ダンジョンに灰色の大狼シフがいるのは間違っているだろうか?   作:ワンワンお!

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いかなる神器も持ち手が凡庸ならば棍棒にも劣る



第3話

 

あの後、森の箱庭を抜けて集落へと繰り出した我輩は原住民から弓矢や魔術の歓迎を受けた。

威力からすれば大したことはない、恐らくは技量の粗末な気狂いの住民が粗末な武器で攻撃して来ているのだろう、虫が刺すほどにも感じないが客人に対してこの扱いはいただけない。

魔法使いにしても見た目こそ派手だが詠唱が長く、避けるのは容易い。

何故鎧もつけていないのか、ひょっとして理力に全振りで体力がないのか?

あれでは詠唱が終わるまでに10回は死んでいるだろう。

本気の攻撃だったら槍のごとき竜狩りの太矢が飛んで来るはずだ。

しかし人と違って盾を装備できない我輩ではスタミナと引き換えにダメージカットができないので避けて対応するしかない。

実に鬱陶しい、ちょっと行って注意してやろう。

全く、我輩も猫やキノコのように人間の言葉を話せたらこんな苦労はしないのだが。

 

リヴィラの街

ダンジョン18階層の安全地帯に作られた冒険者の街。

しかしながらモンスターの襲撃が皆無というわけでもなく今の街は333代目らしい。

街並みの粗雑さに比べてそんなに大層な歴史があるとも思えないが、

まめに記録しているかはたまたサバを読んだ箔付けか、多分後者だろう。

今、この街にまたまた大型モンスターが襲来しつつあった。

「来たぞー!ギガントハウンドだー!」

ギガントハウンドとは巨大なヘルハウンドに冒険者が自然とつけた名前。

でかいヘルハウンド?ならギガントハウンドでいいだろ、とはなんとも単純な命名だが自分のペットでもあるまいしそのうち殺すつもりだしこれでいいのだろう。

「撃て撃て!近寄らせるな!」

代表のボールズが声を枯らして街に近寄らせまいと冒険者達の中の弓手や魔法使いに命じて応戦させる。

「畜生!はえぇ!」

「魔法が当たらない!誰か、あいつの足を止めて!」

弓矢や魔法による攻撃が当たらない、モンスターの中には機動力重視のものもいるが

今リヴィラの街を襲っているモンスターの機動力はゴライオスに匹敵するその巨体にも関わらずケタ違いだった。

ある不死人はこう言った

『当たるまで近づけ、当たらないなら方法を変えろ』

またある者は

『死んで覚えろ、勝てるまで死ねば勝てる』

全ての攻撃をひらりひらりと巨大な的を絞らせずに回避する。

(くそっ!強化種どころかまさかモンスターレックスかよ!)

だが避けていただけのモンスターはちょっと距離を取ると次の瞬間にはついに一瞬で間を詰めて

街の外壁をいとも容易く破壊すると櫓の上に陣取っていた冒険者が倒れる櫓から振り落とされる。すかさず冒険者の中でも前衛が出てジャイアントハウンドを防ごうとするも、そのスピードは早く瞬時に後衛の魔法使いたちが蹂躙される。

「くそぉ!俺の店がぁ!」

ジャイアントハウンドの暴れぶりは凄まじく、ここに

リヴィラの街は壊滅した…特に一等地にあった顔役の家は入りやすいところにあったのが災いしたのか跡形もなく破壊された。

正確にいうと、原因は冒険者の攻撃の流れ弾による延焼でありジャイアントハウンドはそこいらをおちょくるように飛び回っていただけだった。

なお、その午後には新しい街が早くも再建された。

 

数日後…

「で、こいつが今噂の変異種ってわけね」

「大きい…それに早い…」

「っていうかこの剣でか!何?レアアイテム?」

ロキ・ファミリアの冒険者たちは今日、掲示板に張り出された

緊急クエスト:変異種 ジャイアントハウンドの討伐依頼の前に集まった冒険者達の人混みの後ろで依頼を見ていた。

 

『17階層に出現した大型の変異種モンスター

階層主のゴライオスを食い殺した事からLv5相当と推定されます

リヴィラの街が襲撃され壊滅した際の戦闘から極めて素早い接近戦型という情報があります

また、背負った大剣はかなりのレアアイテムと推定されます

現在、18階層から更に下層に潜伏していると推定

討伐時にはリヴィラ共同組合より特別報奨金が支払われます』

 

「いいなーこの剣、かっこいいじゃん!ねぇねぇ!今度みんなを誘って討伐に行こうよ!」

「ティオナ、あんたこの前『ウルガ』壊したばっかでしょ」

「早くて…大きい…スピードタイプ…いける?」

「あ、アイズさんが行くのなら私も行きます!」

だが何と言っても注目の的は背負ったドロップアイテム扱いのアルトリウスの大剣だった。

まさかシフも自分の背中の友の形見を狙う人間がここまで多いとは予想だにしていなかったろう。レアアイテムを背負ったレアモンスターの話でギルドは持ちきりだった。

蒼く輝く巨大な魔剣、贔屓目に見ても数億ヴァリスの価値があるという事から多くの大手戦闘系ファミリアが討伐隊を編成することになる。

Lv5相当なら中堅ギルドがいくつかLv4か3の冒険者を出し合って連携すれば決して倒せない相手ではない。

それでいて期待される報酬は素材ではなくアイテムそのものだから莫大だ。

経営も一挙に楽になるし、勧誘の広告塔にもなる。

いかに変異種とはいえ17階層程度なら2戦級冒険者以上なら脅威ではないというのが判断であった。

「おい、見ろよ。激レアアイテムだってさ!」

「まじかよ、これミスリルの魔剣じゃないかって?いくらするんだよ?」

「おい、早く団長に報告してこいよ!早いもん勝ちだろ!」

掲示板を見た冒険者達が次々と駆けていく。

 

「アイズー!早く早く!急がないと先越されちゃうよ!?」

「待ってよ、今からいきなり中層以上に潜って捜索となったらこっちも団長の指示がないと」

 

 





次回;屍山血河 死体溜まりの冒険者の悪夢
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