呑気な悪魔の日常   作:ケツアゴ

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主人公 一応偉い


第二話

「花月さん、そんな格好で歩き回るのはちょっと」

 

 風呂上がりにタオル一枚でリビングを歩き、冷蔵庫の缶ビールをグビグビと流し込む花月に対し、リュミネルはリビングのソファーに座っているザナクとアレイシアの二人にチラチラ視線を向けながら抗議する。

 

 風呂上がりで温まった体はほんのり赤みが差し、解いた髪は湿り気を帯びて体に張り付いている。バスタオル越しにでも分かる均衡のとれた肉体からは大人であるからこそ感じられる妖艶さが醸し出され、同姓であるリュミネルでさえ直視が出来ない程だ。

 

 ならば年頃の少年である二人なら尚更で、時折風呂に連れ込まれることが有るが未だに今の花月に顔を向ける事が出来ない。時折チラリと視線を送るもリュミネルと目が合うと慌てて元の方向を向いていた。

 

「別に良いじゃないのさ。アンタは固いねぇ。別に裸で出歩いている訳じゃあるまいし。目の保養になるんだ。この程度見せても問題無いさね」

 

「と、当然だよっ!? 裸で出歩くなんて……」

 

 二人のそんな反応など当に分かっており、むしろ反応を楽しんでいるのか、花月は聞く耳を持つ様子はなく、リュミネルは彼女の言葉に何を想像したのか真っ赤になって口ごもる。花月はそれが楽しいのかニヤニヤ笑い、羞恥心からリュミネルが視線を外した瞬間に流れるような滑らかな動きで彼女の背後に回り込んだ。

 

「前から思ってたけど、悪魔になったんだからもう少し自分に正直に生きたらどうだい? こーんな可愛い顔を隠しちゃってさ」

 

「あわわわわっ!?」

 

 左手で逃げられないように腰を押さえつけ、右手でリュミネルの前髪を上げる。素顔を見られた事が恥ずかしいのか顔の赤みが更に増す。テンパって頭が真っ白になったのか逃げようとする動きが止まり、チャンスとばかりに花月の目が輝いて手の位置が変わる。リュミネルの胸をガッチリ掴むと揉みだした。

 

「うきゃぁああああああんっ!?」

 

「そして胸も良いモン持ってんだ。感度も良好だし、顔ちゃんと見せて女の武器をちゃーんと使えば男なんてイチコロさね。何ならアタシが一から十まで仕込んであげようかい?」 

 

「イチコっ!?」

 

「これでも昔は吉原一の床上手と持て囃されたもんさ。ザナクを使って実践形式でレッスンだ。なぁに、体に悪い事じゃない。寧ろ良いこと……ありゃ気絶してるよ、この子」

 

 恥ずかしさが限界まで達したのか、リュミネルは顔から湯気が出そうな程に赤くなって気を失っている。流石に遣りすぎたと反省しているのか左手でリュミネルを支えながら頭を掻く花月。すると横から手が伸びてリュミネルを抱き上げた。

 

「……やり過ぎ」

 

「はいはい、反省してるよ、王子様。ほら、姫様をベッドまで運んでやりな」

 

 やや責める様な目を向けてくるザナクにさっさと行けと追い払うように手を振る花月。リュミネルをお姫様抱っこしたザナクは深い溜め息を吐くと花月に背を向けた。

 

 

 

「今の一連のやりとりでムラムラしててもその子を襲ったら駄目だからね? なぁに、アタシがたっぷり相手してあげるさ。何ならアレイシアも加わるかい? 偶には若い燕二匹から精気を搾るのも悪くないもんだ」

 

 獲物を狙う捕食者の瞳を二人に向けながら舌なめずりをする花月。指先を胸元のバスタオルに引っ掛け軽く緩ませる。何よりその声には不思議な程に惹かれる何かがあった。

 

 

「此処でお願いしたら何かが負けな気分がするから断るよ」

 

「まっ、ヤる気の無いのを無理に誘惑しても仕方ないしね。その気のない堅物でも宥めて賺せて布団に連れ込んで絞り尽くしてこそだけど今日は諦めてやるさ。でも、アンタには将来困らないように女の扱いはちゃーんと仕込むよ? アタシにも役得が有るしさ」

 

 後ろ髪を引かれる思いを感じながらもザナクはリビングから出て行く。その背中に最後まで誘惑する様な声で言葉を投げ掛けながら花月はビールを飲み干した。

 

 

 

 

 

「よしっ! じゃあアレイシア、今から可愛がってやるからアタシの部屋に来な。なぁに、安心しなよ。興が冷めたから本番は無しにしといてやるさね」

 

 チャンスとばかりに足音を殺して逃げようとしたアレイシアだが、花月が見えない糸を引っ張るような動きをすると前に進めなくなる。首だけは動かせるので恐る恐る後ろを見れば完全に捕食者の目をした花月がゆっくりと近寄ってきていた。

 

 

「お、お手柔らかにお願いします……」

 

「ならアタシが満足するように良い声で鳴くんだね。さぁて、どう苛めてやろうか……」

 

 アレイシアの顎を花月の指先が撫で、そのまま獲物を巣に引きずり込むかのように肩を抱き寄せて部屋に連れ込む。どうやらお手柔らかに済ます気は皆無のようで、この夜、三時を回るまでアレイシアは解放されなかった……。

 

 

 

 

「花月にも困るよなあ。元の種族の性なのか本人の性質なのかは分からないけど、もう少し大人しくして欲しいんだけど。よっと!」

 

 気絶したリュミネルを抱っこしたまま彼女の部屋に向かったザナクは部屋の前で立ち止まる。背中から放出された魔力が手の形になってドアノブを捻り、そのまま中に入るとザナクはリュミネルをベッドに寝かせた。体を冷やさないように布団を掛け、出て行こうとしたのだが出ていけない。リュミネルの手がザナクの手を掴んでいた。

 

「さて、困ったなぁ。暫く起きそうにないし……」

 

 寝ている状態でもリュミネルの握力は強く振り解くのは無理だ。リュミネルの駒は花月と同じ騎士(ナイト)。元々は老執事であるチャバスが保護した訳ありの子であり、剣の才能があったのでザナクの専属メイド兼護衛の一人を任されていただけあって細腕からは想像できない力を持っている。

 

「仕方ないから暫く待って……」

 

 その場に座り込みリュミネルが起きるのを待とうとしたが、花月から逃げられた安堵から気が抜けたのか睡魔に襲われ寝入ってしまった。

 

 

「……どうしよう」

 

 夜中の三時頃、漸く目を覚ましたリュミネルは狼狽する。目の前にはベッドにもたれ掛かって眠るザナクの姿があり、自分としっかり手を繋いでいる。取り敢えず手を離し体を揺すってみるが起きる気配がなかった。

 

「……女の武器かぁ。例えば主様はボクを魅力的って感じてくれるのかな?」

 

 そっと上半身を起こしたリュミネルは翼を、いや、羽を広げる。彼女の背中に存在したのは悪魔の翼ではなく、片翼の天使の翼だった。

 

 人と天使の間に生まれた奇跡の子であるリュミネルは目を付けた悪魔に攫われ両親も殺された。神器の暴走で誘拐した悪魔を殺した彼女をチャバスが保護し、境遇を知って受け入れてくれたのがザナクの両親だ。そして眷属になったにも関わらず翼が変わらない事をザナク達は受け入れた。

 

「……ボクは主様の為なら何でもするよ。皆の為なら幾らでも強くなれるんだ」

 

 彼女がザナクに抱くのは依存か、忠義か、親愛か、それとも……。本当の所は恐らく本人にも分からない。

 

 

 

 

 

「この前は大変だったよね。僕が風邪を引かないように起きるまで、とベッドに引き込んだら君まで寝ちゃって、朝起きて部屋から出る時に見つかっちゃってさ。昨晩はお楽しみでしたね、とか、絶対分かって言ってたよね」

 

「……あの時の事は言わないで」

 

 数日後、深夜に二十四時間営業のスーパーでチーカマやらサラミやら酒のツマミを大量に買い込んだザナクとリュミネルは少し遠回りをしながら帰っていた。現在マンションでは花月達が酒宴を開いており、クリスティが不貞寝をした為に不足し始めたツマミを買ってくると言って二人は酔っ払いから逃げ出したのだ。尚、アレイシアは捕まったので二人はちゃんと黙祷を捧げた。

 

 リュミネルは余程恥ずかしかったのかザナクの脇腹を軽く複数回に渡って小突き、ザナクはそんな彼女の姿が可愛いやら面白いやらで笑ってしまう。ふと空を見上げれば先ほどまでの厚い雲がなくなって月が地上を照らしていた。

 

「花月や桃十郎(とうじゅうろう)には困るよね。あっ、クリスティもか。あの子、色々な意味でウワバミだから……」

 

 自分より大きな酒樽を傾けて短時間で飲み干す少女の姿を思い浮かべれば苦笑しか浮かばない。今夜は今週のお小遣いで買ったお気に入りの食玩がダブったので寝てしまったが、何時もなら一番飲んでる所だ。

 

「……でも、ボクはこうやって主様と散歩が出来て良かったな」

 

 月を見上げながら何気なしに口にしてしまった自分の言葉にリュミネルは固まってしまう。耳まで真っ赤になって思考が混乱する中、ザナクは平然としていた。

 

「うん、そうだね。一応主の僕が眷属のために買い物に行くのはどうかと思うけど、リュミネルと月夜の散歩デートが出来たから良しとしておくよ。……幸福は簡単に壊れるし、不幸は突然列をなして訪れる。こんな幸せを大切にしたいよね。じゃあ、そろそろ帰ろうか」

 

 流石にアレイシアが不憫だとマンションに早く帰ろうとするザナク。リュミネルは彼の言葉に更に頬を染めながらも慌てて後に続く。直ぐに追い付いて横に並んだ時、丁度繋ぎやすい場所にある手が目に入った。唾をゴクリと飲み込み、バクバクと高鳴る鼓動を感じながらも勇気を出して手を伸ばそうとした時、曲がり角の向こうから慌てて駆けてくる者の姿があった。

 

 

「……アレは兵藤と……堕天使っ!」

 

 この街の管理を任されているリアス・グレモリーから彼を悪魔に転生させたことも、本人が感づくまで黙っている方針だとも聞かされたザナクは状況を直ぐに理解する。堕天使にはぐれ悪魔だと思われて襲われているのだ。少し離れているので両者とも二人に気付いていないらしく、鬼ごっこに飽きたのか堕天使の男は光の槍を出現させた。

 

「この状況で助けない訳にはいかないけど……」

 

「あっ、うん。僕が行くよ。堕天使相手なら僕が最適だ」

 

 虚空から武器を取り出そうとしたリュミネルを手で制したザナクは角から飛び出して二人の間に割り込む。投擲された光の槍はザナクに正面から命中し、体に触れた場所から黒炎が一気に燃え上がって槍は燃え尽きる。ほんの僅かな間の出来事だった。

 

「……お前は…まさかっ!?」

 

「あっ、うん。その驚く姿からして下級っぽいけどウチの一族の事は知っているようだね。彼は僕の知人の眷属だ。教えていない彼女にも非があるし今回は事故みたいなものだから帰りなよ。……それとも僕の糧になるかい?」

 

 ザナクの姿に驚愕と恐怖、そして憎悪を向けた堕天使は無言で去っていく。それを見届けたザナクが振り返ると驚きと困惑で固まってしまっている兵藤一誠の姿があった。

 

「ななな、何なんだよ、さっきのっ!?槍が現れたりお前に刺さったと思ったら燃えたり、ってか、あのオッサンの背中から黒い羽が……」

 

「この反応新鮮だなあ。ああ、君に説明する義務がある人が到着したよ。リュミネル、連絡ありがとう」

 

 ザナクが話し掛けた自分の背後に顔を向ける一誠。そこには隣のクラスに所属するリュミネルと、二大お姉様と呼ばれていて人気の三年生、リアス・グレモリーの姿があった。

 

 

「彼、最近狙われたのに、さっきのは彼の顔を知らなかったみたいだよ、リアスさん」

 

「……そう。少し気になるわね。他のターゲットを狙ってきた別働隊かしら? まあ、兎に角感謝するわ。今度お礼にお茶をご馳走するから部室にいらっしゃい。……じゃあ兵藤君、イッセーと呼ばせて貰うわね? 貴方の疑問に答えてあげるわ」

 

 リアスは呆然とする一誠を手招きして歩き出す。その頃、翼を広げて帰路を急ぐ堕天使の背中に米粒ほどの大きさの蜘蛛が張り付いていた……。




花月 一番エロい

感想 活動報告のキャラ募集お待ちしています  そろそろ決定かな?

次は成り上がり あと一話か二話で終わる 辛いは少し待って いちゃラブがいまいち浮かばない
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