ダンジョンに灰色の大狼シフがいるのは間違っているだろうか?   作:ワンワンお!

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第2話

我輩は芳しい香りに誘われて階段を降りていく。

するとそこには巨人がおった。

なるほど、ここでも門番として働いておるのだな。

実にご苦労なことである、よしよし働きが認められグウィン王の覚えめでたければ騎士の従者くらいには叙されるやもしれんぞ。

なんといっても鷹の目ゴー殿の例もあることだしな。

「わん!(グウィン王の騎士シフである!お勤めご苦労)」

ところがこやつ門番のくせに誰何も何もなくいきなり訳のわからん喚き声を出して殴りかかって来おった。

「バウ!(無礼者!手討ちにしてくれるわ!)」

一閃あるのみ、切り捨て御免である。

アノールロンドの法度は厳しいのだ。

しかし生き返って最初、我輩の狼騎士の剣尖をかくのごとき下郎で汚すことになろうとは甚だ不本意であった。

我輩は大事な剣を確かめる。

ふむ、刃には一点の曇りもない。当然だが。

我が剣はアノールロンドにおいて最初の炎(根源)により我が友アルトリウスの剣(神器)を神々の楔石の原盤(神秘)によって鍛えた物。

一切の魔を断つ神剣、鶏同然の下郎を斬るには過ぎた代物よ。

切り捨てた下男はデーモンもどき同様にソウル石を残して塵になった。

あのような無礼者を門番にしようとはここの主人は客をもてなす心構えがなっておらぬな。

尤も、はっきりいって神都とこんな場末を比べるのが間違いだ。

あの程度の門番では神都どころか場末の酒場の門だってろくに守れまい。

我輩は更に階段を降りていくとそこには場末の酒場どころか地下にしては素晴らしい光景を目にした。

地下だというのに水と緑が豊かな土地。

うむ、墓守の務めに戻るまではとりあえずはここをキャンプ地とする!

さて、見渡してみると何やら甘い果実の匂いがする。

何と言ってもソウルの取引は危険を伴うのは常識で

やっと取引できる商人と思ったら連続食人鬼で気に入らない客を殺して食って残りを次の客に食材として出してたとかいうのはかなりましな方らしい。

近づいてみたらいきなり大弓で射られたとかソウル魔術で攻撃されたとか猛毒沼に落とされたとか。

とかく碌な話を聞かない。

向こうの水上に見えるのが人間の集落だ、恐らくは外からの攻撃を防ぐために島に集落を作っているのだろう。

 

しかし、入ってびっくり“病み村”みたいなことになっていたら洒落にならない。

“いらっしゃいませ”の看板の隣で人間が串焼きになってたり患者が毒虫になっている可能性は十分ありうる。

そういえば荒屋が続いている遠目の雰囲気がどことなく似ているな…

陰鬱な病み村のまさに何もかもが地獄の最下層、という雰囲気を思い出した我輩は気分が悪くなり集落から遠ざかった。

思えば、この森はどこか黒い森の庭に似ているな。

あそこまで暗くは無いが、とりあえずはキャンプ地として適当な広場になりそうな場所を探し

そこを拠点に今後の方針を考えてみればいい。

我輩もいい加減に気持ちが疲れて来た。

とりあえずは食料を漁ったり、湖で汚れを落として数日を過ごした。

この森の中も過ごしてみれば快適さという点では黒森よりもずっと優れている。

尤も相変わらず食事が果物だけというのには飽きてきた。

狩をして食料にしようとしてもこの辺りの獣は皆何故かソウル石を残して消滅してしまう。

時たまに何故か綺麗に毛皮やら爪やらだけが残ることもある。

謎の現象だ、正直不気味である。

 

森の中で拠点になりそうな場所を探して歩いていると、よく見覚えのある場所に着いた。

正確にいうと似たような場所を嫌という程知っている。

すなわち墓だ。

木製の十字架、突き刺さった武器、そしてこまめに訪れる者がいるのか手向けの花が備えられ荒れた様子もない。

あの世界ではもはや滅多にない、まともに弔われた人々の墓だ。

不死人は死なぬ故に、実に悲しく哀れで惨たらしい。

永久に生きた屍、ソウルに飢えた亡者となって人を襲いうろつき回る怪物になった家族や友人を見たいと思う者がいるはずもない…

我輩は尊厳を持って弔われた人々がいることに安堵した。

まともな人が少なくとも一人はいる証拠ほど安心できるものはない。

ピクと耳を凝らすと誰かが近くまで近づいて来たのを感じて振り返る。

…女性がいる、実に見事な気配の隠し方だ。

キアラン様には遠く及ばぬが、この森の中でここまで近づかれるとは思っていなかった。

見事な隠密の技だ。

「ウウゥ」

唸り声をあげて威嚇すると、露見した事に気付いて緑衣の女性が姿を表した。

 

『大型のヘルハウンド変異種モンスター…ギルドの注意掲示板にあった奴か…』

目の前の巨大な狼型モンスターの探知能力は私の想像よりもずっと鋭かった。

ヘルハウンドにしても探知能力は高いが、私の隠密能力なら先手を取れるはずだったのに。

いつもなら巨大モンスターとの1on1での正面切った戦闘は絶対に避ける。

でも、今は絶対に譲れない!あいつはよりにもよって彼女達のお墓の前にいる…

『ここから撃って当たるか?』

あれだけの大型モンスターを倒すには魔法を最大火力で叩き込むしかない…

だがそれでは皆んなのお墓まで巻き込んでしまう、私はやむなく木刀を抜いて機会を伺う…

するとどうしたことか、巨大ヘルハウンドは突然敵意を向けるのを辞めてこちらをじっと見つめる。

モンスター?でも、それにしては…なんて澄んだ瞳なんだろう。

彼?はすると突然踵を返して跳躍し、私の視界の遥かかなたにまで飛んで行ってしまった。

『何故?わかってくれた…?まさかな…』

私はあの灰色の巨体とその背負った大剣が水晶の光を浴びてキラキラ輝く様を眺めながら跳んでいく様子をずっと眺めていた。

 

目の前の人間?のような生き物の目線と場所から状況はわかった。

ああ、墓参りか。

親しい人をなくした辛さはよくわかる。

我輩は姿勢を正すと踵を返し、森の奥の方へと跳躍して去る。

誰にも故人を悼む権利はあるだろうに、邪魔をしてすまなかったなと思いながら。

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