感嘆の息をもらす中、新統合軍の攻勢が弱まったことで余裕のできたシキも歌を重ねる。

 

「そうね、私たちも美雲とフレイアに続くわよ!」

「「はいっ!」」

 

 そして戦場に響きわたる“ワルキューレ”の歌。

 増幅器(シグナス)なしでも戦場全体に伝播する生体フォールド波に次々と新統合軍兵士たちは正気を取り戻していく。

 後はアンノウンを駆逐するだけに思われたがしかし、この戦闘は思わぬ方向へと終結する。

 

『アラド少佐、やられた!』

「まさか、アイテールが!?」

 

 ラグナにいるアーネストからの緊急通信に、まさかとアラドが声をあげるが事態はそれよりも最悪な方向へと進んでいた。

 

『いや! 陽動作戦だ。君たちが戦っている間に惑星ヴォルドールの首都が敵軍に陥落させられた!』

「敵? 敵っていったい……」

 

 敵というフレーズにミラージュが困惑する中、それまでΔ小隊各機とドッグファイトを行っていたアンノウンが次々に離脱していく。そして編隊を組み空を舞うと今までかけていた電子ジャミングを解除する。

 現れたのは空中騎士団の紋章。

 ジャミングの解除と共に機体の識別も判明。機体名、Sv-262ドラケンⅢ。

 この事実が指し示す敵の名は――。

 

『ブリージンガル球状星団ならびに全銀河に告げる。私はウィンダミア王国宰相、ロイド・ブレーム。全てのプロトカルチャーの子らよ、我がウィンダミア王国は大いなる風とグラミア・ネーリッヒ・ウィンダミア王の名の下、新統合政府に対し宣戦を布告する!』

 

 フレイアの故郷、ウィンダミア王国。

 




 君の銀河はもう煌めいている。
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