呑気な悪魔の日常   作:ケツアゴ

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第二十一話

「セラフォルー、結婚とかちゃんと考えてる? 立場や政治的理由も分かるけど、それを口実に現実から目を背けたら駄目よ? 貴女、子供が居てもおかしくない年齢なんだから」

 

 この日、セラフォルー・レヴィアタンはピンチを迎えていた。妹であるソーナの授業参観を知り、普段着の魔法少女のコスプレで駆けつけたのだが、天敵であるリェーシャと遭遇してしまったのだ。

 

「え、えっとね……」

 

「ほら、例の番組だけど、会談も近いし、内容的に自粛するのでしょう? 貴女は外交担当ですし、プライベートでやっているなんて通じないもの。これを機に一旦落ち着いてお見合いでもしてみる気は無いかしら? 貴女と同年代で未婚……は難しいけど何人か紹介できるわよ?」

 

 否定されるのも嘲られるのも良いだろう。子供のように拗ねるだけだ。だが、心配されて同情されるのは本当に辛かった。尚、番組とは彼女が主演を務める魔法少女物であり、責任者の方針で天使や堕天使が悪として描かれている。今までは冷戦状態の敵だが、今後の付き合い方の方針を考慮すれば外交担当の魔王が関わるには相応しくはないだろう。

 

「……大丈夫。悪魔は長命だし、貴女だって希望を持って良いのよ」

 

 最後に肩に手を置かれ優しく語り掛けられた瞬間、遂にセラフォルーの我慢が限界を迎えた。

 

「わ、私はずっと魔法少女でいるんだもーん! リェーシャちゃんの馬鹿ー!!」

 

 そのままセラフォルーは泣きながら走り去っていき、リェーシャの表情が優しそうな物から一変して氷のように冷たい物へと変わった。

 

「後で圧力を掛けて打ち切りにしておかないと……」

 

 どうやら先程のは嫌がらせのための演技だったのかもしれない。去っていくセラフォルーを目で追ったリェーシャは騒ぎを聞きつけてやって来たザナクを一瞥すると声も掛けずに横を通り過ぎ、同じ様にやって来て、先程の遣り取りを見て固まっているソーナとリアスの前で立ち止まった。

 

 

 

 

「貴女達も大変ね。聖剣の一件で色々と言われているそうだけど、非難なんて気にする必要はないわ。だって、貴女達の能力を正確に判断せずに補助や相談の為の人材を派遣しなかった大人の責任だもの。今度からは無理したら駄目よ? 今回みたいな事になるから」

 

 声色も表情も優しく、内容もフォローしているように感じるだろう。だが、違う。

 

「……あの、ザナクさん。あれって……」

 

「あっ、アーシアにも分かった? 腹芸は身に付けておいた方が良いからね。眷属や貴族に公の場でのプライベートなんてないんだし」

 

 この時、一緒に様子を見ていたアーシアは理解した。非難の内容自体は否定しておらず、今後は独断で動くなと言っているのだと……。

 

 

 そんな事がありながらも授業参観は概ね無事で終わり、会談に先駆けて天界からお礼の品として贈られた聖剣アスカロンの使い道に悩んだりしたがザナク達は平和に過ごしていた。贈られた時の遣り取りは特に記することも無いので省くことにする。

 

 

 

 

「ひぃいいいいいいいい!? へ、蛇が僕の中にぃいいいいいいいいっ!?」

 

「……五月蝿い」

 

 その数日後の事、力が不安定で封印されていたリアスの眷属であるギャスパーの前でクリスティは不機嫌そうにしていた。彼の力が不安定なのは育ちから来る臆病な性格と高まっていく力であり、特に訓練もせずに放置した結果、視界に入った物の時間を停める魔眼系神器が制御不能なのは非常に危険だ。

 

 物理的な意味でも、その様な者を抱える。リアスの将来的な意味でも。

 

「……駒交換して神器抜き取った方がオススメ」

 

「ひぃいいいいいいいい!?」

 

 そんな中、ミリキャスとメアリーの婚約を機にクリスティが訓練に協力することになった。ザナクの修行で使っている魔力を流出させる蛇の応用で神器の力を流れ出す事でコントロールの特訓を始めることにしたのだが、引き籠もりで臆病な彼は怯えて話を禄に聞こうとしない。クリスティの元々強くなかった我慢の限界が近かった。

 

「だ、駄目よ! そんな事、絶対にしないわ!」

 

「こら。駄目だろう、クリスティ。ごめんね、リアスさん」

 

 諫められた事が不服なのか、一見すると無表情だが更に不機嫌そうになるクリスティ。それでも制御訓練は続行される事になり、ザナク達は蛇をギャスパーの体内に残して後はリアス達に一任した。

 

 

 

 

 

「……もう直ぐ会談の日でしょう? こんな事してて宜しいの?」

 

 休日の昼間、遊びに来たレイヴェルはベッドの中でザナクに抱き付きながら問いかけるも、彼には特に緊張した様子もなく、レイヴェルの服の中に手を差し込む。

 

「やるべき備えはしてあるし、これ以上目に付く動きをしたら領民が不安になるからね。……それに君だって抵抗しないじゃないか」

 

 床に服が投げ落とされ、レイヴェルはからかうような言い方が気に入らなかったのかザナクの脇腹を抓りながら軽く睨んだ。

 

「抵抗する理由がありまして? 貴方が我慢できずに学生の身でありながら最後の一線を越える気なら抵抗しますが……途中までなら私も興味がありますし…‥」

 

 恥ずかしそうに頬を赤く染めて横を向くレイヴェル。部屋の隅で椅子に座って本を読んでいたリュミネルと目があった。

 

 

「……ボクは気にしないで。後で同じように可愛がって貰うから」

 

「……貴女が良いのなら私も不満はないのですが…‥ザナクも物好きですわね」

 

「欲望に忠実なのは悪魔のサガだよ、レイヴェル。さて、下と上、どっちから脱がそうかなあ?」

 

 寝転がった姿勢から起き上がったザナクはレイヴェルの全身を眺める。服をはぎ取られ下着姿になった彼女は期待と羞恥の両方を浮かべながら続きを待っていた。

 

「どちらでも同じではなくって? どうせ全部脱がすのでしょうに…‥」

 

 

 

 

 

 

「いや、違うよ? 下だけ着衣、上だけ着衣、どっちも別の魅力がある。因みにリュミネルは上だけの時の方が興奮す、るっ!?」

 

「……主様の馬鹿」

 

 ザナクが熱く語って最後に余計な事を言った瞬間、リュミネルの手から投げつけられた分厚い本が後頭部に直撃、悶絶する羽目になった。

 

 

 

 

「……リュミネル、貴女も加わってこの馬鹿に立場を教えて差し上げません? 妻の方が上だと徹底的に教えて差し上げましょう」

 

「……うん。主様、覚悟……しろ」

 

 呆れ顔のレイヴェルの呼び掛けにリュミネルは立ち上がって応じ、服を脱ぎ捨てながらザナクへと迫る。この時、彼は得体の知れない悪寒を感じ取った。

 

 

 

 

 

「いやいやいやっ!? 二人とも、少し落ち着い……」

 

 

 

 

 

 

 

 そして会談の日。とある目的を持って参加したヴァーリにとある言葉が投げ掛けられる。

 

「俺はずっとリゼヴィムを探していたんだっ! それを貴様はっ!」

 

「あら、そんなにお祖父さんに会いたかったの? 随分と慕っているのね。ああ、お母さんにでも虐めらた時に助けてくれたのかしら?」

 

 最も憎んだ男を彷彿させる笑みを浮かべながらの言葉にヴァーリの頭の中は真っ白になった……。




しかし去年までの授業参観はどうしたの、とか、セラフォルーが来ていたの知らなかったという事はソーナの授業をみていないのか、とか疑問 間に合わなかって残念とか言ってなかったし、教室じゃ目立つよね?

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