呑気な悪魔の日常   作:ケツアゴ

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第十七話

「今から貴様らの拠点で聖剣を融合させる儀式を行う。俺は町外れの森の廃墟で儀式成功と同時に進撃を開始しよう。アルシエル家の小僧に伝えろっ! 俺に勝てる可能性が唯一ある貴様を待っているとっ!!」

 

まだ夕方にも関わらず、リアスが居候する一誠の家に現れたコカビエルは宣戦布告を済ませると去って行く。その連絡を受けたソーナは公私混同から即座に戦火を切りかねない姉への連絡をせず、眷属を連れて学園へと向かう。時間帯からして多くの生徒教員が残っており、人命を優先させるための作戦が脳内で構築され始めていた。

 

「なんだありゃっ!?」

 

 遠目に校舎が見えた時、匙が思わず叫ぶ。通行人は誰も気にしていないが、校庭の辺りが白い靄らしき物に覆われていた。風に蠢くも飛んでいく様子もなく留まるそれに焦りを感じた一行が校門にたどり着くと、壁にもたれ掛かって煙管を咥える花月が居た。

 

「貴女はザナクの……」

 

「おや、久しいねぇ。其処の坊主がやらかしたけど大丈夫かい? 男っての馬鹿なもんで其処が可愛いんだが、限度が有るからねぇ」

 

 花月は煙管を口から離すと紫煙を空に向かって吐く。優雅な物腰、着物の上からでも分かる体つき、妖艶と賞するに相応しい大人の色香に匙だけでなく他の眷属も惑わされそうになる中、唯一寒気を感じた椿姫は言い表せない不安を感じ、ソーナは彼女が吐いた煙と校庭を覆っている靄のような物を見比べた。

 

「あれは貴女が?」

 

「そうさ。既に下手人共は隔離した空間に閉じこめてるし、一般人はパニックにならないように暗示をかけてる。……ただ、今から避難ってのも不安だろ?」

 

「避難中に伏兵に襲われれば被害が出ますからね。特に何かしらの異能を持つ家の方や人外など、悪魔と取り引きして通っている生徒に被害が出た場合、信用に関わる以外にも敵に回りかねません。それこそ悪魔に関する情報を得た状態で」

 

 取り敢えず花月が校舎周囲の索敵を行い、ソーナ達が校舎内に残っている者の避難を担当するという事になった時、リアス達が到着した。

 

「……これは仙術?」

 

「そうだよ、猫逍のお嬢ちゃん。アタシの仙術と妖術による結界さね。それでグレモリーのお嬢様、援軍は何時来るんだい?」

 

「援軍の要請はしていないわ。私の管理する土地の問題は私が解決する。コカビエルはザナクに相性の問題で任せたけど、此処を終わらせたら直ぐに助けに行くわ」

 

 面倒なことになった、花月は内心で嘆息する。コカビエルが学園に送り込んだのはバルパーとフリード、そして手駒である上級堕天使十名、全て対処済みである。仙術によって作り出した毒霧によって既に皆殺しにしているのだが、ソーナとの会話の通り隠密に秀でた伏兵を警戒して結界を張ったままにしている。

 

 そして、格上相手に連携がとれていない援軍など場を混乱させるからと言っても聞く相手ではなく、正直言って面倒だった。

 

「早く入れてくれ。僕はエクスカリバーを破壊しなくちゃ駄目なんだ!」

 

 木場などは邪魔する気なら斬るとばかりに魔剣を向けてきており、もうさっさと通して自分もザナクの援護に行こうかと思った時、道の向こう側からやって来た男を見て固まり、即座に魔力を漲らせながら声を張り上げた。

 

「全員逃げなっ! あの男は魔王クラスだよっ!!」

 

 近付いてくるのは銀髪の青年。イケメンの分類なので一誠が嫉妬に駆られるも、男が発した威圧感に圧されて怯む。見たことがない相手だが、リアス達は僅かに既視感を感じていた。男ではなく、男によく似た相手を知っている気がしたのだ。

 

 

「……長い間死んだフリしといて、今更何しに来たんだい? ユークリッド・ルキフグスっ!」

 

 

 

 

「おや、私のことを知っているのか。ああ、君はアルシエル家の眷属かい? なら手柄をあげよう。質問の答は簡単だ。投降しに来た。正当なるルシファーの血族を次期ルシファーにしようとする動きがあると聞かされてね。なら、ルキフグスの務めを果たすべきだと思ったんだ」

 

 優雅に冷静に自らが此処にいるワケを語るユークリッド。ただ、リアス達に対しては明確な敵意を向けていた。

 

 

 

 

「……しまった。予定外の事態だ、どうしよう?」

 

 リュミネル、アレイシア、アーシアを引き連れてコカビエルが待つという森……が見渡せる場所にきたザナク達だが、罠があって当然だからと遠くから観察しようとした時、魔王クラスの魔力を感じ取った。まさかセラフォルーが動き出したのかと慌てたアレイシアが狙撃銃のスコープで覗いた所、コカビエルと旧魔王アスモデウスの一族であるクルゼレイが戦っていたのだ。

 

「光力を使えるし、戦士だったコカビエルと違って王族だったクルゼレイじゃ経験が違う。だから何とか保っているけど時間の問題だな、こりゃ」

 

 コカビエルが負けるのは別に構わないが、問題はクルゼレイがどうして人間界に居るかだ。革命によって王位を奪われ僻地に追放された旧魔王派は確実に現政権を憎んでいる。その現政権のトップ二人の妹が居る街に彼が居るなど危険だが、下手に手を出せば旧政権を刺激する。攻撃するにも口実が必要だった。

 

「き、さ、ま、を、こ、ろ、し、た、あ、と、は、に、せ、の、ま、お、う、の、い、も、う、と、を、こ、ろ、す。……よし、連絡!」

 

 最上級悪魔クラス程度だったクルゼレイが何故魔王級にまで強くなっているかは疑問だが、アレイシアの読唇術によって目的は判明したので冥界に連絡を入れる。今の時間、リェーシャは前線で指揮を執っているはずなので予め決まっていた通り魔王にだ。

 

 

「クルゼレイがっ!? 分かった、軍の準備が出来次第其方にも送る! 難しいと思うが時間を稼いでくれ」

 

 この様な事態に旧魔王派まで絡んできたと知ったサーゼクスが慌てた様子で通信を切った時、コカビエルとクルゼレイの勝負も終わった。結果はクルゼレイの勝利。コカビエルの翼の殆どは半ばから失われ左目は完全に潰れている。右わき腹には拳二個ほどの穴が貫通し、右足と左手は肘や膝から先が喪失している。勢いよく落下し地面に激突したコカビエルの姿を見下ろすクルゼレイの手に魔力の塊が出現する。魔王級の力による、間違いなく街にまで甚大な被害が出る一撃だ。

 

 

 

「はははははははっ! 無限龍の力を得た私に堕天使如きが勝てるものかっ! 消えろっ!!」

 

 直径十メートル程の球体の姿をした魔力はコカビエルが墜落した周辺目掛けて加速しながら向かっていく。だが、正面に現れた巨大な障壁によって受け止められた。

 

 

「きゃっ!? あまり保ちそうにないです!」

 

「うん。保って残り五秒かな?」

 

 クルゼレイの魔力に立ちふさがり、二人同時に障壁を張ったザナクとアーシア。元々超大型の魔獣を相手にする時のため、数人掛かりで障壁を張る訓練は受けている。今もザナクが基礎となる障壁を作り、アーシアが上からコーティングする事で強度を増したが罅が全体に入り今にも破壊されそうだ。

 

 

「……うん、大丈夫。もう準備できた」

 

 その二人の背後、愛刀・三日月宗近を鞘に納めて抜刀の構えをとるリュミネルの手から光が溢れ出し鞘の中に刀身を伝って入り込んでいく。ザナク達が障壁を展開中ジッと目を瞑り、障壁が破壊され二人が左右に退避した瞬間、開眼と同時に飛び出した。

 

 

 

「集中、集中、集中……抜刀っ!」

 

 魔王級の力を得た自分の魔力が止められた事実を理解できずにいたクルゼレイはその時、眩い光を放つ刃を目にした。光を纏い刀身を伸ばした刃は勢いを削がれたクルゼレイの魔力を両断し、切断面から破壊する。だが、それだけでは不足。ならば更に力を注げば良いだけ。周囲から取り囲む様に放たれた黒き太陽の魔力、ミサイルランチャーから発射されたミサイル、それらによってクルゼレイの渾身の一撃は完全に破壊された。

 

 

 

「あっ、力が元に戻った。ドーピングだったか。問題は再使用が可能かどうかだよね」

 

「それでも最上級悪魔クラスだろ? 逃げたい気分だけどやるしかねぇよな」

 

「……頑張ろう」

 

「ま、守りと回復は任せて下さい!」

 

 ザナク達の姿を捉え、生死は不明なれど致命傷は確実に負わせた筈のコカビエルは無視して四人を敵と認識した様子のクルゼレイ。対する四人は格上相手の戦いに挑むべく構えを取った。

 

 

 

 

「貴様、アルシエル家の小僧か。ちょうど良い、降伏するなら命は助けてやる。真の魔王の血を引き才能に恵まれながら現政権に付いた裏切り者、そして裏切り者の娘の分際で魔王に押し上げられようとしている貴様の妹を殺す手伝いをしろ。偉大な私の手伝いが出来るのだから光栄だろう?」

 

「よし! 絶対に殺そう! 僕の可愛い超可愛い超超超可愛い妹のメアリーを殺すとか絶対許せないからね!」




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