呑気な悪魔の日常   作:ケツアゴ

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今回投稿キャラが出ます ありがとう!!


第一話

「昨日は本当に大変だったよ、うん。もう殴るわ蹴るわのボッコボコ。やっぱり本職には勝てないね。痣だらけ土塗れ血塗れにされた後は風呂に連れ込まれて全身を洗われるしさ。その上ついでだからって背中を流させられたんだ」 

 

 麗らかな日差しが降り注ぐ昼休み、木陰に入っている二人と顔を向き合って食事を取っていたザナクはいまだ少し痛む体を摩りながら箸を進めるが、ピーマンの肉詰めの寸前で箸が止まってしまった。

 

(ピーマン、苦手なんだよね。家では花月が見てるから無理だけど……)

 

チラリと前の二人に視線を向け、視線が自分から外れた瞬間に中の肉だけ取り出すと口に運び急いで蓋を閉めようとした。だが、蓋が閉まるよりも素早く差し込まれたフォークがピーマンに突き刺さり、閉じるよりも前にザナクの口にピーマンが入れられた。

 

「……主様、残したら駄目。ボクは花月さんからも見張るように言われてるから」

 

「そうだぜ。好き嫌いは駄目だ。僕だって見逃さない」

 

「……分かったよ。リュミネル。アレイシアは人の事言えないよね」

 

 やや咎めるような困った様な声で注意して来たのは前髪は目元を隠す程に伸ばして後ろはポニーテールにしている少女。白銀の髪を解けば膝まで届く程に伸ばした雪の様に白い肌を持つ。身長は低いが胸部の成長は著しい。そしてもう一人は注意しながらもリュミネルの弁当箱に酢豚のパイナップルを入れようとした少年。短く揃えた銀髪と紫の瞳で高身長のモデル体型、此方はアレイシアと呼ばれた。

 

「アレイシアも駄目だよ? それに果物は嫌いじゃないでしょ?」

 

「いや、酢豚のパイナップルは許せないんだ。パインはパインで食べるに限るよ」

 

「はいはい。それにしても今日は絶好の昼寝日和だよねぇ。少し寝るよ。適当な時間に起こして……」

 

 本来悪魔は日差しが苦手だ。力の成長と共にそれ程でも無くなりはするのだが人に比べれば日光は弱点の部類に入るだろう。だがザナクは何一つ影響がない様子で日差しの下で食事をし、今も日光を浴びながら気持ちよさそうに伸びをしていた。

 

 そのまま草の上で寝転がろうとした時、女子数人の怒った声と男子三人程の慌てる声が聞こえて来る。ザナク達は僅かに視線を向けはしたが、それが誰かを確認するなり珍しい物でもないように視線を外す。今追いかけられている三人は他校の生徒さえ見た目から本人だと分かる程度に有名なのだ。……悪い意味でだが。

 

 

「やってるねぇ。また覗きかな? 女子が多い学校でよくやるよ。あっ、そろそろ追い付かれる」

 

「……ボク、あの三人苦手。変な目で見て来るんだもん」

 

 普段から猥褻な本などを持ち込み猥談に興じる三人組から隠れるようにリュミネルは二人の背中に回り込む。尚、三人は覗かれた女子達に囲まれて制裁を受けていた。

 

「今日も平和だなぁ。美味しいご飯に何時もの光景。こんな日が何時までも続けば良いのに」

 

 ザナクは仰向けになって空を見上げ、日差しが眩しいのか目を細める。やがてスヤスヤと寝息を立てて眠り出し、リュミネルとアレイシアはその姿を見て口元を緩ませ、直ぐに真面目な顔付きになる。

 

 

「昨日、僕達が警備隊に合流した後くらいに刺客が来たそうだぜ。返り討ちにして喰ったそうだけどさ」

 

「……あの人、相変わらず主様が嫌いなんだ」

 

「家柄は最上級で政治手腕は超優秀。……だけどなぁ」

 

 アレイシアは舌を打ち、リュミネルは顔を曇らせる。怒りと無力感、それを二人は感じていた。

 

 

「……ボク、強くなりたい」

 

「ああ、そうだ。僕も強くなりたい。此奴は大切な親友だから守れる様にな」

 

 二人が拳を握り締める中、継母から命を狙われている当の本人は楽しそうに寝言を呟いていた。

 

 

「おいで、メアリー。兄様が遊んであげるからさー。えへへ~」

 

 

 

 

 

 

 アルシエル家は番外の悪魔(エキストラ・デーモン)と呼ばれる特殊な家系の一つだ。他にアバドンやルキフグス等があるが、多くが断絶するか政府とは距離を置いている。冥界での地位に関わるレーティングゲームに出る者は実家から離れる程だ。

 

 そんな中、アルシエル家は代々の領地の場所の関係から政府と繋がりを持っていた。

 

 

「今回の新製品は美容クリームと香水かぁ。材料は確か去年の大侵攻の時に発見した種から咲いた花だっけ?」

 

「……あの時は大変だったぜ。結局僕達の受け持ち場所はクリスとオッサンが大体片付けたんだけどよ」

 

「製品は全部把握しとけって事だろうけど……説明書きが長いなあ」

 

 冥界は地球と同じ面積に加え海が存在しないので手付かずの土地が多いが、アルシエル家領地には人手や必要性以外の理由から殆ど手が加えられていない森林地帯、通称ゲヘナの大森林が存在する。危険度が非常に高い魔獣が生息し、生息する全ての種族を把握出来ていない。把握できている範囲でさえ価値の高い物が数多くあると分かっているのにだ。

 

 それほど調査が進まない最大の理由は大森林がアルシエル家領地だけでなく、冷戦状態の堕天使の領地にまで広がって居るからだ。互いに刺激しないように本格的な立ち入り調査は禁止とされ、毎年梅雨の時季に起きる『大侵攻(だいしんこう)』と呼ばれる大量発生した魔獣の森林の外への進出の際に魔獣や体に付着した物を研究するに留まっている。

 

 そして研究の結果、有益な効果を持つ物が見付かれば人工栽培や加工によって商品にしている。この日、そのサンプルが送られてきた。

 

「アンタの事は嫌いだし命も狙うけど、暗殺が全部失敗して結局当主になった場合も想定してるんだろうね、あの糞女はさ。……クリームの方は餅肌に効果的だと。……悪くないね。これ、私が貰うよ」

 

 当主代行を勤めているザナクの継母の顔を思い浮かべて不愉快そうにしながら机の上一杯に広げられた新製品の一つに手を伸ばすと異議は認めないとばかりに気に入った物を選び出した。

 

「ほらほら、クリスティが真似したら困るから汚い言葉は控えようよ。今回は食べ物はキャンディだけなんだ、残念。あっ、でも喉に良くって美声が出るんだって。今度皆でカラオケにでも……リュミネル、それが欲しいの?」

 

「ひゃっ!? べべべ、別に良いよ、主様! ボ、ボクはちょっと見てただけだから。あっ、ちょっと部屋に戻るねっ!」

 

 ザナクがふと視線を向ければピンク色の香水の瓶と説明書を手にして赤くなりながらもジッと見つめているリュミネルの姿があった。気に入ったのならあげようと軽い気持ちで言ったザナクであったのだが、言われた本人の反応は大きい。大きくビクッと体を跳ねさせ慌てた様子で香水の瓶を机に戻すと明らかに何か隠しているという様子でその場を後にする。

 

「……ん? リュミネル何か落とした」

 

 だが、気付かなかったのかポケットに押し込んだ香水の説明書が床に落ちており、砂糖を沢山入れた紅茶を飲みながらお煎餅を食べていたクリスティが拾い上げた。

 

「あーる18? えっと……」

 

「よし、それを渡してクリスティ。君、実年齢は兎も角精神年齢は子供だから」

 

 クリスティが詳細を読む前にと説明書を受け取ったザナクは把握するのも仕事の一つだからと内容に目を通す。リュミネルが何故恥ずかしがったのか少し興味もあった。

 

「……無臭ですが使用者のフェロモンと反応を起こし、異性、特に使用者が好意からの胸の高鳴りを感じる相手に魅力的に感じさせます。……年頃だからか興味はあるけど恥ずかしいよね、これは」

 

 

 

 

 

 

「うきゃぁあああああああっ!?」

 

「あっ、説明書を落としたのに気付いたみたいだぜ。……取り敢えず知らない振りでオーケー? あと、オッサンには絶対秘密な。デリカシーとか知らないから」

 

 アレイシアの言葉に事態を飲み込めていないクリスティ以外が静かに頷く。只、気を使われるとそれはそれで恥ずかしい。彼女が身悶えするのは決定する中、ザナクは連絡事項を思い出した。

 

 

 

 

 

「あっ、街に堕天使が潜入しているから注意して。戦争継続派に利用されるのも、縄張りにしているグレモリー家と揉めるのも嫌だからトラブルは避けてよ? 平穏無事が一番だからね。潜伏場所は町外れの廃教会だから周囲には近寄らないように」




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キャラ募集中

女王 クリスティ(クリス)

騎士 花月

騎士 リュミネル・アーネリンス

戦車×2 ?(オッサン)

僧侶 投稿キャラ 有力候補アリ

僧侶 未定 原作キャラ?

兵士   アレイシア・ビクトール  消費数?

     ?

     未定

尚、ヒロイン未定

兵士か僧侶の一枠を原作キャラにする予定 僧侶の場合ヒロイン

活動報告でキャラ募集継続中 兵士か僧侶です

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