呑気な悪魔の日常   作:ケツアゴ

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そろそろ辛い書けそう だいぶ浮かんだ 後はやる気かな? 


第三話

貴族の仕事は多岐に渡る。領地の開発や経営、有事の際には配下を従えて戦いもする。上に立つという事は下の者に関する責任を全て背負うという事であり、だからこそ貴族の子女子息は幼い頃から親類や家庭教師などの師事を受け、次を背負うべく勉学に励んでいる。

 

「いやいや、お久しぶりですね」

 

「長い間会いませんがお変わりが無いようで結構ですわ」

 

 そして社交界などの交流の場に出るのも貴族の立派な仕事だ。相互補助関係の為にも、何か有益な情報を引き出す為にも。学校では同学年と教師、精々が一学年上下の相手としか交流を結べないので社交界にて顔を広げる。ザナクも又、他の貴族と同じように出席していた。

 

「……欲望だの何だのが相変わらず渦巻いてやがんねぇ、此処は。吉原とちっとも変わらないよ」

 

「純血は少なくなってるし、少しでも良い家と関係を持ってあわよくばって所だよ。僕も数人候補が居るけど決まってないからね、婚約者」

 

 お供としてパーティドレスに身を包み夜会巻きに髪型を変えた花月は豪奢な扇で口元を隠しながら周囲を観察し、ザナクが取りあえず上層部や、家や自分と関係のある相手への挨拶を済ませようと思っていた時、不意に聞こえてきた嘲笑に眉をしかめた。

 

「ほら、彼奴も来てるわ。あの無能に負けた()大王家次期当主。グレモリー家の事もあるから婿に出るのは難しいでしょうし、分家にでもなるのかしら?」

 

「俺、当主になると思っていた時に媚び売ってたけど損したな。ぷぷぷ」

 

 流石に貴族で一番位の高い大王家を敵に回すのは嫌らしく、本人に聞こえない程度の声で明らかな侮蔑の言葉を吐く若い悪魔達。その視線の先には居心地が悪そうにしているマグダラン・バアルの姿があった

 

 一族固有の力である滅びの魔力どころか非常に低い魔力しか持たずに生まれ、他家に嫁いだ者から優れた滅びの魔力の持ち主が生まれたことで父から虐げられ僻地に母共々送られたサイラオーグ・バアルは努力の末に肉体だけで若手ナンバーワンの称号を手にし、次期当主の座も弟のマグダランとの決闘で勝ち取った。

 

 結果、マグダランは今までの人脈も勉学も水泡と化し、劣等感を感じながら貴族社会で生きていくしかなかった。

 

「やあ、マグダラン。久しぶりだね。リンゴの方は順調かい?」

 

「ザナクか。まあ、それなりにはな。父は喜ばんし、次期当主の権限も無くなったから大変だが頑張るしかないさ」

 

 そのマグダランとザナクは友人であった。大森林から手に入れた植物の栽培研究を家が行っている事もあって興味があったザナクはマグダランが同じ様に植物学に興味を持っていた事で気が合い、彼が次期当主でなくなった今も交流が続いている。

 

「そう言えばお前は婚約者が決まったのか? 幾つかの家が牽制してるから中々決まらないって話じゃないか。随分と人気者だな、お前は」

 

「まあ、堕天使と何かあれば最前線になる土地に嫁ぎたい物好きが多いって事だよ。確かに研究の成果からお金はあるけど、命あっての物種なのにね」

 

 マグダランの言葉にザナクは苦笑してしまう。彼が冗談で言っているのは分かっていた。ザナクの婚約者候補が多い理由、それはザナクやアルシエル家云々よりも父の後妻、ザナクの継母のリェーシャに流れる血が関係しているからだ。彼女や娘であるメアリーと少しでも関係を深める為に縁談話が舞い込んで来ているのだと二人は理解していた。

 

「その物好きの中でも極め付きがこっち来るよ。相手してやったらどうだい?」

 

 他の貴族には聞こえない程度の声で花月は二人の会話に割って入る。顔を向けた先には貴族の子女に相応しいドレスを身に纏った少女が近寄って来ていた。

 

 

「お久しぶりですわね、お二人共。元気にしていました?」

 

「まあ、厳しい勉強から解放されたからな。逆に体が鈍りそうだ」

 

「僕はちょっと疲れているかな? 領地が領地だけに強くなる必要があるし、毎日クリスティと魔力の、花月や桃十郎と実戦形式でボッコボコ」

 

 ザナクは肩を竦めて冗談っぽく言っているが本当のことだ。花月が悪戯をしながらも気を送り込んで生命力を活発にさせたり、研究の末に完成した強力な薬が有るからこそ普通に社交界に出席に出席出来ているのだ。

 

「花月もお久しぶり。相変わらずお綺麗ですわね。やはりアルシエル印の美用品の効果ですの? あれ、出回る量が少ないから全然手に入らなくって。……何処かの誰かさんなら手に入りませんの?」

 

 チラリとザナクを見る少女だが、当然冗談だ。彼女とは幼なじみであり、マグダランもザナクを通じて親しくなった。そして彼女もザナクに舞い込んでいる縁談相手の一人だった。いや、積極的に交流を持ち、付き合いも長い筆頭候補と言えるだろう。()()()()()()()()()、ザナクの嫁は彼女……レイヴェル・フェニックスで決まりそうだった。

 

 

 

「そうそう。さっきレイヴェル様の事を物好きって言ってたよ、この主」

 

「ああ、俺も聞いた。もの凄い変人だとも言っていたな」

 

「あらあら、私ショックで泣いちゃいそうですわ。きっと御兄様達も知ればお怒りでしょうね。今度デートでもして頂かないと口が滑りそうですわ」

 

「……分かったよ、今度デートね。じゃあ、都合の良い日を知らせて」

 

 花月に乗っかり冗談を言うマグダラン、そして更に乗っかってデートを強請るレイヴェルはバレバレの泣き真似までする始末だ。今この中でヒエラルキーが一番低いのはザナクだが、彼も彼で楽しんでいた。

 

 貴族にはしがらみが多い。本人達の感情を捨てて家の関係から敵対しなくてはならない事もある。だが、少なくてもザナク達は仲が良い事を誰かに咎められる事はなく、ザナク達はそれが嬉しかった。

 

 

 

 

 

 だが少し後、レイヴェルの兄の婚約に関わる騒動が始まる少し前、アルシエル家に舞い込んだとある縁談が彼らの関係に大きく影響を及ぼす事になる。その縁談がもたらす事はザナクにとって良い事ではあるが、手放しで喜ぶ事は当然出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

「……あっ、デートって今日だっけ?」

 

 社交界から数日後、良い茶葉が手に入ったから先日の約束にとリアスに放課後のお茶会に招待されたザナクだが、向かう途中で掛かってきた電話でレイヴェルとの約束の日が今日であると思い出した。

 

「……忘れていたようですわね。では、罰として来週映画館にでも連れて行って下さいませ。終わるまでリュミネルとお茶していますわ。終わったらショッピングとディナーをお忘れにならないように」

 

「……ガールズトークするね。花月さんはアレだし、残りもガールじゃないから普段は出来ないもん。あっ、掛かったお金は主様の奢りで」

 

 多少責めるような事を言われるがレイヴェルの目は怒っていない。この二人なら将来尻に敷かれるのは間違いがないだろう。結婚したら、の話だが。

 

 

「そうそう。こんな時は女王を連れて行くものですわ。クリスなら直ぐに来れるでしょうしお呼びなさい。では、後ほど」

 

「……映画、ボクも連れて行って欲しいな。見に行きたいの有るけど一人じゃ抵抗有るから」

 

「男の甲斐性ですし、忘れずに連れて行っておあげなさい、ザナク。じゃあ、行きましょうか。何処かオススメのお店ってありますか? 今、チョコケーキにはまってまして……」

 

 楽しそうに去っていく二人を見送りながらザナクはクリスティに連絡を入れる。その頃、一人で帰ったアレイシアはというと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの、迎えの人とはぐれてしまいまして。教会の場所を知りませんか……?」

 

「……やべぇ」

 

 彼は今、シスター服の少女と出くわしていた……。




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