ダンジョンに灰色の大狼シフがいるのは間違っているだろうか?   作:ワンワンお!

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第1話

我輩は狼である、名は我が友

狼騎士アルトリウスが付けてくれた。

シフという、意味は灰色らしい。

なんとも彼らしい素っ気無い名前だと王の刃キアランは笑って言っていた。

我輩は未熟ながら剣士として修行し、友の一助として大王にお仕えしておった。

しかし我輩はウーラシールが闇に呑まれた時には無力であり、通りすがりの”あの不死人”の助けを借りて共に汚れたマヌスを倒してからは我が友の墓守として生涯を過ごしていた。

皮肉なことに、再び”あの不死人”と出会ったのは更にあれからはるか後の世

敵としてであった。

あれから多くの事があった、我輩は元より神代の狼なれば不死人ほどでなくとも長生きする

が、疲れた。

不死が何故地獄なのかよくわかる。

アノール・ロンドより多くの神々は去り、火の陰りは増す一方であった。

地には哀れにもソウルを失い、理性も誇りも失った亡者が溢れかえる。

全ては終わる、火は陰り死者すら闇に呑まれていくのだ。

今まだ、あの不死人との死闘によって無力にも闇に呑まれるのではなく、

一人の戦士として命を終わらせることできたことを感謝しよう。

「友よ…このような事になってすまない。

もしもまだ神々の恩寵があるのなら

お前のソウルを放とう、因果が巡っていつの日か再びお前が生を得る事ができるように」

 

かの不死人が何かを呟いている、哀れな者よ。

我輩は漸くこれで終われる、だがお前はこれからずっと失い続けるのだ。

死ぬことも逃げ出すことも許されない。

太陽すら燃え尽き、全ての星すら輝きを失っても

未来永劫に生き続けなければならない、神々すら恐れる地獄。

不死人よ、お前がいつの日か死ねることを祈っているぞ。

 

…

恐らくは数万か数億年後

 

 かつて、世界に災いをもたらすモンスター達を生み出す大穴があった。

 

それを塞いだのがバベルの塔、その周辺に出来上がったのがオラリオの町である。

 

ダンジョン 18階層

 

んむ?ここはどこだ?なんとも言えない狭苦しいところに何故いるのだ?

確かに我輩は死んだ筈だが?

何故、我輩は今土の中に埋まっているのだ?

確かに死んだと思われるが、だからと言って生きたまま埋葬されるとは思わなんだ。

きっと埋葬人の代金をケチったに違いない。

岩から身をよじって出てみると周りを見渡す、どこなのだ?

あたりは火一つないのに不思議に明るい。

体を見てみるが、自慢の毛並みは傷一つないし大切な剣もそのままである。

おかしい、まさか我輩も不死人ならぬ不死狼になってしまったのだろうか?

だから墓から更に下に這い出て最初の死者ニト殿の領域に来てしまったのか?

だとしたらご挨拶を欠かすわけにはいかぬが、さて方向も分からぬのでは…

と、一人物思いに沈んでいるとなんと、奇怪な形の異形が壁から出てきた。

数にして50程、デーモンが混沌の炎より生まれるというのは有名な話だが、まさか壁からポコポコ生まれるなどとは…

このような奇怪な現象、寡聞にして聞いた事がない。

常識はずれにもほどがある。

見た所牛頭のデーモンのようであるが、体は痩せっぽちで弱々しくソウルも貧相そのもの。

まるで人間の赤子ではないか。

まさかデーモンの赤子か?まさかこうやって生まれているとは…

だが見た目で判断するのはまだ早い、鴉人やバモスの親方の例もあるし

びっくりしたから取り敢えずは殺すなどという行動をする者などおるまい。

「ワンワン!!うーわおー!(これそなたら、名を名乗ることを許す)」

すると此奴ら何を勘違いしたのか驚いて顔を見合わせ、一匹がぶもぉなる合図とともに粗末な棍棒を持って我輩に殴りかかろうとした。

その棍棒どこから出した?

「バウ!(無礼者!成敗!)」

前足を振るって貧相なデーモンもどきをそっと撫でると壁にすっ飛んでいった。

騎士たる者、道理の分からぬ愚か者を全力で殴るなどという無体はせぬ。

せいぜいが拳骨で済ませるのが騎士というものだ。

ところが壁に叩きつけられたデーモンはパァンという破裂音とともに弾けて塵と石になって消えてしまった。

ますますわけが分からぬ、ソウルになって還元されるならともかく

あの血肉を持った質量はどこに行ったのだ?

質量保存の法則は何処に?

すると仲間を殺された?のに激昂したのか訳の分からぬ呻き声を上げながら残りの連中も棍棒を振りかざして突っ込んできた。

握り、悪し!姿勢、悪し!

ど素人の集団かと、相手になりませぬ。

が、戦さを仕掛けられて黙って引き退るものなどアノール・ロンドの騎士におらぬ。

無体な無礼・侮辱には死をもって償わせるのが我らの流儀。

警告はしたにも関わらず、連中が蛮勇に任せるというのならば粉砕するのみ。

我輩は一歩下がって十進むの精神で体当たりを仕掛けると進路上のもどきどもが木っ端微塵に吹き飛び塵に帰る。

実に脆弱、このような弱卒に神々の大王グウィン御自らより賜り我が友の名を冠した神剣を振るうなど騎士の名折れ。

無手にてお相手いたそう。

 

…

「ヤベェ…とんでもないのがいるじゃねぇか」

17階層、通路の向こうの大広間が随分騒がしいと思って冒険者の一人はそっと見にきた。

犬の鳴き声に近いが、ヘルハウンドとはまた違ったほえ声。

もしやレアモンスタ(大金)!?と思って来たのが運の尽き。

モンスターフィリアに必要なモンスターをテイムしに来たガネーシャファミリアのクエストが発注されてから多くの冒険者が難度こそ討伐より高いものの実入りのいいモンスター捕獲に精を出していた。。

このショーでレアなモンスターをテイムして出品すれば大金が手にはいる

「冗談じゃねぇ…あんなバケモン死んじまう」

 

何故か剣を背負った巨大な狼タイプのモンスターがミノタウロスの集団を瞬く間に蹂躙しているところに出くわすなんて!

モンスター同士が攻撃し合う風景はダンジョン内でも珍しい光景ではない。

変異種の習性ではあるのだが。

「気付くなよ…気付くなよ…」

だがそいつは耳をピクッと動かすとこっちの方に駆けて来た!

Lv4の冒険者は全速力で逃げ出すが、一瞬でモンスターは飛び上がるとこっちの上にジャンプして来た。

「ウワァァァァァ!く、来るな!来るなー!」

だがいくら恩恵があるとはいえ人間と巨大な狼では速度が圧倒的に違う。冒険者は命からがらガネーシャファミリアのモンスター捕獲本体と合流し地上戻った。

 

 

…

うむ、どうやら驚かせてしまったようだな。

それにしてもこの変なデーモンもどきは退治してやったというのに大袈裟なやつよ。

ちらっと嗅いだ限りでは鉄と油、それに下のものの嫌な匂いか。

まぁソウルも小さい無力な民ならばデーモンもどきが跋扈するニト殿の領域に迷い込んで怯えるのも無理はあるまい。

礼の一つもないのは頂けないが、騎士たるもの見返りを求めぬものよ。

我輩はこのような覚悟で何処かに良い拠点は無いかとそこらへんをうろつく。

うむ?なんだこの石は?デーモンから出たが楔石とは違うな。

我輩は試しに噛み砕いてみるとスーッとソウルが流れ込む感覚が身に染みる。

うむ、どうやらこれは石化したソウルのようなものらしい。

不死人たちが殺してでも奪い取ったり死体を漁って手に入れるとは聞いていたが、まさか食べられるとは知らなかった。

だが、正直食いでは無いな。

やはり食事はきちんと取らねば。

すると向こうのほうから水と緑と食物の芳しい香りがして来た。

ここでも商売とは、人とは実に商魂逞しいものよ。

我輩はソウル石を加え集めると口に含み、人の商人と交換しようと考えた。

草とエストとソウルさえあれば百年でも千年でも動ける人とはいえ、人喰いミルドレッドの例もあるように肉も嗜みとして食うのだろう。

ホテルとレストランは歴史の最後まで残る商売だとは誰の言葉だったか。

まともな食事があることを願うばかりだ。

 

 

 

 

 




冒険者ギルドの情報
大型ヘルハウンド・強化種
推定Lv.5相当
階層:17階層
装備
レアアイテムの大剣を背負っており、討伐によって入手可能
推定でも2億ヴァリス相当の価値


実際
灰色の大狼シフ 
Lv??
アノール・ロンドの騎士狼
装備:アルトリウスの大剣
大王グウィンの命により巨人の鍛冶屋がアルトリウスのそれを打ち直しシフに与えられた神剣
楔石の原盤により鍛えられた神秘の塊
いつでもばんぜん
人、モンスター、悪魔、竜、神
なんでも斬ると死ぬ
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