呑気な悪魔の日常   作:ケツアゴ

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やはり原作に入らないと受けが良くないか 感想が来ないし・・・


第四話

 自己の認識は他者の存在があって初めて行えるものだ。自分は何者か、世界においてどの様な立ち位置に居るのか、敵も味方もそれ以外も知らない者には分からない。

 

 故に、その存在は自らを知らなかった。ゲヘナの大森林の奥深く、既に廃棄され、忘れられたか知る者が死に絶えたのか、誰一人として存在を知らない研究所。機器の稼働が止まり、やがて時と共に完全に朽ち果てたであろうその場所に雷が落ち、奇跡的な確率でほんの僅かな時間のみとある装置が稼働した。

 

「……ニャー?」

 

 中から出て来たのは子猫……の様な生物。頭に白い水晶の角、胸に水晶の結晶を持つ金眼の黒猫。後にレティと名付けられるそれは自分が何者か、此処が何処なのかも知らない。まだ目覚める段階では無かった為に生まれた目的に必要な知識を何も入力されていないのだ。とある悪魔の天敵として猛威を振るう筈だったレティは何とか持っていた本能からの知識により空腹と乾き、その両方を満たす為に動き出す。

 

「ニャ?」

 

 レティが施設から出ると雷の影響か施設は音を立てて崩れていく。後少し中にいたら死んでいたであろう事も知らないレティは呑気に歩き出し、そこが自分にとって地獄であることを知った。悪魔すら手こずる魔獣達に子猫程度のレティが太刀打ちできる筈もない。食う価値がないからと見向きもされず、時に隠れてやり過ごし、水場すら近付けず、それでも運良く補食対象にと狙われずにいたレティもやがて限界を迎えた。

 

 自分はもう死ぬ。何者なのかすら知ることもなく、とレティが思った時、不意に体が持ち上げられた。

 

「むっ! これは珍しい。こんな弱々しいのがこの森にいたのかっ!!」

 

 第一印象は五月蝿い、であった。だからレティは自分に初めて興味を向けた相手に伝わるはずもない言葉で五月蠅いと言ったのだ。

 

「そうかっ! いやー、すまんすまん! どうも俺は声がでかくてな! むむっ!? だから五月蠅い。腹が減った、だと!? ならお詫びに弁当を分けようではないかっ!!」

 

 その声は本当に五月蠅く頭に響いたが、一切の敵意も感じさせない相手にレティは初めて安堵を覚え、生まれて初めて安らかに目を閉じて眠ることが出来た。

 

 

 

 

 

「どうした、眠いのかっ!?」

 

「ニャーーーーーーーーー!!(訳:だから五月蠅いって言ってんだろっ!!)」

 

 

 

 

 

 

 

(うーん。僕、彼に何か悪い事したっけ?)

 

 お茶会の最中、リアスの婚約者でレイヴェルの兄であるライザーが趣味でレイヴェルを眷属にしようとして親に怒られた事を話したのだが、その最中にザナクは一誠の視線に気付く。どうも敵愾心すら感じさせる瞳なのだが覚えはない。

 

 実際、何もしていない。リアス眷属の木場がイケメン王子と呼ばれて人気があるように、アレイシアはちょい悪系として、ザナクは癒されるとして女子に人気があり、更に眷属の話をする時に女性の名前が出た事で嫉妬を買った、それだけだ。

 

 身に覚えがないが、態々言うのも波風を立てるようだし、リアスもザナクがこの場で言わないから言わないだけで困った様子だから後で注意するだろうと判断し黙っていた。だが、黙っていられない者も居る様だ。

 

「お前、ザナクに何か用がある? クリスが聞いてやる。言え」

 

「い、いや、何も……」

 

 大人しくアップルパイを食べながら砂糖を幾つも入れた紅茶を飲んでいたクリスティだが、全く抑揚のない声で一誠の目を覗き込む。見た目は幼い少女なれど吸い込まれ何処までも落ちていきそうな黒い瞳に身が竦んでしまった。

 

「ほらほら、落ち着いて、クリスティ。僕の分を半分食べるかい?」

 

「食べる」

 

「ごめんなさいね。後でちゃんと叱っておくから」

 

 差し出された皿からパイを受け取ると再び大人しく食べ始める。あまりのギャップに一誠が面食らう中、ザナクはそんな彼を見て静かに微笑んでいた。

 

「驚いたかい? この子、見た目通りの歳でも強さでもないんだ。実際、中身は幼いけど実年齢は数千歳だよ。本当の姿も別物だしね」

 

「この姿、味方は優しい、敵は油断する。……お前、神器何?」

 

 無表情のまま自慢するようにない胸を張るクリスティ。口元に食べかすがついたままであったが、再び一誠の方を向くと何かを思い出すように首を傾げた。

 

「その子の神器? 龍の手(トワイス・クリティカル)だけど……」

 

「違う。多分本当の姿、眠っている。クリス、起こせる。どうする?」

 

 有り触れた物だというリアスにクリスティは首を振って否定し、今度はリアスの方を向く。リアスと一誠は顔を見合わせ、互いに頷いた。

 

「じゃ、じゃあ宜しく……わっ!?」

 

 一誠が小手を出現させた途端、クリスティの手の平から黒い蛇が飛び出して籠手に絡みつく。ミシミシと軋む音が聞こえ、古い角質が落ちるかのように表面が崩れて違う姿をした籠手が出現した。

 

『……随分と乱暴な覚醒のさせ方だな。宿主が弱過ぎるから本来ならまだ掛かる所だったぞ。オーフィ……いや、違うな。あの蛇か。暫く会わない内に随分と気配が似てきた』

 

「……クリス、彼奴嫌い。彼奴の話するな。……起こした、貸しはザナクに。ザナクはクリスにご褒美くれたら良い」

 

 突如籠手から聞こえてきた威厳のある声に戸惑うリアス達。だが、この後で神器の本当の名前を知って更に驚く事になるのであった。

 

 

 

 

 お茶会も終わって帰り道、ザナクは一誠の神器に少々驚きを感じつつレイヴェルとの待ち合わせ場所に向かっていた。クリスティは途中で歩くのが億劫になったらしくその背中に飛び乗って離れようとしない

 

「取りあえず貸し一つって事にしたけど、まさか神滅具とはね」

 

「ザナク、欲しかった? なら、何時もの様に奪う?」

 

「奪っているのは敵からだけだよ。それにあれは体の負担が大きいから継続戦闘に向いていないし、白いのを呼び寄せるから要らない」

 

 赤龍帝(ブーステッド・ギア)、それが一誠が宿す神器。二天龍の片割れを封印し、十秒毎に能力を倍加させるが、これは車に荷物を多く積める様になるのと同じだけで無理をすれば負担は大きい。体を酷使する仕事の者が体を壊す様に頼り過ぎれば身の破滅だ。

 

 更に龍系神器は争いを呼ぶと言われるが、ザナクは今まで一誠が宿す神器の宿主は関係ない筈のもう片方との戦いを繰り広げて来た事からドラゴンに引っ張られ闘争本能が増幅して自ら争いに首を突っ込んでいるのではと思っていた。

 

「あっ、アレイシアから電話だ。はいはい、何かな?」

 

「ザナク……ヤバい事になった」

 

 掛かって来た電話の先から聞こえてきたアレイシアの声は深刻そうでザナクの表情に緊張が走る。クリスティは何時の間にかスヤスヤと寝息を立て始めた。

 

 

 

 

 

「さっきシスターに出会ったんだ。名前をアーシア・アルジェント。あの癒しの力を持つ元聖女で、たぶん悪魔に嵌められて魔女として追放された彼女」

 

 ザナクの脳裏に嫌な予想が浮かんだ。恐らく追放後に引き込まれたのだろうが、態々この街に呼び寄せる理由。それは決して望まない内容だった。

 

「態々支援役を呼ぶって事は戦いをするって事かな。僕かリアスさん達が狙いか……まさか兵藤君?」

 

 ザナクの家の領地は堕天使の領地と接している。だから戦争にまで行かない小競り合いは何度か経験していており、敵方の神器使いは数名把握している。その中に二天龍のもう一体が封印された白龍皇の光翼(ディバイン・ディバインド)の所有者が居る事も知っていた。

 

 

「彼は一度別の堕天使に殺されてから転生したらしいし、それから特徴を聞いて彼が悪魔になったと気付いた? まさか二天龍の戦いをこの街で始め、それを皮切りに大戦を再び始める気じゃ……」

 

 まだ他のターゲットが強かったり動かせない怪我人が居る可能性も有るが、可能性が僅かでも当たっていたら事態は最悪だ。

 

 

 

 

「僕、どうやら彼女に恋をしたようだ。……おーい、聞いてる?」

 

「ああ、聞いてるよ。でも、今は花月に連絡して今日の監視の報告を受けなきゃ。今まで特に重要な情報は無かった様だけど……」

 

 状況次第では冥界に知らせて援軍を要請する必要があるかと思い、ザナクは冷や汗を流すのであった……。




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明日は泊りがけなので絶対に無理です 次は絶対 辛い 内容浮かんできた

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